唯ちゃんのことが気になる。
それを自覚するようになったのはいつだろう、自分でもわからない。
ただ気付かないうちに、唯ちゃんのことを目で追ってしまうのだ。
それを自覚するようになったのはいつだろう、自分でもわからない。
ただ気付かないうちに、唯ちゃんのことを目で追ってしまうのだ。
唯「あずにゃ~ん♪」
梓「は、離れてください!練習練習!」
いつも唯ちゃんに抱きつかれる梓ちゃん。
言葉とは裏腹に表情が緩みそうになるのを、必死にこらえている。
正直、うらやましかった。唯ちゃんが私にあんな風に抱きつくことなんてないから。
言葉とは裏腹に表情が緩みそうになるのを、必死にこらえている。
正直、うらやましかった。唯ちゃんが私にあんな風に抱きつくことなんてないから。
律「なんだ~唯、また梓で遊んでんのか?今度は私が遊んでやるよ!」
唯「きゃ~、やめてよりっちゃ~ん♪」
律「うりうり~♪」
りっちゃんはあんな風にためらいもなく抱きつける。そして澪ちゃんも…
澪「なにやってんだか…律、離してやれ!」ガツン!
律「あう…」
唯「わーん澪ちゃん、りっちゃんがいじめるの~」
澪「あーもう、よしよし…」
唯ちゃんに抱きつかれても、自然な様子だ。仲がいい証拠だと思う。
…じゃあ、私は?
唯「ふい~…あ、ムギちゃん、お茶いれてくれる?喉乾いちゃった」
紬「あ…うん、ちょっと待ってて?」
私はこうしてお茶をいれて、唯ちゃんに微笑みかけるだけ。
そして唯ちゃんも無邪気な笑顔で笑い返すだけだ。ただ、それだけ。
自分を他の皆と比べて、なんとなく疎外感を感じたりしている私は、心が貧しいのだろうか。
そして唯ちゃんも無邪気な笑顔で笑い返すだけだ。ただ、それだけ。
自分を他の皆と比べて、なんとなく疎外感を感じたりしている私は、心が貧しいのだろうか。
唯「ムギちゃん?どしたの?」
紬「へ?あ、なんでも…」
唯「ふうん…」
唯ちゃんはそれ以上なにも聞くことはなく、澪ちゃんたちとのおしゃべりに花を咲かせ始めた。
…もっと、気にしてほしいのに。笑う唯ちゃんを見て、チクリとした痛みが胸を刺す。
もうやめよう。私はただこの4人のそばにいらればいい。友達として、仲間として。
もうやめよう。私はただこの4人のそばにいらればいい。友達として、仲間として。
今までだってそうだった。唯ちゃんにとっても私にとっても、現状のままが最良のはずだ。
律「じゃあそろそろ解散!ムギ、悪いけど戸締まり頼むな」
紬「ええ、また明日…」
唯「ムギちゃん、またね!」
紬「…またね、唯ちゃん」
一緒に帰ろう、と言ってもらえるのではないかという淡い期待はあっさりと打ち破られる。
皆で連れ立って階段を降りていく唯ちゃんを見送って、私は音楽室の椅子に腰を下ろす。
皆で連れ立って階段を降りていく唯ちゃんを見送って、私は音楽室の椅子に腰を下ろす。
どうして、こんな気持ちになるんだろう。どうして、こんなに胸が痛いんだろう。
その答えは分かっているはずなのに、私はそれを認めたくなかった。
認めたら、私は、私は…
その答えは分かっているはずなのに、私はそれを認めたくなかった。
認めたら、私は、私は…
紬「あ…」
気付くと、涙が頬を伝っていた。
こらえようと思っても、涙はとめどなく溢れ出て、止めることができなかった。
こらえようと思っても、涙はとめどなく溢れ出て、止めることができなかった。
紬「私…私、は…」
伝わるはずなんてないのに、想いは口をついて飛び出す。
言葉にしなければ、私は耐えられなくなりそうだった。
言葉にしなければ、私は耐えられなくなりそうだった。
紬「唯ちゃんのことが…好き…」
初めて口にした想い。でも、これは唯ちゃんに伝わることはない。
次の瞬間、私の体を温かい腕が包み込む。柔らかい胸が、私の顔に押し付けられる。
そして私にはそれが誰だか、顔を見なくても分かっていた。
そして私にはそれが誰だか、顔を見なくても分かっていた。
紬「唯…ちゃん?」
唯ちゃんは何も言わずに私の涙を拭うと、静かに唇を私の頬に重ねる。
あまりに唐突な出来事に、頭が真っ白になる。ただ認識できたのは、唯ちゃんの温かい唇だけだった。
あまりに唐突な出来事に、頭が真っ白になる。ただ認識できたのは、唯ちゃんの温かい唇だけだった。
紬「な…なん、で…」
唯「ムギちゃん、何だか寂しそうだったから戻ってきたの。そしたら…聞いちゃった」
紬「あ、あの、私…」
唯「大丈夫だよ?」
唯ちゃんは私を強く抱き締めると、ゆっくりと言った。
唯「私も、ムギちゃんのこと大好きだから…だから、泣かないで」
紬「唯…ちゃん…でも…」
唯「いいからいいから♪さ、一緒に帰ろう?皆も待ってるから」
紬「う、うん…」
私は馬鹿だ。唯ちゃんのことが好きだっていう気持ちを隠して苦しんで…
そんなことしなくても、最初から伝えればよかったのに。
そんなことしなくても、最初から伝えればよかったのに。
紬「唯ちゃん…手、つないでいい?」
唯「うん、いいよ!」
唯ちゃんの手は、とても温かった。とても、幸せな温かさだった。
唯「じゃあ、行こっか♪」
紬「…うん!」
お互いに手を握りしめ、私たちは夕日に染まる音楽室を後にした。