6・712-714

【友奈の告白】

「結城さん今日はありがとー!」

「どういたしまして!また必要になったら呼んでねー」

今日はテニス部からダブルス要員として部員派遣の依頼が来てそれをしっかり務めきりました!

という感じの報告で明日風先輩に言うとしよう。
なんてことを考えながら私は体育館に向かって歩き出す。私と同じく派遣依頼のあった夏凜ちゃんと合流して一緒に帰るためだ。讃州中学では運動系の部活終了時間は決まっている。なので違う部活の友達と一緒に帰宅できるようになっているのだ。

そうして体育館に辿り着き、ドアを開けようとすると……。


「好きです、三好さん!私と付き合って下さい!」


という女子の声が中から聴こえた。一瞬驚いて固まってしまったがすぐに意識を戻すと、扉をそっと少しだけ開き中を覗き込む。
そこには夏凜ちゃんと私の知り合いでもある剣道部員の女子1人が向かいあっていた。何かさらに女の子は夏凜ちゃんに言ってるいるようだがさっきと違って大声ではないので聴き取れない。

話が終わったのか女の子が私がいる出口へと近づいてくる。

慌てて近くの木に走り陰に隠れる。

「…………」

どうやら、行ったらしい。

そろ~と陰から出て体育館へと入り叫ぶ。

「夏凜ちゃん!」

「うわ!?って友奈か。ビックリしたじゃない」

「あのね!その…あの……うぅ」

何かを言おうとしたのだが言葉にできず口をモゴモゴとさせる。すると夏凜ちゃんはそれで察したようで……。

「あー……もしかして友奈さっきの見てた?」

「うん、さっきの娘から告白されてたね。そこ以外は聞こえなかったけど……なんて言われたのかとか聞いてもいい?」

「ええっと。あの娘は派遣されてる内に何度も話したり掛かり稽古の相手をしたりで部活内で割と仲良くしてたらいつの間にか惚れられてたみたい。それで良かったら付き合って欲しいって。そうなったら勇者部を辞めてこっちに来てくれとも言われたわ」

「ダ、ダメ!嫌だよ……夏凜ちゃんが勇者部からいなくなるなんて」

「いや、別に辞めやしないわよ!ちゃんと断るつもりだったし。まぁ返事しようとしたら『返事はすぐじゃなくていいから!』なんて言って退散されたけど」

「そっかー、良かった」

と安心してフゥと息を吐いたが、このままじゃ不味い。また、こんな事があるからもしれない。それでもしも夏凜ちゃんが誰かと……なんてことになる前に伝えるべきだ。今ここで。

両手で夏凜ちゃんの両肩を掴み目を見つめる。

「ゆ、友奈?」

「………………っ!」


『好き』という言葉が中々言い出せない。今まで色んな娘に言った言葉なのに。夏凜ちゃんにだって前に言った言葉なのに。

理由はわかっている。
この伝えたい『好き』は他や前の『好き』とは違うから。
もしも否定された時のことを考えたら怖いんだ。これでは勇気を出して告白したあの娘の足元にも及ばないではないか。このまま負けたくはない。

思考がそこまで辿り着くと気合を入れ直し自分の気持ちをハッキリと告げる。

「私ね、夏凜ちゃんのことが好き。それでね、友達じゃなくて恋人になりたいんだ」


私の告白に対して夏凜ちゃんはーー


①答えない
②答える

①√

「……ごめん友奈、その気持ちには答えられない」

「そう……なんだ」

その言葉を聞いた瞬間、私は目の前が暗くなるような感覚に襲われていた。

「ち、違うから!友奈のことが好きじゃないとかじゃなくてその……聞いてくれる?」

小さく首を縦に動かすと夏凜ちゃんが続けて言う。

「私は今まで友達とかいなかったから……友達としての好きと愛してるの好きがまだわからない。どっちつかずの曖昧のまま答えたくはないのよ」

「友奈が真剣に言ってくれたからこそちゃんと分かってから答えたい。だからそれまで待ってて欲しい」

「駄目……かな?」

「ううん、いいよ。ちゃんと考えてくれてありがとう。待ってるから。ずっとずっと待ってるから」

「ん、ありがと。じゃあとりあえず……友奈、一緒に帰る?」

「うん!」

そうして私たちは並んで歩き出した。


②√

「……私も友奈のことが好きよ」

「ほ、ほんと!?」

「ええ、本当に。いつからだったか分からないけど友奈に惹かれてた。だから私が他の誰かと恋人になるなんてあり得なかったの」

「夏凜ちゃん……えへへ、嬉しいなぁ」

喜んでいるとグイっと身体を引き寄せられる。顔が近くなって胸の動悸が早まる。

「告白は先にされたから……コレは私からでいいわよね?」

「……うん」


そうして夕日によって伸びていた2人の影は重なった。
最終更新:2015年02月21日 08:25