憂、あずにゃん、純ちゃんの三人も無事N女大に合格。卒業式も終わった。
大学も春休みに入ってる事もあって、久しぶりにあずにゃんは私の部屋にお泊りに来ていた。

夕飯も食べたし、あとはお風呂に入って、ふわふわ時間ウフフ~と思っていたのだけど。



--

「唯先輩のばかっ!もう知りません!」
「あ、あずにゃ-」
ボスッ!!
あずにゃんが部屋から出ていきながら投げた枕は私の顔にクリーンヒット。
勢いよく閉まったドアで、散らばった枕の羽根が舞い上がった。

いつも『練習して下さい』とか『しっかりして下さい』とかって怒られてるけど、
今夜は違う。遂に本当に怒らせてしまった。

『唯、大学行ったら一人暮らしするんでしょ』
『うん!私がんばるよ!』
『じゃあ、これプレゼント
『あ、可愛い目覚まし時計!ありがとう姫子ちゃん!』

一人暮らし祝いだと姫子ちゃんから貰った目覚まし。
結構音も大きくて遅刻防止に役立っていた。

あずにゃんは何故かその目覚ましを嫌がってて、
それでも私がずっと使っていたのが気にいらなかったみたいで。
枕を投げつけられる事態になってしまった。

飛び出したあずにゃんの手の中でチクタクまるで時限爆弾だ。
きっと近くの公園に違いない。もう夜だし、今すぐ追いかけないと!

アパートの階段を駆け降りると枕の白い羽根がいっぱい道路に落ちていて、まるで『探して欲しい』と言ってるみたい。
走る私の髪でシャツで揺れるたくさんの白い羽根。
きっとあずにゃんはどうしようもない私におりてきた天使だ。

高三のGW前に告白して、付き合ってもうすぐ一年で、ずいぶん仲良くなったから、
キスするのも、抱きしめるのも挨拶みたいに思ってた。それがいけなかったのかな?

あ、あずにゃん居た!やっぱりで空き地見つけた。
全力で走ってきたからゼイゼイいってる息を整えてると、あずにゃんはこちらに気付いた。

でもあずにゃんは何だか他人みたいに私にお辞儀をしてみせた。
『愛を勘違いしないで下さい』って言われたみたいだった。

そんなあずにゃんを見て、私が動けないでいると、
あずにゃんは両手を空にあげて、目覚まし時計は飛んでいった。
まるで誰かを見送るようにそっと微笑んでいた。

まだあずにゃんの髪で、シャツで揺れるたくさんの白い羽根。
壊れた目覚ましよりもっと痛かったあずにゃんの気持ち。

--時々天使は私達に悪戯をして教えてくれる。
誰かを愛するためにはもっと努力が必要だよって。

まだあずにゃんと私の髪とシャツで揺れるたくさんの白い羽根。
こんなどうしようもない私におりてきた天使を手放す訳にはいかない。

「ゴメンね、あずにゃん。私、あずにゃんの気持ちわかって無かったよ」
あずにゃんの手を取りながら私は言った。
でもあずにゃんは黙って俯いてる。

「ね、お部屋の掃除も私が全部やるから!
だから、だからっ、一緒に帰ろっ!」
と私はあずにゃんの手をギュッと握って言った。

「……ホントに一人で掃除出来るんですか?」
「うぅ、それくらい!」
「私のせいでもありますから手伝いますよ」
「っ! あ、あずにゃん!」
「…帰りましょうか」
「う、うんっ!!」

一人で走ってきた道を二人で並んで帰る。

「あずにゃん、」
「何ですか?唯先輩」
「えっとね、目覚まし壊れちゃったよ」
「…そうですね」
「だからね。私、朝起きれないよ」
「明日新しい目覚まし買いに行きましょうか」
「ううん、買わなくてもいいよ」
「え?でも…」
「あずにゃんが起こしてよ」
「…モーニングコールですか?」
「違うよ。あずにゃんに直接起こして欲しいの」
「へ?!」

「だからね。春から一緒に住もうよ、あずにゃん」
ふんすと、我ながら名案だと思いつつ告げた。


「…嫌です」
「ええっ!まさかの否定?!」

「あの部屋は二人で住むには狭いです」
「ふぇ?」
「家賃は半分こするとして、もう少し広い部屋探さないといけませんね」
「あ、あ、あずにゃーん」

それって、オッケーって事なんだよね!
嬉しくなって思わずあずにゃんに抱き着く。
なんだか凄く久しぶりに抱き着いたみたいな気分だった。
外で抱き着くといつも恥ずかしがるあずにゃんも、珍しく嫌がらずにいてくれた。

「へへ、あーずにゃん」
「もう、とりあえず早く帰って掃除しなきゃですよ」
「うん。そだねー」

ちょっと惜しいけど、あずにゃんを腕の中から解放した。
「じゃ、帰ろっか」
「はい!」

手を握り直して再び歩き始めた。

「ああ!」
「どうかしましたか?」
「枕が無いよ、あずにゃん」
「…明日買いに行きましょう」
「じゃ、ついでにお部屋も探そっか?」
「ふふ、そうですね」

早く部屋に帰ろう。そんで掃除して、お風呂入って。うん。

ずっと永遠に一緒に居られますように。
そう思いながらあずにゃんと繋いでる手に少しだけ力をこめた。

おしまい!

元ネタ「どうしようもない僕に天使が降りてきた」槇原敬之



  • 名曲。 -- (名無し) 2011-03-24 02:21:40
  • 神曲。 -- (名無しさん) 2011-03-24 22:29:53
  • あれは神曲。ライブでハンカチ振った -- (名無しさん) 2011-03-25 02:06:02
  • あの曲は良かった! -- (あずにゃんラブ) 2013-01-10 01:20:11
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最終更新:2011年03月23日 22:54