夜中、結城家。
ふと目覚めた友奈は隣の東郷の部屋に灯りが点いている事に気づいた。
「東郷さんまだ起きてるんだ。何してるのかな…」
明け方までまだ時間があるとはいえ、それでも東郷が起きるのは友奈より早いはずだった。
毎日早起きして朝食を作り、それから自分を起こしに来てくれているのを友奈は知っている。
『東郷さん、まだ起きてる?』
NARUKOのダイレクトメールで話しかけてみる。
眠れない時にたまにこうして東郷と会話したりしている。
1分ほどで直ぐに返信が来た。
『もう寝るところだよ。今読んでる小説の続きが気になって。 友奈ちゃんも起きてたの?』
『うん、ちょっと目が覚めちゃって』
他愛のないやりとりだが友奈にはそれが心地よかった。
直ぐ隣に住んでいて、会おうと思えば1分もかからない。
そんな親友との眠る前の少しの間だけの時間の共有。
『そうだ。友奈ちゃん、窓開けてみて?』
なんだろうと思い、音を立てないようにそっと部屋の窓を開けてみると、丁度向かいの東郷の部屋の窓も開いた。
寝間着姿の東郷がスマホを持ち、軽く手を振っている。
『おやすみ友奈ちゃん。朝迎えに行くからね』
『うん、待ってる。おやすみなさい東郷さん』
友奈も手を振り返し、2人で少しおかしそうに笑った後、東郷が部屋の灯りを消したのを確認して友奈も再びベッドに潜り込んだ。
「ふぁ〜…」
このまま眠り、目が覚めたらきっと最初に見るのは東郷の顔。
あの笑顔を最初に見ると一日頑張ろうという気持ちになれる。
「でも毎日毎日起こして貰ってばかりじゃ悪いよね」
いつか自分も東郷を起こしてあげられるようになりたいと友奈は思う。
しかし思ってはいても実行に移すのは中々難しかった。
(…そうだ、東郷さんと一緒に住めば起こしてあげられるかも)
いつか家を出る時が来たら東郷を誘ってルームシェアしてみよう。
きっとそれは楽しいはずだと思い、少し先の人生設計を考えながら友奈は眠りに落ちていった。
最終更新:2015年05月19日 22:07