唯澪@ ウィキ

気持ち

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yuimio

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気持ち


「おーす…あれ?」

いつもよりも少しだけ早く部室にやってきた私。先に来ているはずの唯に挨拶をしたんだけど…返事はない。
代わりに聞こえてきたのは、スゥスゥという小さな寝息。

「スゥ…スゥ…んー…むにゃむにゃ…」
「まったく、一足早く行ったから練習でもしてるのかと思ったら…しょうがないやつだな」

律たちも掃除が終わったらそのうち来るだろうし、それまでこのままにしといてやろうかな。
椅子に座ってスゥスゥと寝息を立てる唯の横顔を見つめていると、不思議と落ち着いた気持ちになる。
そういえば、律の寝顔を見てる時もこんな感じになるんだよな…もしかして私って寝顔が好きなのかな。

「律もお前も、寝てる時は静かでいいんだけどな」
「みおちゃー…えへへ…しましま…」
「…どんな夢見てんだ」

それにしても…唯の寝顔は高3とは思えないほどに幼く見える。
と思った次の瞬間には驚くほどに大人っぽく見えたりして…

「…無防備すぎるぞ」

気付いた時には、私の左手は唯の頭を撫でていた。
温かくて柔らかいふわふわした髪の毛に触れていると、日頃抑えている衝動が溢れそうになる。

「唯…私な、もっとお前のそばにいたいんだ」

初めて出会った時から、唯のことはいつも気にかけていた。
でもそれは保護者の視点っていうか、ほっとけないっていうか、目を離したら次の瞬間には遠くに行ってしまいそうっていうか…
だから律がもう一人増えたもんだと思って、唯のことをずっと見てきたんだ。

でも時間が過ぎていくうちに、唯は私がいなくても大丈夫だってことに気付かされた。
だって憂ちゃんがいて、和がいて、梓がいて…唯のそばには、いつも見守ってくれる人がいる。たくさんの人に好かれているんだ。

「…だから…お前には私は必要ないんだよな…」

そう思って距離を置いてから初めて気付いた自分の気持ち。
幼なじみに向ける気持ちとも、友達に向ける気持ちとも違う、どうにもならない気持ち。

私は、唯のことが――

「みおちゃん…?」
「…っ!」

気付くと、唯は目を開いて私を食い入るように見つめていた。
私は驚いて手を引っ込めると、あわてて顔をそらした。

「澪ちゃん」
「な、なんでもないんだ。あはは、ちょっと頭にゴミが付いてたから、それで」
「どうして泣いてるの?」
「……っ」

そして唯は、私を抱きしめた。

「ゆ…唯…」
「大丈夫だからね澪ちゃん。大丈夫だよ」

どうやら、さっき言った言葉は聞こえていなかったらしい。唯は優しく私の体を包み込んで、あやすように頭を撫でた。
大丈夫だよ、か。そういえばこの言葉って…

「…唯。大丈夫だよって、前にも言ってくれたよな。1年の学祭の時」
「うん。言ったよ」
「私…あの時すごく緊張しててさ。もうダメだって思ってた。でも唯がああ言ってくれたからちゃんと歌えたんだ」
「そっか」
「…唯。お前は私のことなんか必要じゃないのかもしれないけど…でも、私にはお前が必要なんだ」
「……」
「好きだ。お前のことが、大好きだ」
「澪ちゃん…」
「返事とか、そういうのはいいから…ただお前のそばにいさせてくれ。それだけで…いい、から…」

私は溢れる涙を隠すように、唯の胸に顔を押し付けた。
好き、好き、好き…唯のことが大好きだ。なのに、この気持ちは絶対に届かない。
それが辛くて、哀しくて、悔しくて…自分が、抑えきれなくなる。

「うっ…うぅ…ゆ…ゆいぃっ……」
「…澪ちゃん」

唯は私を抱きしめる腕に力を込めた。そして…唇を重ねた。

初めてのキスは甘くて幸せな、奇跡みたいな味がした。

「…唯……」
「私も大好きだよ、澪ちゃん」
「でも、お前には…」
「…私もね。ずっと我慢してたんだ」
「え?」
「澪ちゃんにはりっちゃんがいるから…だから私は澪ちゃんには必要ないんじゃないかなって」
「唯…」
「だからね、いま私幸せなんだ。澪ちゃんに必要だって言ってもらえて。大好きだって言ってもらえて」
「私も…私も幸せだ」
「…いっしょ、だね」

今度は私から唇を重ねた。一度目よりも長い時間、私たちは一つになった。

「…ずっとずっと一緒にいようね。澪ちゃん」
「…あぁ、ずっとずっと、一緒だ」

そしてどちらともなく、私たちは三度目のキスをした。

END

長文すまそ!

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  • イイッ -- (名無しさん) 2010-09-04 12:41:51
  • 素晴らしいっ!! -- (名無しさん) 2010-11-24 00:36:51
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  • しましまェ... -- (名無しさん) 2013-02-20 01:35:31
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