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「はぁぁ・・・」

 私は、ため息をついて酒場へと向かう。
 その足取りは決して軽くはなく、
 むしろ枷でもついたかのように重かった。

『バッカヤロウ!! このクズが!! ひっこんでろ!!』

 向かった先の店屋でドジをしてしまって、
 私は、店長の怒号にグウとも言えなかったんだ。

『もう帰れ帰れ。役立たずに払う依頼料はねぇんだよ!』
『ったく。とんだハズレ引かされたぜ。せめてもうちっと使える人材よこしやがれってんだ・・・!』

 心がガチガチに冷たくなるほどの暴言に、私は怖くて情けなくて
 やっぱり何も言えず、オロオロしてるだけで・・・

『なんだ!さっさと帰れってのが聞こえなかったのか!!』
『依頼料貰えるなんて思うんじゃねぇぞ・・・逆に、賠償してやるから覚えてやがれよ!!』

 そう言われて、反論の一つも出来ず、ズコズコと酒場に帰るのだった。
 依頼は、店長の口にした通りもちろん失敗。
 賠償・・・は、大丈夫だよね。
 酒場のマスターは、奥さんにめっぽう弱くて、調子のいい豪快さんだけど
 結構、頼りになる尊敬・・・信頼できる人だもの。
 それに比べて、私はEランクの依頼ですら、こんな失敗をしてしまう・・・
 本当に情けなかった。

「はぁ・・」

 コツンと、腰の愛剣を叩く。といっても、所詮は安物のロングソードくらいしか買えなかった。
 そんな私が支援士を目指したのは、どこにでもある。よくあるような
 むしろ、あまりにも定番すぎるような話で――――

 …

『きゃわー!!』

 農家である私のおウチは、十六夜に取れた野菜などを出荷していた。
 その日は、お父さんもお母さんも忙しくて、私が一人でおつかいに出たんだ。
 その途中、クロッセル-十六夜間で魔物に襲われ、支援士の人がミスして深手を負ってしまって、
 恥ずかしいほど間抜けな悲鳴を上げて、両腕で顔を守ることしか出来なかった私。

『―――襲破、死点突!!』
『縮地――破凰連牙!!』

 そこに、風のように入り込んだ刃。
 まるで、嵐のような猛攻に魔物は吹き飛び、倒される。
 その正体は―――十六夜の、二人のブレイブマスターだった。
 ブレイブマスターの『支援士』。それが、私を助けてくれた人。
 憧れた。強くてかっこよくて

『大丈夫ですか!』
『あ・・・ありがとう。ございます・・・』

 そんな強くて優しくて眩しくて、
 強い『憧れ』を抱くには、そう時間は掛からなかった。
 だから私は、家を飛び出して支援士になったのだ。

 …

「はぁ・・・」

 しかし、現実はごらんの有様。
 華麗に魔物を倒し人を助けるという事も無ければ
 強い魔物に挑んだり困難な任務に就くことも無く
 『異国の黒艦』のような大事件に関わる事すらも無かった。
 ただ受けるのは、お掃除や店番。お留守番。
 そんなの支援士に頼むほどの事か。と言いたくなる依頼ばかりを受けて
 その日暮らしの資金を得る。そんな繰り返しのつまらない生活を送っていた。
 否、そうしなければ、ごはんどころか寝床も確保出来ない・・・だからこそ、そうする他無いのだ。

(もう・・支援士やめようかな・・・私には無理だったんだ・・・あんなかっこいい支援士になるなんて)

 そう思うと、じわりと涙が浮かんでくる。
 思えばいつもそうだった。
 お父さんやお母さんを手伝っても、ドジばっかりで、
 でも、二人は優しいから笑いながら気に掛けてくれて。
 ・・・家に戻れば、きっと怒られはするだろうけども、そんな両親の農業を手伝う日々には戻れるだろう。
 私のようなノロマが支援士になるなんて、そんなの『ハズレ』だったんだ・・・そう、思った。

(お世話になったマスターには申し訳ないけど・・・)

 辞めよう。そう決めて足を早める。
 そう決めたのに――――だけども、涙が止まらなかった。

「・・・って、あれ・・・?」

 無理やり目をぬぐって涙を引っ込め。
 顔を上げて、私は首を傾げた。
 周りを見渡せば、酒場とはぜんぜん違う方向の公園

「あれれ?」

 間違いなく酒場に向かっていた筈なのに、なんでこんな所に出ちゃったんだろ?
 泣きながら歩いてたから、道を間違えたのかな。と思って、私は酒場の道を

…

酒場の道・・

…

酒場・・・

…

「なんでー!!??」

 さっきまでのシリアスさはどこに行っちゃったんだろうか。
 歩けども歩けども、何故か公園についてしまう。
 無限ループ!? そんな、噂に聞く『無限迷宮』のトラップじゃあるまいし

「おい」
「うぅぅ・・・おかしいよぉ・・・。私、酒場にすら満足に行けないワケ・・・うっぅ・・・」
「おいこら」
「もう、私ダメな子だ・・・このまま無限ループで公園から出れなくなっちゃうんだ・・・」
「オイって!」

 私が公園の隅でグレてると、呼ぶ声が聞こえて
 てっきり他の人だと思ったのだけど、
 あれ?この呼び声って・・・私に?

「あ・・」
「チッ・・・こいつもハズレか」

 あの、と反応しようとしたら、
 いっぱいいっぱいの私に、最後の言葉が突き刺さった
 そんな立ち去ろうとする気配に振り返り、私は叫んだ

「さっきから、ハズレハズレって何よぉ~~ッ!! 私だって好きでハズレ人生歩んでるわけじゃ・・・」

 だが、その私に気配・・・男性の剣士は、驚いたように目を見開いたんだ。
 思わず。とは言え、さすがに行き成り叫ぶのは突然だったかもしれない。
 でも、これ以上ハズレ呼ばわりされて惨めな思いをするのも耐えられなくて―――
 だけども、
 なぜか、
 男性の剣士は驚いた顔から、何か納得したような、そんな落ち着いた顔をして、

「なるほど。貴様がアタリだったワケか」
「え。へ?」

 そんな、謎の言葉を私は彼から受け取ったのだった。



最終更新:2009年09月30日 19:59