目が覚めると目の前に中野梓がいた。
梓 『・・・・・・・・・・・・』
目の前にいる中野梓は布団の中で目を瞑りピクリとも動かない。
今の私は中野梓の横たわるベッドの上にふわふわと浮いている状態だった。
梓 『・・・え?え?・・・な、なにこれ・・・・・・?』
混乱して自分の体を見ると半透明に透けている。
梓 『・・・わ、私・・・死んじゃったの・・・・・・?』
今の私は魂とか幽体とかそういう状態だろうか。
あ、もしかしたら幽体離脱というやつなのかもしれない。
目の前にある私の体に入れば元に戻れるかも・・・
とりあえず自分の体に重なってみる。
梓 『・・・・・・・・・』
しばらく重なったままじっとしてみたが体に戻れる気配はない。
と、いうことは・・・・・・
梓 『やっぱり私、死んじゃったんだ・・・・・・』
呆然とする。
まさか16歳の若さで死んでしまうとは思わなかった。
もう先輩達と演奏することもできないんだ・・・
梓母 「梓ー。そろそろ起きなさいよー」
一階からお母さんの声が聞こえてきた。
ごめんね、お母さん。私死んじゃったみたい。
もうすぐ私の部屋に入ってきて私が死んだことに気づいちゃうんだろうなあ・・・
お母さん悲しむかなあ・・・
梓?「・・・・・・うーん、もうちょっと・・・・・・」モゾモゾ
梓 『えっ!!?』
私の死体が・・・動いた!喋った!?
ていうか動いて喋ったという事は死体ではない。
えっ?・・・・・・ていうことは私は死んでなかったってこと?
・・・・・・なんだ・・・良かったぁ・・・ホッ
・・・・・・ん?
じゃあ今の私はなに?
私が中野梓の魂的なものであるなら目の前にいる中野梓の体は動かないはずじゃないの?
え?え?
再び混乱し始める。
私は・・・私は中野梓。私立桜が丘高校2年1組。軽音楽部所属、リズムギター担当。
組んでるバンドの名前は放課後ティータイム。
部活の先輩は唯先輩、澪先輩、律先輩、ムギ先輩。後輩はトンちゃん。
仲のいいクラスメイトは憂と純。
・・・うん。間違いない。私は中野梓だ。
となると・・・・・・今目の前で起きるのを渋っているのは誰?
ガチャッ
梓母 「ほら、いいかげんに起きなさい!」
お母さんが私の部屋に入ってきた。
梓?「・・・・・・はーい・・・」ファーア・・・
梓 『お母さん!私はこっちだよ!』ブンブン
お母さんの目の前で手を振ってみたがどうやら私の姿は見えていないし声も聞こえていないようだ。
梓 『なにこれ・・・・・・』
つまり私は寝ている間に幽体離脱的なことをしてしまって魂が体から出てしまった、
そして今私の体には別の『誰か』が入って体を動かしている、ということか。
そしてどうやら私の体を動かしている『誰か』にも私の姿は見えていないようだ。
ふわふわと浮いている私を気にも止めず着替えを始める『誰か』。
―――――――――
梓?「いってきまーす」
まだ現状を理解しきれていないがとりあえず私はこの私の姿をした『誰か』についていくしかなかった。
私の体で勝手なことをされては堪らない。
とは言っても勝手なことをされたとして、今の私にそれを止める方法があるとは思えないんだけど。
どうやら誰にも見えていないし声も聞こえていないようだ。
そして物に触れることもできないので、ただ見ていることしかできない。
一つ期待していることといえば・・・純だ。
確か以前純は『私わりと霊感強くてさー。結構見えちゃう人なんだよねー』なんてことを言っていた。
今の私が霊的な存在ならば霊感の強い人ならもしかして見えるかもしれない。
そんなことを考えながら私の姿をした『誰か』の後をふわふわとついていくと、
純 「あ、おはよー梓」
ナイスタイミング!
登校中に純と出会うことは滅多にないのだが今日に限って会えるとはラッキーだ。
梓?「おはよう純。今日は珍しく早いね?」
梓 『純!純!見えてる?聞こえてる?私が本物の梓だよ!』バタバタ
純 「へへへ、目覚まし見間違えて一時間早く起きちゃった」
梓?「唯先輩と一緒じゃん・・・」
純にはがっかりだよ・・・・・・
なにが霊感強いだ!
なにが見えちゃう人だ!!
嘘つき!全然見えてないじゃん!!
・・・・・・はあ。まあいいや。見えないのはしょうがないとして
純なら喋っていればきっとその『誰か』が私じゃないと気づくだろう。
私の体に入っているのが誰なのかは知らないがそのうちボロが出るはずだ。
――――――
・・・・・・私の期待も虚しく、純と私の姿をした『誰か』は仲良くお喋りしながら学校に着いた。
純には心底がっかりだよ・・・・・・
もういい。そもそも純に期待するなんてどうかしていた。
学校に着いたなら憂がいる。憂ならきっとこの『誰か』が偽物だって見抜いてくれるはず!
―――そんなふうに期待していた時期が、私にもありました。
私の姿をした『誰か』は見事に私を演じているのだ。
憂を始めとしたクラスの誰も不審がりはしないし誰にも私の姿は見えない。
このままじゃ私の体はこの偽物の『誰か』に取って代わられてしまうんじゃないかと不安になる。
最後の希望は・・・軽音部の先輩方・・・・・・!
――――――
放課後になり、部室に向かう私の姿をした『誰か』。
そしてその後ろをふわふわとついていく私。
梓?「こんにちはー」
部室内には唯先輩、澪先輩、律先輩の三人がいた。
ムギ先輩は遅れてくるのかな?
とりあえずふわふわ浮いている私に驚かないということは私の姿は見えていないようだ。
でも・・・先輩方なら今そこにいる私が本物じゃないと気づいてくれるはず!
お願いします先輩方!
カバンとギターを下ろした私の姿をした『誰か』に唯先輩が近づく。
唯 「あーずにゃ~ん♪」ギュウ
梓?「えへへ、唯センパーイ♪」ギュウウウ
唯律澪 「「「!」」」
出た!遂にボロが出ましたよ!
本物の私は唯先輩に抱きつかれて抱きつき返すなんてするわけありません!
気づいてください!先輩方!
唯 「ふおぉぉぉぉぉぉお!
あずにゃんが!あずにゃんがぁぁぁぁぁあ!!」
澪 「」
律 「お、おいおい・・・どうしたんだよ梓」
梓?「別にどうもしませんよ?大好きな唯先輩に抱きつかれたので抱きつき返しているだけです///」
梓 『わ、私がそんなこと言うわけないじゃないですか!気づいてくださいよー!』バタバタ
唯 「あ、あずにゃん・・・今なんて言ったの・・・・・・?」
梓?「え・・・だ、大好きな唯先輩って、言いました・・・・・・///」
梓 『私はそんな事言わないーーーーーー!!』
唯 「う、うぅぅ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」ボロボロ
梓?「ゆ、唯先輩?どうしたんですか!?泣かないでください・・・」
唯 「ごべんねぇ・・・でも、嬉じぐっでぇぇぇぇぇぇ・・・」ボロボロ
梓?「唯先輩・・・・・・///」
梓 『・・・・・・・・・』
私の姿をした『誰か』は唯先輩が落ち着くまで抱きしめ続け、ハンカチで涙を拭いてあげていた。
・・・・・・ホントならそれは私の役割なのに・・・・・・いや、私ならそもそも唯先輩に抱きつき返すことも
大好きですなんて言うこともしないわけで、そうなると唯先輩が泣き出すこともそれをなだめる
なんてことも起こりえないのですが・・・・・・
梓?「落ち着きましたか?唯先輩」
唯 「うん・・・えへへ、ありがとうあずにゃん///」
律 「・・・まあとりあえず座れよ、二人とも」
澪 「そ、そうだな。ちょっと話し合おう・・・」
二人のやり取りを黙って見ていた律先輩が声を掛ける。
澪先輩は私の姿をした『誰か』と唯先輩が抱き合ったあたりから硬直していましたが
帰ってこられたようです。
律 「えーっと。つまり、なんだ。お前らは付き合うってことか・・・?」
二人が席に着いたところで律先輩はそう切り出した。
唯 「えっ///えっ///付き合うとか、まだそんな、ねぇ・・・?」
唯先輩は同意を求めるように私の姿をした『誰か』に視線を送る。
梓?「わ、私は・・・唯先輩が良ければ・・・お付き合いしたいです・・・・・・///」
梓 『ちょ、ちょっと!そんな大事なことあなたが勝手に決めないでよ!』
と、叫んでみたところで私の声はここにいる誰にも届かない。
律 「だってよー唯ー。後輩にここまで言われてどうするんだー?」ニヤニヤ
澪 「そ、そうだぞ唯。ちゃんと返事してあげないと!///」
梓『律先輩澪先輩!そんな煽るようなこと言わないでください!わ、私の気持ちが・・・・・・』
唯 「う、うん・・・わかったよ・・・あずにゃん・・・わ、私と・・・・・・」
梓 『ダメーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!』
唯 「お付き合いしてください!け、結婚を前提に・・・!///」
梓?「は、はい・・・!よろしくお願いします・・・・・///」
律 「おいおい。いくらなんでも結婚を前提には気が早すぎるだろー」ニヤニヤ
澪 「そんなことないぞ!お付き合いする以上は将来のことも真剣に考えないと!えらいぞ、唯!」
・・・・・・ナニコレ?
私と唯先輩は恋人同士になったっていうこと?
私の意思は無視して?
いえ、私もこうなることを望んでいなかったかと言えば嘘になりますが・・・
こんな形で叶っても嬉しくない・・・
唯先輩も唯先輩です!
私の事ホントに好きならその私が本物じゃないって気づいてくださいよ!
澪 「いや、しかし唯が梓のこと好きなのは知ってたし、
梓も多分唯のこと好きだろうと思ってはいたけどなあ・・・」
律 「だよなあ。梓が素直じゃないからくっつくのはまだまだ先かな、
なんて思ってたんだけどなー」
唯 「えへへ・・・あずにゃん。大好きだよ///」
梓?「嬉しいです・・・私も・・・大好きです///」
ガチャ
紬 「遅くなってごめんね、みんなー・・・えっ?」
律 「遅いぞームギー。もうちょっと早ければいいものが見れたのになー♪」ニヤニヤ
紬 「えっ?な、なにがあったのかしら・・・?」
澪 「ほら。唯、梓。自分達でムギに報告してあげろよ」
唯 「うん・・・えっとねムギちゃん・・・私とあずにゃんね・・・・・・」
梓?「お、お付き合いする事になりました・・・・・・///」
紬 「えっ!?そ、そうなの?素敵だわ、唯ちゃん梓ちゃん!おめでとう!」
ムギ先輩は嬉しそうに二人を祝福してくれているがどこか心ここにあらずといった感じだ。
その理由を私は知っている。
そしてそれは私にとって望んでいたことが遂に訪れたということでもある。
そう。ムギ先輩には私が見えているのだ。
部室に入ってきた瞬間、ふわふわと宙に浮いている私の方をチラリと見て、一瞬だが
驚いた顔をしていた。
ムギ先輩は純のようなエセとは違いホントに霊感の強い人なんだろうか・・・?
しかし見えているだけでは心もとない。
私の声が聞こえていないと現状を報告することができないのだ。
ふわふわとムギ先輩に近寄り、耳元で話しかけてみた。
梓 『あの、ムギ先輩・・・私の声が聞こえていたらウインクしてもらってもいいですか?』
紬 「・・・・・・」パチリ
やった!これでなんとかなる!・・・・・・かどうかはまだわからないか・・・私の姿が見えて
いるからといってムギ先輩に元に戻る方法がわかるとも限らない。
しかし話を聞いてもらえる相手ができたということは充分に心強い。
梓 『すいませんが部活が終わった後、部室に残ってもらっていいでしょうか?』
紬 「・・・・・・」パチリ
二度目のウインク。OKということだろう。
こうなると今の私には部活が終わるのを待つことしかできない。
先輩方のお喋りに耳を傾けて待つことにした。
唯先輩と私の姿をした『誰か』の交際のお祝いと称したお茶会が始まった。
律 「しかし今日の梓はどうしたんだ?急に素直になったって感じだけど」
梓?「そ、そうですか?自分ではいつもと違うつもりはないんですけど・・・」
澪 「いや、そこは律の言うとおりだと思うぞ。まず唯に抱きつかれて抱きつき返すって
ことがいつもの梓じゃ考えられないからな」
唯 「うん。それは私もびっくりしたよー・・・まあ嬉しかったけど」デヘヘ
梓?「うぅ・・・それは・・・き、昨日までの私がどうかしてたんです!
これからは抱きつきたい時は
私から抱きつきますし、ちゃんと私からも好きっていいます!」
唯 「あ、あじゅにゃあーーん・・・・・・」グス
律 「はいはい梓、そのへんにしとけ。唯のやつまた泣いちゃうから」
澪 「二人とも・・・その・・・イ、イチャつくなとは言わないけど部活中はほどほどにな?」
紬 「はあ・・・私も見たかったなあ・・・二人の告白シーン・・・もうちょっと待っててくれたらよかったのに・・・」
いやいやムギ先輩違うんですよ?
その告白はホントの私じゃないですから。
まあ後で説明しますけど。
そんなわけで今日の部活は終始唯先輩と私の姿をした『誰か』の話で持ち切りで
澪先輩ですら練習を始めようと言い出さなかった。
――――――
下校時刻が迫り今日の部活はそろそろ終了のようだ。
部室を出て行くとき唯先輩と私の姿をした『誰か』は手を繋いでいた。なんだか納得いかない。
この二人の後をつけたい気持ちもあったが私には他にやらなければいけない事がある。
ムギ先輩はほかの皆さんに上手いこと言って部室に残ってくれていた。
梓 『すいません、ムギ先輩残っていただいて・・・』
紬 「ううん?いいのよ、梓ちゃん。それよりおめでとう♪唯ちゃんと」
梓 『い、いえ。あれは私じゃないですから・・・』
ムギ先輩に今朝からの出来事を全て話した。
朝起きたら幽体離脱のような状態になっていたこと。
私の体には他の『誰か』が入っていること。
その『誰か』のする私の演技は完璧で、クラスメイト達は誰も気づかなかったこと。
唯先輩に対する態度だけがいつもの私とは違っていたが他の先輩方は気づくどころか
唯先輩と『誰か』がお付き合いする流れになってしまったこと。
そして今の私を見ることができたのはムギ先輩だけだということ。
梓 『ムギ先輩って霊感とか強い方なんですか?』
紬 「うーん、どうなのかしら?わりと他の人に見えないものが見えたりするけど
あまり気にしないようにしてるから・・・」
これは相当なものじゃないだろうか。見えてしまうものを気にしないなんてかなり
上級者のような気がする。
梓 『で、どうなんでしょうか・・・どうやったら元に戻れるかとか・・・私の体に入ってるのが
誰なのかとか・・・わかりますか?』
紬 「うん・・・なんとなくわかるけど・・・・・・」
梓 『えっ!わかるんですか!?』
なんて話が早い。良かった。軽音部にムギ先輩がいてホントに良かった!
紬 「私のわかる範囲で話すけど・・・今、梓ちゃんの体に入っているのは間違いなく梓ちゃんよ」
梓 『・・・・・・へ?』
間抜けな声を出してしまう。
私の体に入っている『誰か』は・・・私?
となると今ここにいる私は何者だということになる。
私のほうが・・・偽物・・・?
紬 「ううん。今ここにいる梓ちゃんも偽物なんかじゃないわ。上手く言えないけど・・・
あなたは梓ちゃんの魂の『一部』なんだと思う」
梓 『じゃ、じゃあ今日唯先輩と恋人同士になった、あちらの中野梓の方が本体ということですか・・・?』
紬 「うーん・・・どちらが本体かと言われれば肉体を持っちゃったあちらの梓ちゃんが本体と言えるかも
しれないけど・・・・・・あ、梓ちゃん、神様になりたがった緑色の宇宙人さんのお話知ってる?
神様になるために悪の心を切り離したってお話。あれに近いと思ってくれればいいかな?」
梓 『私は悪の心なんですか・・・・・・』ズーン
紬 「あ、ご、ごめんなさい!言葉のあやよ。つまり目的達成のために不要な部分を切り離したってことね。
宇宙人さんは神様になるために、そして梓ちゃんは大切な人の気持ちに応えるため・・・」
梓 『うっ・・・・・・』
紬 「もうわかったわよね梓ちゃん?ここにいる今のあなたがどういう存在なのか」
梓 『私は・・・唯先輩に対して
素直になれない、意地っ張りな中野梓・・・』
紬 「はい。良くできました♪」
梓 『そうだったんですか・・・じゃあ私はもう消えたほうがいいですよね・・・中野梓は目的を果たしたんだし・・・』
でも消えるといってもどうすればいいんだろう・・・
ムギ先輩が成仏させてくれるのかな?
紬 「なに言ってるの梓ちゃん!緑色の宇宙人さんのその後を知らないの?」
梓 『・・・・・・はい?』
紬 「二人に別れちゃった宇宙人さんは最後に一人に戻って最強になるのよ!」
その話は私も知っている。確か別れた悪の方の心が次第に改心していって元の一人に戻るのだ。
梓 『で、でも私が元に戻ったらせっかく両想いになった二人がまた私のせいで・・・』
紬 「梓ちゃんも改心しちゃえばいいのよ!」
梓 『・・・改心って・・・?』
紬 「唯ちゃんのこと、好きでしょう?」
梓 『!!』
そんな事は当然だ。私だって中野梓なんです。全ての中野梓は無条件に唯先輩のことが大好きなんです。
・・・でも。
言えない。
そう、私は素直になれない意地っ張りのバカな中野梓。
好きだなんて、言えない。
紬 「このままだとこっちの梓ちゃんはずーっと唯ちゃんと目を合わすことも、お話しすることも
抱きしめてもらうこともできないのよ?」
・・・嫌だ、そんなの。絶対に嫌だ。
梓 『わ、私は・・・』
紬 「うん、頑張って!」
梓 『私は・・・唯先輩が・・・・・・』
勇気を振り絞れ!
梓 『私は、唯先輩のことが・・・大好きですっ!!!』
唯 「ふぇっ!?あ、ありがとう、あずにゃん///私も大好きだよ!」
梓 「・・・へ?」
ここは・・・学校の
帰り道にある公園・・・?ああ、そうか・・・唯先輩と恋人同士になって・・・
律先輩と澪先輩とお別れしたあと、少し二人で公園でお話していこうという事になったんだった。
どうやら元に戻れたみたい・・・二つの記憶があるからちょっと混乱してるけど・・・
あ、ムギ先輩今部室で一人きりになっちゃってるんじゃ・・・後でお詫びとお礼の電話しなくちゃ。
唯 「嬉しいけど・・・急におっきい声だすからびっくりしたよー」
梓 「す、すすすいません・・・///」
ベンチに座った私は唯先輩にもたれかかるようにぴったりと寄り添っていた。
そう、さっきまでの私は唯先輩に対する気持ちを隠さない、素直な中野梓。
ベンチで唯先輩の隣りに座ればそりゃあぴったりとひっつくでしょう。
だが今の私は。
梓 「ち、近すぎですよ、唯先輩・・・///」グイグイ
唯先輩の体を押して、少し隙間を空けてしまう。
唯 「えぇーあずにゃんの方からひっついてきたクセにー」ブーブー
うぅ・・・すいません・・・でも今の私にはこの密着した状態は無理なんです恥ずかしいです。
唯 「なんだか今日のあずにゃんは素直で積極的だったけど急に元に戻っちゃったみたいだねぇ」
梓 「!・・・・・・ごめんなさい・・・やっぱり素直な子のほうがいいですよね・・・」
ムギ先輩はああ言ったがやっぱり元に戻るべきではなかったのでは・・・
少なくとも素直な中野梓の方は唯先輩に愛し愛され幸せになれたんじゃないだろうか。
唯 「んーん?素直で可愛いあずにゃんも、意地っ張りで拗ねちゃうあずにゃんも、
練習しますよーって怒るあずにゃんも全部、ぜーんぶ大好きだよ!!」
梓 「・・・・・・・・・」
唯 「・・・あずにゃん?」
梓 「・・・・・・グス・・・ヒック・・・う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」ボロボロ
唯 「あ、あずにゃん、どうしたの?泣かないで・・・」オロオロ
梓 「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」ボロボロボロ
唯先輩は私が泣き止むまでずっと抱きしめてくれた。
よしよしと言って頭を撫でてくれた。
・・・一人に戻った緑色の宇宙人はその後どうなったんだっけ?
幸せになれたんだっけ?
あんまり覚えてないけど。
私には私の全てを愛してくれる人がいる。
私自身が不要だと思って切り捨てた部分でさえ。
幸せになれないわけがない。
- いい話だった -- (鯖猫) 2013-04-23 23:56:48
- まさかのDBネタ…まあ、よかったよ -- (名無しさん) 2013-04-26 12:28:27
- ピッ●コロさんwww -- (ダメですぅ~) 2013-06-09 03:53:30
- 戻れてよかったね -- (名無しさん) 2014-04-26 13:36:50
最終更新:2013年04月23日 21:49