「派手にやったものじゃな」
ある一点を境界線にして、片方は焼け野原、逆側は地面ごと凍り付いた雑草の山・・・・・・
と、激しくも見ようによってはシュールな光景を眺めながら、エミリアは苦笑しながらそう呟いた。
「リオナ・ノースウィンド――北風のリオナか。
最近急に名前を聞くようになったが、ティールと同じ異世界の人間とはな」
それにしても、ここまで互角とはな。
後にそう付け加えて、ヴァイは再び眼前の戦場跡地に目を向ける。
そう、ティールのブレイブソードと、リオナのボレアスソード。
属性的相性云々はひとまず横に置いておくとして、互いの中央地点でぶつかり合ったそれは、完全に相殺し爆心地に跡を残したのみで消滅していた。
「にゅふふ、そりゃ日々デッドオアアライブな生活してたもん、この身体ぐらいの歳の頃には、このくらい戦えてたよ」
「ブーストも強力だもんねぇ・・・・・・」
ブースト。それはティールーーと、リオナがかつていた世界における、固有能力の総称。
自身の体内で燃焼し、身体能力の強化がメインであるティールの能力が『ソウルタイプ』と呼ばれるのに対し、身体を包み込むように展開する、体外で発現する力がメインのリオナの能力は『ドレスタイプ』
いずれにしても、この二人に限っては、。身体の内外の比率を調節できるという点で、結果的に同じようなものではあるのだが。
「能力名『スノーウィストーム』あたしの異名、『北風(ボレアス)』の所以よ」
「俺としては、全盛期の力とやらは気になるがな」
「さすがにこの身体じゃ追いつかないかなぁ」
ヴァイの一言に、あははと笑いながら答えるリオナ。
・・・・・・そう、リオナは本来、ティールよりも一回り近くは年上であるはずだった。
もちろん見た目もやや幼く感じる事も多いが二十歳前後の歳相応のもので、同じ歳に見えるなどと言うことはないはずだった。
結論を言うと、大体同じ年齢ーー14~15歳程度まで逆行したかのような状態である。
「でもなんでそんな事になったんでしょう?」
ふと、横で成り行きを眺めていたリスティがそう口にする。
リオナの事をよく知るティールも、その点は気になっていたのか改めて耳をその会話に傾けていた。
「んー、時空乱流に巻き込まれたときに何かあったのかなーってくらいしか推測も立たないけど」
「まあ、それはそうじゃろうな」
意図的に開かれた時空の扉ではなく、偶然開いたソレで世界を越える。
不確定要素しか見あたらないようなソレが相手ということはつまり、何が起こるか分からないし、何が起こるか分からないと言うことは、何が起こっても不思議ではないとも言える。
「まあ、あたし的には別にいっかなーって感じなんだけど」
そんなことを言いながら、なぜかティールに抱きつくリオナ。
『わぷっ』と自分でもよく分からない声を出したティールは、なにやら微妙な笑顔を浮かべている。
・・・・・・おそらく抱きつかれること自体は日常茶飯事的な行動だったのだろう。
「だってこのくらいの歳の頃って、魔物の侵攻が激化してきた時期だったし・・・・・・
戦い向きの能力者は、子供だろーが戦うのが当たり前だったんだよ?
二十歳過ぎた頃になって、あたしの青春なんだったんだろーなーって思ったくらいだし」
「生々しいな」
女心が分かるかどうかと言えば、全く分かっていなさそうな印象しか与えないヴァイだったが、長い時間戦いに明け暮れるしかなかったと言う点では共通しているところもあるかもしれない。
強制と逃避という差異は、確かにそこにあるのだけれども。
「それが物理的にやり直せるっていうんなら望むところだし、それに・・・・・・」
「むぎゅっ!?」
さらにティールの顔面を胸に押し付けるように抱え込むリオナ。
背丈はリオナのほうが高いものの、半ば強引に頭の位置を下げさせているあたり、もう狙ってやっているとしか思えない。
「ティールが
ブレイカーズ・ギルドに来た時、あたしは丁度このくらいの歳だったからさ。
あの時と同じ姿で、別の世界でもう一度『初めまして』から始められるのなら、悪くないかなって」
「ぷはっ! ……そりゃまあ、リオナがいきなりウチのギルドに入ってきたのは驚いたけど……
結局お互い知った相手なんだから、今更始めましても何もないと思う……」
ようやくリオナのハグから開放されたティールが、微妙な表情のままリオナの言葉に返答する。
……が、どことなく嬉しそうに目元が緩んでいたのは決して気のせいではないだろう。
「にゅふふ、気持ちの問題だから別にいいの。それよりさ、ほらっ」
そんな様子などお構い無しに、リオナはどこからともなく取り出した何かを放り投げる。
それは綺麗な放物線を描いて、ティールの手元に収まっていた。
「……フォアリーフ・クローバー……」
ブレイカーズ・ギルドの四天王がそれぞれ一葉ずつ持っていた、四つ葉のクローバーを模したアクセサリ。
受け取ったそれは三つ葉にされていたが、ティールが良く知るエンブレムであるそれに間違いはなかった。
ふとリオナの方へ目を向けると、その手にはティールの持つ三つ葉と、同じ葉の形をしたものが一つ。
「あたしは葉っぱ一枚で十分だから。 持っていてよ、リトルレジェンド・ギルドマスター」
「…………うん」
ただ一言、たった二文字の返答。
しかし万感の想いがこもった一声。
その返答をその耳で確認したリオナは、横でその様子を眺めていたほかのギルドメンバーに向けて、こう言い放った。