「
あずにゃん!映画見に行こうよ!」
それは夏休みの部活の
帰り道に突然言われた。
「映画…ですか…?」
「うん!そう!映画!」
唯先輩とのいつもの帰り道。
唯先輩と雑談していて、丁度話題が途切れた時だった。
「でも…私…お金が…」
「お金ならご心配なく!私が出すよ!」
自身満々に言い張る唯先輩。
でも私は不安になるばかりだった。
(…こういう時の唯先輩って恐いんだよなぁ…。当日にドジふんでお金忘れそう…。)
別に嫌味でそう考えている訳じゃない。なぜかは分からないけど、唯先輩の事は色々と気になってしまうのだ。そう、色々と。唯先輩と出会ってからずっとだ。
「駄目…?」
私が考えていると、不安そうに唯先輩が聞いてきた。その表情を見た瞬間私は焦って返答した。…なぜか。
「いえ…!別に嫌じゃないですっ!」
「なら行こうよ~」
「…分かりました。で、何の映画ですか?」「えーっとねぇ…仮面ラ〇ダー!」
「…えっ…?」
その回答は私の思考を停止させた。ただでさえ唯先輩は映画を見る姿が想像出来ない上に、仮面ラ〇ダーとは…。
「えっ…?て…あずにゃん知らないの~?ほら、日曜の朝にやってる仮面ラ〇ダーダ〇ルだよ!」
唯先輩の目はまるで少年の瞳のようです。
「知らないも何も見てないです…。まぁ仮面ラ〇ダーがどんなのかは分かりますけど…作品の内容までは…」
「あのね!二人の主人公が、ガ〇アメモリってアイテムを使って、一人の仮面ライダーに変身するんだよ!でね、ドー〇ントっていう悪い人間が変身した怪人を倒すんだ!ちなみに主人公は、探偵の人とものすっっごい頭のいい人なんだよ!」
作品の説明をする唯先輩を見て、私は自然と笑みとクスクスとした笑いが込み上げてきた。
やはり元気な唯先輩を見てるとなにかが楽しくて、なぜか楽しくなる。
「も~、人が真剣に説明してるのに笑わないでよ~。」
「す…すみません。でも唯先輩って何だか男の子みたいですね。」
「え?そうかなぁ。」
「そうですよ。普通仮面ラ〇ダーなんて男の子しか見ませんから。」
「うーん。…私が男の子だったらあずにゃんを彼女に出来るのになぁ。」
「…!?///」
あれ?何で私…今ドキッとしたんだろ…!?
「あれ~?あずにゃんが顔赤くなった~。」
「なっ…!なってません!!///」
ムキになって言う私。でも自分の体の事は自分が良く知っている。
「えー?なってるよ~。」
そして丁度良く私の家の前に着いたのだった。
私は逃げるように、
「じゃ…じゃあ唯先輩!また明日の部活で!」
と、話を反らし、家の中に文字通り逃げ込んだ。
「また連絡するね~。」
唯先輩の言葉を聞きながら。
私は部屋に入り、制服から私服へと着替えながら、顔の赤みを抑えようと考え事をしようとした。しかし考えれば考えるほど、先ほどの唯先輩の発言が頭から離れず、顔の赤みは増すばかりだった。
『私が男の子だったらあずにゃんを彼女に出来るのになぁ…』
あれはどういう意味だろう…。もしかしたら唯先輩は天然だから何気なく言ったのかもしれない。でも天然だからこそ意図して言っている時が分からないのだ。
「全く…私は何を考えてるんだろう…。私たちは女の子同士なんだよ…?」
ついに照れ隠しで独り言まで言ってしまう私。
でも自分の事は本心の自分が良く分かる。
だからこそ素直じゃない私が、色んな事を考えて、言い訳を作って、
本当の自分をはぐらかしたりするのだろう。
人間は自分が一番嫌いだとも言われている。
ほら、今もそう。
素直になれ。
でも私は素直になれる性格じゃない。
でも素直にはなりたい。
誰みたいに?
そう、
唯先輩みたいに。
「唯先輩…。」
とうとう私は自分に観念して考えるのを止めた。
~♪
「メール…?誰からだろう…。」
携帯を開く。
「…あ。」
ドキッとした。
「唯先輩だ。」
何だろうと思い、メールを開く。
From 唯センパイ
件名 映画の事だけど
本文
今度の土日のどっちがいい?
一瞬ほっとした自分。すぐに返信をした。
To 唯センパイ
件名 Re:映画の事だけど
本文
じゃあ土曜日の9時くらいに私の家に来てもらえますか?
何だか土曜日が待ち遠しく感じた。
土曜日。映画に行く当日。
予定時間よりちょっと遅れて唯先輩が家に来た。
「ごめ~ん、待った~?」
「もぅ、遅いですっ!」
ちょっと怒ったフリをすると、唯先輩は慌てて私の機嫌を取ろうとした。
「ごめんってば~、後で美味しい
たい焼きとお昼おごってあげるからさ~?」
「映画代は大丈夫なんですか?」
「そ…それは~…」
「もういいです。お昼代ぐらいはありますから。」
「うぇ~、あずにゃん怒んないでよ~。」
すぐに私に抱きつく唯先輩。
「ちょ…怒って無いです!てか親に見られたら恥ずかしいですよぉ…!」
いつの間にか抱きつかれるのが嬉しくなる自分がいた。
だから拒否はしない。
ここは玄関。私たちはその後近くのショッピングセンター内にある小さな映画館に向かった。
「いよいよだね~」
「…はい。」
「あ、始まった…。」
映画が始まると、唯先輩は画面に吸い込まれるように、輝いた目で映画を見始めた。
新歓ライブや文化祭の本番で見るあの目。
私も唯先輩に続いて映画を見始めた。
「あ~、楽しかったし、かっこよかったぁ~!」
「ふふ…そうですね。」
正直作品自体見るのが始めてな私は、映画の内容は作品中の専門用語も出てきて良く分からなかった。
でも、唯先輩が所々説明を入れてくれたおかげで楽しめた。いや、それ以上に唯先輩が隣に居て、あの笑顔が見れて、そして楽しめたのかも知れない。なぜかは分からないけど、その答えは帰路につく間に見つける事が出来た気がする。そう、たった今。素直になれたのかも知れない。
「唯先輩。」
「なぁに、あずにゃん?」
「今日はありがとうございました。」
「いやいや~、たまには私も先輩らしい事をしなきゃね~。」
「あの…何だか唯先輩と映画を見てて、少し唯先輩の気持ちが分かった気がします。」
「でしょ~?仮面ラ〇ダーも面白いでしょ~?」
違いますよ唯先輩。そっちじゃないです。
『唯先輩が男の子だったら唯先輩を彼氏に出来るのになぁ…』
始めて素直になれた自分。
前向きになれた自分。
(いや…恋愛の好き嫌いに性別は関係ない…。私は私の道を行くんです!)
「あずにゃん、どうしたの?考え事?」
「えぇ…ちょっとだけ…」
暫くしたら気持ちを伝えてみよう。
そしていつか、あの映画の主人公達みたいに心も身体も空間も唯先輩と二人で共有できればいいな…。
唯先輩に出会えて…本当に良かった。
愛してます。唯先輩。
by 中野梓
- 本当に良かったね -- (あずにゃんラブ) 2013-01-20 00:33:37
最終更新:2010年07月07日 23:04