「ムギちゃん、これ似合うー?」
ある休日の、ある店の一角。かわいらしいピンクのワンピースを広げた唯ちゃんがうれしそうに私を呼んだ。
私はその姿を見て、すぐにその答えを導き出す。似合うか似合わないかなんて、考えるまでもないことだ。
私はその姿を見て、すぐにその答えを導き出す。似合うか似合わないかなんて、考えるまでもないことだ。
「うん、とっても似合うわよ、唯ちゃん♪」
「ホント?じゃあ…着てみよっかな」
「そんなに心配しないで大丈夫大丈夫♪唯ちゃんならなんでも似合うんだから」
「そ、そうかな?じゃあちょっと着てみるから待ってて」
「ホント?じゃあ…着てみよっかな」
「そんなに心配しないで大丈夫大丈夫♪唯ちゃんならなんでも似合うんだから」
「そ、そうかな?じゃあちょっと着てみるから待ってて」
そのまま試着室に入った唯ちゃん。
ごそごそと布の擦れる音に思いがけずドキドキしていると、仕切りの隙間からぴょこっと唯ちゃんが顔を出した。
ごそごそと布の擦れる音に思いがけずドキドキしていると、仕切りの隙間からぴょこっと唯ちゃんが顔を出した。
「ム、ムギちゃん」
「どうしたの?もう着替え終わった?」
「うん…で、でもね」
「なに?」
「や、やっぱり恥ずかしいや…」
「大丈夫だから、そんなこと言わないで見せて?ね?」
「う、う~…」
「どうしたの?もう着替え終わった?」
「うん…で、でもね」
「なに?」
「や、やっぱり恥ずかしいや…」
「大丈夫だから、そんなこと言わないで見せて?ね?」
「う、う~…」
唯ちゃんは顔を真っ赤にしつつ、おずおずと試着室の仕切りを開いた。
――天使がいた。
驚くほどに上品で、かわいらしくて、大人っぽくて、でも唯ちゃんの持つ独特の幼い雰囲気もあって…と、とにかく、もう…
驚くほどに上品で、かわいらしくて、大人っぽくて、でも唯ちゃんの持つ独特の幼い雰囲気もあって…と、とにかく、もう…
「ど、どうかな。やっぱり変じゃない…?」
「さ…最高!最高よ唯ちゃん!!」
「ムギちゃん、朝私が着てきた服見た時も同じこと言ったよ?」
「こ、更新したの!二回連続で最高記録を塗り替えちゃったのよ!」
「そ、そうなんだ…えへへ、よかった♪」
「ねぇ唯ちゃん、せっかくだから、それ着たままでいたら?」
「え、でも…」
「もしそうしてくれたら…私は、その方が嬉しいんだけどな…」
「そ、そっか…じゃあこれ、買ってみるね」
「…うん♪」
「さ…最高!最高よ唯ちゃん!!」
「ムギちゃん、朝私が着てきた服見た時も同じこと言ったよ?」
「こ、更新したの!二回連続で最高記録を塗り替えちゃったのよ!」
「そ、そうなんだ…えへへ、よかった♪」
「ねぇ唯ちゃん、せっかくだから、それ着たままでいたら?」
「え、でも…」
「もしそうしてくれたら…私は、その方が嬉しいんだけどな…」
「そ、そっか…じゃあこれ、買ってみるね」
「…うん♪」
――そう、今私たちはデートをしている。
とはいっても、遊園地で遊んだり映画を見に行くわけじゃなく、買い物がてら街を歩く、という程度だけど…
でも、その方が私たちには合ってると思う。周りの人と同じものを同じように楽しむんじゃなくて、私たち二人だけが選んだものを、私たち二人だけが楽しむ。
その方が、恋人って感じがする…と私は思う。
…まぁ実を言えば、人が密集した場所でデートするのに慣れてないだけなんだけど。
とはいっても、遊園地で遊んだり映画を見に行くわけじゃなく、買い物がてら街を歩く、という程度だけど…
でも、その方が私たちには合ってると思う。周りの人と同じものを同じように楽しむんじゃなくて、私たち二人だけが選んだものを、私たち二人だけが楽しむ。
その方が、恋人って感じがする…と私は思う。
…まぁ実を言えば、人が密集した場所でデートするのに慣れてないだけなんだけど。
「ムギちゃん、今度はどこ行こっか」
「うーん…唯ちゃんはどこか行きたいところある?」
「私はもう買いたいもの買ったし…特にないかな」
「そっか…私もこれといってないんだけど…」
「うーん…唯ちゃんはどこか行きたいところある?」
「私はもう買いたいもの買ったし…特にないかな」
「そっか…私もこれといってないんだけど…」
しばらく沈黙が続いた後、私の手を柔らかいものが包んだ。…唯ちゃんの、手だ。
私はハッとしたけど、その指先を見ることはせずに、できるだけ優しく握り返す。
私はハッとしたけど、その指先を見ることはせずに、できるだけ優しく握り返す。
「…唯ちゃん」
「私…どこに行ってもいいよ。ムギちゃんとこうやって一緒にいられるなら」
「うん…」
「私…どこに行ってもいいよ。ムギちゃんとこうやって一緒にいられるなら」
「うん…」
こんなやり取りをする私たちは、周りの人たちから見てどう映っているんだろう。
そんなことを気にするのは、悪い気はしない。むしろ、もっと仲良くする姿を見て欲しい…なんて。
そんなことを気にするのは、悪い気はしない。むしろ、もっと仲良くする姿を見て欲しい…なんて。
でもそれも大げさじゃないと思えるくらいに、私は唯ちゃんと一緒にいられる時間を楽しんだ。そしてきっと、唯ちゃんも。
だからこそ、別れの時間はあっという間にやってきてしまう。
だからこそ、別れの時間はあっという間にやってきてしまう。
「ムギちゃん、今日は楽しかったねぇ」
「今日は、じゃないでしょ?今日も、楽しかったのよ♪」
「あ、そっか…いけねー♪」
「もう、唯ちゃんったら。じゃあ…私、ここで」
「…うん」
「今日は、じゃないでしょ?今日も、楽しかったのよ♪」
「あ、そっか…いけねー♪」
「もう、唯ちゃんったら。じゃあ…私、ここで」
「…うん」
唯ちゃんは寂しそうに私を見た。多分私も、こんな目で唯ちゃんを見ているんだと思う。
また明日学校で会えるのに、まるでもう二度と会えなくなるような、そんな寂しさ。
お互いに好きでいるから、ほんの一時の別れでさえも、私たちには辛かった。
また明日学校で会えるのに、まるでもう二度と会えなくなるような、そんな寂しさ。
お互いに好きでいるから、ほんの一時の別れでさえも、私たちには辛かった。
「…ムギちゃん」
唯ちゃんは私に駆け寄ると、ギュッと私に体を寄せた。私はその肩を、そっと抱きしめてあげる。
「唯ちゃん…寂しい?」
「…うん」
「私も…寂しい。ホントは帰りたくなんてないの」
「そうなんだ…私たち、ずっとずっと一緒にいられたらいいのにね」
「…じゃあ、おまじないしようか」
「おまじない?」
「そう。心も体もあったかくなって、寂しくなくなるおまじない」
「…うん」
「私も…寂しい。ホントは帰りたくなんてないの」
「そうなんだ…私たち、ずっとずっと一緒にいられたらいいのにね」
「…じゃあ、おまじないしようか」
「おまじない?」
「そう。心も体もあったかくなって、寂しくなくなるおまじない」
私は唯ちゃんの涙を拭うように、顔を指先でなぞる。
その柔らかい頬は紅く染まって、淡い熱を帯びていた。
その柔らかい頬は紅く染まって、淡い熱を帯びていた。
「ムギ…ちゃん…」
かすれるような声を上げた唯ちゃんに、私はゆっくりと自分の顔を近づけた。
私の気持ちと、唯ちゃんの気持ち。その二つは、今ゆっくりとつながった。
私の気持ちと、唯ちゃんの気持ち。その二つは、今ゆっくりとつながった。
―――
「じゃあね唯ちゃん。気をつけてね」
「うん…おまじない、ありがとうムギちゃん。なんだか効いてきた気がする」
「そ…そう……」
「でも一回だけじゃ足りないから…毎日しようね!」
「も、もう!それじゃあまた明日!」
「ばいばい、ムギちゃん♪」
「ばっ…ばいばい!」
「うん…おまじない、ありがとうムギちゃん。なんだか効いてきた気がする」
「そ…そう……」
「でも一回だけじゃ足りないから…毎日しようね!」
「も、もう!それじゃあまた明日!」
「ばいばい、ムギちゃん♪」
「ばっ…ばいばい!」
私はぎこちなく、でも大きく手を振った。
明日からは、私から手を振ろうかな。なんて考えながら。
おわり