「ありえないよ、女の子同士なんて。気持ち悪い」



今日はりっちゃんも澪ちゃんもムギちゃんもみんな今日部活に来れないといったので。
私はあずにゃんと一緒に部活をしようと思い、2年生の教室に向かう。
今日は、二人っきりだなぁ。あずにゃんと。うふふ。
どんなお話しようかな。
そういえば最近可愛い服買ったんだよね。あずにゃんに見せたいなぁ。
あ、それとうちの近くに凄い可愛いお花が咲いてたんだよ。
名前は知らないけどあずにゃんみたいだったからあずさって呼んでるんだー。
それとね、それとね…
うん、後は本人に話そう。
この喜びよう。あずにゃんは、私の大切な人。片思いなんだけど。
好きで好きで大好き。愛してる
いつかこの気持ちも本人に話せるかな…

なんて考えているうちに2年生の教室に到着。
さぁさぁ、あずにゃんはどこかなー。憂と純ちゃんも一緒かなー。
と探しているうちに

「えー。憂ちゃん、それは漫画の読みすぎだよー」
ん、憂?この声は知らないなぁ。クラスメイトかな?
「うーん、わたしはそういう恋愛もあってもいいとおもうんだけどなー」
これは憂の声だ。ということは近くにあずにゃんがいるはずだ。
そうだ、後ろから抱きついちゃおう。ふふふ。
まってろ、あずにゃん。今すぐあずにゃんの体温を感じに…

「だって女同士だよ?無いって」
ぴたり、と。体が停止した。
この話…
「この前ドラマでも普通にやってたんだけどなぁ」
「作り話だからいいんでしょー?現実的には無理だよ」
「うーん…」
「女同士で愛してるよなんて言ってたら引くってーきゃはは」
「そういうものなのかな」

「梓ちゃんはどう思う?」
あずにゃん、そこにいるの?


「ありえないよ、女の子同士なんて。気持ち悪い」


そのあとは、お決まりの行動。
その場から逃げ出し、学校を飛び出し、帰り道へと至る。
ずっとさっきの場面が頭の中で繰り返される。
ねぇ、憂ー。私も、そのドラマ一緒に見てたんだよ。
私は喜んだんだよ。私のこの気持ちは、別におかしくはないんだって。思っちゃってたんだよ。
ほんと、おバカだねぇ。一人で思い上がっちゃってさ。
あの子が拒んだら、それまでなのに。
気持ち悪い。
私は、気持ち悪いんだよ。

いつ間にか自宅の周辺まで来てしまった。
そういえばここには…
あった。可愛い花。名前は梓。自称です。
「…あずさ」
この子で何度練習したか。呼び捨てにしたり、好きって言ったりして。
それが気持ち悪いってのにね。ばかばか。
うあ、やばい。涙が出そ。
いいや、どうせ誰もいないんだし、思いっきり泣いちゃおう。
「…いいよね、ぅぐ…あずさ…?」


「何がですか?」


後ろにあずにゃんがいる。いつの間に。というか、タイミングが悪すぎる。
いまは、あずにゃんと上手くお話できる気がしない。
あずにゃんが、怖い。

「部室に行ったら誰もいなくて、待っててもみなさん来ないので今日は部活休みなのかなと思って帰ったんです。」
ああ、そういえばあずにゃんには伝わってなかったのか。
悪いことしちゃったね…
「それで、唯先輩はこんなところでなにを……っ」
あずにゃんの顔が強張った。…どうしたの。なんでそんな心配そうな顔。
「…唯先輩なにかあったんですか!?」
「へ?」
「どうして、泣いてるんですか!?」
あ、そうか。私いま泣いてたんだっけ。
そりゃあずにゃんも驚くよね。止めなきゃ。いますぐ…
そう思っていたらあずにゃんがハンカチで拭きとってくれた。

「…汚れちゃうよ、あずにゃん」
「そうですね、洗って返してください」
ぐふ、手厳しいなぁ、あずにゃんは。
きっとそれは、ただの軽口だったんだろうけど、今の私には。
気持ち悪い
その言葉がぐるぐると頭の中を掻き乱す。


「何かあったんですか?私でよかったら相談に…」
「ううん、なんでもないから、大丈夫」
そう言うと少し残念そうな顔をする君
「そうですか?…でも本当に言ってくださいね」
一転、笑顔を見せる君

「頼りにしてますから」

ずるいよ。あずにゃん。
いまそんなこと言われたら
勘違いしちゃうよ?

「ねぇあずにゃん」
「はい?」
「この前のドラマ、見た?」
「というと憂と一緒に見たっていうやつですか?」
私の言葉足らずの質問を訂正してくれる。さすがあずにゃんだぁ。
「そうそう、それ」
「憂からだいたい聞きましたので内容は分かりますが…」
「そうなんだ、…じゃああずにゃん」


「女の子同士の恋愛ってどう思う?」


あずにゃんの顔がまた強張った。さっきよりも強く。
「……先輩は」
「うん?」
「先輩は、どうなんですか」
質問を質問でかえしちゃったよあずにゃん。まったくもう。
もう、言っちゃおうか。
後ろにはあずさもいるし。今こそ練習の成果を。
もう全部言っちゃって、この苦しみから逃れよう。
あずにゃんを怖いなんて思う自分を、消してしまおう。







「私はあずにゃんが好きだよ」

あずにゃんの顔は、見れない。
やっぱり怖いよ。ものすごく怖い。
けど、もう言っちゃったから、後戻りはしない。してやるか。
「そういう意味の、好き、だよ」
あずにゃんは、答えない。
「ずっと前から、私は好きだったんだよ」
あ、私また泣いてるよ。懲りないなぁ。
「でもわかったんだよ。私は気持ち悪いんだって」
そこであずにゃんが息をのむ音が聞こえた。
「先輩…まさか放課後の…」
「…当たり前だよね。女の子同士なんて。結婚もできないし子供だってできないのに。
ほんとう、ありえない。普通にわかることなんだよ…気持ち悪いんだよ。私。だからあずにゃ」


いつの間にか、あずにゃんが私に抱きついていた。


「もう、止めてください…」
消え入りそうな声であずにゃんが言う。
「そんなこと言わないで…!」
何を言っているの?もとはあずにゃんが
「ごめんなさい、本当に、ごめんなさい」
何を謝っているのだろう。
君の答えは、もう分かっているのに。
ねぇ、早く私から離れてよ。突き飛ばしてよ。気持ち悪いってさ。
私はそうしてほしいんだよ?あずにゃんの迷惑になってるなら、思いっきり切り捨ててほしんだよ?
なのにどうして君が謝るの? どうして君が泣いてるの?







「………………は?」
「そういう意味での、好き、です」
「え?…だって…あずにゃん」
「ごめんなさい、本心はこうなんです」
憂にも嘘言っちゃいました。なんていう君。
え?急展開過ぎて、頭がついていかない。
これは…
「ごめんなさい…唯先輩があの場にいたなんて私知らなくて…」
…そこは別にあずにゃんが悪くないよ…
「ほんとうのこと…言うのが怖くて…先輩のこと…傷つけて…!…ぇぐ…ごめ…なさ…」
「…あずにゃんさっきから謝ってばっかりだよ」
「…だって…ぅぐ…私…」
「私はいま嬉しいんだから、もう全部忘れちゃった」
「……唯先輩らしいです」

「…私たち、気持ち悪いんだねぇ」
「…そうですね。すごく。でも」

「大好きです、唯先輩」

そういえばね、あずにゃん。
「はい?」
あそこに咲いてある花、あずさっていうんだよ?
「ほんとうですか?すごい偶然ですね」
あずにゃんみたいに可愛いから、私が名付けたんだよ?
「…必然でしたね」
あの子に告白とかの練習してたんだー
「だから最初呼び捨てで…」
駄目だったかな?
「…はい、駄目です」
えぇーあずにゃーん
「私にも言ってくれなきゃ駄目です。その子より、もっとたくさん」





「愛してるよ、あずにゃん」



「なんで呼び捨てにしてくれないんですか!」
「まだ無理だよーぅ」


END


  • 劣勢からの逆転は、ホント良いわぁ… -- (みおみお) 2011-10-02 03:51:04
  • 涙腺が!! -- (名無しさん) 2011-10-16 15:47:15
  • 涙腺崩壊!!(´;ω;`) -- (tkyk) 2011-11-27 14:12:18
  • うぉーーー!!感動したーーー!! -- (キング) 2011-12-16 23:04:14
  • こういう話好きだわ〜(^ω^) -- (お姉様) 2012-01-25 13:55:56
  • いい話だ〜!唯ちゃんもあずにゃんも初々しくてたまらないよ!
 -- (けいおん大好きな畠沢進也)  &size(80%){2012-09-12 23:32:06} 
  • 百合は夢があれば実現できる。 -- (あずにゃんラブ) 2012-12-29 02:33:51
  • ほんとに涙と感動が止まんなかったです。10分くらい涙腺崩壊してました( ;∀;) -- (ゆいあずは世界を救う) 2013-07-15 21:32:53
  • 梓(ミズメ)の花は実在したはず -- (名無しさん) 2014-03-22 19:24:10
  • 自称には突っ込むべきなのか -- (名無しさん) 2014-05-07 22:35:22
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最終更新:2010年10月12日 03:59