「お疲れさまでした―」
撮影が終わり、樹を伴って控室に戻る
最初は芸能界のイロハも知らなかった私だが、今はそれなりにマネージャーも板に付いて来た
バーテックスとの戦いが終わり大赦との連絡も途絶えて、やることがぽっかりと無くなった私
事務所の社長がマネージャー(当時は見習い)をやってみないかと持ちかけてくれたのは僥倖だった
樹も時々歌番組に呼んで貰えるくらいには人気が出て来て、勇者部の活動時はちょっと気を遣うくらいだ
勇者部時代からひしひしと感じていたが、樹の成長も喜びも苦労も一番近くで分かち合えるのは凄く嬉しい
1つを除いて私たち姉妹は順調その物なのだ。そう、1つを除いて
「お姉ちゃん…」
とろんと、何処か甘さを感じさせる樹の声
あ、マズいと思った時にはいつものように手遅れで、後ろから抱きつかれて胸と太ももを触られていた
「い、樹、今日は駄目、まずいったら。この後事務所で書類仕事が」
「すぐ終わるから」
それは仕事がか、それとも行為がだろうか
私もそこまで本気で抵抗しないのは、そもそもこうなった原因が自分にあるからだ
樹の初めてのお仕事の日、そして私のマネージャーデビューの日
仕事を終えて、くたくたで控室に入って来た樹に私はマネージャー(見習い)になったことを告げた
ちょっとしたサプライズのつもりだったのだが、初仕事の緊張やら普段と違う格好の私やら
まあとにかく色々重なってプツンと何かがキレて、私はその場で妹に押し倒されてしまった
それ以来、仕事が終わる度にこうして樹は私に甘えて来る癖が付いた
社長たちに相談しても『男遊びをするよりずっと安心』『神世紀にはそう珍しくない』とまさかの公認
実際この癖が付いてからは仕事での緊張もほとんど無くなり、子供っぽかった樹に艶っぽい魅力まで加わった
姉として、マネージャーとして颯爽と樹を支えるという私の夢を犠牲に、順調な芸能生活は続いている
「お姉ちゃん、顔隠しちゃ嫌だよ」
「は、恥ずかしいし…くそぅ、顔隠しに眼帯でもまた付けようかな…あ」
地雷を踏んだ
私が樹の声を心配したのと同じくらい、樹も私の目のことを心配していたのだ
するりと衣装を脱ぐと、樹の目が甘えモードから本気モードになった
「もう隠す必要がなくなるくらい、色んな顔を見せてもらうからね、お姉ちゃん?」
―――結局私はその後散々妹に弄ばれ、ついでに仕事が終わってからもお風呂場で強襲を受けたのであった
私たち姉妹は実に順調だ
姉の威厳という1つを除いて…それ以外は、まあ、私も嫌では無いし
最終更新:2015年02月09日 13:13