6・117-122

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「勇者システムの後遺症?」 「一度は神樹様に捧げられたものが自分の体に還る訳だからね~。何か影響が出る可能性はあるよ」 「生命に危険の及ぶ可能性は低いとか大赦は説明しているけど、何処まで信用できるんだか…今回ばかりは信じたいけどね」  ある日の放課後、夏凛ちゃんと園子ちゃんに呼び出された私は、大赦からの一方的な、そして無視できない連絡について聞かされていた。  勇者システムが消えた直後に他とは違う症状を発した私、満開で失った箇所の多かった園子ちゃん。  そして、二世代に渡る勇者システムの着装者となった東郷さん…特にこの3人には何かしらの後遺症が現れる可能性があるらしい。 「今のところ、私は特に変化はないみたいだけど…園子ちゃんは?夏凛ちゃんだって心配だよ?」 「私も元気元気だね~。まあ、仮に影響が出るなら私が真っ先だろうから安心してね、ゆーゆ」 「安心できるか!そういうこと言うの止めなさいよね、まったく」  園子ちゃんは冗談めかしたつもりだったんだろうけど、窘める夏凛ちゃんの顔は真剣その物だ。  勇気と絆と努力と根性。それらで漸く取り戻した穏やかな日常。  それが再び蝕まれるかも知れないという予感は、笑い飛ばすには少し深刻過ぎる。 「…東郷さんにも、話しておかないとダメだよね?」 「前の暴走を大赦は気にしてるみたいでね。東郷にはあんたを通して説明するようにってワンクッション置く指示が来たわ」 「わっしーを馬鹿にしてるよねー。シツレイしちゃうよー」  結局、それから私たちは言葉を交わすことなく勇者部の部室に戻って。  重苦しい気持ちで、その扉を開いた。 「あら、おかえりなさい3人とも。なあに、内緒話かしら」  部室の中では、勇者の姿をした東郷さんが微笑んでいた。 『東郷美森だけ勇者である』 「……まったく気付かなかったわ」 「私そろそろ気付いて来たわよ。東郷って割とボケ寄りよね?見た目はツッコミ系なのに」  青と白のピッチリとしたスーツ姿。胸とお尻が強調される衣装は懐かしいもので。 「やっぱり綺麗だなあ…」 「ゆ、友奈ちゃん、そんなにしみじみと言われると照れるわ」 「続けて。どうぞ続けて」  私と東郷さんとのやり取りに、PCを激しくタイピングしていく園子ちゃん。そっとしておこう。 「これが、勇者システムの後遺症ってことでいいのかな?」 「多分そうだと思うわ。見て、満開ゲージがぽっかりと存在しなくなっているし、精霊も現れない。  この状態が神樹様の意図から外れたもので、継続を想定していないのが解るもの」 「身体能力はどうなのよ?」  東郷さんは手近な空き缶を手に取ると、くしゃくしゃと丸めてビー玉くらいの大きさにして見せる。  うん、あんな大きな銃やライフルを乱射出来たんだからそれくらいのパワーあるよね。 「強いて言えば…足はもう普通に動くから、触手の感覚に少し違和感があるわね」 「あ、そっか。もう跳ねるみたいに移動しなくていいんだね」 「むしろ現役時代より強化されてるじゃない…精霊居ないからトントンだけど」 「それで、解除は出来ないのかな?」  園子ちゃんに言われて、東郷さんは端末をまず手に取って、気付いたようにそのまま返す。そこにアプリはもう無い。  しばらく考えた後、東郷さんは「えいっ」とか「はぁっ」と気合を入れ始めた。  解除しようと頑張っているんだろうけど、勇者の姿でぴこぴこと上下する東郷さんが可愛すぎるだけだ。  結局、顔が真っ赤になっただけで勇者の姿は解除されなかった。 「困ったわね…次の劇の衣装ですでごまかすのは、ちょっと無理そう」 「とりあえず、おばさんに連絡して今日は私の家に泊った方がいいんじゃない?  いつ解除されるかは解らないけど、日常に戻った東郷さんがその姿で帰ってきたら、おばさん引っくり返っちゃうよ」 「……ええ、それがいいわね。すぐ連絡するわ。ええ迅速に」  何故かさっきよりも気合の入っている様子で、凄い勢いで端末に指を走らす東郷さん。  夏凛ちゃんが呆れたように溜息を吐き、園子ちゃんが“頑張ってね!”と手を取ってぶんぶん振って来る。  何だろう、私なにか変なこと言ったかな?  ―――それからしばらく、普通に勇者部の活動をした。  勇者の格好のした東郷さんが気になって、私は何度もそちらを確認してしまう。  綺麗で、そして格好いい。それが彼女を苦しめたのを解ってもなお、東郷さんの勇者姿が私は一番好きだ。  今夜、あの格好で東郷さんがお泊りするんだと思うと何だかよく解らない胸の高鳴りがある。  東郷さんの方はというと、触手も使って上手に書類の整理を進めていて馴れたものだ。  私だけ舞い上がってるのかも知れない、東郷さんが大変なのに…と少しだけ反省した。 「それじゃあ、また明日ね。明日には治まってるといいんだけど」 「それで、どうやって帰るの?ゆーゆ、わっしー。大赦に連絡はしたけど返信も迎えもないんだよねー」 「その格好だと、確かに目立っちゃうよね…」  東郷さんは何も言わずに微笑みながら園子ちゃんと夏凛ちゃんに手を振ると、私の手を取って屋上へと登り始めた。  扉はこの時間だとしまっているけれど、東郷さんが手を翳すとパチンと錠が開く。  勇者ってこういうことも出来たんだ。私は新たな発見に目を丸くした。 「それで東郷さん、屋上に来たけど…わっ、寒い!こ、ここからどうするの?」 「それは勿論、こうするのよ…寒いでしょうから、しっかりとくっついて」 東郷さんはそう言うと―――私の体をお姫様だっこして、そのまま屋上から跳ね下りた。 「はい、到着。寒さや揺れは大丈夫だったかしら、友奈ちゃん?」 「う、うん、平気…///」  むしろ東郷さんの胸がずっと押し付けられていて、体がカッカと熱かったのは内緒だ。  何だろう、私が車椅子に乗っていて東郷さんのお世話を受けていた時。  あの時の心強さを何倍にもしたような頼り甲斐を、今の東郷さんからは感じる。  何もかも東郷さんに預けて、甘えてしまいたくなるような…。 「友奈ちゃん?」 「あ、うん!すぐの窓を開けて来るから、そこから入って!」  治まらない胸の動悸を隠すようにして家の中に駆け込む。  今夜一晩、耐えられるだろうか…今さらながらとっても不安になり、そもそも何に耐えるんだろうと混乱する頭を振った。  ―――ご飯はこっそり自分の部屋に運んで食べてもらったけど、お風呂は衣装が脱げないので無理だろう。  1人だけ温まることに罪悪感を覚えながら部屋に戻ると、東郷さんは私のベッドに腰掛けていた。  東郷さんが私の部屋に居る、それだけでいつも私の気持ちはウキウキと高まる。  けれど、今は勇者姿の東郷さんが居るという非日常的な光景にあまりにも内心は複雑だ。  解るのは、東郷さんに抱かれて帰って来たときからずっと動悸がおさまらないことだけ。 「そ、それじゃあ、まだ寝るのは早いから何かしようか! あ、でも東郷さんが居るのはお母さんたちには内緒だから、静かにできることがいいね」 「静かにできること、ね。それなら私、やってみたいことがあるのだけど」 「なあに?私、協力するよ!今日の私は、勇者・東郷美森の忠実な従者だからね!」 「ええ、友奈ちゃんが協力してくれれば―――静かに出来ることだから」  そう言うと東郷さんは微笑みながら私の方に手を伸ばして…一斉に伸びた触手が、私の四肢をやんわりと捕えた。 「わ、わわっ!?」 「静かに、友奈ちゃん。いい子だから、ね?」  東郷さんは何だかいつもより大人っぽい笑みを浮かべて、四肢を封じられた私を見詰めている。  その目線がまるで私の体に刺さるようで、顔や胸がお風呂上がりよりも熱くなる。 「と、東郷さん?これって何の遊び?その、確かにくすぐったいけどそれほど嫌では…」 「残念ながら遊びじゃないの。勇者の力に適合したあの日から、ずっと夢見ていたことなのよ」  しゅるしゅると触手が私を東郷さんのすぐ近くにまで引き寄せる。  パジャマの中に入り込んで来た触手が、すりすりと腋の下を、太ももを、首筋を撫でる。 「あはは!と、東郷さん、くすぐったいよぅ!」 「静かに、友奈ちゃん。声を出したらお義母様たちに気付かれてしまうわよ」  私は口を抑えようとして手が動かせないのを思い出し、唇をギュッと紡いでみせる。  東郷さんは『いい子ね』と褒めてくれて、触手がまた私の体を這いまわる。  何だろう、最初はくすぐったいだけだったのに、段々変な気持ちになってきた…。 『東郷美森は侵食する』ルート:○へ 『結城友奈は逆襲する』ルート:■へ ○東郷さん攻めルート 「と、東郷さ…な、何だか、恥ずかし…ひぅっ!///」  自分の物だと信じられない様な、甘い響きを含んだ吐息…触手が私の体を這い回る度に、それは高まって。 気付けば下着の中に潜り込んでいるのに、私は抵抗しようとしない。出来ない。 「友奈ちゃん、気持ちいいかしら?こうやって、友奈ちゃんを蕩かしてしまいたいと…ずっと思っていたのよ」 国防の為の力を私欲で使ってはいけないと我慢していたけど…いいわよね、後遺症だもの」  くちゅ…と水音がした。  触手が、私の大切な所に触れた音。そこは何だか湿っていて、お漏らししてしまったんじゃと泣きそうになる。 「泣かないで、友奈ちゃん。女の子は気持ちよくなると、大切な所が濡れて来るの。誰でもそうなのよ」 「そ、なの…?あ、ひぃぁ…!東ご…さ…!///」 「友奈ちゃん、腋の下が弱いみたいね。ここもとっても喜んでるわ」  くちゅり、と東郷さんの指が直接私の大切な所に触れる。 「~~~~~~~~!///」 「さっきより、ずっと気持ちよさそうね。大丈夫よ、初めてはちゃんと、私自身がしてあげるから…」  東郷さんが、ぺろりと指を舐める。私のでうっすらと湿った指を舐め上げる仕草がすごく素敵で。 「ねえ、友奈ちゃん。嫌だったら、今ちゃんとそう言ってね?すぐに止めるから…とても大事な決断だもの」 「…いや、じゃない、よ…は、はやく、触って…ほしいかも…///」 「触るだけじゃすまないけれど、いいかしら?」  しゅるりと触手が腋の下を弄くる。ズルイよ東郷さん、断らせないつもりじゃない。  私は、よく解らないままにこくこくと必死で頷いていた。  東郷さんに全部任せてしまおう。素敵で、格好良くて、綺麗な勇者に甘えてしまおう。  私がそうやって思考を放棄するのとほぼ同時に、東郷さんの指が私の大切な所に、つぷりと入り込んで。  ―――焼ける様な痛みは、全身を這う触手が与えてくれる快感に溶けていった。  翌朝、東郷さんは制服姿で私の隣で眠っていた。  どうやら後遺症は無事治まったようで、東郷さんに特に変化は無かった。  私の方は…その、色々変わってしまったような気がするけど。 「少しだけ、私が元に戻って残念だと思っているんじゃない?」  こっそり下着を洗濯に行って帰ると、ベッドに座った東郷さんがからかうように微笑む。  見透かされたような気持ちになってうつむく私に、東郷さんがそっと近づいて囁いた。 「大丈夫よ…指はちゃんと残っているもの」  くすぐるような仕草で東郷さんが服の中にそっと手を差し入れる。  私は、真っ赤になって恥ずかしい吐息を洩らすことしか出来なかった。 『東郷美森だけ勇者である』:東郷美森は侵食する……了 ■友奈ちゃん反転ルート 「友奈ちゃん、これから友奈ちゃんのことを気持ちよくしてあげるからね…ふふ、楽しみだわ」  東郷さんは私の四肢を封じてすっかり舞い上がってしまっているようだ…だから気付いていない。  首筋を撫でていた触手が、私の顔の辺りを所在なさげに這い回っているのに。 「はむっ…」 「ひゃんっ!?///」  私が触手を口で優しく咥えると、東郷さんの体が電気を流したように跳ねた。  どうやらこの触手、東郷さんと感覚が繋がっているらしい。はむはむと甘噛みしながらそれを確認する。  勇者姿の東郷さんが、綺麗で凛々しい私の大好きな親友が、真っ赤になって悶えている。  触手を咥えたままの口元に、自然と笑みが浮かんでいた。 「東郷さん…はむ…ぺろっ…私にエッチなことしようと思ってたの?…ちゅっ、ちゅっ…」 「ゆ、友奈ちゃ、そこはダメ…ひゃっ…ダメなの、本当に…!///」 「格好いい東郷さんにうっとりしてたのに…ちゅぅ…くちゅ…幻滅しちゃうなあ」  触手の拘束が緩む。東郷さん本人よりも少しだけ力が弱いらしい。  私は素早やく手足を其処から引きだすと、東郷さんをベッドに押し倒した。  勿論、反撃されない様に触手を舐めて、しゃぶって、時々しごいてあげるのも忘れない。 「だから―――責任取ってよ」 「せ、せきに…んんっ!///」  勇者の衣装越しに触れた東郷さんの胸は、すごく柔らかくて張りが合って。  どうしてこんな素敵な物に今まで触れなかったんだろうと思うと、何だか悔しくなってしまう。 「可愛い東郷さんの姿をいっぱい見せて?そうしたら帳消しになると思うんだ…」 「友奈ちゃ…何を言って…はふっ…!///」 「ダメ、抵抗なんてさせないから。私がマッサージ上手なの知ってるよね…?」  触手と胸を交互に弄ると、東郷さんは泣きそうな顔で必死に声を押し殺す。  私の中でむくむくと黒い衝動が沸き上がる。  前に東郷さんを泣かせてしまった時、私はどん底まで心が落ち込んだ。  ―――今は泣かせてもいいんだ。 「ねえ、東郷さん…もっと気持ちよくなりたくない…?」 「や、やあ…こわ、い…///」 「恐くないよ?私にしようとしてたことじゃない。なりたいでしょ、ね?」  触手に少し強めに口づけして、胸の先の大切な部分をぎゅうっ…と抓りあげる。  東郷さんは完全に降伏したようで、おずおずと足を開いていく。  ぴっちりした衣装のそこは、今はしっとりと濡れて東郷さんの形が目に見えて解って。 「エッチな東郷さん…でも、とっても可愛いよ」  ―――私はそこに貪るように口づけをして、勇者のことを蹂躙し尽した。  目を覚ますと、東郷さんは制服姿で私の隣で眠っていた。  結局私の力で勇者の衣装を破ることはできなくて…肝心なことがまだできていない。 「でも、今はいいや…おかえり、東郷さん」  私はその頬に口づけをすると、これからのことを思ってほくそ笑んだ。 『東郷美森だけ勇者である』:結城友奈は逆襲する…了 エピローグ 「結局、症状が出たのは東郷だけだったみたいね」  東郷さんの姿が元に戻って、勇者部に再び平穏が戻った。  私たちの関係は…ちょっと、平穏から遠ざかってしまった気がするけど、いいよね? 「もっと色々ゆーゆとわっしーにしてもらえば良かったと思うよ…乃木園子、一生の不覚!」 「仮に色々したとしても、そのっちには見せないわよ」 「けちん坊!けちん坊だよ、わっしーは!そんな風に育てた覚えはないよー!」 「お生憎様。東郷美森を育ててくれたのは友奈ちゃんだもの」  何だか恥ずかしいことを言う東郷さんに照れつつ、私は事態の終息を感じて…。 「…ん?」 「どうしたのよ、友奈。まさか今度はあんたに何かあったんじゃ…」 「いや、そうじゃなくて…昨日は色々あったから混乱して気付かなかったけど、風先輩と樹ちゃんは?」  私がそう言うと、他の3人も思い当たったようでそれぞれの端末を覗く。  見れば、昨日ちょうど勇者東郷さんを私たちが目撃していたのと同じ時間に、風先輩からの着信メッセージがあった。 『樹にしばrrて たすk』 「…愛だねえ」 「愛なの?」  園子ちゃんの言葉と夏凛ちゃんのツッコミを聞きながら、私は風先輩にエールを送った。 エピローグ:『東郷美森だけが勇者って訳でも無かった』…了
「勇者システムの後遺症?」 「一度は神樹様に捧げられたものが自分の体に還る訳だからね~。何か影響が出る可能性はあるよ」 「生命に危険の及ぶ可能性は低いとか大赦は説明しているけど、何処まで信用できるんだか…今回ばかりは信じたいけどね」  ある日の放課後、夏凛ちゃんと園子ちゃんに呼び出された私は、大赦からの一方的な、そして無視できない連絡について聞かされていた。  勇者システムが消えた直後に他とは違う症状を発した私、満開で失った箇所の多かった園子ちゃん。  そして、二世代に渡る勇者システムの着装者となった東郷さん…特にこの3人には何かしらの後遺症が現れる可能性があるらしい。 「今のところ、私は特に変化はないみたいだけど…園子ちゃんは?夏凛ちゃんだって心配だよ?」 「私も元気元気だね~。まあ、仮に影響が出るなら私が真っ先だろうから安心してね、ゆーゆ」 「安心できるか!そういうこと言うの止めなさいよね、まったく」  園子ちゃんは冗談めかしたつもりだったんだろうけど、窘める夏凛ちゃんの顔は真剣その物だ。  勇気と絆と努力と根性。それらで漸く取り戻した穏やかな日常。  それが再び蝕まれるかも知れないという予感は、笑い飛ばすには少し深刻過ぎる。 「…東郷さんにも、話しておかないとダメだよね?」 「前の暴走を大赦は気にしてるみたいでね。東郷にはあんたを通して説明するようにってワンクッション置く指示が来たわ」 「わっしーを馬鹿にしてるよねー。シツレイしちゃうよー」  結局、それから私たちは言葉を交わすことなく勇者部の部室に戻って。  重苦しい気持ちで、その扉を開いた。 「あら、おかえりなさい3人とも。なあに、内緒話かしら」  部室の中では、勇者の姿をした東郷さんが微笑んでいた。 『東郷美森だけ勇者である』 「……まったく気付かなかったわ」 「私そろそろ気付いて来たわよ。東郷って割とボケ寄りよね?見た目はツッコミ系なのに」  青と白のピッチリとしたスーツ姿。胸とお尻が強調される衣装は懐かしいもので。 「やっぱり綺麗だなあ…」 「ゆ、友奈ちゃん、そんなにしみじみと言われると照れるわ」 「続けて。どうぞ続けて」  私と東郷さんとのやり取りに、PCを激しくタイピングしていく園子ちゃん。そっとしておこう。 「これが、勇者システムの後遺症ってことでいいのかな?」 「多分そうだと思うわ。見て、満開ゲージがぽっかりと存在しなくなっているし、精霊も現れない。  この状態が神樹様の意図から外れたもので、継続を想定していないのが解るもの」 「身体能力はどうなのよ?」  東郷さんは手近な空き缶を手に取ると、くしゃくしゃと丸めてビー玉くらいの大きさにして見せる。  うん、あんな大きな銃やライフルを乱射出来たんだからそれくらいのパワーあるよね。 「強いて言えば…足はもう普通に動くから、触手の感覚に少し違和感があるわね」 「あ、そっか。もう跳ねるみたいに移動しなくていいんだね」 「むしろ現役時代より強化されてるじゃない…精霊居ないからトントンだけど」 「それで、解除は出来ないのかな?」  園子ちゃんに言われて、東郷さんは端末をまず手に取って、気付いたようにそのまま返す。そこにアプリはもう無い。  しばらく考えた後、東郷さんは「えいっ」とか「はぁっ」と気合を入れ始めた。  解除しようと頑張っているんだろうけど、勇者の姿でぴこぴこと上下する東郷さんが可愛すぎるだけだ。  結局、顔が真っ赤になっただけで勇者の姿は解除されなかった。 「困ったわね…次の劇の衣装ですでごまかすのは、ちょっと無理そう」 「とりあえず、おばさんに連絡して今日は私の家に泊った方がいいんじゃない?  いつ解除されるかは解らないけど、日常に戻った東郷さんがその姿で帰ってきたら、おばさん引っくり返っちゃうよ」 「……ええ、それがいいわね。すぐ連絡するわ。ええ迅速に」  何故かさっきよりも気合の入っている様子で、凄い勢いで端末に指を走らす東郷さん。  夏凛ちゃんが呆れたように溜息を吐き、園子ちゃんが“頑張ってね!”と手を取ってぶんぶん振って来る。  何だろう、私なにか変なこと言ったかな?  ―――それからしばらく、普通に勇者部の活動をした。  勇者の格好のした東郷さんが気になって、私は何度もそちらを確認してしまう。  綺麗で、そして格好いい。それが彼女を苦しめたのを解ってもなお、東郷さんの勇者姿が私は一番好きだ。  今夜、あの格好で東郷さんがお泊りするんだと思うと何だかよく解らない胸の高鳴りがある。  東郷さんの方はというと、触手も使って上手に書類の整理を進めていて馴れたものだ。  私だけ舞い上がってるのかも知れない、東郷さんが大変なのに…と少しだけ反省した。 「それじゃあ、また明日ね。明日には治まってるといいんだけど」 「それで、どうやって帰るの?ゆーゆ、わっしー。大赦に連絡はしたけど返信も迎えもないんだよねー」 「その格好だと、確かに目立っちゃうよね…」  東郷さんは何も言わずに微笑みながら園子ちゃんと夏凛ちゃんに手を振ると、私の手を取って屋上へと登り始めた。  扉はこの時間だとしまっているけれど、東郷さんが手を翳すとパチンと錠が開く。  勇者ってこういうことも出来たんだ。私は新たな発見に目を丸くした。 「それで東郷さん、屋上に来たけど…わっ、寒い!こ、ここからどうするの?」 「それは勿論、こうするのよ…寒いでしょうから、しっかりとくっついて」 東郷さんはそう言うと―――私の体をお姫様だっこして、そのまま屋上から跳ね下りた。 「はい、到着。寒さや揺れは大丈夫だったかしら、友奈ちゃん?」 「う、うん、平気…///」  むしろ東郷さんの胸がずっと押し付けられていて、体がカッカと熱かったのは内緒だ。  何だろう、私が車椅子に乗っていて東郷さんのお世話を受けていた時。  あの時の心強さを何倍にもしたような頼り甲斐を、今の東郷さんからは感じる。  何もかも東郷さんに預けて、甘えてしまいたくなるような…。 「友奈ちゃん?」 「あ、うん!すぐの窓を開けて来るから、そこから入って!」  治まらない胸の動悸を隠すようにして家の中に駆け込む。  今夜一晩、耐えられるだろうか…今さらながらとっても不安になり、そもそも何に耐えるんだろうと混乱する頭を振った。  ―――ご飯はこっそり自分の部屋に運んで食べてもらったけど、お風呂は衣装が脱げないので無理だろう。  1人だけ温まることに罪悪感を覚えながら部屋に戻ると、東郷さんは私のベッドに腰掛けていた。  東郷さんが私の部屋に居る、それだけでいつも私の気持ちはウキウキと高まる。  けれど、今は勇者姿の東郷さんが居るという非日常的な光景にあまりにも内心は複雑だ。  解るのは、東郷さんに抱かれて帰って来たときからずっと動悸がおさまらないことだけ。 「そ、それじゃあ、まだ寝るのは早いから何かしようか! あ、でも東郷さんが居るのはお母さんたちには内緒だから、静かにできることがいいね」 「静かにできること、ね。それなら私、やってみたいことがあるのだけど」 「なあに?私、協力するよ!今日の私は、勇者・東郷美森の忠実な従者だからね!」 「ええ、友奈ちゃんが協力してくれれば―――静かに出来ることだから」  そう言うと東郷さんは微笑みながら私の方に手を伸ばして…一斉に伸びた触手が、私の四肢をやんわりと捕えた。 「わ、わわっ!?」 「静かに、友奈ちゃん。いい子だから、ね?」  東郷さんは何だかいつもより大人っぽい笑みを浮かべて、四肢を封じられた私を見詰めている。  その目線がまるで私の体に刺さるようで、顔や胸がお風呂上がりよりも熱くなる。 「と、東郷さん?これって何の遊び?その、確かにくすぐったいけどそれほど嫌では…」 「残念ながら遊びじゃないの。勇者の力に適合したあの日から、ずっと夢見ていたことなのよ」  しゅるしゅると触手が私を東郷さんのすぐ近くにまで引き寄せる。  パジャマの中に入り込んで来た触手が、すりすりと腋の下を、太ももを、首筋を撫でる。 「あはは!と、東郷さん、くすぐったいよぅ!」 「静かに、友奈ちゃん。声を出したらお義母様たちに気付かれてしまうわよ」  私は口を抑えようとして手が動かせないのを思い出し、唇をギュッと紡いでみせる。  東郷さんは『いい子ね』と褒めてくれて、触手がまた私の体を這いまわる。  何だろう、最初はくすぐったいだけだったのに、段々変な気持ちになってきた…。 『東郷美森は侵食する』ルート:○へ 『結城友奈は逆襲する』ルート:■へ ○東郷さん攻めルート 「と、東郷さ…な、何だか、恥ずかし…ひぅっ!///」  自分の物だと信じられない様な、甘い響きを含んだ吐息…触手が私の体を這い回る度に、それは高まって。 気付けば下着の中に潜り込んでいるのに、私は抵抗しようとしない。出来ない。 「友奈ちゃん、気持ちいいかしら?こうやって、友奈ちゃんを蕩かしてしまいたいと…ずっと思っていたのよ」 国防の為の力を私欲で使ってはいけないと我慢していたけど…いいわよね、後遺症だもの」  くちゅ…と水音がした。  触手が、私の大切な所に触れた音。そこは何だか湿っていて、お漏らししてしまったんじゃと泣きそうになる。 「泣かないで、友奈ちゃん。女の子は気持ちよくなると、大切な所が濡れて来るの。誰でもそうなのよ」 「そ、なの…?あ、ひぃぁ…!東ご…さ…!///」 「友奈ちゃん、腋の下が弱いみたいね。ここもとっても喜んでるわ」  くちゅり、と東郷さんの指が直接私の大切な所に触れる。 「~~~~~~~~!///」 「さっきより、ずっと気持ちよさそうね。大丈夫よ、初めてはちゃんと、私自身がしてあげるから…」  東郷さんが、ぺろりと指を舐める。私のでうっすらと湿った指を舐め上げる仕草がすごく素敵で。 「ねえ、友奈ちゃん。嫌だったら、今ちゃんとそう言ってね?すぐに止めるから…とても大事な決断だもの」 「…いや、じゃない、よ…は、はやく、触って…ほしいかも…///」 「触るだけじゃすまないけれど、いいかしら?」  しゅるりと触手が腋の下を弄くる。ズルイよ東郷さん、断らせないつもりじゃない。  私は、よく解らないままにこくこくと必死で頷いていた。  東郷さんに全部任せてしまおう。素敵で、格好良くて、綺麗な勇者に甘えてしまおう。  私がそうやって思考を放棄するのとほぼ同時に、東郷さんの指が私の大切な所に、つぷりと入り込んで。  ―――焼ける様な痛みは、全身を這う触手が与えてくれる快感に溶けていった。  翌朝、東郷さんは制服姿で私の隣で眠っていた。  どうやら後遺症は無事治まったようで、東郷さんに特に変化は無かった。  私の方は…その、色々変わってしまったような気がするけど。 「少しだけ、私が元に戻って残念だと思っているんじゃない?」  こっそり下着を洗濯に行って帰ると、ベッドに座った東郷さんがからかうように微笑む。  見透かされたような気持ちになってうつむく私に、東郷さんがそっと近づいて囁いた。 「大丈夫よ…指はちゃんと残っているもの」  くすぐるような仕草で東郷さんが服の中にそっと手を差し入れる。  私は、真っ赤になって恥ずかしい吐息を洩らすことしか出来なかった。 『東郷美森だけ勇者である』:東郷美森は侵食する……了 ■友奈ちゃん反転ルート 「友奈ちゃん、これから友奈ちゃんのことを気持ちよくしてあげるからね…ふふ、楽しみだわ」  東郷さんは私の四肢を封じてすっかり舞い上がってしまっているようだ…だから気付いていない。  首筋を撫でていた触手が、私の顔の辺りを所在なさげに這い回っているのに。 「はむっ…」 「ひゃんっ!?///」  私が触手を口で優しく咥えると、東郷さんの体が電気を流したように跳ねた。  どうやらこの触手、東郷さんと感覚が繋がっているらしい。はむはむと甘噛みしながらそれを確認する。  勇者姿の東郷さんが、綺麗で凛々しい私の大好きな親友が、真っ赤になって悶えている。  触手を咥えたままの口元に、自然と笑みが浮かんでいた。 「東郷さん…はむ…ぺろっ…私にエッチなことしようと思ってたの?…ちゅっ、ちゅっ…」 「ゆ、友奈ちゃ、そこはダメ…ひゃっ…ダメなの、本当に…!///」 「格好いい東郷さんにうっとりしてたのに…ちゅぅ…くちゅ…幻滅しちゃうなあ」  触手の拘束が緩む。東郷さん本人よりも少しだけ力が弱いらしい。  私は素早やく手足を其処から引きだすと、東郷さんをベッドに押し倒した。  勿論、反撃されない様に触手を舐めて、しゃぶって、時々しごいてあげるのも忘れない。 「だから―――責任取ってよ」 「せ、せきに…んんっ!///」  勇者の衣装越しに触れた東郷さんの胸は、すごく柔らかくて張りが合って。  どうしてこんな素敵な物に今まで触れなかったんだろうと思うと、何だか悔しくなってしまう。 「可愛い東郷さんの姿をいっぱい見せて?そうしたら帳消しになると思うんだ…」 「友奈ちゃ…何を言って…はふっ…!///」 「ダメ、抵抗なんてさせないから。私がマッサージ上手なの知ってるよね…?」  触手と胸を交互に弄ると、東郷さんは泣きそうな顔で必死に声を押し殺す。  私の中でむくむくと黒い衝動が沸き上がる。  前に東郷さんを泣かせてしまった時、私はどん底まで心が落ち込んだ。  ―――今は泣かせてもいいんだ。 「ねえ、東郷さん…もっと気持ちよくなりたくない…?」 「や、やあ…こわ、い…///」 「恐くないよ?私にしようとしてたことじゃない。なりたいでしょ、ね?」  触手に少し強めに口づけして、胸の先の大切な部分をぎゅうっ…と抓りあげる。  東郷さんは完全に降伏したようで、おずおずと足を開いていく。  ぴっちりした衣装のそこは、今はしっとりと濡れて東郷さんの形が目に見えて解って。 「エッチな東郷さん…でも、とっても可愛いよ」  ―――私はそこに貪るように口づけをして、勇者のことを蹂躙し尽した。  目を覚ますと、東郷さんは制服姿で私の隣で眠っていた。  結局私の力で勇者の衣装を破ることはできなくて…肝心なことがまだできていない。 「でも、今はいいや…おかえり、東郷さん」  私はその頬に口づけをすると、これからのことを思ってほくそ笑んだ。 『東郷美森だけ勇者である』:結城友奈は逆襲する…了 エピローグ 「結局、症状が出たのは東郷だけだったみたいね」  東郷さんの姿が元に戻って、勇者部に再び平穏が戻った。  私たちの関係は…ちょっと、平穏から遠ざかってしまった気がするけど、いいよね? 「もっと色々ゆーゆとわっしーにしてもらえば良かったと思うよ…乃木園子、一生の不覚!」 「仮に色々したとしても、そのっちには見せないわよ」 「けちん坊!けちん坊だよ、わっしーは!そんな風に育てた覚えはないよー!」 「お生憎様。東郷美森を育ててくれたのは友奈ちゃんだもの」  何だか恥ずかしいことを言う東郷さんに照れつつ、私は事態の終息を感じて…。 「…ん?」 「どうしたのよ、友奈。まさか今度はあんたに何かあったんじゃ…」 「いや、そうじゃなくて…昨日は色々あったから混乱して気付かなかったけど、風先輩と樹ちゃんは?」  私がそう言うと、他の3人も思い当たったようでそれぞれの端末を覗く。  見れば、昨日ちょうど勇者東郷さんを私たちが目撃していたのと同じ時間に、風先輩からの着信メッセージがあった。 『樹にしばrrて たすk』 「…愛だねえ」 「愛なの?」  園子ちゃんの言葉と夏凛ちゃんのツッコミを聞きながら、私は風先輩にエールを送った。 エピローグ:『東郷美森だけが勇者って訳でも無かった』…了

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