プルルルル・・・プルルルル・・・

ピッ

唯『もしもしあずにゃん?どうしたのー?』

梓『あ、唯先輩。すいません今日家に行くやくそあああぁぁぁぁぁぁそれ触っちゃダメ!!』

唯『あ、あずにゃん・・・?』

梓『す、すいませんこっちの話です。あの、今日唯先輩の家で練習する約束でしたけど
  ちょっと行けなくなっちゃいまして・・・』

唯『えぇぇー・・・なんでぇ・・・?』

そんなにしょぼくれた声を出さないでください。私だってすごく残念なんです。

唯『もしかして風邪ひいちゃったりとか?それならお見舞いに行くよ?』

梓『い、いえ違います。今日急に親戚がうちに来まして。なんか親同士で出かけなきゃならないけど
  小さい子供は連れて行けないとかでちょ、ちょっとそんなとこに登らないの!危ないでしょ!
  ・・・・・・すいません・・・えっとそういう訳で今日一日いとこの子の面倒を私が見なきゃいけないんです』

唯『へぇーあずにゃんのいとこかぁ・・・男の子?女の子?歳はいくつ?』

梓『えっと、五歳の女の子ですけど・・・』

唯『よし!じゃあ私があずにゃんの家に行くよ!いとこちゃんとも遊びたいし!』

梓『はぁ・・・やっぱりそうなりますよね・・・』

可愛いもの好きの唯先輩にとって小さな子供というのは大好物だ。
正直電話をかけた時点で先輩がうちに来ることになるだろうと予想はできていた。
まあ当初の予定どおり休日を唯先輩と過ごせる事は私にとっても嬉しいことなんだけど・・・
ギターの練習はできそうにないなぁ・・・
あと私が面倒を見る対象が二人になりそうでちょっと心配だったりもする。

梓『わかりました。じゃあお待ちしてます。一応ギターも持ってきてくださいね?』

唯『了解です!すぐに行くからね~♪』

ピッ

電話を切り、部屋の中をとてとてと歩き回っている我がいとこを後ろから抱きかかえて捕まえた。

梓「もうすぐ私のせんぱ・・・お友達が来るからね。いい子にしてなさいよー?」

いとこ「おねえちゃんのおともだち?」

梓「そう。唯先輩っていうの。仲良くしてね?」

いとこ「ゆいせんぱい・・・」

とは言えこの二人を会わせることに若干の不安もある。
唯先輩はああいう人だから初対面の相手にも物怖じしないし、相手が子供となればなおの事だろう。
対して我がいとこは少し人見知りするというか恥ずかしがり屋な面がある。
この子とは年に数回会っているが私に懐いてくれたのも最近になってやっとだった。

いとこ「・・・・・・・・・」

さっきまで元気に動き回っていた我がいとこは急におとなしくなってしまった。
知らない人が来ることに不安を感じているのだろうか。

―――――――――

ピンポーン

インターホンが鳴る。
唯先輩かな?いやいやいくらなんでも早すぎる。
唯先輩の家から私の家まで来るにはもう少し時間がかかるはずだ。
玄関に向かう私の後ろをいとこがとてとてとついてくる。

ドア「ガチャ」

唯「や、やっほー・・・あずにゃん、ケホッ、来たよー・・・」ハァハァ

・・・どれだけ急いで来たんですか。
息切れするほど慌てて来なくてもいいでしょう。

唯「だって時間がもったいなかったんだもん。早くあずにゃんといとこちゃんに会いたいし。
 ・・・後ろにいるのがいとこちゃんだね?はじめましてこんにちはー♪」

梓「あ、はいそうです。ほら、挨拶は?」

私の後ろにぴったりと張り付いて隠れている我がいとこに挨拶をするように促す。

いとこ「・・・こ、こんにちは・・・」

ちょうど私のお尻ぐらいの位置から顔だけをひょこっと覗かせて挨拶する。

唯「ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!か、可愛えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!
 ちっちゃいあずにゃんだ!ちびにゃんだ!ちびにゃん!!」

いとこ「!」ビクッ!

そのあだ名はどうかと思いますが。
まあこの子がちっちゃい私だというのは否定できない。
周りの人にも言われるし、自分でも確かによく似ていると思う。
顔立ちが似ている上に髪型まで私と同じように二つ結びにしている。
髪の長さは私ほどではなく結んだ髪は肩までも届いてないので
ツインテールと呼ぶには無理がある気はするけど。

唯「すごい!そっくりだね、あずにゃん!双子みたい!」

いやいや無理があるでしょう。年齢が一回り離れてますから。

梓「双子みたいなのは唯先輩と憂のほうでしょう」

確かにこの子と私はよく似ているが、平沢姉妹ほどであるとは思えない。

唯「えぇーあずにゃん達のほうが似てると思うけどなぁ」

梓「はいはい。まあ立ち話もなんですから、とにかく上がってください」

唯「ほーいお邪魔しまーす」

いとこ「・・・・・・・・・」

唯先輩をリビングに通し、私はキッチンでお茶の用意をする。
その間我がいとこは私のそばにぴったりと寄り添っていた。

梓「大丈夫だよ?ちょっと変わってるけどすっごく優しい人だから」

いとこ「・・・・・・・・・」

私のショートパンツの裾を掴み無言のままのいとこ。
どうやらファーストコンタクト時の唯先輩の興奮っぷりがちょっと怖かったようだ。
三人分のお茶とお菓子を持ってリビングへと戻る。

梓「お待たせしました」

唯「あ、美味しそうな匂いー♪ありがとうあずにゃん」

お茶をテーブルに置き、唯先輩の対面のソファーに腰掛ける。
相変わらず私にぴったりと寄り添って座るいとこ。

唯「あ、あはは・・・ゴメンね、ちびにゃん。私さっきおっきい声出しちゃって・・・」

どうやら我がいとこに警戒されているのはさすがに唯先輩でも気づいたようだ。
というかそのあだ名決定なんですか。

唯「あ、そう言えば自己紹介がまだだったね。えーと私、唯だよ。
 あずにゃ・・・梓お姉ちゃんのせんぱ・・・・・・・・・」ウーン・・・

なにやら考え込んでしまった。
おそらく、こんな小さな子に先輩後輩という関係を説明してもわからないだろうから
どういう関係だと言えば良いか、などと考えているのだろう。

唯「ねえ、あずにゃん。どういう関係だって説明すればいいかな?」

梓「お友達でいいんじゃないですか。私もさっきそう説明しましたし」

唯「うーん・・・お友達かぁ・・・・・・」ブツブツ・・・

なんだか納得しきれていない様子でブツブツと呟いていらっしゃる。

唯「うん、まあいいや。梓お姉ちゃんのお友達だよ。よろしくね、ちびにゃん!」

いとこ「・・・・・・ちびにゃんって、なぁに?」

唯「あだ名だよ。梓お姉ちゃんのあだ名があずにゃんだからちっちゃいキミはちびにゃん!
 ・・・・・・気に入らない・・・かな?」オソルオソル

我がいとこは無言で考えていたようだがしばらくしてフルフルと首を横に振った。
唯先輩の顔がパアッと輝く。
うちの家系は唯先輩にあだ名を付けられる運命なのだろうか。
そしてそのあだ名を受け入れてしまうのもまた運命なのか。

唯「えへへ♪じゃあ改めて・・・よろしくね、ちびにゃん!」

ちび「うん、よろしく。ゆい・・・せんぱい」

唯「えぇー、なんで先輩?」アハハ

ちび「だって、おねえちゃんがゆいせんぱいっていってたから・・・」

唯「ちびにゃんは先輩なんて付けなくていいよ?」

ちび「うん・・・わかった。じゃあ、ゆい」

梓「ちょっ・・・!ちょっと待ったぁ!せめて唯お姉ちゃんとか・・・」

唯「あはは。別にいいよあずにゃん。唯でいいからね?ちびにゃん」

ちび「・・・・・・うん!ゆい!」ニコッ

ゆ、唯先輩を呼び捨てにするなんて・・・!私ですらまだ夢と妄想の中でしか呼んだことないのに・・・!
ちくしょうちびにゃんちくしょう。

唯「えへへ。じゃあちびにゃん、こっちおいでー」

お互いの呼び方を決めたところで多少はちびにゃんの警戒が解けたと感じたのか
唯先輩がちびにゃんを呼び寄せた。
いつの間にか私もちびにゃんと呼んでいますがまあそれはいいです。
ちびにゃんは少しもじもじしていたが私のソファーを降りてとてとてと唯先輩のソファーに向かう。

唯「ほりゃ!捕まえたっ!」ギュッ!

ちび「にゃっ!///」

唯「あはは。にゃっ!だって。可愛いー♪あずにゃんと一緒だね。さすが双子ちゃん!」

梓「だから双子じゃないですって・・・」

唯「えへへーほっぺスリスリ♪」スリスリ

ちび「く、くすぐったいよぅ・・・ゆい、やめてよぅ///」ニコニコ

何がやめてよぅだ。そんなに緩みきった顔で言っても全く説得力が無い。
ホントは唯先輩に抱きつかれるのもほっぺスリスリされるのも嬉しいくせに。
素直に言えばいいのに。
あ、そう言えば私今日まだ抱きつかれてない・・・まあ別にいいんですけどね。迷惑ですし。フン
私なんかよりもっとちっちゃくてかわいいちびにゃんはさぞ抱き心地がいいんでしょうね。
ふんだ。唯先輩のばか。

それから数分後―――
スキンシップ効果なのか、はたまた二人の精神年齢が近いからなのかは定かではないが
唯先輩とちびにゃんはすっかり仲良くなっていた。
血縁者の私でもちびにゃんが懐いてくれるまで時間が掛かったのに・・・と、悔しがりはしない。
こういうことに関しては唯先輩は特別なのだ。勝負しようなどと思っちゃいけない。
そういえばほかの先輩方が言っていたが、唯先輩は動物にもやたらと懐かれるらしい。
なにかフェロモン的なものでも分泌しているのかもしれない。
さて、現在の状況はといえば唯先輩はソファーに仰向けに寝転がり
ちびにゃんはそのお腹の上にまたがるというマウントポジションのような体勢で遊んでいる。
二人がキャッキャウフフしているところを私はうらやま・・・ほほえましく見ていたのだが
ここで見過ごせない事態が起きた。

ちび「ゆい、おっぱいぷにぷにー」モミモミ

唯「わわっ!?///」

梓「!!!」

ではここであまりしたくないですけどうちの家系の身体的特徴について触れておきましょうか。
うちの母親の血筋というのはどうやらあまり胸が発育しないらしい。
私は・・・まだ伸び代があると信じていますが、私の母、そしてちびにゃんの母親である私の叔母も
あまり豊満な胸であるとは言えない。
三年生になってめきめきと頭角を現しだした唯先輩のおっぱいは我が一族から見ればもう『巨乳』の領域である。
いや、世間一般的に見てもすでにそうなのかもしれない。
つまりちびにゃんにしてみれば初めて触れる巨乳の人物なのだ。
興味を持つのも無理はない。だがしかし。

梓「ちょっ、ちょっと何してるのちびにゃん!唯先輩困ってるでしょ!!」

唯「あ、べ、別に大丈夫だよあずにゃん。ちょっとびっくりしちゃっただけだから・・・///」

唯先輩が大丈夫でも私がなんだか大丈夫ではないんです!

ちび「?」

キョトンとしているちびにゃんをとりあえず唯先輩から引き剥がした。
しかしちびにゃんめ、唯先輩を呼び捨てにしたりおっぱいを触ったり私に出来ないことを
次々とやってのける。
そこにシビれはしないがちょっと憧れる。くそう。

ぷにぷにかぁ・・・・・・

引き剥がしたちびにゃんをとりあえず私の横に座らせたが、すぐに私のソファーを降り
また唯先輩の方へと歩いていく。
完全に唯先輩に懐いてしまったようだ。

ちび「ゆーーーい♪」ガバッ

今度は座っている唯先輩の胸に顔を埋めるように正面から抱きついた。イラッ

唯「おおぅ///ちびにゃんは大胆だねぇ。見た目はあずにゃんにそっくりだけど中身は結構違うねぇ」ナデナデ

私は逆に見た目だけじゃなく中身も似ていると今日感じましたけどね。
どうやらこの子とは好みのタイプも同じらしい。

梓「・・・・・・その子もホントは恥ずかしがり屋なんですよ?私にもなかなか懐いてくれなかったですし。
 唯先輩が特別なだけです」

唯「そうなの?・・・・・・あれ?あずにゃん、その子『も』ってことは自分が恥ずかしがり屋さんだって
 自覚してたんだね~」ニヤニヤ

梓「!///わ、私は人並みの羞恥心を持ってるだけです!」

唯「あずにゃんも恥ずかしがらずに自分から抱きついてきてくれていいんだよ~♪」オイデオイデ

梓「結構です!ちびにゃんと好きなだけイチャついててください!」プイ

唯「わーんあずにゃんに振られちゃったよー。ちびにゃん慰めてー」ギュー

ちび「よしよし」ナデナデ

唯「あはは。ちびにゃんは優しいね。・・・よし!ちゅーしてやる!」ムチュチュー

梓「!!」

唯先輩がちびにゃんにむかってその柔らかそうで且つ艶のある唇を突き出す!狙いはちびにゃんの・・・
ほっぺやおデコではなく唇・・・・・・!?いや、しかし大丈夫だ。落ち着け私。
ちびにゃんが拒否・・・・・・しない!?唯先輩と同じように唇を突き出して・・・・・・!!

梓「ダ、ダメーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

唯ちび「「!!!」」ビクッ!

・・・・・・・・・思ったより大きな声が出てしまったようです。
唯先輩とちびにゃんは2人ともびっくりして固まっている。

唯「び、びっくりしたぁ・・・あずにゃん声おっきいよ・・・」

梓「す、すいません・・・でも唯先輩が・・・あんなことしようとするから・・・・・・」

唯「えー。だってちびにゃんと好きなだけイチャついてろってあずにゃんが言ったんじゃん」

梓「そ、それは・・・えっと、その・・・そ、そう!ちびにゃんのファーストキスを奪わないでください!」

唯「えぇー。こんなちっちゃい時のちゅーなんてノーカウントだよー。あずにゃんだってちっちゃい時は
 お母さんとかとしてたでしょ?」

梓「とにかくダメです!私にはちびにゃんを預かってる立場としてこの子の貞操を守る義務があります!」

唯「て、貞操って・・・」

ちび「んー」チュー

梓「!!」唯「まあ♪///」

私と唯先輩が問答している間に硬直状態から復帰したちびにゃんが唯先輩のほっぺにキ、キスを・・・・・・ワナワナ
呼び捨て、おっぱいタッチだけでは飽き足らず遂にはキスまで・・・・・・

唯「えへへ。ありがとうちびにゃん。唇はあずにゃんが怒るから・・・」チュッ

お返しとばかりにちびにゃんのほっぺにキスをする唯先輩。

梓「――――――――――――!」

唯ちび「「えへへー///」」ニコニコ

くっ・・・落ち着け私。ここでヒステリックになったら私が嫉妬しているとあらぬ誤解をされそうだ。
そう、たかが一回ほっぺにキスしただけだ。私なんて今まで何百回と抱きつかれてるしほっぺスリスリもされてるし
私が拒絶しなかったらキスだって何回もされてるはずだ。ちびにゃんと私じゃ積み重ねてきた歴史が全然違うのだ。
・・・・・・待てよ、逆に考えたらちびにゃんはたった一日、いや数時間で私と唯先輩が積み重ねてきた以上の
関係になったってこと?
・・・・・・いやいや、ちびにゃんは子供だし唯先輩の可愛いもの好きが発動しているだけだ。うん。
小動物を愛でる感覚と同じなんだ。だから嫉妬・・・・・・は、してないけど気にすることはない。
・・・・・・でも待てよ?唯先輩は私に対してもちっちゃくて可愛いとよく言ってくる。つまり私を可愛がってくれる
のも小動物を愛でる感覚ってこと?
・・・・・・いやいやしかし・・・・・・ブツブツ・・・

唯「おーーい。あずにゃーーーん?」カエッテキテー

ちび「おねえちゃん?」オーイ

はっ!・・・失礼しました。少しの間自分の世界に行ってしまっていたようです。
冷静に考えたら五歳児のほっぺにキスしただのされただので何をムキになってたんでしょうね、私は。
尊敬する(?)先輩と可愛いいとこが仲良くしてくれているのだから何も問題ないです。はい。

引き続きキャッキャと遊んでいた唯先輩とちびにゃんだが、突然ちびにゃんはその遊び場であった唯先輩の膝の上
から降り、とてとてとドアの方へ歩いていく。

唯「ちびにゃん?どこ行くのー?」

ちび「・・・おしっこ」

唯「一人で大丈夫ー?」

ちび「だいじょうぶー」

もう五歳なんですからトイレくらい一人で行けますよ。
ちびにゃんがリビングを出て行き、そのドアが閉められた瞬間

唯「あ~ずにゃんっ♪」ムギュウ

本日初めての私への抱きつきが来ました。

梓「な、なんですか突然!///」

唯「へへー。だって今日はまだあずにゃんに抱きついてなかったんだもん。あずにゃん分補給~」

梓「・・・ちびにゃんがいなくなった途端抱きついてくるなんて、私はあの子の代わりですか」

ああ・・・また可愛げのない発言をしてしまう。
こんな刺のある言い方するつもりじゃなかったのに・・・・・・

唯「・・・あずにゃん?」

梓「ちっちゃくて可愛いですもんねー?ちびにゃんは。
 可愛い子なら誰にだって抱きついてキスしようとするんですよね。唯先輩は」

唯「そ、そんな事ないよー。さっきも言ったけどちびにゃんみたいなちっちゃい子とのちゅーは
 ノーカウントかなって・・・・・・私だってファーストキスは大事な人の為にちゃんと取ってあるんだから!」

梓「どの口が言うんですか。私にも前にキスしようとしたくせに」

唯「・・・・・・・・・・・・だもん・・・」

梓「え?」

唯「あずにゃんは・・・大事な人だもん・・・・・・特別だもん!」

・・・・・・・・・頭の中が真っ白になる。唯先輩は言った。ファーストキスは大事な人の為に取ってあると。

梓「ゆ、唯先輩、それって・・・・・・」

唯「あずにゃん・・・」

梓「!」

気がつくと私の目の前に唯先輩の顔があった。
ちか!近いですよ唯先輩///!
滅多に見せない真剣な表情だ。
それにしても近くで見るとやっぱり唯先輩って綺麗な顔してるなー・・・・・・
長い睫毛・・・ちょっとたれ目気味のつぶらな瞳・・・すべすべのお肌・・・
プルンとした艶のある唇・・・・・・唇が・・・・・・どんどん近づいてきてますよ?先輩。

唯「・・・いいかな?あずにゃん・・・」

梓「え?///え?///あ、あの、わたっ・・・私・・・///」

パニクってまともな返答が出来ない。
ファーストキスはもっと素敵な思い出にしたかったのにわたわたしてみっともないなぁ・・・
や、やっぱり目は瞑った方がいいよね・・・///
って、そうじゃなくって!
え?しちゃうの?唯先輩と?ファーストキス?今?ここで?いいの?

ちび「ただいまー」

バッ!

弾かれたように離れる私と唯先輩。
というよりほとんど私が唯先輩を突き飛ばしたような形だ。スイマセン・・・
普段は周りの目などあまり気にしない唯先輩だが、さすがに五歳児にキスシーンを
見せつけるのはどうかと思ったのだろうか、私に押された勢いを活かし恐ろしいスピードで
自分のソファーへと戻り居住まいを正した。
こんなに速く動く唯先輩を私は初めて見たかもしれない。

ちび「どうしたの?」

梓「ななななんでもにゃいよっ!?///」ドキドキ

唯「ちびにゃんお帰りー♪」ニコニコ

動揺しまくる私とは対照的に余裕の対応をする唯先輩。
こういう面でも私はこの人に敵わないと思う。

梓「そ、そろそろお昼ですね!お昼ご飯にしましょうか!」

唯「そうだね!私お腹ペコペコだよー!」

場の空気を誤魔化すために振った話題に唯先輩も乗ってくれたようだ。

唯「ちびにゃん何食べたい?」

ちび「うーんと・・・えーっとねぇ・・・あ、はんばーぐ!」

唯「おぉーハンバーグかぁ。よし!私がりっちゃん直伝ハンバーグを作ってあげよう!」フンス!

そこは憂直伝ではないんですか。
まあ確かに律先輩のハンバーグは美味しかったですけど。

梓「直伝って・・・作り方教えてもらったんですか?」

唯「ううん。食べただけだよ?でも再現してみせるよ!」

・・・・・・確かに色々と妙な特殊能力を持っている唯先輩だがこれに関しては全く信用できない。

梓「親からお昼代貰ってますんで外に食べに行きましょう」

唯「えぇーっ・・・ひどいよあずにゃん・・・・・・私を信じて!」

唯先輩の訴えはスルーして私達は外食をする事にした。
ちびにゃんの右手を唯先輩が、左手を私が握り近所のファミレスまでの道を歩く。
こうして小さい子を真ん中に三人で手を繋いで歩いているとなんだか・・・

唯「なんだか家族みたいだねぇ」

梓「なななな、なに言ってりゅんですか!///」

胸の内を見透かされた気がしてまた動揺してしまった。
それでなくてもさっきのキス未遂の件でまだ冷静でないというのに
追い討ちをかけるような事をしないでいただきたい。

ちび「おねえちゃん、おかおまっかー。どうしたの?」

ちびにゃんにまでからかわれてしまう。
いや、本人にからかっている気はないんだろうけど。

唯「梓お姉ちゃんはね、さっき私だけちびにゃんとちゅーしちゃったから怒ってるんだよー」

ちび「そうなの?」

曇りのない瞳で私を見つめてくるちびにゃん。
唯先輩、余計なことを吹き込まないでください。
まあ先輩なりに私の赤面のフォローをしてくれたのかもしれないけど。

ちび「・・・・・・・・・」

ちびにゃんが私の右手をくいくいと引っ張る。

梓「どうしたの?」

腰を曲げ、ちびにゃんの目線に顔を持っていくと―――

チュッ!

ちびにゃんの小さな唇が私のほっぺに触れた。
びっくりしてちびにゃんを見ると、不安そうな顔で私を見つめている。
どうやら先程の唯先輩の言葉を間に受けて、私だけキスをされなかったことを怒っていると思ったようだ。

梓「・・・ありがとね、ちびにゃん。大丈夫、怒ってないよ?」ナデナデ

頭を撫でてあげると安心したように表情を綻ばせるちびにゃん。

ちび「ゆいもおねえちゃんにちゅーしてあげてー」

なっ・・・・・・///!!

唯「ん?そうだねー・・・・・・じゃあおうちに帰ったらいっぱいしてあげるよ♪」

唯先輩はニコニコ笑いながら私に意味深な視線を送ってくる。
午後は我が家で何が巻き起こるのか、そして今日が終わる頃に私と唯先輩の関係はどうなっているのか。

ちび「・・・おねえちゃん、またおこってるー」


  • なにこれ可愛いッ!ちびにゃんいい味出してる -- (鯖猫) 2013-04-23 23:24:50
  • ちびにゃん、サイコー -- (名無しさん) 2014-04-26 13:13:09
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最終更新:2013年04月23日 21:31