「禁止令」

唯「あ~ずにゃ~ん♪」ギュー
梓「もう、そろそろ離れてください!」
唯「え~、もう少し~♪」スリスリ
梓「…本当に少しだけですからね?」

律「なあ、唯、梓」
唯「あ、りっちゃん」
梓「どうしたんですか?」
律「さっき私たち3人で話し合って決めたことなんだけど」
唯「何なに~?」

律「お前らは明日から1週間、お互いに会うことも、連絡取ることも禁止だ」

唯「へぇー…え?」
梓「え?」
律「そういうわけだから、ちゃんと守るように!」
紬「ごめんね、2人とも…」
唯「ちょちょちょ、ちょっと待ってよりっちゃん!ムギちゃんも!
  あずにゃんに会うのも連絡するのも禁止って、どういうこと!?」
律「どういうことも何も、言った通りだ」
梓「ちょっと待ってください律先輩、いきなりそんなこと言われてもワケが分かりません!」

澪「ほら律、ちゃんと順を追って説明しないと混乱するだろ」
唯「澪ちゃん!これはいったいどういう…!?」
澪「唯、私たちはもうすぐ卒業だ。4月からは大学に通うことになる。でも梓は高校生のままだ。
  そうなると、今みたいに毎日のように会うことはできなくなるだろ?」
梓「う…」
唯「た、確かにそうだけど…でもそれがどう関係するの?」
澪「お前、いつも梓に抱きついて『あずにゃん分補給』とか言ってるだろ。
  修学旅行のときも、数日会わなかっただけで『あずにゃん分が足りない』とか言ってたよな?
  そんなことで、大学生活やっていけるのか?」
梓「確かに、言われてみれば心配ですね…」
唯「ぅ…だ、大丈夫だよぉ…」
澪「本当に大丈夫かどうか、今のうちに1週間訓練してみることにしたんだ。
  悪いけど、お前のためなんだ。我慢してくれ」

唯「あうぅ、そんな殺生な…しょうがない、1週間は電話やメールで我慢するよ…」
律「ところがどっこい、残念ながらそれもダメなんだなー」
唯「えぇぇぇぇ!?な、なんで!?」
律「考えてもみろ、今度は梓が受験生になるんだぞ。
  受験勉強してる所にお前が電話やメールしまくったら迷惑だろ」
梓「それはまあ…程度にもよりますけど」
唯「しょんなぁ~…邪魔にならないようにするからそれだけは勘弁してよぉ…」
律「その辺も、今回の結果次第だ。
  とりあえずこれから1週間、梓との接触や連絡は一切禁止!部長命令だ!」

唯「ふぇぇぇ、そんなご無体なぁ…。
  ム、ムギちゃん!ムギちゃんは反対してくれたんだよね!?」
紬「ごめんなさい、唯ちゃん…。
  かわいそうだけれど、今回はりっちゃんたちの言うことももっともだと思うの」
唯「しょ、しょんなぁ…」
紬「私も、唯ちゃんと梓ちゃんが仲良くしてる姿を見られないのは寂しいし、辛いわ。
  でも、4月からはどの道そうなってしまうもの。
  だから、今のうちに慣れておくことも必要だと思うの。
  私も頑張るから、唯ちゃんもひとまず1週間、頑張ってみて?」

唯「うううう…あ、あずにゃん!あずにゃんはどう思う!?
  1週間会うことも連絡する事も出来ないなんてイヤだよね!?」
梓「…いえ、私は別に平気ですけど?」
唯「えぇ!?」
梓「先輩方の言う通りです。唯先輩はいつも私にベタベタくっつきすぎです。
  4月からは私がいない生活が始まるのに、そんなことでどうするんですか。
  今のうちに私に依存するのをやめておかないと、大変なことになりますよ」
唯「そんなぁ…」
梓「先輩のためを思ってのことです。
  私は別に1週間くらい、唯先輩と会ったり連絡取ったりしなくても何とも思わないですから」
唯「ひ、ひどぉい!?冷たいよあずにゃぁん!
  冷たいアイスは大好きだけど冷たいあずにゃんはイヤだよ!」
梓「ワケ分かんないこと言ってダダこねないでください、もう大学生なんですから…」

律「とにかく、明日から1週間だ。憂ちゃんにも連絡してあるから。ま、せいぜい頑張れ、唯」
唯「うぅ~、あずにゃん分欠乏症で死んじゃうよぉ…」
梓「死にません。唯先輩は少し我慢を知るべきです。頑張ってください」
唯「あずにゃぁぁぁ~ん!!」

澪「…ま、頑張るのは唯だけじゃないんだけどな」
律「そうだな。むしろ頑張らなきゃいけないのは…」
紬「わ、私も頑張らないと…」
澪「ムギは何を頑張る必要が?」
紬「え?ゆいあずが見られない間はりつみおで補ってくれるの!?」
律「言ってないからな!?」

1週間後・部室

唯「つ、ついにこの日がやってきた!あずにゃん解禁日が!」
紬「嬉しそうね、唯ちゃん♪私もだけどね♪」
唯「そりゃもう!この1週間、あずにゃん分不足でどうにかなっちゃうんじゃないかと思ったよ!」
澪「そういう割には、何だかんだで結構しっかりやってたんじゃないか?」
律「もっとヘロヘロになって、いつも以上にダメダメになるかと期待してたのにな」ニシシ
唯「むむ、ひどいよりっちゃん!
  あずにゃんと会えなくなってもしっかりやれるんだってところを見せて、
  あずにゃんを心配させないように頑張ったんだからね!」フンス
紬「偉いわ、唯ちゃん!」
唯「えへへー…でもさすがにもう限界だよぉ。禁断症状で身体が震えちゃうよ!」ブルブル
澪「あずにゃん分って薬物か何かなのか…?」
紬「私も限界だわ…早くゆいあず分を…」ガクガク
律「ムギは別の意味で重症だな…」
唯「あああ、もう待ちきれないよ!早くあずにゃん来ないかな!来ないかな!」ソワソワ

ガチャ

唯「あっ!あずにゃん来たぁぁぁぁ!!」ガタッ
梓「……」ツカツカ
律「なんか梓の様子が変だな…」
紬「ちょっと雰囲気が…」
澪「な、なんか怖い…」

唯「あっずにゃぁぁぁん!!1週間ぶりのあずにゃん分ほきゅ…」

ギュッ

唯「ふぇっ!?」
律「おおっ!?」
澪「なっ…!?」
紬「あらあら♪」

澪「まさか梓の方から唯に抱きつくとは…」
律「まったく想定してなかったわけじゃないが…」
紬「まあまあ♪」

唯「ど、どうしたの…?」

ギュウウウウウウ

唯「あ、あずにゃん…ちょっと苦しい…」
梓「………」ギュー
唯「あずにゃん…?」
梓「……ぐすっ」
唯「え…?あずにゃん泣いて…?」
梓「…ぃせんぱい…ゆいせんぱぁい……」ボロボロ
唯「わわわ、なんでそんなに泣いてるの!?私なんかしちゃった!?」
梓「ちがいます…ヒック、久しぶりに唯先輩の、グス、か、顔を見て、声聞いたら…
  会えた嬉しさとか、今までの寂しさとか…すん、色々こみ上げて溢れちゃって…」
唯「そんな、まるで10年ぶりに再会したみたいな…たった1週間だよ?」
梓「でも…でもぉ…唯先輩に抱きしめてもらうどころか顔も見られなくて、
  声も聞けなくて、メールすらできなくて…うぅぅ、寂しかったんですよぉ…」
唯「そうだったんだ…」ギュ
梓「最初は1週間くらい全然大丈夫って思ってたのに…
  3日もしないうちに寂しくて仕方なくなって…。
  家でも学校でも、いつもいつも唯先輩のことばかり考えて、
  憂や純に心配されるくらい、何も手につかなくて…。
  でも私がこんなに寂しがるって知ったら、唯先輩が安心して卒業できないから、
  頑張って我慢したけど…もう、もう耐えきれないですっ…!」ポロポロ
唯「そっかそっか…でもよく頑張ったね。いい子いい子♪」ナデナデ
梓「子供扱い…しないでください…」グスン

澪「2人とも1週間よく頑張ったな」
律「梓、これでよく分かっただろ?」
梓「ほぇ…何がですか…?」
律「自分がどれだけ唯にべったりだったのか、ってことがさ」
紬「自分でも気付かないうちに、梓ちゃんは唯ちゃんにすっかり甘えちゃってたのね」
澪「唯の面倒を見て支えてるつもりが、梓自身もかなりの部分を唯に支えられてたんだな」
唯「ふぇ?そうだったの?」
律「当の本人は自覚なしか…」
澪「まあとにかく、今回2人にこんなことをさせたのは、唯の訓練というだけじゃなくて、
  梓にも自分が唯に依存してる部分があることを自覚してほしかったからなんだ」
紬「辛い思いをさせちゃったみたいで、ごめんなさい。
  でも、今気付かないままだったら、
  この後もっと辛い思いをすることになっちゃってたと思うの。だから…」

梓「…皆さんの言う通りです。私、いつの間にか、すっかり唯先輩に甘えてました。
  唯先輩は私が何を言っても、どんな態度をとっても、変わらずそばにいてくれたから…。
  すっかり安心しきって、頼りきって、依存してたんです。
  でも、皆さんのおかげで自覚できました。
  4月からはもう唯先輩はそばにいないから…ちゃんと唯先輩離れしなきゃですね」
唯「ええっ!?は、離れちゃうの!?やだよ、やめてよ!」
梓「だって、唯先輩はもう、私がいなくても大丈夫そうじゃないですか。
  あとは私の問題ですから…」
唯「何言ってるの、そんなことないよ!
  私だってこの1週間、あずにゃんに心配かけたくなくて頑張ったんだよ!
  でも、ずっとずっとあずにゃんに会いたくて、声が聞きたくて、抱きしめたくて…
  辛すぎて今にも死んじゃいそうだったんだよ!
  さっきあずにゃんが部室に入ってきてくれなかったらどうなってたことか…」
梓「その割には元気そうだったじゃないですか」
唯「あずにゃんの顔を見た瞬間に嬉しくなりすぎて、辛かったことは全部吹き飛んじゃいました!」
梓「…くすっ、唯先輩らしいですね」

唯「えー、どういう意味?
  …ねぇ、あずにゃん。私たち、お互いにお互いがいないとダメみたいだね」
梓「ええ、そうですね」
唯「大学に行ったら、さすがに毎週会うとかは無理かもしれないけど…
  来られる時はここに会いに来ていいかな?」
梓「はい、来てください。私からも会いに行きたいです」
唯「メールや電話も、あずにゃんの迷惑にならないくらいにだけど、していいかな?」
梓「はい、してください。私からもどんどんしちゃいますから」
唯「ちゃんと受験勉強もするんだぞぉ?」
梓「唯先輩が言いますか、それを」
唯「えー、あずにゃんのいけずぅ…あはは♪」
梓「ふふ♪」

律「さて、今回の訓練の結果をどう見る?」
澪「そうだな…まあ、唯は結構頑張ってたし、梓も自分のことを自覚できたからな。
  目的は達成されたってことでいいんじゃないか?」
律「まあそうだけど…なんかこれからは、あいつらが前よりもっとイチャつくようになりそうだな」
紬「いいことじゃない!これから卒業までの間にたっぷり目の保養ができそうだわ♪」キラキラ
律「もう突っ込まないからな…ま、これで卒業後の心配事が減ったかな」
澪「そうだな。梓のことはもう唯にある程度任せて大丈夫そうだし」
律「とはいえ、梓は私らみんなの後輩なんだから、唯に任せっぱなしにはしないけどな!」
澪「ああ、それはもちろんだな」クス
紬「唯ちゃん、梓ちゃん…いいわぁ…♪」

唯「あずにゃん、これからもよろしくね!」
梓「唯先輩、こちらこそよろしくです!」

END


  • あずにゃんにも禁断症状が!? -- (あずにゃんラブ) 2013-01-08 00:41:16
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最終更新:2011年12月03日 22:32