チョコレート・キス
【チョコレート・キス】
唯「あ、いたいた! おーい、澪ちゃーん」
澪「唯か。どうしたんだ?」
唯「もー探したよ。起きて部屋行ったらもういないんだもん」
澪「今日は朝から大学の図書館に行ってたんだよ」
唯「ふーん。春休みなのに頑張るねえ」
澪「唯だってゴロゴロしてるばっかりじゃダメだぞ。高校の頃より休み長いんだからもっと有意義に使わないと」
唯「はーい。ところで澪ちゃん」
澪「なんだ?」
唯「問題です。今日は何の日でしょう」
澪「今日? 今日は二月の十……四だから、バレンタイン?」
唯「いえーす! 今年の戦果はいかがですかな」
澪「戦果って……そりゃゼロだよ。朝一に一人で出たから今日会った知り合いは唯が一人目だし」
唯「一個もないの?」
澪「まあ高校の時はその……アレでああなっちゃったけど、ここだと一学生でしかないからな。ほとんど話したことないような人から貰うこともないの」
唯「ふふふ……」
澪「なんだよ?」
唯「いやいや。いきなりそんなにチョコが減っちゃったら寂しいだろうと思って、じゃ~ん! 私から澪ちゃんに一つ、プレゼントします」
澪「へえ……高校三年間食べてばっかりだった唯があげる側に回るとは……」
唯「まあ私だってたまにはね」
澪「じゃ、ありがたく貰っておこうかな」
唯「どうぞどうぞ」
澪「ちょうどおやつ時だし部屋に行って一緒にコーヒーでも飲むか。あいにく私の方はチョコとか用意してなくて悪いんだけど、お菓子の残りとかならあるし」
唯「うん!」
澪「そういえば他のみんなは今日いないのか? 部室とか?」
唯「んーいやなんか用事とか言ってたよ」
澪「そっか。じゃあ私、先に行って準備してるから」
唯「いってらー」
※
澪「えっと……それでこれは……?」
唯「ガトーショコラ! 澪ちゃん好きなんでしょ?」
澪「まあそうだけど、私が知ってるのとなんか違うような……」
唯「た、確かに見た目はちょーっとアレかもしれないけど、味には自信あるから!」
澪「ていうか手作りなのか……。なんか今年はいやに凝ってるなあ」
唯「ささ、ひとくち」あーん
澪「い、いや自分で食べられるからいいよ!」
唯「まあまあ」
澪「……。あ、あ~ん……///」
唯「どう?」
澪「……おいしい」
※
唯「はー……おなかいっぱい」
澪「二人なのに食べすぎちゃったかも……」
唯「あのね、澪ちゃん」
澪「なんだ? 急に改まって」
唯「今日、みんながいないのね、私が頼んだからなの」
澪「……? そうなんだ。どうして?」
唯「……澪ちゃんと二人っきりになりたかったから」
澪「え? それってどういう――」
唯「こういうこと!」ちゅー
澪「……!?」
唯「……ぷはっ」
澪「ななななにを……」
唯「もう、澪ちゃん鈍すぎるよ」
澪「は?」
唯「だから、澪ちゃんのことが好きなの! 気づいてよ!」
澪「え? ええ!? 気づいてって……えっと……」
唯「ごめんね、いきなり。だけど同じ大学でも澪ちゃんと一緒にいられる時間はどんどん短くなってって……私もう居ても立ってもいられなかったんだ」
澪「唯……」
唯「返事はいつでも、どんなに遅くなってもいいから。それじゃ――」
澪「待って」
唯「……」
澪「今、言うよ。……返事」
唯「……」
澪「えっと、その、唯のこと……私も、好きだと思う」
唯「……!」
澪「今までそんなこと考えもしなかったけど……でも、唯にキスされた時、分かったんだ」
唯「分かった?」
澪「キスされても、全然嫌な感じしなくて……ていうかむしろ嬉しい気もしたというか。ああ、私って唯のこと好きだったんだなって」
唯「……澪ちゃん、きっと私がキスしちゃったからあてられてるだけなんだよ」
澪「そんなことない! 考えてみれば高校の時からずっと、唯のこと気になってた。梓や憂ちゃんや、唯と仲良くするみんなが羨ましかった」
唯「……」
澪「いつも唯は私に新しい景色を見せてくれて、そんな唯にずっと惹かれてたんだ。今、それが好きってことに気づいたんだよ」
唯「……ほんとに? 後からやっぱり勘違いでしたーとか言わない?」
澪「言わないよ。約束する」
唯「……じゃあキス、してくれたら信じる」
澪「……わかった」
ちゅっ
澪「どう?」
唯「みおちゃん!」だきっ
澪「うわ!?」
唯「わたし、わたし……っ」ぐす
澪「もう、泣くなよ」
唯「だって、嬉しくて……。こんなにすぐオッケー貰えるなんて思ってなかったから」
澪「……唯、ごめんな」
唯「なにが? 澪ちゃんが謝ることなんて何もないよ」
澪「ほら、唯は私にチョコくれたのに、私はなんにも用意してなかったからさ」
唯「いいよ、そんな。澪ちゃんがこうして応えてくれたことが私は何より嬉しいんだから」
澪「ホワイトデーには、何かちゃんとしたものを返すよ」
唯「……楽しみにしてる」
澪「だから今はこれで」ちゅっ
唯「……/// 澪ちゃんってさ……」
澪「ん?」
唯「恥ずかしがり屋なのに、時々平気でそういうことやるよね」くすっ
澪「なっ! そ、それは唯が……」
唯「でもそういうところも、私は好きだな」
澪「……ありがと」
唯「ねえ、澪ちゃん」
澪「なんだ?」
唯「もっかいやって」
澪「ええ!?」
唯「ダメ?」
澪「ダメじゃないけど……。もう、あと1回だけだからな」
唯「はーい」
澪「好きだよ、唯」ちゅっ
(了)
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