うーん……、今年もやってるかなぁ~?
あ、やってた♪
「お~じさんっ!」
「おっ!今年も来たなぁ~」
「うんっ♪」
「あれ?二人はどうしたんだい?」
「もう少しで着くから、先に行っておじさんの所で待ってて~、だって」
「そっか~、人気者は大変だねぇ」
人気者かぁ……
確かに、テレビに出たり、ランキングに入ったりしてるけど……
「でも、家じゃ全然かっこよくないよ」
「ん?唯ちゃんの事かい?」
「そ。おかーさんはきちんとしてるんだけどね~、ママはゴロゴロしてるばっかりなんだよ~」
「ハハッ、そりゃ確かに格好良くは無いな~」
「でしょぉ~」
「……でもね、唯ちゃんもやる時はやるんだよ」
「……お仕事以外で?」
「あぁ。……そうだ、ちょっとだけお話をしてあげようか」
「お話?」
「絢音ちゃんが来るちょっと前に、この
夏祭りで二人に起こったお話だよ。さ、こっちのテーブルに座りな。今ジュース持ってくるから」
かっこいいママねぇ……
本当かなぁ?
# 家族 #
―さて……と、じゃぁ始めるぞ
あの日、二人は初めてこの祭りに来たんだ
近所に住んでいたから祭り自体は知っていたらしいんだがな―
「おばさん!ヤキソバ二つと生中にカシスオレンジ!!」
「はいよっ!!」
「……さっきの人、大丈夫かなぁ?」
「ちょっと擦りむいただけだから、大丈夫じゃない?」
「なら良いんだけど……」
「はい!生中にカシスね!ヤキソバはもうちょっと待ってね」
「ありがとうございまーす」
「で?擦りむいたとか何とか言ってたけど、大丈夫なのかい?」
「あ、私は平気なんですけど、ぶつかった男の人が……」
「ふぅ~ん……。ま、そんだけ大きいの持ってるんだから気をつけないとね」
「はい……気をつけます……」
「……ま、相手もとやかく言ってこなかったんなら大丈夫だろうよ、そんな事気にしないで祭りを楽しみな~」
「は~い、そうしま~す。梓も、ねっ」
「……うん」
「おーい!ヤキソバ上がったよー!!」
「はーい!!じゃぁちょっと待っててね、今持ってくるから。今行くよー!!」
「……結構活気あるんだね~。出店も揃ってるし」
「ね~。去年も来れば良かったなぁ~」
「しょうが無いよ、去年は仕事が立て込んでたし……丁度オランダ行ってたし」
「あ、そっか~。……あれからもう一年か……」
「だね……」
「へい!ヤキソバ二人前お待ち!!」
「おぉ~!!美味しそう~。では……」
「「いっただっきまーす!!」」
「ところであんた達は
これからどうするんだい?」
「あ、まだ奥の方……境内とか全然見てないからそっちに行こうと思ってるんですけど……」
「コレがあるんで、どうしようかなぁ~って」
「デカいのは仕方ないさ。なんたって射的で何年も落とされなかった特等だからねぇ~」
「そんな長い間当たってなかったんですか!?……相変わらず唯は強運だねぇ」
「えへへ~、それほどでも~」
「なんならそれ預かっておこうか?」
「え?良いんですか!?」
「あぁ。そのかわり、取りにくるの忘れたら私らがが貰っちゃうけどね~」
「忘れやしませんよ~。……じゃぁ梓」
「うん。おばさん、アイルーお願いします」
「はいよー。じゃぁ楽しんでおいでー!」
「「行ってきまーす!!」」
―『……今のママと変わりない気がするんだけど……』
まぁまぁ、肝心なのはこれからだよ―
―二人が店を出て行ってから……そうだなぁ、小一時間……いや二時間位か?
まぁ、それくらいの時間が過ぎた時にタクから……
あ、タクってのは、チョコバナナ売ってる……そうそう、あの黄色メガネの
んで、……えーっと、あ、そうそう
タクのヤロウから電話がかかってきてな
「境内の方で二人組の女の子が男共に囲まれてるそうっす。これからちょっと見て来やす」
「……その二人組の容姿ってわかってるのか?」
「えぇっと……ドンナカッコシテタカワカル?ワカル!ジャァオシエテモラエル?……髪の毛が茶色……それと黒……どっちも小柄で……」
「もしかして、浴衣が白地に赤紫の朝顔と紺地に花火の二人組か?」
「ちょっと待ってください。……ユカタノガラッテサァ……ウン、ジャァモウヒトリハ……ソウ、アリガト……その通りです。あの、知り合いですか?」
「さっきここで飯食ってた客だ。よし、俺も今から行くからタクは先に行ってろ!」
「了解っす!!」
それで俺も慌てて境内まで走ったんだ
そしたらな……
「お・じ・さんっ!」
「ぬぉぅぁっ!?……なんだ、唯ちゃんか。急に話しかけるなよ、心臓に悪いじゃないか」
「話に夢中になってたおじさんが悪いんでしょぉ~。……で、何を話していたのかなぁ?……随分と懐かしい事を話してた気がするんだけど」
「あ、あぁ。絢音ちゃんが唯ちゃんの事をだらしないって言ってたから、つい、な」
「もぉ……話すのは構わないけど、出来ることなら私達が居るときにしてほしかったな。ね、梓もそう思うでしょ?」
「うん……出来れば、ね」
……おじさんってば、なんでそんなにうろたえてるんだろ?
そんな変な話しなのかなぁ?
「ねぇ、おかーさんにママ、おじさんが話そうとしてた事って……変な話しなの?」
「え?あー、変じゃないけど……唯、どうする?」
「……いいんじゃないかなぁ、もう絢音も中学生なんだし」
「……そうだね」
……中学生ならオッケーな話しって……一体何!?
「でも、続きはお祭り楽しんでからにしようか、……出来れば当事者全員揃った所で」
「それもそうだな。……よし、んじゃぁ祭りが終わった後、ここで三瀬の連中が晩飯食べるからその時にするか?」
「そうなの?じゃぁその時で。梓も絢音も良いよね?」
「良いんじゃないかな」
「私もそれでいいよ~」
本当は今聞きたいけど……まぁ、我慢するか
「じゃぁ……先ずはお祭り楽しんでこよう!」
「「おー!!」」
「それじゃ、おじさん」
「おぅ!楽しんでおいで!」
「「「はーい!!!行ってきまーす!!!」」」
♪
「はぁ~、楽しかったぁ~」
たこ焼きも、綿飴も、鯛焼きも美味しかったなぁ~
「まぁ、絢音が楽しかった分、大変な思いをしている人がここにいるんですけどね……っと」
「えへへ~、ママゴメンねぇ~」
「ま、たまには娘の荷物持ちするのも良いんじゃない?普段楽してるんだし」
「しょ、しょんなぁ~」
まさか射的で特等当たるとは思わなかったなぁ~
輪投げもいっぱい入ったし
……もしかして、私って天才!?
なーんて、たまたまだよね、うん
「……あれ?おじさんの所……閉まってるよ」
「あぁ、もう終わりの時間だからよ」
「入ってもいいのかなぁ?」
「私達は招待されてるから大丈夫だよ~……っとと」
では、遠慮なく……
「たっだいま~!おなか空いたよぉ~!」
「おかえりー!!もう少ししたらみんな来るから、適当に座って待っててくれ!」
「はーい!!お母さん、ママ、あそこに座ろっ」
「はいはい、じゃぁ先に座っててね。一人荷物を抱えているんだから」
「あずさぁ~、あやねぇ~、ちょっと待ってよぉ~」
「おぉっ!?なんだいなんだい、また特等取ったのかい?」
「今年は私じゃなくってぇ……よいしょっと、絢音が全部取りました~!……ハァ、重かったぁ~」
「ご苦労様。……んーと、おじさん、何か手伝いますか?待っているのもアレなんで」
「そうだねぇ……じゃぁおつまみ作るの手伝って貰えるかい?」
「いいですよ。おばさーん、エプロン借りますねー!」
そう言うと、お母さんはエプロンを付けて鉄板の前で何かを炒め始めた。
……いっぱい歩いて疲れてるはずなのに……凄いなぁ
それに比べてママは……ってあれ?
「……よっこいしょっと。おじさん、私も手伝うよ」
「そうかい?疲れてるんだから休んでてもいいんだよ?」
「んー、でもただ座ってるのも悪いし」
「そっか。んじゃぁ……」
意外だった。
ママはいつもゴロゴロしてるから、てっきりここでも椅子でだらーっとするんだと想ってた。
ぷぅ……ママがそんなんじゃ私も手伝わないとおかしい感じじゃないのさぁ
「おーじさんっ!私も何か手伝いたい!」
「ん?絢音ちゃんもかい?じゃぁ……お!タク!!いーところにきた、ちょいと絢音ちゃんに配膳手伝って貰うから外のビール二・三個持ってきてくれ!」
「じゃぁ私はテーブル拭いとくね!」
「頼んだよー!」
♪
「えー、今年も無事に祭りを開催することができました!……後は省略!みんな、お疲れさん!!カンパーイ!!!」
『カンパーイ!!!!!!!!!!』
「ンク……ンク……ぷはぁ」
「絢音、もうちょっと女の子らしく飲んだ方がいいんじゃない?」
「えぇー?だってママもやってるよぉ~?」
「ママはいいの、もう大人なんだし」
「……ぶぅ」
「まぁまぁ、いいじゃんそれくらい」
「でもさぁ」
「絢音、お母さんはああ言うけど、実は高校生の時にね……」
「わっわっ!そ、それは言わなくてもいいのぉ!」
「……ママ~、お母さん高校生の時に一体何したの?」
「ん?絢音と同じ事、コップの中のミネラルウォーターを一気飲みした時があってね……」
「ふぅ~ん……そうなんだぁ~」
「あぅぅ……」
「じゃぁ、私がさっきみたいにしても問題ないよね~、おかーさん♪」
「い……いえす、まいどーたー……」
ヘヘッ、お母さんの弱点久しぶりにみーっけた♪
さーってと、何から食べようかなぁ~?
♪
ンー!おなかいっぱーい♪
……あ、もう十時過ぎてる
そう言えば……話しっていつするんだろ?
「ねぇママ……」
「ん?……あぁ、もうこんな時間か、じゃぁそろそろ帰る?」
「そうじゃなくって……お話し、いつするの?」
「あ……そういえばするって約束してたね。じゃぁ、……ちょっと待ってて、当事者集めてくるから。梓」
「うん。じゃぁ私はおじさん呼んでくるね」
「頼んだよ~」
当事者ねぇ……
何かの事件にでも……ってそういやさっき囲まれてたとか言ってたけど……
お、戻ってきた
「お待たせ~」
「みんな連れてきたから始めよっか~。じゃぁ先ずは私が射的で特等取った辺りから話すね……」
―あの時、私達は久し振りに味わう夏祭りと、射的で特等取れた事の喜びでちょっとはしゃぎすぎてたんだよね―
「いやぁーん、アイルーかわいぃ~。唯、ありがと~♪」
「えへへ、どういたしまして……てゆーか、射的でホントにこんくらいのが取れるとは思わなかったよ~」
「それを取っちゃうんだから、唯ってば天才!……っとと」
「ってーっ!!」
「す、すみません!大丈夫ですか?」
―嬉しくて周りをちゃんと見てなかったお母さんが、男の人とぶつかってその人を転ばせちゃったの―
「あ、あぁ。ちょっと擦りむいただけだし。……でも、ちゃんと前見て歩いてくれよな」
「は、はい!本当にすみませんでした!」
―その時はそれで終わって、男の人は奥に、私達はここに向かって歩き始めたの
『そこでさっきおじさんがしてた話しに繋がるんだね』
そう。そしてお店を出た私達は露天を流しつつ境内に入ったの―
「唯、ゴメン。ちょっと休ませてもらえる?」
「あ、うん。……足首つらい?」
「ちょっとね……いつもの靴じゃないし、しょうがないかな~」
「ちょっと長歩きしちゃったもんね~。……あ、あそこ、座れそうだよ」
「じゃぁそこで一休みしてるね」
「何か飲み物でも買ってくる?」
「あ、じゃぁ
かき氷食べたいな、イチゴ味の」
「りょうかーい」
―そして、私がかき氷を買って戻ってきたときに、事件が起こったんだ―
「お待たせ~。……って」
「あぁん?誰だお前」
「あ、アイツですよ、一緒にいた女ってのは」
「ほぉ、そうか……」
「……あの、あなた達は……ってあぁっ!さっきの!!」
「どうやらちゃんと覚えていたらしいな……」
―そこにいたのは梓が怪我をさせちゃった人を含めた数人の男達。しかも何故か皆殺気立ってたんだ―
「ケンジがなぁ、物凄く痛がってんだよ。な?」
「アニキ~、物凄く痛いッスよ~」
「……痛そうじゃないじゃん」
「あぁん?怪我させといてそんなん言い方すんのかぁ?」
「……」
「け、ケガをさせたのは私なんだから、唯は関係ないでしょ!」
「いんや、大アリだぜ。なんせ一緒に居たんだからなぁ」
「……じゃぁ、どうすればいいのさ」
「あぁ、ちょーっとだけ俺達に付き合ってくれれば許してやんよ」
「……嫌だ、って言ったら?」
「そんな事言わせねぇよっ!!オラ、こっち来いや!」
「な、ちょ、ちょっと!あ、コラァッ!!そこの二人!!梓に手を出すなぁっっ!!!……もぉ、いい加減にぃ!離しなさいよっっっ!!!」
「おぉ!?女にしちゃ力あるじゃねぇか。俺の手振り解く女は初だぞ」
「あ、そ」
「だが、俺が本気で掴んだr」「あぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」
「な……なんだよ、急に大声出しやがって」
「アニキ!この二人って!!」
「なんだぁ?カズ、見覚えでもあるのかぁ?」
「見覚えあるもなにも……この二人って『ゆいあず』ですよ!」
「なん……だと?おい、お前ら本当にそうなのか?」
「……そうだよ。なんならサインでもしてあげようか?」
「んなもんイラネ。別にファンじゃないし」
「アニキ~、俺一度で良いから芸能人とヤりたかったんスよぉ」
「そうかそうか。じゃぁ……お二人さん、俺達と一緒にイイコトしようぜぇ」
「お断りします。だから梓を離してください」
「イヤだね、折角お近づきになれたんだしぃ~?」
「……あ!思い出した!!アニキ、梓の方は簡単に連れていけますぜ」
「そうなのか?」
「はい!確かどっちかの足を随分前に痛めてて、今でも疲れると痛みがでるってウィキに書いてあったんです。だから……」
「や、ヤダ!やめてぇぇぇーーー!!」
「梓に手を出すなぁぁぁぁーーーーー!!!!!」
―お母さんが蹴られそうになるのを見た私は、リーダーの脇をすり抜けて急いでお母さんの下へ走ったの―
「……んで?それからどうしたの?」
「えっとねぇ……そこから先はママ覚えていないんだよね~」
マジっすか!?
ここまで盛り上げといて?
「だから、続きはお母さんにお願いしよう。梓、頼むね」
「うん……じゃぁ、続き話すね……」
最終更新:2012年01月01日 13:20