「……ふぅ…っ、はぁん……」
狭いトイレの個室の中で、私は夢中で友奈ちゃんの唇をむさぼっている。
むにゅり、と柔らかく、瑞々しさを備えたそれは、この世のどんな果実にも勝る甘さを帯びており、どれだけ
舐め続けていても飽きることはなかった、
「……とっ、東郷さん……んむっ……ちゅぅっ……もっ、もう少し、優しく……」
私の背中に手を回してぎゅっと抱きついたまま、友奈ちゃんがそう訴えかけてきた。私はキスを中断し、友奈ちゃんに応える。
「優しく……? どうして? 友奈ちゃん、こんなに気持ちよさそうなのに……」
「でっ、でも……ここ、学校のお手洗いだし……もし、誰かに気づかれちゃったら、大変だよ……」
「ふふ、要するに、気持ち良すぎて声が出ちゃうのを、抑えきれないってことなのね?」
「そっ、そういう事じゃなくて………んぷっ」
顔を真っ赤にする友奈ちゃんがかわいくて、私はもう一度キスをしてしまう。今度は思い切り舌をのばし、友奈ちゃんのそれと
ねっとりと絡み合わせるようにして。くちゅくちゅという淫らな水音が、放課後のトイレで反響する。
「はむっ……ん、ぷぁっ……とうごう、さぁんっ……」
「大丈夫よ、友奈ちゃん。誰かが入って来れば、ドアの開く音でちゃんとわかるわ。それに――」
「んんっ……!?」
すっ、と私は不意打ちで手を伸ばし、友奈ちゃんのスカートの中へと忍び込ませると、下着越しの秘所へくちゅ、と触れた。
「――友奈ちゃんも、もうこんなに濡らしてしまっているのに、慰めてあげないわけにはいかないわ」
「あっ、ふぁぁっ……」
じわりとしみだして来た友奈ちゃんの蜜により、私の指がきゅっ、きゅっ、と友奈ちゃんの割れ目にそって滑るように往復する。
その度友奈ちゃんはびくんと震え、反射的に呆けたような声を上げてしまっていた。
「うふふ、今日はずいぶんとろとろに蕩けてるわね、友奈ちゃん。まるでおもらしをしちゃってるみたい……そんなに気持ちよかったかしら?」
「やっ、だめっ、恥ずかしいよぉ、東郷さん……」
私がわざと辱めるような言葉をかけてあげると、友奈ちゃんはますます顔を火照らせて、私の体にしがみついてくる。そんな友奈ちゃんが、
愛おしくてたまらなかった。
ああ、可愛い可愛い友奈ちゃん。友奈ちゃんは、私のものよ。
「――ごめん、ね、東郷さん」
「ごめん? 何のこと?」
なおも続く私の指による愛撫を受けながら、友奈ちゃんが私に対してそんな言葉を発した。私もまた、指の動きをいささかも緩めることなく、
友奈ちゃんに聞き返す。
「いっ、つも……んっ、わたし、ばかり、してもらってて……東郷さんに……ひゃんっ、……東郷、さんに、気持ちよくして、あげられなくて……」
なあんだ、と私は思う。友奈ちゃんったら、そんなつまらない事を気にしていたなんて。
「いいのよ、友奈ちゃん」
私はにっこりと微笑むと、自分よりも背の低い友奈ちゃんの顔を見下ろす。こんな風に、友奈ちゃんを自分の胸の中に収めてしまえる日が
来るなんて、少し前までは想像すらしていなかったな、などと思いながら。
「私は、こうして――」
そしてもう一度、友奈ちゃんの甘い唇めがけて、優しくキスを降り注がせた。
「ん………んん……」
もはや瞳を潤ませてうっとりとしてしまっている友奈ちゃんに対して、私は言葉を続けた。
「――友奈ちゃんの唇をもらうだけで十分なんだから」
そう、それだけが、私にとっての祝福だ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
その時。
「……!」
がちゃり、とトイレの入り口の方で音がするのを聞きつけ、私達はとっさに口を抑えた。
続いてぺた、ぺたと上履きがトイレのタイルを叩く音がして、だんだんと、こちらへ近づいてくる。最後にはその足音は、私達の
こもっている個室の隣のドアの前で止まり、ぎい、とその扉を開け、内側へと入ってきた。
(どっ、どうしよう……東郷さん、すぐ、隣に誰か……!)
ぼそぼそと小さな声で私に耳打ちする友奈ちゃんを(しっ)と制止し、私達はひたすら息をひそめて様子をうかがう。だが、どうやら
私達の存在に気づかれた様子はないようだった。
(よかった……このまま静かにしてて、隣の人がいなくなったら、わたし達も出よう……ね?)
友奈ちゃんが、目顔で私に訴えかけてくる。
だが。
(…………)
隣に注意を払っている友奈ちゃんに気づかれないよう、私は再び、そろそろと手を動かし、ぬちゅり、と友奈ちゃんの秘所をまさぐった。
(きゃっ……!?)
不意をつかれて驚きながらも、どうにか声をこらえる友奈ちゃんをじっと見つめながら、私は二度、三度と友奈ちゃんのぷっくりと膨らんだ
肉丘をつまむ。すでに先ほどからの行為で柔らかくほぐれているその感触が、とても心地いい。
次第にこらえきれなくなった私はごそごそと下着の隙間から指を差しこみ、直接友奈ちゃんの陰部へと刺激を加えていった。
(はんっ……んんっ……! 東郷さん……なんで……)
絶対に声を上げてはいけない状況であるにもかかわらず続行される愛撫に戸惑い、友奈ちゃんが涙目で私を見上げる。だがそれでも、私は
友奈ちゃんへの指淫を止める事ができなかった。
(――声を上げたら、気づかれてしまう?)
ぬちゅっ、ぬちゅっと指を挟みこむ柔肉の感触に溺れながら、私は考える。
(それならいっそ、大勢の人に気づかれてしまえばいいんだわ)
こんなにも可愛い顔をする友奈ちゃんを。こんなにも愛らしい声を上げる友奈ちゃんを。私だけが知っているのでは、まだ足らない。
もっともっとたくさんの人が、友奈ちゃんという女の子の存在に注意を向けてしかるべきなのだ。そのためなら私は、きっとどれだけの
辱めにでも耐えうるだろう。
(……ああ……)
一瞬――ほんの一瞬だけ、私は、自分たちがいつも授業を受けている教室で、たくさんの生徒や先生の見守る中、友奈ちゃんとの行為に
及んでいる風景を想像する。それはあまりにも刺激的で倒錯的で、これ以上ない程に心躍ってしまいそうで、ぶるり、と全身を震わせた。
私がどれだけ友奈ちゃんを愛しているか。友奈ちゃんがどれだけ素敵な女の子なのか。
私は、全ての人たちにそれを証明したいのだ。
「―――っ、あっ!」
完全に自分の世界にはまりこんでしまい、ぐっちゅぐっちゅと無我夢中で動かし続ける私の指に耐え切れず、とうとう友奈ちゃんが、
短い、しかし、甲高い嬌声を上げ、びくん、と身を痙攣させた。
「……!」
自分の上げた声のあまりにも艶っぽい響きに、思わず友奈ちゃんは自分の口をばっと押さえ、再び隣の個室を気にする。だが、当の隣人は
おかしな事だとは思わなかったらしく、こちらをうかがう様子もないまま用を済ませると、そのままトイレを後にしてしまった。
「はぁ……はぁぁ……」
達してしまった余韻と緊張の糸が切れてしまったせいでか、友奈ちゃんがずるる、とその場でへたり込む。
私はと言えば、手の平に受け止めた友奈ちゃんの愛液の熱さを感じながら、しばし、一人で悦に入っていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「――大丈夫、誰もいないわ。友奈ちゃん、先に出て」
やがて後始末を終えた私達は、そっと個室から外をうかがい、誰もいない事を確かめると、まず友奈ちゃんから部室に戻る事にした。
「う、うん……東郷さんも、早く戻ってきてね」
「わかってるわ。でも、一緒に戻ると怪しまれてしまうから、少し時間を空けてからね」
じゃあね、と言い置いて、友奈ちゃんは小走りに廊下へと出ていった。一人残された私は、ふう、とひとつ息をつくと、洗面台で手を流した。
冷たい水が手の表面を流れていく瞬間、友奈ちゃんとの愛の証が落とされてしまうような気がして寂しくなったが、それよりも――
(――みんなの前で、友奈ちゃんと……)
先ほど、稲光のように私の頭に閃いた光景は今もそこに焼き付いており、私の心を魅きつけていた。
もちろん、現実的に考えれば、有り得ない事だとはわかっている。そんな破廉恥な行動を実行に移したりすれば、即大問題だ。
だけど――と、私は考えをそこで止める事をせず、さらに先へと進める。
以前にネットで見た限りでは、自分の素性をさらさないようにしつつ、自分たちの行為を誰かに見せつける方法もないわけではない。
細心の注意を払いながら事を進めれば、きっとそれは実現可能なのだ。
私と、友奈ちゃんとの交接を、不特定多数の衆目にふれさせる事が。
友奈ちゃんの乱れる肢体を、はね上がる喘ぎ声を、あふれ出して留まる事を知らない、秘蜜の輝きを。
それらを全て、ただ一人、この私だけが――ひとりじめしているという事実を。
世界の全てが認めた時、それは初めて真実となるのだ。
「……ふ……」
知らず、口元に浮かぶ微笑を、私は拭い切れないままにその場を立ち去る。爆ぜる寸前の鳳仙花の実のように、はち切れんばかりの衝動を
胸に秘めながら。
一度実らせてしまったこの想いは、きっともう止まらない。行き着くところまで行かなければ、鎮まる事はないだろうことが自分でもわかっていた。
(待っててね、友奈ちゃん……!)
私は廊下を足早に歩きながら、友奈ちゃんへと思いを馳せる。
――心の底から、大好きよ。
私の、私だけの、友奈ちゃん。
最終更新:2015年03月01日 08:17