涙。クッキー。あなたとわたし。
部活も終わった、いつもの帰り道。
他のみんなとは別れて、今はムギちゃんと二人きり。
他のみんなとは別れて、今はムギちゃんと二人きり。
…というか、そうしてもらったんだけどね。
今日は私にとって、とっても大事な日だから。
今日は私にとって、とっても大事な日だから。
「む、ムギちゃん!」
もうすぐ夕日も沈んでしまいそうな
でもまだ、暖かい色で景色が染まっている時間。
でもまだ、暖かい色で景色が染まっている時間。
だんだん日も長くなってきたのかな。なんて思う。
一ヶ月前は、少し暗くて、ちょっぴり肌寒かったから。
一ヶ月前は、少し暗くて、ちょっぴり肌寒かったから。
その時もこんなふうに二人っきり。
たしか場所も、ちょうどここらへんだ。
たしか場所も、ちょうどここらへんだ。
「……なに?唯ちゃん」
少しだけ、こわばっているのが分かるムギちゃんの声。
それを聞いて、ただでさえ高鳴っている心臓が。
もっともっと、と。急かすようにうるさく動く。
それを聞いて、ただでさえ高鳴っている心臓が。
もっともっと、と。急かすようにうるさく動く。
今の私でさえそうなんだ。
きっとあの時、ムギちゃんはもっとドキドキしてたに違いない。
きっとあの時、ムギちゃんはもっとドキドキしてたに違いない。
……すごいな。ムギちゃん。
私だったら、きっと無理かな。
私だったら、きっと無理かな。
でも、今度は私の番だから。私が、気持ちを伝える番だから。
頑張らなくちゃって。ひとつ、ふたつ。大きく深呼吸して。
頑張らなくちゃって。ひとつ、ふたつ。大きく深呼吸して。
「あのね、渡したいものがあるの」
――――――
――――――――
――――――――
「あの…そのね……」
「…これ、受け取って欲しいの!」
「…これ、受け取って欲しいの!」
あれはちょうど一ヶ月前のバレンタインの日。
そう言ってムギちゃんが取り出したのは
とっても綺麗にラッピングされた、可愛らしい小包。
とっても綺麗にラッピングされた、可愛らしい小包。
「かわい~!なんだろ~!」
「チョコレート。唯ちゃんに渡したくて」
「チョコレート。唯ちゃんに渡したくて」
あれ?でも今日部活の時もすっごく美味しいチョコレート、持ってきてくれたよ?
「これはね、唯ちゃんのために用意したものなの」
「…私の手作りだから、美味しくないかもしれないけど」
「ムギちゃんの手作りなのに、美味しくないわけないよ!ありがと~!」
「…私の手作りだから、美味しくないかもしれないけど」
「ムギちゃんの手作りなのに、美味しくないわけないよ!ありがと~!」
まだこのときは、きっと皆に用意してるんだろうって。
そんなふうに思ってたんだけど。
そんなふうに思ってたんだけど。
「それと、もう一つ。…唯ちゃんに、聞いてほしいことがあるの」
「なになに~?」
「私ね、唯ちゃんのこと……好きなの」
「私もムギちゃんの事好きだよ~!」
「なになに~?」
「私ね、唯ちゃんのこと……好きなの」
「私もムギちゃんの事好きだよ~!」
ムギちゃんが、急にこんなことを言い出して。
「ふふ…ありがとう。でも、私の好きは、その好きじゃないかも」
「もちろん、お友達としても大好きよ」
「でもね、それだけじゃないの。私の好きは」
「もちろん、お友達としても大好きよ」
「でもね、それだけじゃないの。私の好きは」
たまに見せる、とっても真剣な顔をしていたから。
なんだか、目を逸らせなくなって。
なんだか、目を逸らせなくなって。
「唯ちゃんのこと見てるだけで、考えてるだけで、すごくドキドキして」
「いっつも目で追っちゃったり、気づいたら唯ちゃんのこと思ってたり」
「…できたら、もっと一緒に居たい」
「手を繋いだりとか、二人で遊びに行ったりとかして」
「いっつも目で追っちゃったり、気づいたら唯ちゃんのこと思ってたり」
「…できたら、もっと一緒に居たい」
「手を繋いだりとか、二人で遊びに行ったりとかして」
ここまで言われたら、鈍感な私でも。
…そうじゃないって、さすがに分かる。
…そうじゃないって、さすがに分かる。
「もっと唯ちゃんのことを知って、もっと私を知ってほしい」
「……そういう、好き」
「……そういう、好き」
「え…あ、あの、わたし…」
言葉がうまく出てこない。頭がうまく回らない。
「ごめんね。急にこんなこと言って。どうしても、伝えたくなっちゃったの」
「聞いてくれて、ありがとう」
「聞いてくれて、ありがとう」
分かるのは、うるさいくらいに心臓が跳ねてるってことだけ。
「私、びっくりして、すっごくドキドキしてて」
「その、今すぐちゃんとお返事できそうにないよ…」
「うん。大丈夫。ゆっくりでいいから、ね」
「それに…その、無理にお返事しなくても大丈夫だから…」
「え……?」
「その、今すぐちゃんとお返事できそうにないよ…」
「うん。大丈夫。ゆっくりでいいから、ね」
「それに…その、無理にお返事しなくても大丈夫だから…」
「え……?」
どうして、そんなに悲しそうに、そんなに苦しそうに。
そんなことを言うのか、分からなくて。
そんなことを言うのか、分からなくて。
「私が、自分のわがままで気持ちを伝えたの」
「唯ちゃんに、気持ちが伝わっただけで、私は十分」
「そういう好きだって、思ってもらえなくても、その時は…」
「……今までみたいにいいお友達でいれたら、嬉しいな」
「唯ちゃんに、気持ちが伝わっただけで、私は十分」
「そういう好きだって、思ってもらえなくても、その時は…」
「……今までみたいにいいお友達でいれたら、嬉しいな」
ムギちゃんは、笑っているのに、何だか今にも泣き出してしまいそうに見えて。
そんな顔は、見ていたくなくて。
そんな顔は、見ていたくなくて。
「当たり前だよ!嫌いになんてなったりしないよ!」
「…そうね。唯ちゃんは、そう言ってくれるって思った」
「…そうね。唯ちゃんは、そう言ってくれるって思った」
そんなところも好きなの、って。そう言ってくれたけど。
その声が、その表情が、胸を絞めつけたような気がした。
その声が、その表情が、胸を絞めつけたような気がした。
「…チョコ、受け取ってくれてありがとう。私の想いを聞いてくれて、ありがとう」
「それじゃあ……また明日ね!」
「それじゃあ……また明日ね!」
そう言って、ちょっと駆け足で駅に向かうムギちゃん。
まだ私の胸はうるさいくらいに鳴っていて。
心も体も何だかフワフワしていて。
心も体も何だかフワフワしていて。
また明日ね、って返すこともせずに
その後ろ姿を、ぼうっと眺めていることしかできなかった。
その後ろ姿を、ぼうっと眺めていることしかできなかった。
――――
「おはようみんな」
「おっす~」
「お、おはようムギちゃん」
「おっす~」
「お、おはようムギちゃん」
次の日、学校であったムギちゃんは、本当にいつも通りで。
昨日のことは、夢か何かなんじゃないかって。そう思いもしたけど。
昨日のことは、夢か何かなんじゃないかって。そう思いもしたけど。
「どうしたんだ唯? なんか緊張してないか?」
「そ、そんなことないよ~。なにいってるのさりっちゃん」
「そ、そんなことないよ~。なにいってるのさりっちゃん」
ムギちゃんを見るだけで、それだけでドキドキしちゃって。
それが、夢なんかじゃないんだよって、そう教えてくれる。
それが、夢なんかじゃないんだよって、そう教えてくれる。
そんな私の様子を、分かってるはずなのに。
それでもやっぱりムギちゃんはいつもどうりだった。
それでもやっぱりムギちゃんはいつもどうりだった。
「そっかー?まあいいんだけどさ」
「ふふ、変な唯ちゃん」
「ふふ、変な唯ちゃん」
それからというものの、ムギちゃんを意識しちゃって。
教室にいるとき。部室にいるとき。帰り道になっても。
なぜか目を逸らしちゃって。上手く話せなくて。いつもみたいにくっつけなくて。
教室にいるとき。部室にいるとき。帰り道になっても。
なぜか目を逸らしちゃって。上手く話せなくて。いつもみたいにくっつけなくて。
そんなことを繰り返すたびに、どうしたらいいのか分からなくなっていって。
そんなつもりは全然ないのに。何だかよそよそしくなってしまった私たちは。
なんだか喧嘩でもしたみたいで。
なんだか喧嘩でもしたみたいで。
そんなんだから……
「なあ唯、最近どうしたんだよ?」
「え…。なにが?」
「なにがって、ムギのことだよ。……喧嘩でもしたの?」
「そうですよ。何だかぎこちなくて、お二人らしくないですよ」
「え…。なにが?」
「なにがって、ムギのことだよ。……喧嘩でもしたの?」
「そうですよ。何だかぎこちなくて、お二人らしくないですよ」
皆にまで、心配かけちゃった。
「なんか最近の唯、変だぞ」
「ムギもなんか、唯に対して遠慮してるって言うか…」
「ムギもなんか、唯に対して遠慮してるって言うか…」
「大丈夫だよ。喧嘩なんてしてないから」
「でも…」
「でも…」
私だって、ホントはそんなことはしたくなくて。
ずっと見てて。もっとお話したくって。いつもみたいに抱きしめたくて。
ずっと見てて。もっとお話したくって。いつもみたいに抱きしめたくて。
喧嘩なんてする訳ない。だって、嫌いになんてなるわけないんだもん。
一緒にいるだけで、楽しくて、嬉しくて。
笑った顔を見るだけで、胸があったかくなって。
笑った顔を見るだけで、胸があったかくなって。
とっても優しくて、あったかいムギちゃんが好き。
いつでもニコニコしてて、楽しそうなムギちゃんが好き。
いつも皆を見守ってくれてるムギちゃんが好き。
いつでもニコニコしてて、楽しそうなムギちゃんが好き。
いつも皆を見守ってくれてるムギちゃんが好き。
そんなムギちゃんを見るだけで、私の心は弾んで。
私に笑いかけてくれるだけで、何だか幸せな気持ちになるから。
私に笑いかけてくれるだけで、何だか幸せな気持ちになるから。
「…そうだよ。だって……」
「…唯?」
「…唯?」
分かってたんだ。多分あの時から。だって、あの時の胸の高鳴りは。
どうしようもないくらいに、嬉しかったから、だから。
ムギちゃんのことを好きだって思うときと、同じ音がしてたんだから。
どうしようもないくらいに、嬉しかったから、だから。
ムギちゃんのことを好きだって思うときと、同じ音がしてたんだから。
「だって、わたし。ムギちゃんのこと大好きなんだもん!」
好きだったんだ。きっと、もうずっと前から。
それは、ムギちゃんの言う好きと、おんなじもので。
それは、ムギちゃんの言う好きと、おんなじもので。
好きって言ってもらわないと。
どう思ってるのか、って。考えるキッカケをもらわないと。
自分の気持にもちゃんと気づけないなんて。
そのせいで、大好きな人に、辛い思いをさせちゃって。
どう思ってるのか、って。考えるキッカケをもらわないと。
自分の気持にもちゃんと気づけないなんて。
そのせいで、大好きな人に、辛い思いをさせちゃって。
おバカさんだな。わたし。でも…
「うん!わたし、ムギちゃんのこと大好き!」
「おおう!?いきなりどうした」
「おおう!?いきなりどうした」
もうちゃんと分かったから。ちゃんと向き合えるから。
「ごめんねみんな。でも、もう大丈夫!」
「…よくわかんないけど、吹っ切れたみたいだな。いい顔してる」
「ようやくいつもの唯先輩に戻りましたね」
「うん。ありがと!」
「なんもしてないけどな!」
「…よくわかんないけど、吹っ切れたみたいだな。いい顔してる」
「ようやくいつもの唯先輩に戻りましたね」
「うん。ありがと!」
「なんもしてないけどな!」
私がこの後どうしたらいいのかも、ね。
「ふふふ。私はこれからもっとムギちゃんと仲良くなるのです!」
「ははは!なんだそれ」
「でも、いいことじゃないか」
「そうですね。いいことです!」
「ははは!なんだそれ」
「でも、いいことじゃないか」
「そうですね。いいことです!」
もうあの日から、だいぶ経ってしまってたけど。
でも、もう少しで。私の気持ちを伝えるのにぴったりの日があったから。
でも、もう少しで。私の気持ちを伝えるのにぴったりの日があったから。
「それでさ。ちょっとお願いがあるんだけど…」
――――
――――――――
――――――――
「あれ、お姉ちゃん?」
「…うい?ごめんね。起こしちゃったかな?」
「…うい?ごめんね。起こしちゃったかな?」
もう日付も変わってしまって、私が起きてるのが珍しいような時間。
そんな時間に台所から音がするものだから、起きてきちゃったんだろう。
そんな時間に台所から音がするものだから、起きてきちゃったんだろう。
「ううん。大丈夫。お姉ちゃんだったらいいんだ」
「なにか作ってるの?……この匂い、クッキー?」
「えへへ。あたり~」
「なにか作ってるの?……この匂い、クッキー?」
「えへへ。あたり~」
どこか懐かしいような甘い匂いと。
ちょっと、その匂いには似合わない、汚れちゃった台所と。
ちょっと、その匂いには似合わない、汚れちゃった台所と。
……欠けちゃった、御世辞にも美味しそうじゃないクッキー。
「全然うまく出来なくてね~」
普段から憂に頼りっぱなしのつけが来たなぁ。
今度からもっと料理のお手伝いをしよう。
今度からもっと料理のお手伝いをしよう。
「よかったら、手伝おうか?」
「ありがとね、憂。でも大丈夫!」
「ありがとね、憂。でも大丈夫!」
憂の心遣いはとっても嬉しいけど。
「これは大事なものだから」
「え…?」
「とっても大事な人にね、私の大事な気持ちを伝えるためのものなの」
「だから、最後まで自分で頑張りたいんだ!」
「え…?」
「とっても大事な人にね、私の大事な気持ちを伝えるためのものなの」
「だから、最後まで自分で頑張りたいんだ!」
今回は、ごめんね。ちょっとだけ、わがままを言わせて。
「お姉ちゃん……。分かったよ!頑張って!」
「ありがと、憂! 美味しく出来るようになったら、憂にも作ってあげるね」
「楽しみにしてるね!」
「ありがと、憂! 美味しく出来るようになったら、憂にも作ってあげるね」
「楽しみにしてるね!」
(お姉ちゃんがこんなふうに頑張ってると、なんだか私も嬉しい)
(でも……ちょっとだけ。そんな風に思ってもらえる人が)
(でも……ちょっとだけ。そんな風に思ってもらえる人が)
「…羨ましい、な」
「ん?なにか言った~?」
「ううん、なんでもないよ~」
「何かあったら遠慮無く言ってね。あと、夜更かしし過ぎちゃだめだよ?」
「わかったよ~」
「ん?なにか言った~?」
「ううん、なんでもないよ~」
「何かあったら遠慮無く言ってね。あと、夜更かしし過ぎちゃだめだよ?」
「わかったよ~」
さて、もう一頑張りしますか!
――――
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「はい!これ。…受け取ってもらえるかな?」
頑張って包んでみたんだけど、ムギちゃんがくれたものよりも
やっぱりだいぶ見劣りしちゃうかな。
やっぱりだいぶ見劣りしちゃうかな。
「これは……」
「クッキーだよ。ムギちゃんのために作ったんだ!」
「…私の、ために?」
「そう。ムギちゃんのために! それとね、聞いてほしいことがあるの」
「クッキーだよ。ムギちゃんのために作ったんだ!」
「…私の、ために?」
「そう。ムギちゃんのために! それとね、聞いてほしいことがあるの」
なんだかあの日のムギちゃんみたい。
そのムギちゃんは、緊張しているような、少しだけ悲しそうな。
それでいて、何かに期待しているような…。そんな不思議な表情をしているけど。
そのムギちゃんは、緊張しているような、少しだけ悲しそうな。
それでいて、何かに期待しているような…。そんな不思議な表情をしているけど。
このまま言ってしまわないと、ドキドキしすぎて言えなくなっちゃいそうだから。
「あれからね、いっぱいムギちゃんのこと考えたんだ」
「そしたらさ。ちゃんと自分の気持が分かったから」
「そしたらさ。ちゃんと自分の気持が分かったから」
聞いて欲しい。私の気持ち。
「あの時、ちゃんとお返事できなくてごめんね」
「私も、ムギちゃんのこと、好きだよ!」
「私も、ムギちゃんのこと、好きだよ!」
おんなじなんだ。私も。あなたと。
「私ももっと、ムギちゃんと一緒に居たい」
「いろんなことして、いろんなお話しして」
「もっと私のこと知って欲しくて、もっとムギちゃんのこと知りたい」
「いろんなことして、いろんなお話しして」
「もっと私のこと知って欲しくて、もっとムギちゃんのこと知りたい」
「きっとね。私の好きも、ムギちゃんとおんなじ好き!」
ちゃんと言えた。私の気持ち。
「…あ、あれ?ムギちゃん!?」
大きく見開いた目に、大粒の涙を貯めて。
すすり上げる声と一緒に、それはこぼれ落ちた。
すすり上げる声と一緒に、それはこぼれ落ちた。
「ご、ごめんね……。わたし、その…」
「びっくりして、怖くて、でも、すっごくうれしくて…」
「頭の中ぐちゃぐちゃ、で…。その、あの…」
「……唯ちゃんに、嫌われたって。そう思ってたから……」
「びっくりして、怖くて、でも、すっごくうれしくて…」
「頭の中ぐちゃぐちゃ、で…。その、あの…」
「……唯ちゃんに、嫌われたって。そう思ってたから……」
……そりゃそうだ。嫌いにならない、なんて言っておいて。
あんな風によそよそしくしてたら、私だってそう思う。
あんな風によそよそしくしてたら、私だってそう思う。
やっぱり、辛い思いをたくさんさせたんだなって。そう思って。
気がついたら、ムギちゃんを抱きしめてた。
気がついたら、ムギちゃんを抱きしめてた。
「…!唯ちゃん…」
「ムギちゃんが謝ることじゃないよ。悪いのは私」
「ムギちゃんが謝ることじゃないよ。悪いのは私」
ごめんねって気持ちを込めて、優しく頭を撫でてあげる。
……こんな時に、ムギちゃんの髪は柔らかくて気持ちいいなんて。
そんなことを考えてしまうのは、それだけ好きだから、ってことにしてほしい。
……こんな時に、ムギちゃんの髪は柔らかくて気持ちいいなんて。
そんなことを考えてしまうのは、それだけ好きだから、ってことにしてほしい。
「私が謝らないとね。ごめんねムギちゃん」
「嫌な思い、いっぱいしたよね…。ホントにごめんなさい」
「嫌な思い、いっぱいしたよね…。ホントにごめんなさい」
もう、絶対。こんなことはしないから。
「ううん。いいの……。もう、大丈夫」
「でも、ホントに?……ホントに、私のこと…好きなの?」
「ほんとだよ~。じゃあ、証拠を見せてあげる!」
「でも、ホントに?……ホントに、私のこと…好きなの?」
「ほんとだよ~。じゃあ、証拠を見せてあげる!」
私はまだ少しだけ涙の残ったムギちゃんの唇に、自分のそれを重ねる。
初めてのその感触はとっても柔らかくて。暖かくて。
でも、やっぱり。少しだけ、涙の味がした。
でも、やっぱり。少しだけ、涙の味がした。
「…ね?」
「……うん」
「……うん」
ムギちゃんの顔は真っ赤だ。まあ、私もきっとおんなじだけど。
「じゃあ、あらためて。……ムギちゃん。好きです。私とお付き合いしてください」
「はい。喜んで!」
「はい。喜んで!」
なんだかムギちゃんのこんな笑顔を久しぶりに見た気がする。
やっぱりムギちゃんには柔らかくてあったかい笑顔が似合う。
やっぱりムギちゃんには柔らかくてあったかい笑顔が似合う。
だからいつまでも、こんな風に笑っていて欲しい。
私が、ムギちゃんを笑顔にできることが、とっても嬉しい。
私が、ムギちゃんを笑顔にできることが、とっても嬉しい。
「ねぇ、もらったクッキー、食べてもいい?」
「いいけど、ここで?」
「うん。…だめ?」
「いやぁ、だめというかなんというか。上手くできてないから…」
「いいけど、ここで?」
「うん。…だめ?」
「いやぁ、だめというかなんというか。上手くできてないから…」
そうこう言ってるうちに、包みは開けられてしまったわけだけど。
…そういえば、すっごく綺麗にできてて、美味しかったな。ムギちゃんのチョコ。
私のは、いかにも普通のクッキーで、ムギちゃんのチョコとは比べものにならない。
私のは、いかにも普通のクッキーで、ムギちゃんのチョコとは比べものにならない。
「うう……恥ずかしいです」
「そんなことない。とっても可愛く出来てるよ」
「うん。味も、すっごく美味しい!」
「ホントに?……無理してない?」
「そんなことない。とっても可愛く出来てるよ」
「うん。味も、すっごく美味しい!」
「ホントに?……無理してない?」
味見もしたけど、美味しいって思ってもらえるか、すっごく不安だった。
「唯ちゃんが、私のために作ってくれたのに。美味しくないわけないよ」
「…そうだ。証拠見せてあげる」
「? どうやって……んっ」
「…そうだ。証拠見せてあげる」
「? どうやって……んっ」
もう一つ、クッキーを口に含んだムギちゃんに。
私の唇はふさがれてしまって。
私の唇はふさがれてしまって。
柔らかい感触と一緒に、それに負けないくらいの
とっても柔らかい甘みが口の中に広がった。
とっても柔らかい甘みが口の中に広がった。
「…ね?」
「……ほんとだね。美味しい」
「……ほんとだね。美味しい」
それは、キスのおかげなのか。
ムギちゃんが、美味しいって言ってくれたからなのか。
ムギちゃんが、美味しいって言ってくれたからなのか。
確かなのは、さっき私がしたことは
結構恥ずかしいことなんだなってことで。
結構恥ずかしいことなんだなってことで。
「恥ずかしいね、なんだか」
「でも、とっても素敵じゃない?」
「…うん。そうだね!」
「でも、とっても素敵じゃない?」
「…うん。そうだね!」
初めてのキスは、涙の味だった。
きっと忘れない。もう好きな人に、悲しい思いをさせないように。
自分の気持ちを忘れないように。
きっと忘れない。もう好きな人に、悲しい思いをさせないように。
自分の気持ちを忘れないように。
二度目のキスは、甘いクッキーの味。
ずっと忘れない。このキスをした時みたいに、私も、彼女も。
いつまでも、お互いに好きでいられるように。
ずっと忘れない。このキスをした時みたいに、私も、彼女も。
いつまでも、お互いに好きでいられるように。
「ねえ、ムギちゃん。もう一回、してもいい?」
「…うん!」
「…うん!」
もう一度、私たちは唇を重ねる。今日という日を忘れないように。
すっごくドキドキしてる。ムギちゃんも、おんなじだ。
三度目のキスは、とっても優しくて。
それだけで心が満たされるような。
とっても不思議な味がした。
それだけで心が満たされるような。
とっても不思議な味がした。
おしまい