南側へ繋ぐ唯一の街。
漁業が盛んで、フローナと比べて落ち着いている。
運送屋の話によると、魚は北側の寒い方が身がしまっていて美味しいとの事。
三人は、魚のムニエルを食べ、南側の港町フローナまで乗せて行ってくれる人を探す。
「………。」
「何難しい顔して悩んでるんです?」
「この、チビすけの名前。」
頭の上に乗っている幼竜は、セオから離れようとしない。
「…完全に親だと思っちゃってるね。その子。」
「…えぇ。」
「ルカ。」
「キュィ?」
「あ、名前つけたんですか?」
無言のまま、頷く。
「この人のにおい。たどれる?」
「あ。それって…。」
「お前の師匠の…。失敬してきた。」
古いナイフ、もの凄いボロボロで長年使ったと見られる。
「あーあ。怒られるよ。セオ…」
「怒りたいのはこっちだ。」
数分待ったが、ルカは首を傾げるばかり。
つまり此処にはいないことを示す。
「…イルのお師匠さんとセオさんはどういう関係で?」
「あー…っと。主従関係?」
「俺に聞くな。」
結局、渡してくれる船は無く宿屋で一晩過ごすことになった。
「…セオさん。」
「はい?」
パジャマに着替えている彼に、ライが話を書ける。
「セオさんの、竜。どの辞典にも載ってません。僕のは此処に書いてあるんですけど…」
「新種?」
「違うと思います。突然変異にしても、これに似た形の竜はいませんし…。」
「じゃぁ、ライのはなんていう竜なの?ドラゴンとおんなじ?」
「……………竜。」
数秒間の沈黙。
「え?もっかい。」
「竜。竜です。普通の。あ、あれ?セオさん?」
「寝てるね。」
相当疲れたのか、丸くなって寝ている。
「あぁ…寝てる。じゃぁ、私も寝る~。おやすみ。」
ルナータ滞在の一日目の終了。
珍しく、夜明けと共に起きなかったセオの代わりになぜか起きたライ。
「んんー…うぅ。こんな早く起きるつもり無かったのに。」
カーテンを開けて、顔を洗う。
「…ん?」
セオの隣に、髪を結った金髪の子が寝ている。
「何処の子?」
「…んくぅぅ。」
セオが起きる。
「起きてください。二度寝は許しませんよ」
「あ、あぁ。わかった朝ね。うん。」
突かれて起きる彼。
「酷い…『二度寝は許しませんよ』は酷い。」
それだけいって、ベットに倒れこむ。
「……。」
「オイ!お前!こっち向けよ!」
この口調は絶対イルじゃない。セオさんは寝てるし…
振り向くと、ドラゴンだか竜だか…同じようなものだが。赤い生物が口をきく
「テメェ…まだ俺に名前決めてないだろ。サッサと決めやがれ!」
「え…そんな急に言われても。」
「早くしろ!」
短気な奴だ…。それになんで急に喋る。びっくりするじゃないか。
赤い彼はずっとこちらをにらんでいる。
「じゃぁ・・・。フェイ。」
「フェイ…か。悪くない。」
気に入ったのか、小さな翼を羽ばたいて肩にとまる。
少し重い。
「お前が危なくなったら…いや、危なくなくても俺の力を貸してやる。」
「あ、ありがとう…。フェイ。」
奇妙な主従関係ができ、フェイのことをいろいろと聞く。
まずはお互いのことをよく知らないと。
「………騒がしいね。」
「そうですね…って、うわぁ!」
いつの間にか起きたのか、目をこすりながら彼女は隣に座っている。
「酷いなぁ。人をお化けみたいに扱って…。それにしても、あの黒髪は…セオだねぇ。」
「やっぱり…。」
溜息をつきながらその様子を二人と一匹で見ていることにした。
「この!クソ餓鬼ッ」
「ハズレー。またハズレー。で、朝っぱらから何のようですか?」
「お前のっ、首を、貰いにきたっ」
斧を振り回している男が言う。
「朝から物騒なこと言うなぁ…。あのー、そこの。そう、貴方。自警団とか居ますかね?」
斧の刃を避けながら、住民に聞く。
「い、いますけど…前向いたほうが。」
「じゃー呼んで来て下さい。朝から物騒なこと言ってるおっさんが斧振り回してるって。」
「は…はぁ。」
住民Aが呼びに行こうとすると男が怒鳴る。
「呼ぶんじゃねぇ!オウッ?…ブブブブブブブッ」
「こらこら、余所見はいけないよ。」
男性に目がいっていたせいか、足を掛けられ仕舞いには頭の上で足踏みをされる。
「はやくー。」
男の頭を足踏みをしながら、住民に言う。
そのまま男性は走り去ってから、二十分くらいで自警団を呼んで来てくれた。
「あ、じゃあ。後はお任せします。」
それだけ言って、宿に帰ってきた。
「セオさん。いったい何をしていたのですか?」
「買い物してたら、いきなりさぁ…。」
それから今に繋がったということらしい。
「また襲われちゃ、まずいから。今日中に出発準備。乗せてくれる人が居た気がする。」
「気がする…ですか。いなかったらどうするんです?…」
「そりゃぁ…ねぇ。こっちも手段を選ばないって事で。」
危ない…この人、また何か考えてる。よからぬ事を考えてるよ…
「黒いの、手段を選らばねぇってのは暴れるって事か?」
「いや、そういう意味じゃ…って、あぁ…お前か。」
「お前じゃない。フェイだ、黒いの。」
「セオだ。」
宿をチェックアウトして、船着場へ。
「黒髪少年!こっちだこっち!」
手招きをしている二十代前半の男に近づく。
「どうも、じゃあフローナまでよろしく。」
「わかった。じゃぁ出港するぞ。サッサと乗りな。」
最終更新:2007年04月19日 19:16