彼女の髪は金色で柔らかい。
私はたまに、自分の手が勝手にその金髪の方へ動くのを感じる。
その度に、急いで抑える。
私はたまに、自分の手が勝手にその金髪の方へ動くのを感じる。
その度に、急いで抑える。
「はい、お茶でーす」
彼女はそう言って、ことん、とティーカップを机に置いた。
音がすっかり空気に溶け込んだあとで音楽室を見渡すと、二人ぽっちの寂しさが目立つ。
音がすっかり空気に溶け込んだあとで音楽室を見渡すと、二人ぽっちの寂しさが目立つ。
「みんな遅いね」
私の気持ちを察したように言う。
そうだねえ、と私も返して、そうして気づいてしまった。
そうだねえ、と私も返して、そうして気づいてしまった。
窓から差し込む西日が彼女の髪と混ざって、切ない、そしてどこか懐かしいようなオレンジで彩っていた。
私は無性にその髪を触りたい。
けれど、その行為はあまりにも不自然すぎるように感じられる。
私は無性にその髪を触りたい。
けれど、その行為はあまりにも不自然すぎるように感じられる。
「あ、ねえ、唯ちゃん」
私が自分の右手と格闘していると、彼女はそっと私の鼻の先へ顔を近づけた。
私が一層熾烈になにかを押さえ込んでいるのにも気づかず、彼女は微笑む。
私が一層熾烈になにかを押さえ込んでいるのにも気づかず、彼女は微笑む。
「唯ちゃんの髪の毛、赤くなってるよ」
ふわ、と柔らかい掌が、私の髪の毛を撫で付けて、ついでに耳を指で優しく摘んだ。
なんだか綺麗、という彼女の仕草が思ったより事も無げで、私は可笑しくなった。
なんだか綺麗、という彼女の仕草が思ったより事も無げで、私は可笑しくなった。
「ムギちゃんもね」
そう言って伸ばした手は思ったよりもすんなりと受け入れられた。
彼女の髪は、ああ、やっぱり柔らかい。
ムギちゃんの髪の毛って柔らかそうで綺麗だよね、というお話。