今、外では雪が降り積もっている。
それと同じように、私の不安も降り積もっていく。
もうすぐ、卒業式があり、私も3年生。
今まで、一緒にやってくれていた先輩方はもういない。
これからは一人の足で立たないと。
            • と、決意をするんだけど一人の先輩が私の邪魔をする。
邪魔をするといっても本当に邪魔をするわけではないんだけど。
その人のことを思うと、ついつい甘えたくなってしまう。

「あ~ずにゃ~ん。」

その元凶たる唯先輩が、のんきな声で抱きついてくる。
もう登校しなくてもいいのに、毎日部室にやってきている。
まったく人の気も知らないで。・・・でもそれに喜んでいる自分がいるのも
事実だ。

「離れて下さい。」

私は、普段通りに言い、唯先輩を離した。本当はもっとそばにいてほしい。
        • 卒業なんかしないで。そう思う自分が嫌だな、唯先輩には唯先輩の道が
あるのに・・・。私は軽く自己嫌悪に陥っていると、唯先輩がこちらをじ~っとみている。

「ど、どうしたんですか。」
「大丈夫だよ、あずにゃんなら。私と違ってしっかりしてるもん。」
「どうしてそんなこと言うんですか。」
「あずにゃん、不安そうにしてるんだもん。」

変な所で鋭いことを言う。私は努めて、冷静に言う

「どうしてそんなことが分かるんですか?」

だって、そうしないと泣いてしまい、あまえてしまいそうだから。
本当は今にでも甘えてしまいたい。この感情は唯先輩よりもしっかりしている
澪先輩にも感じない。何なんだろうなこの気持ち。

「当たり前だよ。私はずっとあずにゃんを見てきたんだから。」
「・・・・・・・えっ。」
「私はずっとあずにゃんを見てきた。なぜなら、あずにゃんの、
いや、違うな、中野梓ちゃんが好きだから。」
「それはどういう意味ですか。」

そんなことは分かっている。でも、聞かずにはいられない。落ち着こうと思っても私の鼓動は高鳴っている。

「決まってるよ。Likeじゃなくてloveのほうだよ。」
「・・・・・・・。」
「やっぱり、迷惑だよね。女の子同士なんて変だもんね。
でも、後何回あずにゃんと合えるか分からないかったから、早くいわなっきゃって

          • ごめんね、もう忘れて。」

そういう先輩の目には涙でにじんでいる。体も震えている。
唯先輩も不安なんだ。
私は唯先輩がいつもするように抱いた。

「ど、どうしたの、あずにゃん。離してよ。私、馬鹿だから、勘違いしちゃうよ。」

そんなことを弱弱しく言う唯先輩を肌で感じ、

「・・・・・・勘違いじゃありませんよ。」
「・・・・えっ。」
「私は確かに不安でした。これから、澪先輩達もいなくなるし。
けいおんぶをうまくまとめていけるかなとか、新入部員が入るかなとか。」

でも、それ以上に、

「唯先輩がいなくなることが一番不安でした。」

きっとそれは、

「私は、唯先輩、ううん、平沢唯のことが好きです。
もちろんlikeじゃなくて、loveのほうです。」
「・・・・・本当にいいの?私、いっぱい迷惑かけちゃうよ。」
「今までもかけてきたじゃないですか。」
「ひどいよ、あずにゃん。」

今でも、不安がないというなら嘘だ。・・・・・でも

「唯先輩、ひとつ約束してくれませんか?」
「なにを?」
「もし、私が不安で苦しくなったりした時は甘えさせてください。」

きっと唯先輩がいれば、乗り越えていける。

「もう~、そんなこと言わずに、今甘えていいんだよ~。」
「結構です。」

外はいつの間にか快晴となり、雪も溶け出していた。



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最終更新:2011年03月05日 13:05