私の首筋を舐める舌が、中途でぴたりと止まったものだから、私は不思議に思って彼
女を見上げた。
その眸に映っているのは私のようで、私の姿ではない。
もっと別の、遠くに位置する何かを求めているみたいだ。まるで旅人みたいに。
女を見上げた。
その眸に映っているのは私のようで、私の姿ではない。
もっと別の、遠くに位置する何かを求めているみたいだ。まるで旅人みたいに。
「向日葵、みにいかない?」
あんまり突発的なその言葉に、驚くのも無理はない。
二度、三度、まばたきを繰り返しながら、私は先ほどまでの情事の余韻を拭いきれず
にいた。
汗で額に張り付いた前髪を、煩わしく感じる。
部屋の白い天井が、空みたいに高く見えた。
二度、三度、まばたきを繰り返しながら、私は先ほどまでの情事の余韻を拭いきれず
にいた。
汗で額に張り付いた前髪を、煩わしく感じる。
部屋の白い天井が、空みたいに高く見えた。
「そのついでに、アイスでも買ってさ」
私に跨っていた体を退けて、彼女は早々とベッドの脇に脱ぎ捨てていた桃色のTシャ
ツを手に取り、頭から被った。
私は未だ夢から覚めぬような心地で、呆然と彼女の行動をうつろな目つきで眺めてい
る。
ツを手に取り、頭から被った。
私は未だ夢から覚めぬような心地で、呆然と彼女の行動をうつろな目つきで眺めてい
る。
「ちょうどいい丘があるんだ。
向日葵が咲いていて、古いベンチもあって」
汗か涙か、はたまた別の液体か。湿り気を帯びている私の体は、この部屋の中で
は、やたら風変わりに映る。
窓の外ではいやにあわてた鳥たちが、屋根の上を飛び交って遊んでいる。
風をはらんだカーテンの隙間からは、白いベッドが十分に覗けてしまう。
鳥たちは小さなその隙間から、覗いていたかもしれない。小さな私たちを。
は、やたら風変わりに映る。
窓の外ではいやにあわてた鳥たちが、屋根の上を飛び交って遊んでいる。
風をはらんだカーテンの隙間からは、白いベッドが十分に覗けてしまう。
鳥たちは小さなその隙間から、覗いていたかもしれない。小さな私たちを。
「そこに好きな人と行くのが、夢だったの」
透き通った彼女の横顔は、シャボン玉みたいに、触れると弾けてしまいそう。
「忘れてたんだ。つい、さっきまで」
彼女の細い肩を透かして僅かに覗けたのは、窓の中の小さな風景。
大きな入道雲が真ん中に居座って、夏の日差しで街は白く光っていた。
青い空はいつもより大きく、遥かに遠い。蝉の声は街中に響き渡っている。
私たちの存在はとても小さくて、頼りなくて。
それでも二人で、生きているんだって。
そんなことばかり、彼女と二人でいるときは、考えてしまう。
私の変な、癖だった。
大きな入道雲が真ん中に居座って、夏の日差しで街は白く光っていた。
青い空はいつもより大きく、遥かに遠い。蝉の声は街中に響き渡っている。
私たちの存在はとても小さくて、頼りなくて。
それでも二人で、生きているんだって。
そんなことばかり、彼女と二人でいるときは、考えてしまう。
私の変な、癖だった。
「やっと思い出せたから、行こうよ」
少し強引な彼女の掌に引っ張られて、一歩ベッドの外に出る。
初めて一人で外に飛び出した子供みたいに、不安な気持ちに駆られた。
初めて一人で外に飛び出した子供みたいに、不安な気持ちに駆られた。
「だいじょうぶ」
情事の後の私が子供みたいになってしまうことを、彼女は知りすぎるくらい知っていた。
私は彼女に抱きついた。そうしないと、気が違ってしまいそうだったのだ。
風が柔らかく忍び込む。それに揺られた風鈴の透明な音色が、部屋に澄み渡っていく。
私の背中に回った手が、少しだけ私を愛撫するみたいにいやらしく動いたけれど、本
来の目的を思い出したのか、彼女はすぐに私の顔を向き直して、しらじらしく年相応な
笑みを溢すばかりだったのだ。
私は彼女に抱きついた。そうしないと、気が違ってしまいそうだったのだ。
風が柔らかく忍び込む。それに揺られた風鈴の透明な音色が、部屋に澄み渡っていく。
私の背中に回った手が、少しだけ私を愛撫するみたいにいやらしく動いたけれど、本
来の目的を思い出したのか、彼女はすぐに私の顔を向き直して、しらじらしく年相応な
笑みを溢すばかりだったのだ。
おしまい
かなりわかりにくいけど、紬視点。
そして少しエロい。事後だからセーフだと思いたい。
そして少しエロい。事後だからセーフだと思いたい。