あずにゃん…どうしよう…』
電話口から唯先輩の絶望に満ちた声が返ってきた。
「どうしたんですか?…唯先輩…まさか…!」
『天ぷら…食べちゃった…。さっきの夏祭りかき氷食べたのに…。』
「えっ!?もう…人が言ってるそばから~!ちゃんと暑中見舞いに『食べ合わせには注意して下さい』、って書いたじゃないですか!」
『ごめんなさい。机の上にお昼の残りがあったので…つい…』
今、私、中野梓は、唯先輩に電話で暑中見舞いが届いたのか確認していました。
食べ合わせの事を書いたのだけど、手遅れだったみたい…。
折角人が心配してるのに…
「つい…じゃありません!自分の体調くらい自分で管理できなきゃ駄目じゃないですか!」
『はい…。面目無いです…。』
「…はぁ。まぁいいです。今日はこれで切りますね。私ももう寝るんで…。突然電話してすみませんでした。」
『うん。じゃーね~。おやすみあずにゃん。』
「おやすみなさいです。唯先輩。」
おやすみの挨拶をかわし、私は携帯の終話キーを切って、ベッドに潜った。
とりあえず今日を振り替えると色々あった。
憂や純とプールに行って、その帰りに唯先輩達と会って。
そして全員で夏祭りに行って…。まぁ最後ははぐれちゃったけど…。
それにしても花火を見に行く時の唯先輩…何だかかっこよくて綺麗だったなぁ…。普段はだらけてるけど…。
でも時折見せる頼りがいのある姿、表情、行動。そう、まるで夢を見てるようにかっこよくて…。でも普段はダメダメで…。
だからかな…?こうやって唯先輩の事が気になって…放っておけなくて…。
これって…恋…なのかな…?
同じ同性相手に…?
この気持ちを唯先輩に伝えたらどうなるだろう…?
きっと…嫌われちゃうのかな…
受け入れてくれるなんて…夢のまた夢だよね…



………
……

「あずにゃん…。」
「あれ…?唯先輩…?どうして家に…?」
気づけば目の前には唯先輩がいた。
私はベッドから飛び起きる。
「あのね…あずにゃんにお別れの挨拶をしに来たんだ…。」
「え…?唯先輩…?」
分からない。突然何を言っているの…?
「ごめんね、こんな頼りない先輩で…。最後まで何もしてあげられなくて…。今まで楽しかったよ?あずにゃんにいーっぱい抱きついて…甘えて…」
「え…ちょ…どういう事ですか…?全然話が…」
違う…。唯先輩はいつも私をリードしてくれた。そりゃあ部活の時はアレだけど…頼りなくは無いですよ…。
「本当にごめんね…もう…時間だから行くね…。」
あれ…?唯先輩の体がだんだん消えて…
「嫌…!行かないで…!唯先輩!私を置いて行かないでぇっ!」
私は泣きじゃくりながら、消えていく唯先輩に抱きついた。そして…

「…夢…?」
時間はまだ午前4時を過ぎた所だった。今日は日曜日。顔には大粒の涙が流れ通っていた。
そして携帯の着信音がなっていた。
「唯先輩…?」
何が胸騒ぎがする。さすがにこんな時間に電話をしてくる先輩じゃない。
「もしもし…?」
涙ぐんだ声で私が出ると…。
『あず…にゃん…』
「どうしたんですか!?唯先輩!」
明らかに何かがあったような声で唯先輩が出た。私は一気に目が覚める。本当に今にも消えそうな声だったから…。
『お腹痛いの…助けて…』
「えっ…!?大丈夫ですか!?今すぐ行きますから待っててください!」
私はすぐに私服に着替えた。ちなみに今日は両親はもっと朝早くに仕事に出ている。
きっとあの夢を見なければ私は冷静だっただろう…。でも、今の私は唯先輩が本当に遠くに行ってしまいそうで…怖くて…。
髪をとめてる時間なんてない。寝癖を直す時間も。本当は寝間着のまま飛び出したいくらいだったが、そうは行かない。
無我夢中で家を飛び出し、自転車に乗って唯先輩の家に向かった。まだ空は薄暗かった。

唯先輩の家に着くと、私は自転車を庭に停めて、インターホンも押さずにドアを開けようとした。が、開かない。鍵が閉まっていたからだ。
(どうしよう…。唯先輩…!)
するとガチャっと音がして…
「あず…にゃん…?」
まだ寝間着姿の唯先輩がドアを開けた。
私は思わず大声で泣いて、唯先輩に泣きついた。


私はとりあえず唯先輩の部屋に通され、泣き止むまで唯先輩に抱っこしてもらっていた。
「落ち着いた?あずにゃん…。」
「…唯先輩こそ…お腹は落ち着いたんですか…?」
「私…?うん、トイレ行ったら治ったよ!」
「…唯先輩のバカ…!大げさで紛らわしいですよ…!本気で心配したんですからね…!」
と言って、また私は軽く泣いてしまった。私が泣く度に唯先輩は私の背中を軽く叩いたりさすったりしてくれた。
安心感が私を徐々に満たしていく。
「ごめんねあずにゃん…。でも私…こんな気持ち始めてだなぁ…。だってこんなにもあずにゃんが可愛くて…いとおしいんだもん。」
「…ふぇ?」
「特別な感情っていうのかな?…その…ただの好きとか大好きとかじゃなくて…一人の女の子として…好きなんだよ…。あずにゃん。…こんな事言ってごめんね?女の子同士なのに…。」
まただ…またあの表情だ…。優しい笑顔なんだけど…どこか真面目な…かっこいい唯先輩の表情。
「…嫌じゃないです…。…だって私も唯先輩が好きですから…。一人の女性として…。てか先に言うなんてやっぱり先輩はズルいです…。」
「ふふ…ごめんね、あずにゃん。そうだ、あずにゃん朝早くてまだ眠いでしょ?一緒に寝ようよ。」
「じゃあ…お言葉に甘えて…。」
そして、私達は唯先輩のベッドに二人で潜った。
「あの…唯先輩。」
「なぁに?あずにゃん。」
「今度は…私を一人にさせないでくださいね?」
「…?…うん!ずっと一緒だよ!あずにゃん!」
そういって唯先輩は私をがっしりと腕で抱き締めた。そうして眠りに落ちる私達。
唯先輩。今度は夏祭りや夢の中みたく、私を置いていかないでくださいね?
そしてたまには私の先じゃなくて…同じ道を一緒に歩んで下さい…。

終わり。

おまけ

「お姉ちゃーん!朝だよ起きt…え…?梓ちゃん…?どうして…?」
その後困惑する憂の姿があったそうな。私もしつこく憂に質問攻めされちゃいました(笑)

本当の終わり。


  • 残暑見舞いは結構好きな話だったなぁ…懐かしい -- (名無しさん) 2014-02-02 01:25:56
名前:
感想/コメント:

すべてのコメントを見る

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年07月07日 23:08