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「本当、わっしーは総合力高いよね~」

「急にどうしたの?そのっち」

「ゆうみも、ふうみも、いつみも、ぼたにぼ、勇者部の誰とでも筆が進むんだ~」

「……」

「あ、あれ?わっしー怒ってる?」


「園ちゃん、自分のことには鈍感だなあ」
「本人以外は皆気付いてるのにねぇ」
「まあね、友達同士を恋人とか言われたらそりゃ怒るわよ」
「夏凛さん…」

「なんだかよく分からないけど、ごめんねわっしー。機嫌なおしてよ~」

「……そのみもは無いの?」

「え……!?わ、わたし~!?」

「そのっちは、私のこと嫌い?」

「そ、そんなことないよ~。で、でも……わたしなんかでいいの~?」

「そのっちがいいの。私の初恋は、そのっちなんだよ?」

「う、うわ~。いきなりでちょっと頭が混乱しちゃってるよ~」

「……やっぱり、そのっちは私のこと、包みきれない?」

「……ふっふっふ~」

「そ、そのっち?」

「わたしはもう2年前のわたしじゃないよ~。2年間半分ゴッドになってたわたしだよ~。
 わっしーのこと、包み込んでみせるよ~!」

「そのっち……///」

「でも条件があるんだ~」

「条件?」

「……もう、わたしを一人にしないでくれる?」

「――!! ええ……!これからはずっと、一緒にいるわ!」

「東郷さん、園ちゃん……おめでとう!」
「くっ……私の両目が疼いている……ッ!!」
「はいお姉ちゃん、ハンカチ」
(え……女の子同士の恋愛って普通だったの……!?


【イネス】

「やっぱりデートの場所はイネスになるんだね~」

「私たちならまずはここに来るしかないかなって思ったのよ」

「あれ~? 少しお店の雰囲気が変わってるよ」

「どうやら2年前と比べると模様替えや店舗の入れ替えがあったようね」

「そっか~。それならイネスでも新鮮な気持ちで回れてお得だね。でも……」

「でも?」

「ここに来るとどうしても昔のことを思い出しちゃって……わっしーとまた離れ離れになるんじゃないかって少しだけ不安にもなるの」

その言葉を聞くと東郷は園子の右手を取り自分の胸元にやると両手で優しく包み込み語りかける。

「もう離れないしこの手を離さない。告白した時に約束したでしょ?」

「わっしー……ありがとう」

そう答える園子の顔にまだ陰があるように見えた東郷は園子を引き寄せると強く抱きしめた。

「え、あ、あの……わっしー? みんな見てるよ~?」

「見せつけているのよ。そのっちの書いていた小説にこんな場面があったでしょう?」

「……嫌だったかしら?」

「そんなことないよ! 少し恥ずかしいけど……凄く嬉しくて涙が出そうなくらいだもん」

「良かった」

そのまましばらく黙って抱きしめ合ってると園子が笑顔で話し出す。

「もう大丈夫だよ~。今ので不安な気持ちはどっかに行っちゃったから。ありがとね、わっしー」

「それじゃ一緒に行きましょう」

園子を抱きしめていた東郷が離れて右手を差し出すと、園子は左手でしっかりとそれを握りしめて答える。

「うん! イネスは広いから制覇をするまで何度もこなくちゃね~」

「そうね、制覇をしたら別の所にもデートをしに行きましょう」

そうして2人は歩き出した。
最終更新:2015年03月08日 10:03