7・463

【誰にも渡さない】

 カードは残り二枚。その内ジョーカーではない方を東郷に抜き取られる。

「うぅ、また負けた」

「ならまた今度、勝負しなくちゃね」

 このようなことを2人でしている理由。それは友奈だ。ずっと友奈と一緒にいる東郷に黙っているのはどうなんだろうと思い、東郷に私は友奈のことが好きだと打ち明けた。
 すると東郷は少し思い悩んだ様子の後に「ならどちらの方が友奈ちゃんの隣に相応しいか、私と勝負しましょう」と言って来たのだ。
 それからは色んなことで勝負をしているのだが……一度も勝つことができていない。ただ何度負けても東郷はそこで終わりとは言わずに「また勝負しましょう」と言うだけだ。私が勝つまでやり続けるのだろうか?
 それにしても最近はそんなことをしているからか、友奈よりも東郷と2人で過ごす時間の方が多くなっているような。今だって東郷の家にお邪魔しているわけだし。かといって別にそれが嫌だと言うことはない。むしろ最近は、東郷の隣が居心地良く感じてきている。

「夏凜ちゃん、もう遅いしウチで一緒に夕食を食べましょう。美味しく作ってあげるから」

「そうねー、ならお言葉に甘えるわ。ありがとね」



 台所で東郷は料理をつくる為の作業をしながら小さく呟く。

「誰にも渡さない。例え友奈ちゃんが相手でも」

終わり
最終更新:2015年03月18日 09:59