untitled
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この前のバンド練習から2週間が経った。
2人の関係に変わりはない。
2人の関係に変わりはない。
授業が終わったら連絡を取り合って一緒に帰る。
寄り道したり、お互いの部屋に行き来したり。
ごくまれにスタジオを借りて練習したりもする。
寄り道したり、お互いの部屋に行き来したり。
ごくまれにスタジオを借りて練習したりもする。
このとき4人揃うこともあれば、1人だけ欠けることもあった。
でも、割合的には2人でいることが断然に多かった。
なぜなら、何かあると律が澪に(あるいは澪が律に)泣きつき、
唯は紬に泣きつくという図がすっかり定着していたためだ。
唯は紬に泣きつくという図がすっかり定着していたためだ。
授業を終え、今日も2人で校舎から駅までの道を歩く。
唯「ムギちゃ~ん、今日もおうち行っていい?」
唯は眉をめいっぱいハの字に曲げ、懇願する。
紬「うん!もちろん」
紬は笑顔でそれに応える。
頼られることは嬉しかった。
しかし同時に、紬はある種の不安を感じていた。
しかし同時に、紬はある種の不安を感じていた。
からすが群れを成し、徐々に大きな影を形作る。
(私は、あのクールで聡明な幼馴染の代わりでしかないのだろうか?)
律と澪の関係は幼いころからの変わらないものだ。
それに比べて、自分たちの関係はどうなんだろう。
それに比べて、自分たちの関係はどうなんだろう。
客観的に考えようとすればするほど、仄暗い感情に足をからめとられる。
あのバンド練習の日から、紬は自分の中で何かが膨らんでいるのを感じていた。
まるで風船のような何か。
まるで風船のような何か。
(破裂しちゃったら私、どうなるの?)
(―もしくは、しぼんでしまったら?―)
唯が口を開く。
唯「こないだね、和ちゃんと久しぶりに電話で話したの」
紬は自分の体がピクリと強張るのを感じる。
―――和ちゃん。
唯「でね、私自慢したんだ」
紬「……何を?」
恐る恐る訊ねる紬。
唯は進行方向へと視線を移す。
そして、意を決したような表情を一瞬見せたあと、
それを完璧に覆い隠すように、はにかんだ。
そして、意を決したような表情を一瞬見せたあと、
それを完璧に覆い隠すように、はにかんだ。
唯「私ね、今、ムギちゃん一人占めなんだよって」
そう呟く唯の横顔は、年齢よりもいくらか幼く見える。
それから、視線を紬の半歩先に投げかけた。
それから、視線を紬の半歩先に投げかけた。
唯「ムギちゃんの、ぽわぽわなところも、それ以外のところも、全部一人占めしてるんだよって」
紬「唯ちゃん……」
唯「えへへ。あ、あとお茶とケーキも、だね」
と、唯は悪戯っぽい笑みを浮かべて付け足した。
それから踵を大きく前に振り上げ、トーン、トーン、と跳ねながら先に進む。
柔らかい癖毛が、ステップに合わせてふわりと揺れた。
それから踵を大きく前に振り上げ、トーン、トーン、と跳ねながら先に進む。
柔らかい癖毛が、ステップに合わせてふわりと揺れた。
―――唯ちゃん。
大股で3歩ほど先に進んだ唯の後姿に向かって、紬は話しかける。
きちんと、聞こえるように。
きちんと、聞こえるように。
―――じゃあ、私も自慢する。
―――私、今……。
紬「私、今……」
紬「唯ちゃんに、全部一人占めされてるの」
オレンジ色、青色、薄紫色のグラデーションの上に、細い三日月が浮かんでいる。
どこか神秘的な夕空を背景に、紬の方へと振り向く唯。
紬は、自分の体がこのまま宙に飛んで行ってしまいそうな、そんな気持ちがした。
湿り気を含んだ風が頬を撫でる、ある5月の出来事である。