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ハッピーエンドを目指して

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ハッピーエンドを目指して


風が涼しいからちょっと寒いに変わる頃、私は夕日が綺麗に見える通学路を歩く。影は私の背から私よりも大きくなって、場所によっては車、通行人に踏まれていく。いや、踏まれるより影が一部に侵入する。
隣には誰も居ない。親友に友達、大事な後輩。そして彼女も・・・。
だから帰りに買い食いや楽器店に寄り道する事なんて無くなった。誰も誘ってくれる人が居ないから。
でも、別に構わない。こうして独りぼっちで帰るのも悲しくなんてない。独りで帰るのに、慣れてしまったのだから。

「・・・・・」



『・・・・バイバイ』

これが最後に彼女と話した言葉だ。
あれからもう1年になる。私と彼女は未だに会話すらしない。話すと言っても1ヶ月に一言二言あるかないか。
「消しゴム貸して」「いいよ、はい」ここ3ヶ月の彼女との会話回数だ。覚えてる私も嫌な気分になった。
そもそも発端は私でありそれも些細な出来事でも、言い争いでもない。
あれは私でも思い出したくない黒歴史だ。いや、私の中の最大の過ちである。
何故彼女の話を出したかと言うと、1年前は彼女と私ははお互いを愛していた。
恋人同士と言っても可笑しくない。いや、恋人だった。
私の要望で表では仲良しを演じ裏ではべったりとそんな仲だった。



「・・・・綺麗だな」

余りにも夕日が沈む様が綺麗だったから。美しかったから・・・パシャっとカメラに納める。
そしてデータのチェックをして再びカメラを構える。たまにデータを見てるとやっぱり昔のよりも最近撮った写真の方が上手く撮れている。思い出は新しい方が好き。
だから過去の写真は新しいのよりも綺麗に撮れてなかったらどんどん消している。でも昔の撮った方の景色が好きだったりした場合は撮っておく。
ここ最近のメモリーカードは夕日に夜空、海等の自然の思い出が増えている。
何時からだろう。部員の思い出から季節の思い出に刷り替わった日は。



『澪、まだ許して貰えないのかよ』

『・・・ゴメン』

『謝るのは唯だろ』

親友にそう言われた。それは2ヶ月前の話。
親友は私に言いたいことを告げて学校に戻って行った。HTTの練習をするために・・。そういう私はそのまま帰路に着く。軽音部なのにいけない私だ。
私が最後に音楽室を訪れたのが、3年目の新入生歓迎会の時。一応軽音部の一員だからしょうがなく参加した。違う。親友に無理矢理参加させられた。もちろん彼女も連れてこさせられていた。
音楽室の空気は絶対零度。私と彼女の冷めた空気が全てを壊していたからだ。
私と彼女がボーカルで引っ張っていたがあの時から私と彼女に代わり後輩がボーカルとMCをするようになった。



親友達が異変に気付いた時にはもう遅かったのだ。私と彼女の亀裂はとても深くにまで入り込んでいたのだ。
でもちょっと驚いたのはその異変に気づいた親友達の方だった。私と彼女は完璧に仲良しを演じきっていたのに・・・・。
ボロが出てバれた瞬間から私達はただの同級生になっていた。
親友と友達は私に説得を、大事な後輩と彼女の妹が彼女の説得をした。もちろん私と彼女は結構な意固地でダメな訳だからこうして今に至る。
親友が言っていた。私と彼女は同じ事を言っていた。彼女を説得する後輩もまた彼女に言ったのかも知れない。

『『これは私達の問題だから』』



「・・・・今日は星を見に行こう」

きっと良い星が見えるから・・・。
最近の趣味の一貫になっていた。嫌な事なんか忘れたい。流れ星に持っていって貰いたい。
そう。これは私にとって現実逃避だ。隣に居てくれた彼女を失った現実逃避だ。
でも現実逃避でもいい。何をしようが私の勝手だろ。だから現在進行形の状態で私達は会話をしなければ挨拶も・・・顔さえ会わせたりしないんだ。



『おい澪。何で昨日来なかったんだよ。唯も来てないけどよ』

今日は付いてない。何で嫌な思い出が蘇って来るんだ?
もっと楽しいイメージを浮かべないといけないのに・・・。そっかもう楽しい事なんて無かったな。彼女が居た時・・・一緒だった時がピークだったのだ。
ラッキー程度ならテストで満点取った。夕飯にビーフシチューが出た。誰もが嬉しい。そんなラッキーが多かった。
ある1つだけの星を捕まえた。それは私の中で一番のラッキーだった。アンラッキーは彼女と出逢ってしまった私の存在がアンラッキーだった。そしてまた、捕まえた星を逃がしてしまったのもアンラッキーだった。



トンボが空を飛んでいる。数は判らない。だって動くから。一匹のトンボがあちこちに動きもう一匹のトンボが振り回されながらも付いていっていた。そのまま私の視界から見えなくなる。
だからトンボがどうなったかわからない。突然、蜘蛛の巣に引っ掛かるかも知れない。子供に虫取り網によって捕まえらるかもしれない。
過去の私達みたいに突然何があるのかわからない。



『どうだ?』

『凄く美味しい。憂と同じくらい!』

夢を見ていた。私達が幸せだった頃の過去の記憶。
テストが近いから一緒に勉強して一緒にご飯食べて一緒に一緒にお風呂に入って、一緒に寝た。新婚生活みたいな夢の様な思い出。今となってはどうでもいい過去の遺産なのに・・・涙が溢れてはハンカチで拭う。
後悔なんてしたって遅い。歯車は一度回りだしたら止まる事は普通は有り得ないからだ。



「・・・・」

どれが一番星何だろう?あれ?いやそっち?星はたくさんでわからない。私の思い出以上にあり、輝いている。
ベンチに座って温かい缶の飲み物をゆっくり味わいながら星を眺める。
この時期にこんな時代に星を眺めようなんて思う女子高生人は天文学部の女の子以外はそうはいない。いや、私がいたか。
やっぱり真夜中に1人で見るのには良い景色だ。たくさんの星を眺める私と反対に星は私に私以外の人・物・海など全てを眺めているのかもしれない。そう考えると少し恥ずかしくなった。夜の行動を全て星に見られてるからだ。



誰にも教えてない。誰にも知られてない。それにここ数ヶ月、誰にも見られた記憶がないし見た記憶がない。
別にそれが親友や友達、ただの通りかかりの人。なら別に良い物だった。
ちょうど私の座ってるベンチの反対側に座った。特に離す事はない。私はまだ信じている。反対に座っている人は私の知らない人である事を・・・。知り合いでも私は無視すればいい。相手の存在をなくせばいいのか、私の存在を消せばいいのか。別にそんな事、私にはは関係なかった。関わらなければいい話だから。
帰ろう。楽しみがちょっと幻滅した。1人で見るのが楽しいのに・・・がっかりだ。



「待って!」

最悪だ。声をかけられた。でも別に私じゃない。そう。演義なのだろう。演義なら迷惑はかからないがここでやらないで欲しかった。星を観賞してたのに・・・。私の楽しみを奪って・・・・。
でも、演劇の練習だ。そう。少なくとも私に向けて発したのではない。仮にそうだとしても私は無視する。無視してみせる。
だってそっくりだったから・・・・似ていたから・・・・・妹じゃない。彼女の声が聞こえたから。
私は声の主に振り向かずに歩く。



「澪ちゃん!」

ぎゅっ。擬音に例えたらこんな音だろう。背後から抱き締められた。しっかりお腹の部分で自分の手を握っている。
それよりも声はやっぱり彼女だった。それに私の名前まで呼ばれてしまった。
日本中に『澪』と言う名前の人は私以外にいる。でも、この場では?真夜中の2人っきりしかいないこの公園では?数ヶ月から私以外人を見た事ないこの公園に澪と言う名前の人は?
答えは居る。ただし、それは秋山澪。つまり私。彼女は私に向けて発した言葉だったのだ。



「・・・・ごめんなさい」

彼女は謝った。別に私は怒って居なかった。むしろ謝らないといけないのは私である。なのに何故?関係ない。私はもう関係ない。
風が吹いた。私の正面に向かって・・・。髪が鬱陶しい。
早く帰りたい。帰って寝たい。ふかふかの柔らかいベッドに挟まれて眠りたい。
もう最悪だ。今日は星を観に行かなきゃ良かった。最悪だ。最悪なのに・・・最悪なのに・・・・涙を流している私がいるからもっと最悪だ。



「・・・・もう、やだよ」

「辛いよ・・・辛くて死んじゃいたいよ・・・・」

「もう・・・我慢・・出来・・・ない・・よ」

「どうして?・・・・・どうしてこうなっちゃったの?」

彼女の涙混じりの声が私の心にも伝わる。
久しぶりに泣いている彼女の声を聞いた。変わってない。何も変わってない。軽い感じな泣き声。
でも、今の彼女は違う。テストの追試で焦ってるとか、発表で遅刻したとか、そんなんじゃない。
大切な何かを失った。大切な誰かを失った。だから泣く。悔しい?違う。恐怖?後悔?全然違う。
悲泣そのものだ。本当に大切な何か、誰かを失った。
いや、彼女は私を失った。私も彼女を失った。



「・・・・りっちゃんから聞いたよ・・・・あんな事があったなんて・・・・・それを知らずに私は・・・」

「・・・・なあ」

「何?」

「・・・・・」

言いたい言葉が見付からない。必死に頭を回転させるがキーワードが浮かんでこない。
彼女が何しに此処に来たか?そんな事仲直りしに来たって解りきってる。
仲直りしよっか。うん。なんて能天気な雰囲気な気持ちで仲直りなんて出来るわけない。
むしろ怖い。私は彼女が怖い。だって今の彼女の事を全然知らない。桜ヶ丘高校3年で妹に憂ちゃんが居て、軽音楽部所属で私の昔の恋人だった平沢唯しか・・・・私は知らない。



「・・・1年前の私はどうしてたんだ?」

「・・・・此処にいる私はどうすれば良いかわからないよ」

「・・・・・ごめんね。私バカだから・・・わからないよ・・・・・でもね。これだけは言えるよ」


私は今でも・・・・貴女の事を愛してる



帰りたかった。帰りたかったさっきまでの私の足は命令しても言うこと聞かない。身体が私の命令を聞かない。涙はどんどん流れるし、身体だって震えだしてる。
もう何すれば良いのかわからない。どうしたら良いの?誰か教えて?私はどうしたら良いの?何て言ったら良いの?
ハッピーエンドを目指すには私はどうすれば良いの?
答え・・・・彼女に・・・今の気持ちを伝えれば良い。



「・・・・・ん」

「?」

「・・・・めん」

「えっ?」

「ごめん!」

「・・・私こそごめんなさい」

「良いよ」

「・・・・ありがとう。また恋人同士に戻ったね」

「・・・私を恋人として良いの?」

「うん」



振り向いて恋人の唯を思いっきり抱き締める。顔は見ない。私の顔は酷いだろうから。唯も抱き締めてきた。
公園の灯りと夜空の星が私達を見ている。料金を請求したいが別に良い。
一度捕まえた星。それを逃がしてしまった。
でももう一度捕まえた。今度は離さない。離すと本当に消えてしまいそうだから。



「そのまま聞いて。今度は誓うよ」

「もう、澪ちゃんを離さない。何があっても・・・澪ちゃんの事を愛します。私はハッピーエンドが大好きだから」

「・・・・ばか」

「えっ?」

「・・・嬉しいんだよばか」

「澪ちゃんも誓ってくれるかな?」

「恥ずかしくて言えないよ」

「えー」

「・・・だから」

ちょっと身体を離す。そこで初めて唯の顔を見た。目から涙を流してて腫れぼったい。それでも私の世界で一番大切で愛してる人の顔には代わりなかった。
自然と唯の瞳が閉じる。私も閉じる。視界が闇になる。関係ない。
私は言葉で表すのは苦手だ。だから行動で表した。私の唇を唯の唇にそっと重ねる。昔と変わらない柔らかくてゆるい唯の感触がする。きっと唯は私の感触を味わっているのだろう。



どのくらいか分からないが私から離れる。ゆっくり瞳を開ける。
そこにはちょっと涙目でもっとキスしていたいと上目遣いで訴える唯がいた。
そして今度は・・・唯から求められた。
二度目なのに嫌な気分にならない。寧ろ嬉しかった。唯からキスしてくれたから・・・・唯から私を求めてくれたから・・・。
今度は唯からゆっくり身体を離す。その顔は真っ赤。私も真っ赤だったに違いない。



もう一度ベンチに腰をかける。今度は唯と共に・・・。手は握ったまま、星を見つめた。
さっきよりも輝きが強くなっていた。まるで仲直りを祝ってくれるかのように・・・。
それでも私と唯はこれから頑張らないといけない。
この物語をハッピーエンドにするために・・・。
まずは、みんなに謝る。そこからだ。本当のハッピーエンドはまだ先にあるから。
でも・・・・今だけは、唯と2人っきりで夜空の星を見ていたい。それは唯も望んでいる事だから。

終わり。



題材はこれhttp://www.youtube.com/watch?v=Y9mFoMaYaEcなんだけど
全く関係なくなった。

初出:3->>637

  • …理由が気になる……憂がやたら出てきたし憂関連か…? -- (名無しさん) 2011-03-19 12:53:22
  • 確かに理由がすごい気になった -- (名無しさん) 2011-08-09 23:54:35
  • 何だ、ただの痴話喧嘩か -- (KYな俺) 2012-03-23 08:28:21
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