その他 ゆっくり大戦

 抜けるような秋晴れの朝だった。
 人里の外れにある、広めの平地。遮蔽物の少ない野原。
 そこに突如湧きあがるゆっくりの大群。それらの目はおそろしく真剣で。

「「「うらー!!!」」」

 まさしく兵士のそれであった。
 ススメススメ、目指すは豊の大地。恵みに満ちた新しい領土。
 荒れ果て(ゆっくり達が食い荒らしたから)、恵みに乏しく(ゆっくり達が(ry、冷たい風が吹き荒れる(ゆっくり達が木の根っこまで食い荒らしたから)
死んだ大地(下手人、ゆっくり達)を捨てて、豊穣の大地はもう目の前だ。

「ゆっくりすすめ!」

 団体を指揮するのは1体のゆっくりまりさ。それの指揮に従ってゆっくり達は新天地を目指す。
 あともう少しというところまで来た。ゆっくりれいむは傍らのゆっくりまりさにウキウキと話しかける。

「もうちょっとでゆっくりできるね!」

 しかし、すぐ隣にいるはずのまりさからの返事はない。あれ、と思って振り返ると、まりさが尻餅(?)をついているのが見えた。
 バカだなあ、と呆れつつまりさの所まで戻るが、どうも様子がおかしい。
 ゆっくりまりさの表情が動かない。デフォルトの半笑いの状態でひっくり返っている。
 よく見ると顔の中心にポツリと穴が開いている。そして、顔の反対側には大穴があいており、そこからはアンコがジクジクと漏れていた。
 これは……弾がまりさを殺した!

「てきしゅー!」

 途端に群れ全体に緊張が走る。ピョコピョコ気楽に跳ねていたゆっくり達は姿勢を低くし(ほぼ球体のゆっくりではあるが)、
匍匐前進に切り替える(ほぼ(ry。
 耳を澄ませば、自分のすぐ横を風切り音を立てて弾が飛んでいるのがわかる。なんてこった、誘い込まれたか。
 時折運の悪いゆっくりが弾に当たってアンコを飛び散らせながら絶命するが、群れ全体としては目標にわずかずつではあるが近づきつつあった。
 そんな中、数体で固まって動いていたゆっくりの集団が宙に舞った。地雷を踏んだか。
 まず1体のゆっくりれいむが悲鳴を上げる間もなく絶命する。
 じめんにたたき付けられた残りのゆっくり達の中にも無事なゆっくりはいない。

「め゛があ゛い゛た゛い゛よ゛ーぉぉぉぉっぉお゛」

 爆発で目を潰されたゆっくりがパニックを起こし、傍らのゆっくりを突き飛ばす。
 直後にその目が潰れたゆっくりは蜂の巣にされた。

「ぎゃ」

 まず1発。ゆっくりの動きが止まる。

「や゛め゛て゛え゛え」

 2発、3発。弾が来た方向の反対側に逃げようとする。
 潰れた目からアンコをこぼしながら、地面を必死に這う。

「あ……ああん」

 4発目で力尽き、後は饅頭の解体作業に移行した。
 時折うめき声を上げるが、1発当たるごとに原型は失われ、10発あたる頃には肉の壁にも使えない代物が出来上がった。
 一方、突き飛ばされたゆっくりは体の左半分が失われており、既に意識はない。
 転がっていった先で別のゆっくりと睨めっこ。デスマスクVSゆっくりれいむ。

「ひゃああああああああああ!!!」

 恐慌に陥ったれいむが逃げ出す。
 だが、指揮官のゆっくりまりさが行く手を遮る。

「ゆー!ゆー! どいてよ!」
「ゆっくりしね!!!」

 どんという音とともに逃げようとしたゆっくりれいむが粉々になる。
 ゆっくりまりさ必殺の尻アタックである。れいむの破片が、行進中の(先発隊が匍匐前進に切り替えているのに)ゆっくり達に飛び散る。
 ピタリと動きを止めるゆっくり達。指揮官まりさは当然不平を漏らす。

「はいぼくしゅぎしゃはしゅくせいだー! はやくすすめ! ゆっくりしね!」

 お前意味分かってるんか? だが、動きを止めたゆっくり達は声に応じない。
 全てうつむいたまま何やらぶつぶつとつぶやいている。

「「なんで…」」
「ゆ?」
「「な゛ん゛で゛こ゛ん゛な゛こ゛と゛す゛る゛のおおおお゛おおおおおおおお!!!!」」

 一生懸命新しいすみかを手に入れようと、ゆっくり頑張っていたのに、なんで仲間を殺すんだ。
 なんで、なんでなんで。壊れた機械みたいに繰り返すゆっくり達が、指揮官まりさにかじりつく。

「いたいよー! やめギョ」

 顎が食いちぎられた。さらに1体のゆっくりれいむが指揮官まりさにのしかかる。
 ブルブルと痙攣を始めるれいむ。交尾の始まりだ。
 なんでと叫ぶのは、今度は指揮官まりさの番だ。なんだってこんな時に。

「りゃめ゛てどおおお! なんでこんなごどずるのほおおおお!!!」

 うまくしゃべれない口で必死に叫ぶ指揮官まりさ。だが、交尾は止まらない。

「らめえええ! こしがとまらないおおおおお!!!」

 れいむは既に、まりさを襲った理由など頭にないようだ。発情した赤くてトロンとした表情のまま、ピストン運動を続ける。
 共食いに遭いながら強姦される指揮官まりさは白目をむき、口から泡を吹きながられいむの動きに合わせて揺れる。

「あ、あああ、あああん!! いっちゃビシャッ!

 交尾が最高潮に達し、れいむが果てるその瞬間、れいむの後頭部に弾が命中する。
 弾は脳天をかすめるように当たり、ゆっくりれいむの時間は絶頂の瞬間で停止する。
 悶絶する指揮官まりさの上で硬直する、恍惚の表情のれいむの死体。
 時を同じくして、落ち着きを取り戻した他のゆっくり達が指揮官まりさから伸び始めた茎に気づく。

「あかちゃん?」
「あかちゃんだ! ゆっくりできるよ!!!」

 見る間に大きくなる、茎の赤ちゃんゆっくり。それらが目を開く。

「ゆ?」
「おめめをひらいたよ! こんにちは! あかちゃん!」

 ちなみに2体の死体はそのままである。
 ついさっきまでの惨状の名残を囲んで、喜びに沸くゆっくり達。

「ままー?」
「ままたちだよ! はやくゆっくりしようね!!!」

 砲撃、着弾。



 その頃、最前線の集団は敵が掘った塹壕にたどり着いていた。
 命拾いした、とばかりに塹壕に飛び込んでいく。飛び込んだ勢いで潰れるゆっくり、少数発生。
 ふーふーと呼吸を整えるのは1対のゆっくりまりさとゆっくりアリス。

「けがはない? まりさ」
「だいじょうぶだよ! げんきだよ!」

 よかったー、とアリス。そんなアリスにまりさが少々照れた様子で声を掛ける。

「このたたかいがおわったら、アリスとかぞくをつくりたいんだ!」
「ほんとう!? ……べ、べつにうれしくなんかないんだからね!!!」

 直後に砲弾が直撃。山なりに飛んできたものがアリスを粉々にする。
 巻き上げられた土と一緒にまりさに降る、アリスの残骸。
 一瞬呆然としたまりさが、憤然と塹壕を飛び出す。

「よくもアリスを!!!」

 だが、塹壕を出かかった所で塹壕に引き戻される。
 まりさを引き戻したのは、アリスと仲が良かったゆっくり上海と蓬莱。

「ゆー! なにするの!」
「ホライホーライ!」「シャンハーイ!」

 まりさを怒鳴りつける2体の様子を、まりさはこう解釈する。

「おちつかないとあぶないもんね! ありがとう!」

 だが、上海と蓬莱が振り上げたのは、ギラリと鋭く光るカミソリ。
 ……の、刃を持つ安全カミソリ。

「ホーラーイ! (よくもアリスにいらない死亡フラグを立てたな!)」
「シャーンハーイ! (生かしておくべきか、この泥棒猫!)」

 上海と蓬莱がまりさをカミソリで殴り始める。
 2体は小柄な種であるため、殴られても大して痛くはないのだが、時々カミソリの刃がまりさの皮を削いでいく。

「なんでこんなことするの! ゆっくりできないよ!!」

 それでもさほどダメージはないので、まりさは冷静さを失わないでいられた。
 冷静に抗議を続けたことがそのまりさの命を奪う。さっさと体格に任せて上海と蓬莱を黙らせれば良かったのだ。
 よく開くまりさの口に安全カミソリの頭が突っ込まれる。

「ふぐ!?」

 そして掲げられるまりさ。魔女を断罪する十字架のように、カミソリは天高く持ち上げられる。
 まりさは磔にされた罪人であると同時に、動かない的であった。
 敵陣まで大分近づいていたため、弾の命中率は大分高い。
 容赦なくまりさを殺していく弾。
 口がふさがっているまりさは「なんで」と目で問いかけるだけ。涙と涎で上海と蓬莱を濡らしながら絶命した。

「シャンハーイ」

 満足げにため息を吐いた2体のゆっくりは、何気なく、まったく不用心に塹壕を飛び出す。
 当然、10秒と持たずにバラバラになる。だが2体は穏やかな表情で逝った。あの世で大好きなアリスとゆっくりできる、とでもいいたげに。
 だが残されたゆっくり達はそんなこと知ったことではない。3体も無駄に死んだ、このままでは自分達もゆっくりできなくなる。
 ではどうしよう。本人達が気づかない間にだいぶ混乱していたゆっくり達は、各々勝手にゆっくりし始める。
 眠り始める個体。眠ってる個体に交尾を試みる個体。その個体を食べ始める個体。無意味に飛び跳ねて蜂の巣になる個体。
 塹壕に時折飛び込んでくる砲弾で吹き飛ぶ仲間達には目もくれない。



 硬直する戦況を打開すべく、最後方にゆっくりパチュリー達とそれらが作った武器がお目見えする。
 でかいパチンコである。玉入れの方ではない、スリングショットの方だ。
 装填された弾はゆっくりみょん。頭に槍のつもりだろうか、木の枝をくくりつけている。
 これなら敵陣に直接攻撃が可能である。

「おおおおおちつこうよ、やめてー」

 やめてくれと懇願するみょん。だがパチェの耳には届かない。彼女(?)の灰色の白あんがはじき出す答えはただ一つ。

 ゆっくりみょんは半分霊体だから軽い。遠くまで届きそうだ。
 みょーんと発射される第一波。だが、ゴムの引きが甘く、発射されたみょんは眼前のパチェに突き刺さる。

「むきゅーん」
「ちちちっちんっぽー!」

 スコンと気の抜ける音を立てて枝がパチェに突き刺さり、急所に当たった訳でもないのに昇天するパチェ。
 やっちまったと震えるみょん。そのみょんを他のゆっくり達がもう一度パチンコに装填する。
 同じ失敗を何度か繰り返した後、ようやく最前線にみょんが飛来する。
 そう、最前線に。最前線の塹壕の中に。
 塹壕の中でゆっくり子育てを始めていたゆっくりは串刺しになり、弾に使われたみょんはえらいことになったと泣き出す。

「むきゅむきゅーん、こうりょくしゃかくにん、つづけー! ゲッホゴッホ!」

 興奮のしすぎで発作を起こしたパチェが吐血ならぬ吐餡をして気絶する。
 次から次へと塹壕に飛来するみょん。終いには衝撃で塹壕の壁が崩れ始める。

「ゆー!? ゆー!?」
「わからないよね! ゆっくりしたいよね!」
「おか゛あ゛ああさ゛ああ゛んん゛……」

 生き埋めになるゆっくり達。
 どうも様子がおかしいと後方が気づいたのは、みょんを全部発射した後だった。



 戦局打開の第ニ策目は戦車の投入である。
 ゆっくりさくやに緑色をした怪獣の着ぐるみのような装甲【ぱーふぇくとめいど】を装備させたゆっくり戦車。
 主砲には0.1口径20mmナイフ砲【さつじんどーる】、さらに対ゆっくり散弾砲【えたーなるみーく】を採用した、
ゆっくりさくや-III式戦車、通称『さくやさん』である。
 ノソノソと登場したさくやさんは敵弾をものともせず前進を開始する。当然、下敷きになった味方もものともしない。
 自分の下で断末魔の悲鳴は聞こえるが、さくやさんは急には止まれない。
 ぶちまけられた餡子が邪魔だが、さくやさんはこの程度では止まらない。

「おーるはいる、おぜうさまー!」
「「「おーるはいる、おぜうさまー!!!」」」

 さらに航空戦力も投入される。
 ゆっくりれみりゃの大群が、高々度からの爆撃を開始する。爆撃範囲は味方最後方から中盤にかけて。

「はやくやめグシャ
「むギュー

 爆撃成功、爆撃成功。岩石投下による被害は甚大。味方勢力のさらなる減少を確認……あれ?
 そもそもの作戦内容を思い出せないれみりゃは、頭から?マークを生やしたまま敵陣上空に到達する。
 途端に、対空散弾による迎撃が開始される。翼にダメージを負い、1体また1体と撃墜され、地面と激突するれみりゃ。
 だが、運の良いれみりゃ、いち早く逃げ始めたれみりゃが他のゆっくりの上に軟着陸する。下で悲鳴が聞こえたが、気にしない。
 餡子で滑って転んだれみりゃが泣き始める。

「びええええ! さ゛く゛やああぁぁぁぁぁあ゛あ゛あ゛!!!」
「おぜうさま! おぜうさま!」

 泣き声を聞きつけたさくやさんがノソノソと駆けつける。だが言ったはずだ、さくやさんは急には止まれない。
 ぶちっ。
 足の先から順に、さくやさんに挽き潰されていくれみりゃ。

「ぎゃああああああ!!! いだいよー! やめてさ゛くやあ゛あ゛あああ゛あああ!!!」

 飛び散る肉餡。れみりゃは必死にさくやさんから逃げようとするが、下敷きになった胴体が邪魔で全然動けない。
 手がむなしく地面を引っ掻く。

「ああ、おぜうさま! ああ、おぜうさま!」

 ノソノソとミンチが出来上がっていく。胴体が潰され切る頃にはれみりゃには悲鳴を上げる余力もなく、
ただ、ぜーはーと荒い息をするしか無かった。そして、頭部も下敷きになる。

「さ……ぐ……や……ぁぁぁ」

 ゴリ。

「お゛ぜう゛さ゛ま゛あ゛あああ゛ああ!!!

 なぜか「止まらなかった」さくやさんが慟哭を上げる。上げて、上げて、上げながら【えたーなるみーく】の散弾をばらまきj始める。

 混迷極める戦局を打開する最終手段として、空挺戦車ちぇん式、通称『ちぇんしゃ』の投入が決定した。
 輸送はゆっくりフラン4体で1体のちぇんしゃを運ぶ形式になる。
 勿論、落下傘などない。

「わかるよねー? むちゃだよねー!?」
「「「「ゆっくりおちろ!!!」」」」

 ちぇんしゃの残骸と巻き込まれたゆっくりの死体だけが量産されていく。



 えらいめにあった、なんてこった。
 その日ののうかりんは間違いなく厄日だった。
 いつもどおり畑にきた。収穫間際の作物が野良ゆっくりに荒らされないように柵の点検をしようと思っていた。
 そんなのうかりんが目にしたのは、雲霞のごとき野良ゆっくりの大群。
 追い払おうと足下の土を掴んで思いっきり投げつけたが、まるで怯まない。
 ちなみに、のうかりんは名称の元となった風見幽香に比類する膂力を持っていることを併記しておく。

 怯まないどころか、畑の脇にある用水路の中にまで入り込まれた。
 驚いて飛び出すかと思って石を投げ込んでみたが、あまり効果はなかった。
 それどころか、なんか道具のようなものを持ち出したりもし始めた。
 厄日って騒ぎではない。天災だ、これは。

「ああ、ゆっくりれみりゃまできたず! どうすっか!」

 とりあえず土を投げてみる。おお、落とせる、落とせる。
 しかしなんて数だ。休耕中の畑がゆっくりの残骸で一杯になっているではないか。
 ……肥料になるかな。



 上空から惨劇の様子を眺める人影2つ。
「……何がしたかったんですか? パチュリー様」
「ゆっくりの大量錬成法の実施検討と、……ゆっくりの統制可能性の検討」
「失敗、ですよね?」
「……大量錬成法の実施検討は成功。……ゆっくりがある程度道具を使えることも分かった」
「はあ、そうなんですか。ところで、その大量錬成法の名前ってあるんですか?」
「……ゆ、……。……ゆっくりコンフリクト」

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最終更新:2008年09月14日 09:19
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