ルンルンル~ン」
「お姉ちゃん、ご機嫌だね」
「当たり前だよ。明日はあずにゃんとお出かけするんだから」
「つまり、デートだね」
「そんな直接的に言わないでよ~。恥ずかしいよ~。そういうわけでもう寝るね」
「おやすみ、お姉ちゃん」
「おやすみ~」

トゥルルル、トゥルルル、
「うるさいな~」
こんな朝早くから電話なんて、まったく誰だろう、と思って、携帯を見るとりっちゃんからだ。
もう少し、考えてほしいよ。
「・・・・・・・・・・・・もしもし」
「やっと、出たか。いつまで待たせるんだ。もう10時半だぞ」
ぜんぜん早くなかった。
「なにを言ってるの、りっちゃん?今日、約束してたっけ?」
「なにを言ってるの、はこっちの台詞だよ。今日は10時に駅前って約束してただろ?」
そうだったかな?まったく約束した覚えがないんだけど・・・・・。今日はあずにゃんとお出かけ
するはずなんだけどな~。
「まったく。いいから早く来いよ」
ガチャ
「あ、待ってよ、りっちゃん。切れちゃった・・・・・」
仕方がないな~。本当はあずにゃんと約束してるんだけど・・・・・。どっちにしても、急いで
行かなきゃ。あずにゃんとの約束も11時30分だし・・・・・・・。サッサと、りっちゃんに誤解を
解いてあずにゃんとのお出かけを楽しもう。そう考えた私は、サッサと着替えようとして、タンス
を開けてみた。
「あれ、おかしいな~?」
私のタンスであることは間違いないんだけど、見たことない服ばっかりだ。
「まあ、いいや。早く行こう」
とりあえず、適当に選んで、着替えて出発することにした。なんか、胸の部分がいつもより
大きい気がするけど、ぴったり合うし、気のせいだよね。


「お待たせ~」
とりあえず、急いで、駅前に行ったら、りっちゃんとムギちゃんが待ってました。
「遅くなって、ごめんねえ~」
「まったく。唯もいい年なんだから、ちゃんと時間通り来いよ。これが仕事だったらどうするんだよ」
「まあまあ、りっちゃん。とりあえず、そこのファミレスにでも入りましょ」
「そうだな。今後のこととか話したりして長くなるし」
「え~、長くなるの?」
この後、あずにゃんと約束あるのに・・・・・・・。
「遅れてきてなにを言ってるんだ、唯は。これからの活動方針とかも話し合う必要があるんだぞ」
これからの活動方針?なにを言ってるんだろう、りっちゃんは。
私たちは、それから、ファミレスに入り、適当に注文してお昼を取ることに。念のため、
あずにゃんには、待ち合わせに、遅れるってメールをしたけど、早く終わらせないとな~。
「ん~、おいしい~」
朝ごはん食べてないからおなか減っちゃったよ。
「ったく。いくつになってものんきだな、唯は」
「あら、それが唯ちゃんのいい所よ」
「ねえ、ケーキも頼んでいい?」
「勝手にしろ。で、これからはどうやってくかな、作詞やってくれてた、澪はいないし」
そういえば、この場には澪ちゃんいないな~、どうしたんだろ?
「あ、ところで、これから、何を話し合うの?活動方針とかって言ってたけど・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・はあ。これからの放課後ティータイムの活動方針についてだよ」
放課後ティータイムの活動方針?なんだか、プロみたいだな~。
「そういうのって、学校で皆で話し合わない」
やっぱり、こういうのは5人全員そろっていないとね。
「学校?そういえば、懐かしいな~、あれから、7年か」
「そうね~」
懐かしい?なにを言ってるんだろ、りっちゃんは?
「なにを言ってるの、りっちゃん?明日も学校だよ」
「はあ?まだ、寝ぼけてるのか、唯は。まったく、25歳にもなって、まだ、高校に行く気かよ」
「25歳?私はまだ、18歳なのに・・・・」
「・・・・・・・とりあえず、顔洗って来い」
まあ、ちょうど、トイレに行きたかったし、ついでに顔も洗うかな。
「なんか、おかしいな~、今日のりっちゃんは。何かあったのかな?」
用を足し、鏡を見てみる。そこには、ちょっと大人びた顔の人がいる。後ろの人でも、うつってる
のかな、と思って、後ろを見てみても、誰もいない。もう一回鏡を見てみる。やっぱり、ちょっと
大人びた顔の人がいる。よく見ると、見たことがある人っていうか、私だ。
「大変だよ~、りっちゃん。私、大人になってるよ~」
「・・・・・・・・・・・本当に大丈夫か?今日はなんかおかしいぞ、唯」
私がおかしい?そんなはずはないと思うけど・・・・・・・。昨日だって、あずにゃんとお出かけ
するために早く寝たし・・・・・・・・・そうだ。
「あずにゃんは?あずにゃんは何処?きっと、あずにゃんに会えば・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱり、今日の唯はおかしいな。もう家に帰って寝たほうがいいよ」
「・・・・・さっきから、おかしい、おかしいって、私はおかしくないよ。昨日だって、あずにゃん
とお出かけするから早く寝ただけだし・・・・・・・・。だから、あずにゃんに会えば、きっと・・・・」
「落ち着いて、唯ちゃん。きっと唯ちゃんは疲れているのよ」
そうだね、ムギちゃんの言うとおり、少し落ち着いたほうがいいかもしれない。さっきから、いろんな
ことがあって整理し切れてないし・・・・・・・。そう言えば、今日は放課後ティータイムの活動方針
について話し合うって・・・・。
「今日は放課後ティータイムの活動方針について話し合うんだよね、りっちゃん」
「そうだよ」
「じゃあさ、澪ちゃんやあずにゃんはどうしたの?こういう活動方針とかって、皆で話し
合わないと・・・・・・」
「・・・・・・・・・はあ。やっぱり、今日はもう帰ったほうがいいよ、唯」
「な、なにを言ってるの、りっちゃん。私たちは5人で放課後ティータイムなんだよ。だから、
活動方針を話し合うなら、5人で話し合わないと・・・・・・・・」
それに、澪ちゃんとあずにゃんがいれば、私のこの状況も分かるかもしれないし。
「・・・・・・・・・・覚えていないのか、唯は」
「たしかに、唯ちゃんにとってはショックな出来事だったかもしれないけど・・・・」
さっきからなんなんだろう。あずにゃん達のことを言うと2人は辛そうな顔をするし・・・・・・。
「ねえ、一体何があったの?さっきから、あずにゃん達のことを言うと2人は辛そうにするし」



「・・・・・・・・・はあ、仕方がない。覚えてないなら話してあげるよ」
「りっちゃん、話さないほうがいいんじゃ・・・・・・」
「こういうのは隠しても仕方がないし、というか、当事者だしな。でも、確認しとくか。
唯、本当に話していいんだな」
「うん」
「じゃあ、話すか。事の起こりは梓が高校を卒業して、大学に入学した時かな」

「私達が放課後ティータイムとして活動していく中で、唯と梓はとっても仲がよさそうって、
周りからは言われてて、付き合ってるんじゃないかとの噂もあった。まあ、実際、付き合ってはい
たんだけどな」
「そうだったの?えへへ~」
実はこの世界もいいかもしれないな~。
「ところがその付き合い方が普通じゃなかったんだ」
「え?」
「梓が卒業して私達と同じ大学に進学し、同じ寮に住むことになったんだが、そこで、唯はたび
たび、というか、毎日梓の部屋に行くようになった。というより、梓の部屋で暮らしてるようなもん
だったな。まあ、押しかけ女房みたいなもんだな。それが大学の間だけならまだいいんだけど、
卒業して、梓が一人暮らしを始めても続いてな。まあ、梓自身も嫌がっていなかったのが
救いだったけどな」
「そ、それで?」
「ある日、梓が聞いたんだ。「どうして、こんなに私のそばにいるんですか?」って。実際、放課後
ティータイムとして活動してたから、家でも、仕事でもずっと一緒だからな。唯は梓のそばを離れ
ようとしたなかったしな。そう聞いたら、唯は、不思議そうにして、「あずにゃんのことが大好きだか
らだよ~」って言ったんだ。まあ、嫌いなら、一緒に居ないしな。梓だって嫌いな奴といつまでも
一緒にはいないしな。でも、次に唯が言ったことにはさすがに梓もびっくりしてな」
「わ、私はなんて言ったの?」
「その後に唯は「それに、私たちは恋人なんだから、一緒にいるのが当たり前なんだよ~」
って言ったんだ。別に告白してもなかったし、された覚えもなかったから、梓はびっくりして
たな。まあ、でも、それもいいかなって、梓は考えたって言ってたな。それほど、唯と梓は
一緒にいたからな。で、2人は恋人として付き合うようになったんだ。まあ、唯に言わせれば、
高校時代から恋人だったって言ってたけどな」
私ってなんなんだろ・・・・・。
「で、2人は付き合うようになったんだが、放課後ティータイムの仕事も忙しくなってきてな。
それで、グループとしてだけじゃなく、1人で仕事も入るようになったりしたんだ」
「それはいいことだね」
「・・・・・・・・・・・本当にそう思ってるのか?」
「ほえ?どうして?」
「・・・・・・・・・・まあ、いいや。続けよう。で、当然、唯と梓が別々に仕事が入ることもあるわけだ」
「そうだろうね」
「それを聞いた唯は、「嫌だ~、あずにゃんと一緒がいい~」と駄々をこねたわけだ。まあ、気持ち
が分からないわけじゃないけど、こればかりはこっちの都合で動くわけじゃなし。梓の説得で
納得はしてくれたけど」
「ごめんなさい」
身に覚えはないけど、なんとなく言いそうだし。
「まあ、澪は怒ってたけどな。プロの自覚が足りないって」
そうだろうね。


「それで、梓は可愛いしな。ソロでの仕事も多くなってきた。当然に家に帰る時間も遅くなって
来るわけだ」
「そうだろうね。さすがはあずにゃん」
「唯も仕事がないわけじゃなかったけど、「あずにゃんとの時間を大切にしたいんだ~」って
言ってあまり仕事を取らなかったんだ。さっきも言ったけど、梓は仕事が多くなってきた、
そこで問題が起きたんだ」
「問題?」
「ああ、それはな・・・・」
~回想~
「ただいま~」
「・・・・・・・・・・・・」
「どうしたの、唯?機嫌悪そうだけど」
「むぅ~、今日は10時に帰るって言ったのに、今、11時だよ。1時間も遅れたんだよ」
「あ、そう言えば、遅くなるって連絡入れるの忘れてました。ごめんさい、唯」
「ごめんじゃないよ。いつも遅れるなら連絡入れてって言ってるじゃん」
「だから、謝ってるじゃないですか」
「謝ってすむ問題じゃないよ。・・・・・・・・まさか、浮気じゃないよね」
「し・ご・とです!」
「・・・・・・・まあ、いいや。そうだ、明日のこと覚えてる?」
「明日?」
「もう、やだな~。明日は私達の恋人記念日だよ~。2人でどっか旅行に行こうって約束
したじゃない」
「・・・・・・・・・・ああ、しましたね。でも、無理ですよ」
「・・・・・・・・・え、どうして?」
「どうしてって、仕事ですよ。どうしても外せない仕事ですし」
「ひ、ひどいよ、あずにゃん!私はこの日のために仕事をキャンセルしたのに!」
「また、そんなことして・・・・・・。そんなことで仕事をキャンセルなんてしてたら仕事来なくなります
よ。今は大事な時期なのに・・・・・」
「私にとって、仕事よりもあずにゃんとの時間のほうが大事なことなんだよ!」
「そんな自信満々に言われても・・・・・・・・・」
「とにかく、明日は大切な日なんだよ。何とかならない?」
「無理ですよ」
「・・・・・・・・・・・・分かったよ。じゃあ、いつくらいに予定は空くの?」
「しばらくは無理ですね。申し訳ないですけど」
「・・・・・・・・・あずにゃんは仕事と私、どっちが大事なの?」
「なんかよく聞く質問ですけど、比べられるものではないですよ、どっちも大事ですし」
「ど、どうしてそこで私って言ってくれないの、あずにゃん!」
「唯って言ったら仕事休めっていうでしょ。私を待ってくれているファンがいる以上簡単には
休めませんし」
「仕事、仕事ってさっきからそればっかり!本当は浮気してるんじゃないの?」
「なっ!?」
「そうだよ、最近は仕事、仕事って言って、今日みたいに帰ってくるの遅いし、連絡もないし」
「だ、だから、仕事だって言ってるでしょ!」
「仕事ね、浮気も仕事ですか」
「・・・・・・・・・・」
「最近冷たいんだよ、あずにゃんは」


「・・・・・・・・・・・・・もういいです」
「だいたい、あずにゃんは・・・・・・・・え?」
「もういいですって言ったんです。もう出て行きます!」
「えっ!ちょっとあずにゃん・・・・・・」
「だいたい、私は唯と付き合いたくて付き合ってたわけじゃなくて、勝手に恋人扱いされて付き
合ったんですから」
「そ、そんな言い方しなくてもいいじゃない!ひどいよ、あずにゃん」
「ひどいのはどっちですか!」

「それで、そのまま、梓は出て行ったんだ。それから、唯は何度か謝って仲直りしようとしたん
だけど、梓の方が許してくれなくてな。そのまま、別れちゃった訳だ」
「・・・・・・・・・・そ、そんな」
やっぱりこの世界はおかしいよ。こんなのってないよ。
「それが6ヶ月くらい前の話だな。で、その影響が放課後ティータイムの活動にも出てな。
結局、梓と澪が抜けることになったのが最近だな」
「で、残った三人でこれからどうしていくかを考えようってことで今日、集まったのよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「やっぱり、聞かせない方が良かったんじゃないかしら、りっちゃん」
「もう遅いよ、ムギ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・信じない」
「え?」
「私は信じない、この目であずにゃんに会ってちゃんと話をしてくる。そうすれば、これは間違い
だって分かるはずだもん」
「・・・・・・・お、おい、唯」
「じゃあね、りっちゃん、ムギちゃん」
「ま、待って、唯ちゃん」
二人の止める声を無視して、私は飛び出した。

こんな訳の分からない世界にいる私でも運はいいらしい。あてもなく、飛び出したけど、すぐに
あずにゃんを見つけることが出来た。そして、澪ちゃんも一緒だ。これは心強い。きっと私を
助けてくれるよね。
「あ、あずにゃ~ん」
「ん?・・・・・あなたは!?」
「あずにゃ~ん」
私はいつもギュッと抱きしめようとした。でも・・・・。
「また来たんですか、あなたは。いい加減しつこいですよ」
「しつこいって。私はただちょっと話を・・・・」
「なあ、唯。いい加減しつこいんじゃないか。梓はもう唯と会うのは嫌なんだよ」
なんで、今日始めて会ったのにそんな言われ方をされなきゃいけないの・・・・・。
「か、関係ないじゃない、澪ちゃんには」
「関係なくありません。だって澪は・・・・・私の恋人なんですから」
「や、やめろよ、梓。恥ずかしいだろ」
「・・・・・・・・・・・・・え?い、いつから」
もう訳が分からない。
「唯と別れてすぐだったかな。私はずっと、梓が好きだったんだけど、唯と仲がよさそうだった
から身を引いてたんだ。それで、唯と別れて、放課後ティータイムの内部が大変になって私
は梓の方についたわけだ。まあ、それがきっかけかな」
「・・・・・そ、そんな。もういやだよ~」
「あ、唯」
「ほっときましょう、澪。それより、買い物の続きを・・・・・」




「もう嫌だよ、何なんだろ、この世界は・・・・・」
今、私はあずにゃんとゆいあずとして練習した河原に来ている。正直もうどうしたらいいか
ぜんぜん分からない。
「大丈夫?」
「ん?」
ふと気づくと目の前に女の人が立っている。
「あ、大丈夫です、気にしないで下さい」
まあ、今の私は泣いてるから、ぜんぜん大丈夫って感じには見えないだろうけど、今は誰
とも話したくない。
「そんなに泣いてるのに?まあ、ショックだよね。7年前の私には」
「そうだよ、 7年前の私にはショックな世界だよ。分かってるなら、ほっといて・・・・・・ん?」
よく見ると、その女の人は私と同じくらいの女の人でどこかで見たことあるような顔をしているって
いうか・・・・・。
「わ、私が目の前にいる!」
「やっと気づいたの。まあ、そんなに泣いてたら気付かないのも仕方がないか」
「ね、ねえ、この世界はなんなの?昨日まで18歳だったのに、どうして急に25歳になってるの?
どうして、私が2人いるの?それからそれから・・・・・・・・・・」
「まあまあ、落ち着いてよ」
「これが落ち着いていられないんだよ!」
「そうだろうけどさ。もうちょっとお話したいんだけど、仕方がないかな。じゃあ、目をつぶって」
「それで何とかなるの?」
「まあ、いいから」
仕方がないからつぶってみる。
「じゃあ、開けて」
「これに一体どんな意味が・・・・・・・・・・ってあ!?」
私が目を開けてみると、そこは真っ暗な空間でその中に光の道みたいなものがある。
「ねえ、これって・・・・・」
「この光の道はね、あなたの可能性なんだ」
「可能性?」
「そう。ここが18歳のあなたの位置」
未来の私は光の道を歩いていく。私も後れないように付いていく。
「す、すごい。道が分岐してるよ」
「今、あなたが見てきた世界もこの可能性の一つ。あなたが頑張ればこんな嫌な世界も減って
幸せな世界が増えていくんだよ。たくさんある世界の中にはあずにゃんと結ばれる世界もある」
「そうなんだ。で、でもどうして私にこんなものを見せるの?」
「私は嫌な世界が一つでも減ってくれればって思うんだよ。私みたいに嫌な思いをする私が
減ってくれればってね」
「え!?」
「こんな嫌な世界を見せて、嫌な世界に行くことが一つでも減ってくれればって思ったんだよ。
さあ、もう時間だよ。最後に一つ約束して。頑張って幸せな世界に行ってね」
「え、待ってよ。私みたいって?あの世界の私ってあなたなの?もう時間って?」


「頑張ってね、過去の私。さようなら」

「待ってよ、未来の私!・・・・・・・・あれ?」
起きてみると私はベットにいた。ピピピピピピピピピピって目覚ましも鳴ってるし。
「今のって、夢なのかな・・・・・・・もしかすると!?」
私は急いでタンスの中や自分の顔を鏡で見てみる。でも、昨日と同じだし、顔だって幼い。
              • これがいいことかは分からないけど。
「お姉ちゃん、もう行くの?まだ、待ち合わせには早いんじゃない?」
「大丈夫だよ。早く着いても待てばいいし。じゃあ、いってきます」
「いってらっしゃい」
あれが夢だったのかどうかは分からないけど、最後に見たもう1人の私の悲しそうな顔が
印象に残っている。私は頑張って幸せになろう。
「おまたせ~、あずにゃ~ん」
「早いですね、唯先輩。まだ、30分前なのに」
「そういうあずにゃんだって。私より早いってことは30分以上前には来てたってことだよね」
「わ、私は後輩としてですね。先輩を待たせないようにしなきゃって」
「テレッちゃって。あずにゃんは可愛いね~」
「も、もう!行きますよ、唯先輩」
「そうだね、行こうか、あずにゃん」
ギュッと、手をつなぐ。見ててね、悲しい世界の私。私はあずにゃんと幸せになってみせる。
だって・・・・・・・・・・。
「あ、あの手を離してくれませんか」
「えっ!?ご、ごめん。嫌だったかな」
私は手を離す。
「別に嫌とかじゃなくて、ちょっと強く握りすぎて痛かっただけで・・・・・・。そんなに悲しそうに
しないで下さい。・・・・・・・・ハイッ」
「ど、どうしたの。手なんか出して。ハッ、そ、そんなにお金ないよ」
「もうっ!変な冗談言わないで下さい。手をつなごうってことですよ。・・・・・・・・・・嫌ならいいです
けど」
「冗談だよ~。そんなに怒んないでよ」
私は再び手をつなぐ。この手を離さないように。だって、約束したもんね。幸せになるって。
「だから、痛いですよ、唯先輩」
「あう~、ごめんね~、あずにゃん」
ちゃんと、約束は守るからね、悲しい世界の私。




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最終更新:2011年05月10日 23:05