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「食べ過ぎたー…最近、食べ過ぎだったよー、東郷さーん…」

 友奈ちゃんはそんなことを言いながら、可愛らしいお腹をこちらに見せてくる。
 ほんの少しだけ、胸の下側が見えるか見えないかの位置まで捲り上げて見せるので、私の方は気が気でない。

「友奈ちゃん、少しはしたないわよ」
「東郷さんしかいないし、東郷さんにしかしないもん」

 …ダメだ、あっさりと顔がにやけそうになる。
 友奈ちゃんの場合、この場を誤魔化すためではなく本気で言っているから困る。

「はあ…東郷さんのぼた餅に、部活帰りのうどん、それにハロウィンの時にもらったお菓子が賞味期限近いから一気に…。
 そりゃ、どうやったってお腹にクるよね」
「全快したとはいえ、運動は控えめにしていたのもあるんでしょうね。
 しばらくの間、ぼた餅は控える?」
「それは絶対にいや!東郷さんのぼた餅が食べられないなんて、人生の五割損してるのと一緒だよ!」

 地味に割合が増えているのは嬉しいけれど、私としてはそこまで真剣になることか疑問に思う。
 友奈ちゃんは矢鱈とお腹を見せて膨れた、お肉が付いたというけど、私からすれば全然問題ないようにしか見えない。
 確かに少しだけぽっこりしているけれど、友奈ちゃんみたいな子がむしろこれくらいの方が可愛いと思うのだ。

「えー、無理しなくてもいいよ、東郷さん」
「無理なんてしてないよ。本当に可愛いと思ってる」
「だって、これだよ?この圧倒的ぷにぽよ感だよ?ちょっと触ってみて?」

 …触る?
 友奈ちゃんとスキンシップを図ることは少なからずある。けれど素肌を、それもお腹を触るのは初めての経験だ。
 しかも、先も言った通り割と友奈ちゃんは豪快に服を捲っているので、胸や…下の方も気になって仕方ないのだ。

「ほら、これ!ぷにぷに!これは乙女として気になるよ!風先輩なら女子力皆無!って怒るよ?」

 友奈ちゃんの方はぐいぐいと近づいて、私にぽっこりお腹を押し付けてくる。
 柔らかい。あったかい。それに、友奈ちゃんの仄かに汗の混じった甘い匂いがする。
 …割とあっさりと、ぷつりと私の中で何かが切れた。

「そうね、今の友奈ちゃんは女子として問題があるわね」
「え?東郷さ…ひゃうっ!?」

 むにぃ、と友奈ちゃんのお腹を触る。柔らかい。それにリハビリが長かったとは言え鍛えているので程よい弾力もある。

「こんな格好で女の子を誘惑するなんて本当にいけない子よ、友奈ちゃん」
「ゆ、誘惑なんて、してないよ…と、東郷さん、もういいから!恥ずかしい!」
「そう、とっても恥ずかしいことを友奈ちゃんはしてたの。それをちゃんと解って貰わないとね…」

 お腹に指をくいこませたまま、友奈ちゃんの背中に回り込む。友奈ちゃんも本気で抵抗はしない。

「マッサージ、友奈ちゃんは得意だったわね?私もしてあげるわ」
「ん…!い、痛い、ちょっと痛いよ、東郷さん…!」
「我慢して。ぽっこりお腹を直したいんでしょ?それとも…」

 友奈ちゃんの顔を覗き込みながら、私はちろりと唇に舌を這わす。

「もっと激しく、運動してみる?」

 友奈ちゃんは真っ赤になって顔を俯けてしまう。
 やがて、するすると服が上がって、下がって。私の手もそれぞれ、今は露わになった部分へと伸びた。


「しかし、友奈はどれだけ食べても太んないわねえ。あんだけ菓子食べたのに体に出ないとか羨ましいわ」
「私もあの後、少しの間はお腹にキましたよ?運動して発散しただけです!」
「そんな効果抜群の運動があるなら、アタシにも紹介してほしいわー。…友奈?なんで赤くなって黙り込むの」

 友奈ちゃんは誤魔化すように私作ったのぼた餅を次々と口に運んでいく。
 元々、運動やハードなリハビリのお蔭で代謝はすぐに戻ったらしく、友奈ちゃんはいくら食べても体系は変わらなくなった。
 私との“運動”は、今でも続いているのだけど。

「あ、そうだ。園ちゃん、ずっと借りてた本返すね」
「あ、もういいんだー。おめでとー」

 どうして本を返すのに祝福がかかるのだろう。
 何とは無しに表紙を見る。友奈ちゃんやそのっちが読むには珍しいファッション系の雑誌だ。
 特集は…『痩せればいいってものじゃない!ぽっこりを乙女の武器に変える10の方法』。
 …そう言えば、友奈ちゃんは天真爛漫とは言え、あの時は流石に度が過ぎていたような?
 友奈ちゃんがこちらに顔を向けて、笑う。その笑顔が魅力的ということしか、私には読み取れなかった。
最終更新:2015年04月17日 10:26