8・404

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 互いに支え合えるくらいに成長した樹ちゃん、そんな彼女への依存の自覚。  加えて、後遺症で声が出ない頃に不安から、その、随分と“激しく”樹ちゃんを可愛がってしまった反動。  それらが一気に押し寄せた風先輩は、家に帰ると途端に樹ちゃんにべったりの甘えん坊になってしまうらしい。 「ご飯とかあーん以外で食べようとすると涙ぐまれるし、お風呂も1人で入ろうとすると泣かれたり…。  “声が出ない時に酷いことしたから怒ってるの?”って上目遣いされるんですよ?あれはあれで私は良かったのに」 「そこ!そこをもう少し詳しくお願いします!」 「園ちゃん、後にしてね?でも2人はいいよね…その、もう…ごにょごにょ…しちゃってる訳で」 「ですね。最終的にはそこに着地できるから楽と言えば楽かも。でも、友奈さんと東郷先輩は、まだ、ですもんね」  私たちはまだ子供、そういう行為は正直早いと思う(風先輩と樹ちゃんを否定する気はないけどね)。  東郷さんも、普段モードに聞いたらきっと“そういうことは結婚できる年まで我慢すべきだわ”って言いそうだし。  でも、正直東郷さんに毎日毎日甘えられて、密着されているとそういうことへの興味がむくむく沸いてくるのも事実で。  子供っぽく甘えている東郷さんが、いつもは大人びた東郷さんが、蕩けてしまう顔ってどんなだろうとか考えてしまう。 「東郷先輩は友奈さんに、本当に純粋に甘えたいだけかも知れませんからね」 「そうなんだよね。東郷さんを傷付けるのだけは嫌だよ、絶対に」 「でもねー」  さっきまでPCに噛り付いていた園ちゃんが、ひょいと顔を上げて言う。 「わっしーがゆーゆのこと拒絶するなんて、私には想像できないなー」 「あ、実は私もです」 「一度、素直にそういう気持ちを表してみたらー?一度きりで変わっちゃう関係じゃないと思うし」 「う、う~ん」  2人は私を買いかぶり過ぎじゃないだろうか。  でも、このままだと我慢が限界を迎えて、とんでもない形で暴発してしまうかも知れない。  よし!今日、そういう気持ちを告白してみよう!嫌がられたら、もう絶対にそんな思いは抱かない!  そう決めて気合を入れる私を、部室に戻って来た夏凜ちゃんがギョッとした目で見ていた。 「…また東郷絡み?」 「流石はにぼっしー、正解ー」 ※ 「友奈ちゃん、今日もいい匂い♪」  後ろから抱き付いた東郷さんが、私の頭に顔を埋めてながら言う。  東郷さんの方が私よりも背が高いので、ベッドに腰かけると自然とこういう姿勢になる。  東郷さんの柔らかくて形の良い胸がぴったりと背中にくっつき、熱い吐息が旋毛にかかる。  正直、下手に覚悟を決めてきたせいで今にも東郷さんを抱き上げてベッドにころがしてしまいたくなる。  我慢だ友奈!頑張れ友奈!友奈はできる子!我慢の子!必死に言い聞かせて…肩にかかった東郷さんの手を取る。 「と、東郷さん!」 「なあに、友奈ちゃん?」 「あ、あのね、私はね…!」  ど、どう言ったらいいだろう?東郷さんが好き過ぎて我慢できない?抱きしめたい?押し倒したい?もっと先に行きたい?  東郷さんの手を取って固まったまま、私はぱくぱくと金魚のように口を開け閉めする。  ……うん、ダメだ!東郷さんが可愛すぎて上手に言葉が出てこない!もう少し馴れてからにしよう!  さっくりと諦めて“何でもないよ”と言おうとした瞬間、東郷さんがふにり、と私の手を自分の胸にあてた。 「ん…」 「!?!?!?!?」 「…続き、したい?」  甘えん坊の表情のまま、怪しげな色気を湛えて東郷さんがちろりと唇を舐める。 「もっと、私を甘やかして…友奈ちゃん」 「東郷さーん!大好き!もっと、もっと甘やかしてあげる!」  ……こうして私の理性はあっさりと崩壊を迎えて、私たちは少しだけ大人の階段を昇ることになった。  ちなみに、甘え始めるようになった割と最初の方から誘惑していたと聞いたのは全部終わってからのことだった。

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