「憂鬱だわ…」
新年度早々和ちゃんがそう行ってため息をついた。
真面目な和ちゃんにしては珍しい。どのくらい珍しいかって言うと鼻血や涎出してないムギちゃんに遭遇するくらい珍しい。
しかも登校中にそんなこと言うなんて和ちゃんらしくない。生徒会の仕事で疲れてるのかな?
「なにか悩みごと?私でよければ相談に乗るよ?」
あ、憂に先越されちった。まぁ、ここは可愛い妹に花を持たせてあげよー
「ほら、憂って世界一可愛いじゃない?新入生の中に憂を好きになっちゃう子が出て来たらどうしようって…」
「の、和ちゃん…恥ずかしいよぉ。それに私だって気が気じゃないんだよ?和ちゃんって宇宙一カッコいいからもしも下級生がって…」
「嬉しいこと言ってくれるわね。でも、そうね…せっかく憂がそこまで言ってくれるんだから、
せめてあなたにとって一番カッコいい人間ではいたいわね」
「と言うと?」
「憂以外の子なんかには心動かされないってことよ」
「の、和ちゃん…」
「憂にも世界一可愛い恋人でいて欲しいのだけど、これはわがままかしら」
「わがままなんかじゃないよ!うん、和ちゃんの一番で居続ける自信はあるよ」
わーお、悩みじゃなくておのろけだ~。
なんだかくすぐったいや。妹と親友がいちゃいちゃしてるからかな?
りっちゃんと澪ちゃんなら別に平気なんだけどな。ムギちゃんとさわちゃんの場合、あっちの意味で平気じゃいられないんだけど…。
「お姉ちゃんも気をつけたほうがいいよ?梓ちゃん、ちっちゃくて可愛いから…」
「だからってあんたが浮気するのはもっとNGよ、唯」
「そうだよ!お姉ちゃん可愛いから狙われやすいもん。あぁ…心配だなぁ、お姉ちゃん…」
「いけない子ね、憂。唯のことをそんなに気にかけるなんてちょっと妬けちゃうわ」
「も、もう和ちゃん…いぢわるしないでよぉ」
さてまぁバカップルは無視するとして、憂の言うことはもっともだよ。
可愛い可愛い可愛い
あずにゃん、私がしっかり守らなきゃだね!
というわけでじっせん!その1!!
「あ、唯先輩♪」
まぶしい笑顔で私を迎えてくれたのは、もちろん愛しのあずにゃんだ。
いつもは家の近くで待ち合わせてるんだけど今日は校門前で落ち合った。
メールでそのことをお願いしたら、ちょっと不思議そうにしてたけどちゃんと了解してくれた。
「唯先輩と会える時間が減るのは寂しいですけど、がまんします」って一文に、私、きゅんと来ちゃったよ。
ごめんね、あずにゃん。でもでも、こんな可愛いことされたら…ね。
合流したらあずにゃんと一緒に校内へ…は行かず、新入生たちがたくさん集まってる前で私はついに計画を実行に移すのでした!
「あずにゃん、大好きだよ♪」
「え?はい、私も唯先輩のこと…んむっ!?」
新入生たちの興味が程よく集まった頃を見計らって私はあずにゃんの唇を奪っちゃいました!
びっくりしたみたいでちょっとだけ抵抗されたけど、本気のキスだって伝わってからは
ちゃんと背中に手を回してくれた。私も同じようにきゅっと抱き締める。
写メを撮る音とか冷やかしの歓声とかキマシタワーって聞こえてきたけど、これも私の計画通り!
こうやってあずにゃんとのラブラブな仲を見せつけておけば誰も邪魔なんかしないよね。
「ムギちゃんったらまたビデオ回して。そんなに羨ましいなら、…試してみる?お・な・じ・こ・と」
「さ、さわ子先生たら…お願いします♪」
「じゃあ遠慮なく」
バカップルは無視。ていうかさわちゃんは遠慮しないと捕まるんじゃ…
続いて、じっせん!その2!!
始業式の日から部活見学が始まる。去年は憂と純ちゃんが来てくれたんだっけ。
なんで最初から来てくれなかったのーってあずにゃんに聴いたら、「唯先輩との時間を無駄にした一年前の私をひっぱたきたいです」って言ってたっけ。
えへへ、気にしないでいいんだよ、あずにゃん。
これから一生かけて無駄にした時間を取り戻そうね♪
…っとと、
思い出に浸ってばかりじゃいられないね。見学者が来たところで作戦開始であります!
「あずにゃん、じゃあふたりきりでちょっと合わせてみよっか」
「はい、いいですよ」
「ふたりで合わせる」っていうのは私たちの合言葉。やること自体は単純で、私とあずにゃんでひたすらジャムるんだけど…
「唯先輩、んっ、ふぅっ…今日は…がん…ばります…ね…んんっ」
「え、へへ…あずにゃんともっともっと…気持ち良く…なりたいもん…んうっ」
私たちの場合、十分二十分とジャムって限界突破する頃には、なんて言うか…こう言う気持ちになっちゃうんだよね。
ふたりの爪弾くメロディが溶け合うみたいに私たちの身も心も溶け合うみたいで…
「はぁはぁ…あずにゃん…もっともっとだよ…もっとあずにゃんが欲しいよぉっ!」
「だ、だめです、唯先輩…ゆい…せんぱ…私、もぉ…トンじゃうぅっ!」
つまりこの作戦、私たちは一心同体なんだよって見学に来た新入生に見せつけるのが大切なんであります!
「おいばか律、お前なに新入生に色目使ってんだよ!そんなことしてると今夜膝枕してやらないからな!」
「ばっか、何ヤキモチ妬いてんだよ澪~。澪に色目使う奴がいないか睨みをきかしてんだよ!」
「り、りちゅう~」
バカップルは無視。ていうか既に膝枕してんじゃん、澪ちゃん。
そして最後の最後。じっせん!その3!!
今日は新歓ライブだ。
私にとってはあずにゃんと出会う
きっかけになったような、大切な想い出のある特別なライブだよ。
「一年前、唯先輩がこのステージに立ってくれたから、今、私はここにいるんですよね」
「そう考えると不思議だねー。運命だね♪」
「運命なら私はもっと前に感じてましたよ。学祭ライブのテープ聴いた瞬間にビビッと来ましたもん」
あずにゃんも同じ気持ちでいてくれたんだ。えへへ~、嬉しいな♪
あずにゃんの為にもライブを成功させなくちゃ。それで私たちの為にも最後の作戦を達成しなくちゃ!
途中、「田井中律はすっこめ!澪様ー澪様ぁ~」ってわけわからない妨害があったこと以外はライブは無事に進んでいく。
ていうか、騒いでたのって元生徒会長さんだよね?卒業生がなにやってんのかなぁ…
まぁ、「誰がすっこむかってんだ!澪はあたしのもんだ!力ずくで奪ってみやがれ!」っていうりっちゃんの啖呵はかっこよかったけどね。
あ、これ聴いた澪ちゃんが腰抜かして蕩けちゃって一時演奏中断したのはアクシデントって言えばアクシデントかな。
次は私のソロパート。そしてここからが最後の作戦の本番だ。
「みなさん、ごめんなさい!プログラムに一部変更があります!」
突然の宣言にあずにゃんはきょとんとしてる。そりゃそっか、あずにゃんには秘密にしてたもんね。
サプライズを成功させる為にりっちゃん、澪ちゃん、ムギちゃんには協力を頼んであるんだけどね。
でも、曲が始まったらあずにゃんもきっとわかってくれるはず。ちゃんとついてきてくれるはず。
そうあずにゃんを信じてるから、私は最後の作戦を決行できるんだよ。
「私はこの歌を一番大切な人に捧げたいと思いますっ」
さぁ、行くよっ、あずにゃん!
「題して、あずにゃんに首ったけ!…あずにゃんは私の嫁~っ!」
さぁ心して聴け新入生諸君!あずにゃんは…あずにゃんは…私のお嫁さんなのだぁっ!
- 私のお嫁さんなのだぁっ! 可愛い -- (名無しさん) 2010-04-18 09:08:16
- 唯梓サイコー! -- (名無しさん) 2010-07-30 21:23:50
- その歌聞かせて〜♪ -- (あずにゃんラブ) 2013-01-20 20:40:34
最終更新:2010年04月07日 12:39