唯先輩お元気ですか?
最近唯先輩がしっかり生活できているか心配なので送りました
もしよかったら今度のゴールデンウィークに唯先輩の家へ様子を見に行ってよいいですか?
無理だったら全然いいので
梓「送信っ」
梓は夕暮れの自室でそうつぶやいた。
しばらく…5分後だろうか唯先輩から返信が来た
唯センパイ
本文:その日は律ちゃんとムギちゃんと澪ちゃんで集まるからあずにゃんも一緒にいこ
自分的には少し残念でした
久々に唯先輩とべったりできると思ったのに、でもいいや先輩たちにも勿論会いたいし
少しの名残惜しさをかみ殺し一週間後の先輩たちとの再会に胸を弾ませた
‐一週間後・ゴールデンウィーク‐
流石ゴールデンウィーク初日、新幹線のホームはこれから旅行へいこうとしている人でごった返す
私は小さい体を器用に使いながらするするとホームへ向かう
しばらく待つと新幹線が入線する
乗客がぞろぞろと新幹線のドアへ吸い込まれる
私もその一人
しばらく外の景色を見ていたが急に眠くなってしまう
梓(いけない乗り過ごしちゃう)
そう頭に念じるものの瞼が重くなって目が開かない
梓(そうだコーヒーを飲めば…!)
偶然車内販売のおばさんが通りかかる
梓「すいません、あのぉ、コーヒーってありますか?」
販売員「お嬢ちゃんコーヒー飲むのかい?大人だねぇ」
梓「そ、そうですか」
お世辞でも大人と言われるのはうれしい
昔だって先輩の前では大人を演じていた
澪先輩ほどではないがまわりからだって「梓ちゃん大人っぽいよね」なんて言われたことがある
買ったコーヒーに口を浸ける
苦い、そう大人を演じたって所詮高校生、唯先輩のチョコのような甘い物が好きだ
でも目はしゃきっとした
しばらくはコーヒーで繋ぐことにした
新神戸
その車内放送にはっとする
唯先輩だけではなく律先輩、澪先輩、ムギ先輩は神戸の同じ大学で同じように暮らしている
東京や大阪とはまた違う上品な雰囲気が漂う神戸
そして坂が多い神戸でもある
以前唯先輩が送ってきたしゃれこうべを思い出す
どういう意味だろう
考えたところで意味がない
4月の末、桜の葉が茂る中、唯先輩達が通う大学が見えてくる
梓「ここが唯先輩の通う大学かぁ」
梓はいずれ自分もここに来るのだろうと胸を躍らせた

「あずにゃーん」
その呼び方をするのはあの人しかいない
唯「あずにゃん久しぶり!元気だった?」
梓「唯先輩遅いですよ」
唯「えへへごめんごめん急いで来たら転んじゃって…」
梓「大丈夫ですか!?」
唯「平気平気、ちょっと擦っただけだから」
梓「どれですか…結構重症ですね…」
唯「大丈夫だって、行こ?」
唯先輩の手に引かれて坂を下る
いつかの夏祭りのように、木々が生い茂り日光がところどころ会いまみえる道をゆっくり話ながら歩く
梓「唯先輩ちゃんと生活できてますか?」
唯「うん、時々澪ちゃんやムギちゃんが片付けに来てくれるから」
梓「人任せなところは相変わらず変わってないですね」
唯「ひどいよあずにゃん私だってがんばってるもん」
梓「ほほう、どこがです?」
唯「たとえば…料理とか」
梓「料理できるようになったんですか」
唯「りっちゃんに教えてもらいながら何回も練習したんだから」
梓「ほうほう、で、お味はどうなんです?」
唯「うぅん」
梓「わかりました、今晩味見してあげます」
唯「ってことは」
梓「今夜泊まっていいですか?」
唯「もちろん!あずにゃんのために今日は新しく作るよ」
梓「いつものでいいです」
唯「無念じゃ…」
そうだこうだしているうちに先輩方と合流
律「梓少しは胸大きくなったか?」
梓「っ律先輩には言われたくありません!」
律「言ったな中野ー!」
澪「元気そうだな」
紬「さっそくどこかでお昼にしない?」
唯「さんせー!」

そういうとムギがどこかに電話を掛ける
一分後大きなトラックが4台行列をなしてやってくる
紬「神戸の食べ物を梓ちゃんに紹介してあげるね」
そういうと中から高級料理店のコック帽をかぶった人が何人も出てくる
梓「すごい…」
料理はあっという間に出来、トラックの中に揃えられていく
紬「いっぱい食べてね」
流石に豪華すぎる
何から何までもがアートである
梓「い、いただきます」
すべてが輝いていて食べるのがもったいない
たぶん他の3人もそうだろう…
全員「御馳走様でした」
そう言うと執事数名が食器をてきぱき片づけトラックのドアを閉め帰っていく
澪「唯明日はどうする?」
唯「え?明日?どうしようかな」
できれば唯先輩とぺったりしていたい
デートもしたい
唯「あずにゃんとデートしますっ」
突然自分の夢がかなってしまって驚く
律「ほほうアツアツですなお二人」
紬「素敵だと思うわ、楽しんでね」
うれしそうにムギ先輩が言う
梓「な、何言ってるんですか!?」
唯「あずにゃん私とデートしたくなかったの?ごめんねあずにゃん」
梓「いや、そのぉ」
素直に言い返せず困ってしまう
梓「わ、わかりましたよ、特別ですからね」
唯「あずにゃんと久々のデート♪」
梓「唯先輩の家、行きたいです」
唯「今日はやけに素直だねあずにゃん」
梓「そ、そんなこと」
唯「いいよいいよ行こ」
唯先輩は鋭い、改めて実感した

しばらく歩くと唯先輩のアパートが見えてくる
築…3年くらいだろうかまだ新しい
唯「入って入って」
梓「お邪魔します…」
部屋は…片付いてる、珍しい
唯「昨日りっちゃん澪ちゃんに手伝ってもらって」とかやっぱり人任せ
梓「いい加減に大人になりましょう」
唯「あずにゃんは大人だね~」
まだ、大人じゃないです、だから今日唯先輩が…
唯「あずにゃん?どうしたの顔赤いよ?」
梓「え?あ、外暑かったですね」
唯「アイスが恋しいよ」
梓「買いに行きましょうか」
唯「流石あずにゃん!わかってらっしゃる」
ということで近くのコンビニへ来ている
唯「わぁ!アイスの宝庫だよ!ここにあるの全部買ってよあずにゃん」
梓「だめです」
唯「あずにゃんのいけず~」
梓「さ、帰りますよ」
唯「無念じゃ」
コンビニから帰る途中晩ごはんのおかずを買占めこれで大人になる準備は完了
あとは…
はっいけないいけない完全に妄想していた
どことなくムギ先輩の気持ちがわかるような気がした
唯「あずにゃん専用スペシャルフルコースをつくってしんぜよう」
梓「結構です」
唯「えぇ、なんで?」
梓「唯先輩の新作は毒見役が必要ですからね」
唯「あずにゃん何気にひどい…」

それからしばらくして唯先輩いわく自信作の親子丼がお目見えする
唯「あずにゃん食べてみて」
梓「いただきます」
うん、見た目は悪くない
味はわからないが、美味しいことを願って口に運ぶ
梓「あ、おいしいです」
唯「でしょ?」
えっへんと見栄を張る唯先輩
唯先輩の手料理は初めてで毒見の律先輩と姉妹の憂を除けば私が事実上初めて唯先輩の手料理を食べたことになる
憂と律先輩に先を越されているのは仕方ないとしてうれしい
唯先輩の初めての手料理が私が食べれるなんてこれまでにないうれしさだ
そんなことに背筋を振るつかせコメントを探る
梓「唯先輩がこんなにおいしい料理を作るなんて私見直しました」
唯「やる時はやるよー」
と他愛もない話しをし、唯先輩も自分で作った親子丼を頬張る
「唯先輩」
唯「なぁにあずにゃん?」
梓「ほっぺにご飯粒が」
唯「え?本当?食べて」
その唯先輩の言葉に驚く
「取って」などならまだ「しょうがないですね」で済む話
食べてなんて予想もしてなかった発言に固まる
梓(ってことはもちろん憂の前でもやってるよね?ってことは私は憂を超えるための唯先輩が用意してくれたチャンス!?)
また思わず自然に妄想するがもう止めようがない、妄想という風船はどこまでも膨らむ
梓「し、しょうがないですね」
と唯先輩の顔に手を伸ばす
手を引っ張って連れて行かれるんじゃないかと思ったが流石にそれはない
非常にゆっくり時間が流れていく
唯先輩についたご飯粒を手に取る
どっきん どっきんと胸と一緒に手が震えるのがわかる
ここまで来たらもう後には下がれない
パクッ
唯「ありがとうあずにゃん」
終わった、あんなに緊張したのにやってしまえばあっという間である
梓「ど、どういたしまして」
まだご飯粒は口に残っている
もう少し味わっていたい
ピロロロン
唯「お風呂沸いたみたいだからあずにゃん一緒に入ろ」
お待ちかねのお風呂タイムである

唯「そっか、あずにゃん大人だもんねごめん…」
梓「えっ」
待って私が求めていたのはそんな答えじゃない
事はたった数十秒前にさかのぼる
お決まりの唯先輩のお誘いタイムで私はいつものように「嫌ですよー」と言う
すると唯先輩は「なんで?」と言う
そして私は「は、恥ずかしいですよ…」といった
すると唯先輩は暗く残念な顔をして風呂場に行ってしまう
いつもの唯先輩なら半分強引に誘うのだが今日は違う、すぐ手を引いてしまう
私は唖然とする
唯先輩のへの驚きとおいて行かれる過疎感が一気に押し寄せそれが目元へと向かう
部屋の電気、テレビ、あらゆる光るものが一つの線となり目に浮かぶ
泣いてしまってはダメだ、せっかく大人を演じてるのに、大人しい後輩を演じているのに中身は結局構って欲しい子供のよう
恥ずかしくて、惨めで私はベランダに出る
空は東側がオレンジ色でその後に紫が覆いかぶさる
その下には大きな神戸市街が見える
敏感になりすぎかな私
正直最近唯先輩に会えないことでテストの点数が落ちたりギターの練習がはかどらなかったりと色々支障が出ている
だからもっと唯先輩とくっつきたい、私のものにしたいと独占欲が湧いてくる
そして少しでも間が空くと悲しくなって泣いてしまう
「結局子供だよね…」と呟く
次に唯先輩の声を聞いたのは十分後くらいだった
唯「お風呂入りなよあずにゃん」
梓「わかりました…」
できるだけ顔を合わせないように風呂場へ向かう
今の敏感な心じゃ持たない
そっと湯船に浸かる
涙なんて洗い流してしまえ、そう思い顔をお湯で洗う
鏡を見ると髪を下した自分がぽつり一人で椅子に座っている
目元を赤くしたみっともない姿

結局のぼせて五分ほどで上がってきた
部屋には唯先輩がいるんだろっと思ったがいない
その代わりに自室へのドアを開けて手招きしている
なんだろう?と思いながら近づく
唯「あずにゃん一緒に寝よ?」
梓「はい!」
今度は自然に返事ができた
唯「ごめんね今日あずにゃんあまり楽しそうじゃなかったから…久しぶりで動揺してたし」
梓「私も、いつもの唯先輩じゃなくてあせっちゃいました」
唯「じゃあ、一つだけ言うこと聞いてあげる」
唯先輩が自分から言ったということは私を誘ってるのかな?またイケナイ妄想が始まる
でも、ここはお預け
梓「じゃあ唯先輩の子守歌が聞きたいです」
唯「あずにゃん!?」
びっくりしたようでもあったし残念そうでもすぐに
唯「あずにゃんが言うなら、いいよ」
梓「お願いします」
唯「あずにゃん子供だねぇ」
そう、やっぱり好きな人が近くにいないといけない、甘えたい子供、つまり子猫である
でも照れくさい
梓「そ、それはっ」
反論しようと図星すぎて言葉が出ない
すると唯先輩が静かに歌いだす
それはふわふわ時間のもう少しバラードにした曲調で疲れ切った自分はすぐ目が重くなる
まだ、まだ唯先輩を見ていたい、歌う貴女を見ていたい、でも我慢の限界である
私は唯先輩の子守歌を聴きながら、重い瞼を閉じた
おしまい




  • ムギちゃんがありえないわ。 -- (名無しさん) 2011-04-17 01:13:37
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最終更新:2012年01月19日 02:00