(「ゆいのへや」.....久しぶりだなぁ.....)

あずにゃんさんや.....パジャマに着替えよう。ほいっ!」

「あ、私持って来てますよ.....って何ですかこれ。」

「あずにゃんがお泊りする時のために準備しておいたのです!」

「"マタニティ"って.....」



唯のベッドに横になる。


「今日はとっても楽しかったです。ありがとう唯さん。」

「楽しかったね~ずっと楽しく続いていけばいいなぁ~」

「そうですね.....唯.....さんと一緒なら.....」

「あず.....梓.....」

(私たちが名前を呼び捨てにして呼び合うのは.....まぁ.....その.....サインなんだよね.....)


___でもさすがに今日は無いよ。


「だめ.....みんないるんだよ?」

「ちょっとくらい聞こえないよ~」

「だめですっ!ちょっとがちょっとじゃなくなるんだから!」

「ちぇ~」

「くすっ.....明日、帰ってから.....ね?」

「うん♪がんばるよ!(キラキラ)」

「なんでそんなに目を輝かせてるんですか.....///」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



(......桜木町2丁目.....年の近そうな女の子がたくさん出入りしてる。
......あそこじゃないかな........あった。 ここだ。)


梓は唯の寮に来てしまった。 散々悩んで出した答えがこれだった。


唯先輩に会って、自分の本当の気持を伝えたい。

でも、やっぱり怖い。

これから先、黙っててもHTTとして、先輩後輩としての縁は続くだろう。
いや、むしろ「黙っているなら」。

今、このどうにも説明が付かない気持をどう伝えればいいのだろう。

そして拒絶されたら.....

ここに来ることについては唯に何も伝えてない。
大学から既に帰っていたら
唯が寮の外に出て来なければ会えない。

梓は賭けに出た。

もし、ここで会えたら、その時は覚悟を決めよう。
会えなかったら.....この気持は封印しよう.....と。


寮の正面玄関の右から少し離れた場所には
植え込みがあって、そこには小さなベンチがあった。

(ここなら正面玄関からは直接見えないし、
長くここにいたとしても怪しまれないだろう......。)

そう思った梓はベンチに腰を下ろした。

さて.....ここからは持久戦だ。
電車の接続があるギリギリまで粘る覚悟だった。

まだ少し肌寒い春。
不意にコートのポケットに手を差し込むと
(あれっ?.....これは.....)

唯先輩がくれた飴の包み紙が入っていた。

(私、捨てないでいたのか.....)


その時、賑やかな声が聞こえてきた。

「え~、だって澪ちゃんだってそう思ってたんでしょー!」

「思うか!大体、必修科目は必ず履修しなきゃいけないから必修っていうんだぞ。」

「いいじゃん。唯は火曜に受ければ。」

「唯ちゃん、火曜日の1講目も同じ科目あるのよ?」

「なんだ~!バイト入れちゃったから焦ったよ~!」

「つうか、考えてからやれよ.....。」

「えへへ......3日間だけだから、つい~」



(先輩方が卒業してまだ2週間程度しか経ってないのに.....
なんだろう.....この懐かしさは..........愛しくて泣けてくるよ.....

あ!?こっちに来る.....まずい.....)


梓は気付かれないよう植え込みの裏に回った。



「あー、やっぱりいいや。コンビニまで行くのめんどくさ。
そういや部屋に何かあったわ。」

「おい。まったく.....それなら最初から言え!」

「私、お菓子なら部屋にあるわよ?」

「おぉ、じゃ、ムギの部屋でお菓子食おうぜー!」

「唯、どうした?」

「う~ん.....」


4人は玄関に消えて行った。



(あぁ、中に入っちゃった.....)




「ただいまーっと。」

「..........。」

「.....さっきからどうしたの唯ちゃん。何かあったの?」

「あずにゃんの匂いがする.....。」

「はぁ?」

「何言ってんだ?」

「みんな先に部屋行ってて。わたしちょっと見てくる!」

「おい、唯っ!」

「まぁまぁまぁまぁまぁ、私たちは先に行って待ってましょ♪」

「5回言った.....」



唯は玄関を飛び出した。外は夕日がキラキラ眩しく輝いていた。



(きっと、さっきのとこだ.....)

ベンチの辺りに来た。誰もいない。


(おっかしいなぁ.....確かにあずにゃんの感じがしたのに.....)

よしっ!

「あーーーずーーーにゃーーーん!!どこーーー?」



大声で叫んでみた。

しかし、反応は無かった。



よ~し、もう一回っ!ふんす!



「あ~~~(うぐっ!?)」

「こんなところで大声出さないでくださいっ!」

「あっ!?あずにゃん!!やっぱりそうだ!!あずにゃんだ!!あずにゃん!!」

「はいはい。もうわかりましたからちょっと静かにしてくださいって!」

「.....なんでこんなところにいるのか.....な?」

「えっと.....それは.....その.....あっ.....ちょっとこっちに来てください!」

「えーー?あずにゃん.....?」



寮から5~60m離れた場所に小さな公園があった。



「いいですか?唯先輩、今から私が言うことをちゃんと聞いてください!」

「えっ?.....は、はいっ!」

「そして、ぜぇーーーーったいに先輩方には言わないでください。
いいですね?約束してください。」

「わ.....わかりました。約束します.....」

「そ、それじゃ言いますから、ちょっと後ろを向いててもらえますか?」

「ん~.....あずにゃん.....それは大事なこと?」

「.....それは......とっても大事なことです。」

「だったら後ろ向きでなんてダメだよ。ちゃんと私の目を見て言わなきゃ。」

「うっ.....そ、そうですね。確かにそうです。
じゃ、じゃあ、.....言います.....

私は.....唯先輩が.....好きです.....。
そ、それは先輩後輩とか、メンバーとしてでは無くて.....その.....」

続けようとしたが、胸が詰まってしまい、それ以上言葉が出て来なかった。
代わりに涙が溢れ出した。

「ほ........本当わぁ..........一緒にいて楽しくって.....温かくって.....
いつもぉ.....ぐすっ.....助けられててぇ.....うぅ.....ひっく.....
た.....たくさん悩んでぇ......こ.....ここに来れば.......」


ぎゅっ



「あずにゃん、ありがとね。
わたしもあずにゃんが大好き。
いっつも大好きって言ってたけど、
それは本当だし、今の気持もほんとだよ?

でもね.....そういうこと言ってあずにゃんに
迷惑かけちゃわないかなって思ってたんだ~
だから私もずっと言えなかったんだよ。
あずにゃんにこんなとこまで来てもらって.....言わせてごめんね.....」

「ゆひぃしぇんぱぁい......うわぁぁぁん.......」

「もう泣かないで、あずにゃん.....わたしたちずっとずっと一緒だよ.....」





(はっ!?夢?.....なんであの時の...............ふふっ.....うふふ.....)


「ふぇ?あずにゃん.....どしたの.....?」

「あ、ごめんなさい、起こしちゃいました?」

「あずにゃ.....さびしくないよ.....ずっと.....Zzz」

.....寝ぼけてたのね。

そう.........あれから唯さんと付き合い始めたんだよね。
先輩方に打ち明けた時はめっちゃ緊張したっけ.....。



___________________________


(某レンタルスタジオ)



「ふぅ・・・やっぱ、5人揃って合わせると
音の厚みが違うっていうか、ノリがバーン!って良くなるっていうか」

「そうだな、やっぱり梓のギター入ると音が締まるよな。」

「ありがとうございます!私も久しぶりに先輩方と演奏出来て嬉しいです!」

「梓ちゃん、前から上手かったけどもっとこう......キレが良くなったわよね~♪」

(ムギちゃんのバッグからいい匂いしてる.....)



「さて、そろそろ時間だな、帰る準備すっか。」

「あの.....先輩方.....ちょっと聞いて欲しいことがあるんですけど.....」

「なんだ梓?この律先輩にどーーーんと飛び込んで来いっ!」

「どうした?梓?」

「なぁに、梓ちゃん?」

「ほら.....唯先輩っ!」

「おおぅ.....よしっ!えっと.......じつは私とあずにゃんはお付き合いを
することになったのです!」

「おぉ、ゆいあずか?また演芸大会出るのか?」

「そうじゃなくてぇ~~それも出るけど。」

「.....つまり、唯ちゃんと梓ちゃんは交際を始めたってこと?」

「そうっ!ムギちゃん大正解~♪」

「えっ?」

「お.....あぁ?」

「うふふふ.....♪」


「.....こんな時に突然すみません。
皆さんとこうしてお会い出来る機会は少ないので.....。
私と唯先輩は女の子同士ですが、ちゃんとお付き合いをすることになりました。
皆さんに隠してコソコソするのはイヤだったんです。

..........すごく変なこと言ってると思います。
.....すみませんでした。」



「お、驚いた.....けど、いいんじゃないか。うん。」

「そ、そうだよなー、今までもべたべたくっ付いてたし。」

「良かったわね~、唯ちゃん、梓ちゃん、おめでとう~♪」

「いや、おめでとうって.....」



「私ね、あずにゃんが大好き。そしてみんなも大好き!
だからちゃんとみんなにお話しようって決めたんだ~
ゆいあずは永遠にゆいあずですっ!」



「よしっ!えっと.....コレか.....(ポチッ)
あ~、5号室ですけど、あと1時間延長して大丈夫っスかね?
あー、はいはい、おねがいしまーす!
もう一時間延長したぜ~!ここは澪の奢りだ!」

「は!?お前が出せ! .....まぁ、いいか......」

「うふふ.....そうね、それじゃ唯ちゃんと梓ちゃんの幸せを願って
みんなで演奏しましょう~♪」

「みんな......」

「みなさん......」

「なーにしみったれた顔してんだよ!
ふわふわ行くぞー!ワン・ツー・スリーフォー!!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「梓!また来いよ!」

「気をつけてな、今日は楽しかったよ!」

「唯ちゃん、ちゃんとエスコートしてあげてね。梓ちゃん、またね♪」

「みなさん、ありがとうございました!すっごく楽しかったです!
また演奏させてください!」

「おー!待ってるからな!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「.....唯先輩、どこに行くんです?」

「えっ?乗り換えのところまで.....かな。」

「いいですよ。ひとりで帰れます。」

「そんな.....あずにゃん.....冷たい.....」

「そうじゃなくって.....帰るの辛くなっちゃいますから.....」

「あずにゃん.....」

「だからここでいいです。家に着いたら電話しますから!」

「.....そう?」



_____ 到着します。白線の内側までお下がりください______




「今日はとっても楽しかったです!!..........唯先輩.....大好き..........」

「あ..........」


電車のドアが開いた。



「それじゃまた!」

「あずにゃん!!わたしも大!大!大好きだからね!!」

「声大きいです!」




バタン______ ゴトンゴトンゴトンゴトン_______



行っちゃった......

よし。あずにゃんのために私がんばるよ!



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


唯 「たっだいまーーー!」

律 「なんだぁ?ずいぶん早いな。」

澪 「乗り換えの所まで行かなかったのか?」

唯 「うん。ここでいいって。」

紬 「またすぐ会えるわよ....ね?」

唯 「そうだね、今度は私が向こうに行くよ。」

澪 「梓も早くここに来れればいいよな。」

律「おいおい、そうなったら私ら毎日、ラブラブの濃いーーの見せ付けられるんだぞ?」

澪 「梓はそんなんじゃないだろ!」

律 「梓はって.....」

紬 「唯ちゃんは見せつけてくれるわよね?」

唯 「がんばるよ!」


ぷっ.....なんだそれ.....アハハ.....ハハハハハ......





  • 唯先輩がんばってくれー!! -- (あずにゃんラブ) 2013-01-07 13:54:25
  • あずにゃん、頑張ったね -- (名無しさん) 2014-04-24 06:29:58
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最終更新:2012年06月07日 22:53