H1・912-913

今日は、友奈ちゃんのお部屋で、ふたりっきりでお勉強会。
いつも一緒にいるはずなのに、そこが友奈ちゃんの部屋というだけで、なんだか特別な時間のような気がして・・・ちょっと嬉しい。

「ふ・・・うぅ~っ・・・やっとひと段落ついたねぇ」

「そうね、そろそろ休憩しましょうか」

そんなこんなでお茶とお菓子を頬張りつつ、私と友奈ちゃんとでゆったりまったり、なんでもないひととき。
何気なくふたりでテレビを眺めていたら、偶然恋愛ドラマの告白シーンが流れた。

「いいなぁ、わたしもこんなロマンチックな恋愛してみたいなぁ」

「・・・友奈ちゃんは、こういう恋愛にあこがれているの?」

「えっ?・・・・・・うん、ちょっとは・・・えへへ」

「そ、そう・・・」

『こんなロマンチックな恋愛がしたい』か・・・。
それはそうよね、友奈ちゃんだって年頃の女の子だし、当たり前に恋とかするわよね・・・・・・。
頭では納得したつもりだったが、なぜだか釈然とせず生返事を返してしまう。

「ん、東郷さんは恋愛ドラマとか見たりしないの?」

「そうね、普段はいつも時代劇や歴史ドキュメンタリーばかりだから・・・」

そんなことよりも、今はもっと気になることがあって。

「・・・友奈ちゃんは、なにか好きな人のタイプってあったりするの?」

「えぇ?そんなのないよぉ~///」

「ほんとはあるけど、恥ずかしくて言い出せない?」

「うう・・・今日の東郷さん、なんだかいじわる」

確かに、今日の私は意地悪かも。友奈ちゃん、ごめんね。
でも、好きな『男の』タイプ、とは聞けなかった。なぜだか怖くて。

「あるなら聞きたいわ」

「もう、恥ずかしいよ・・・」

「でも、ほんとは聞いてほしい友奈ちゃんなのでありました、と」

変に茶化して聞いてみる。本当はすごく気になってるくせに。

「んん・・・じゃあ、東郷さんも後で教えてね?」

「ええ」

「・・・っと・・・そうだなぁ・・・、わたしは、優しくて、頼りになって、いつも傍にいてくれて・・・わたしが困ってると、すぐに助け舟を出してくれたり」
「変に着飾らないで、その人も自分の魅力に気づいてないんだけど・・・実はすっごくかっこよくて、でも弱くて脆い部分もあって・・・」
「わたしだけがその人の魅力に気づいてるみたいな・・・・・・そんな人かな」

「・・・・・・なんだか、妙に具体的ね」

「えっ///そ、そうだった?」

「友奈ちゃんったら、ほんとは好きな人がいるんじゃないかしら?」

「やっ、やだ、そんなことないよ~///もう、わたしは言ったんだから、今度は東郷さんの番だよ!」

はぐらかしてはいるが、顔が真っ赤になってる。友奈ちゃんはほんとに嘘をつくのが下手ね・・・。
・・・・・・そっか、友奈ちゃん・・・好きな人、いるんだ。・・・なぜだかその事実がわかってしまっただけで
既に「好きな人のタイプ」なんて、話せる気分じゃなくなっていた。

「私は・・・・・・・・・ひみつ」

「えぇ~っ、東郷さんずるい~!教えてよー」

「さ、そろそろ休憩は切り上げてお勉強会の続きをしましょう」

「むぅぅ・・・・・・東郷さんの、にぶちん」

「友奈ちゃん?何か言った?」

「なんでもないもん」

私が好きなのは・・・・・・この世界にたったひとり。
でも、それを伝えたら、友奈ちゃんはきっと私のことを嫌いになるから・・・

・・・わたしは、ほんとのこと言っただけなのに・・・・・・
やっぱり東郷さん、自分のことになると鈍感なんだもん・・・
最終更新:2015年05月17日 12:44