その他 ある男と憎たらしいゆっくり

あるところに一人の男がいた。
その男は農業をしておらず、ゆっくり達を数匹捕まえては煮込んで食べ漁り、
余った分は加工場へ売り飛ばすという不規則だが自由気ままな生活を送っていた。

ある日男はいつものようにゆっくりを捕まえに森へと出向いた。
男はゆっくりを捕まえる事に関してはベテランだった。
ゆっくりの巣を見つけ、ゆっくり達を見つけたらゆっくり達は間違いなく
「おじさんゆっくりできるひと?できないならでてってね!」
と言う。なのでそこに
『おじさんはゆっくりできる人だよ、ところでおいしいお菓子食べたくない?」
と言うとゆっくりは気を許し、
「ゆゆ!たべるたべるー!」
とわめき散らす。こうなれば後は籠にゆっくりを入れて自宅へ帰るだけだ。
しかし、今回は違ったことが起こった。
ゆっくりにとって最大の殺し文句であるこの言葉を受けても、全く動じないゆっくりがいたのだ。
そのゆっくりは不適に微笑んでいる。おお、こわいこわいに似ている事もない。
しかし、それだったらおお、こわいこわいの方が抱きしめても足りないくらいかわいいに違いない。
男は気が変わり、そのゆっくりをひょいと持ち上げ、頬を引っ張った。
この腹が立ってくる顔を泣き顔に変えてやろうと思ったのだ。
男はぐい、と力をこめて引っ張る。
いつもだったら、これくらい引っ張ると
「いだい!おじざん、やめ゙でね…!!!」
と泣き喚くものだが、このゆっくりは痛がらないどころか顔色一つ変えない。
少しムキになった男はさらに力を入れて引っ張るが、やっぱり皮が果てしなく伸びるだけで、顔は依然あの腹ただしい顔のまま。
男は胸の奥からふつふつ湧き出る黒い感情を感じていた。
例えるなら、背中を見せたくない男の背中をどうにかして見ようとする漫画家の心情に似る。
まぁ見ない方がいいこともある。
男はそのゆっくりを持って自宅へ戻る。
「おじさーん!おかしはー?」
「やかましいッ!これやるから着いて来るんじゃねぇぞ」
男はポケットに入っていた金平糖をゆっくり達の方へと投げると、さっさとその巣を後にした。

男は帰ってくるなり倉庫から金槌を持ってくると、そのゆっくりを思い切り叩いた。
普通だったらゆっくりの口から漉し餡がぶはっと吐き出されるところだが、そうはいかなかった。
そのゆっくりは少し凹んだだけですぐに元に戻ってしまった。
更に金槌で叩くと、金槌の柄が折れた。
1、2回叩いただけで壊れる金槌を持っていた覚えはない。むしろ新品のはずだ。
そんな事を考えてももう壊れてしまったものは仕方ない。
男は別の方法でこの顔を崩す事にした。
次に男は、なべに張った水の中にゆっくりを入れ、いつもやってるように火を付け煮込んだ。
男はあまりゆっくりの断末魔が好きではなかった。
『ゆっぐりだずげでよおおお』とか『もっどゆっぐりさせてええええええ』とか聞くと精神が参ってしまいそうだ。
なのでいつもゆっくりを気絶させてからせめて痛みを知らずに死ぬがよいといった
どこぞのジョインジョインみたいにやっているのだが、このゆっくりにはその心構えは通用しないようだ。
なのであの表情のまま煮込んだ。しかし30分たっても、2時間煮込んでも無駄であった。
あのゆっくりの表面はホカホカしていた。
男は意地になった。なんとしてでもこのゆっくりの表情を変えてやると。
ほぼ殺意の波動に目覚めたと言ってもあまり問題はない。

男は倉庫から苦痛を与えられそうな道具を山ほど取り出し、ゆっくりに使った。
コンロで炙ってみたが、コゲ目が付いただけだった。
チェーンソーで切ろうとしたら、チェーンソーのチェーンが参ってしまった。
窓付きのごとく包丁で刺してみたら、包丁が欠けた。
重いものの下敷きにもしたが潰れただけでゆっくりと元に戻ってしまった。
水に沈めてみたがあまり効果は無かった。
思い切り下に叩きつけても形すら変わらず意味がなかった。
男はシンプルに殴ってみたが堪えていないようだ。
木に一晩吊るそうが、ゴキブリを周りに這いまわせようが、思いっきり引っ叩こうが、全くその表情を変えなかった。
もうスパイス・ガールで柔らかくなってんじゃあないのかと言いたくなるほど丈夫なゆっくりだった。
男はゆっくりを持ってゆっくりれみりゃが生息するという紅蓮魔館へと向かう。
男がゆっくりを目立つようにして持つと、さっそくゆっくりれみりゃが飛んできた。
「うー♪たべちゃうぞー!!!」
おいしそうな獲物を前に勢いよく飛び掛るれみりゃ。
そしてかぷ、とゆっくりに喰らい付くれみりゃ。
しかし様子がおかしい。どうやら噛み切れないようだ。
「うー!うー!うー!」
れみりゃは噛み切ろうと少しづつ距離を離していく。
しかしよく伸びる皮だ。まるでどっかの念でできたガムみたいな。
そんなことを考えていたからか、男はうっかりゆっくりを離してしまった。
ゆっくりがゴムパッチンのごとく顔に激突するれみりゃ。これには元々幼いれみりゃ、泣き出してしまった。
「ゔぁ――ん!!!ざぐや゙―――!!!ざぐや゙―――――――!!!」
凄い声で咲夜を呼ぶれみりゃ。
これにはヤバイと感じ男はゆっくりを持って逃げ出した。
後日、フランでも試してみたが同じ事だった。
そのときはナイフで串刺しにされるかと思ったらしかった。

男はこのゆっくりの表情を変えさせるのに疲れてしまった。
刺そうが殴ろうが蹴ろうが潰そうが叩こうが引っ張ろうが斬ろうが煮込もうが焼こうが無駄だったのだ。
無駄なんて嫌いなんだ…無駄無駄
男はそんな生活に嫌気がさし、悲しむ人もいないだろう、という考えから首を括ろうと思い、
ロープを買ってきて天井に吊り下げた。
しかし、男が天井から吊り下がることは無かった。
これだったらゆっくりは苦しむんじゃないかと考えている自分がいたからだ。
思い残すことは無く、覚悟を決めたつもりでも、やはり心はゆっくりを打ちのめすのに惹かれているのだ。
浅ましい自分に男はみじめな思いをしてしまった。
そんな時でもあのゆっくりは嘲ったような表情でこちらを見ているのだ。
「なんという残酷な野郎なんだ、クソッ、お前はいつか俺の手で号泣させてやるッ、
それまで決して俺は死なない……」
さらに覚悟を決めた男はとりあえずロープにゆっくりを括りつけてみた。しかし無駄のようだ。首がないからね。

男はその後このゆっくりを泣かせるためだけに生きていたと言っても過言ではなかった。
いろんな道具でゆっくりを叩きのめそうとした。
冷却機で凍てつかせたり火炎放射器で汚物を消毒しようとしたり放射線を浴びさせてブルトンにしようとしたりした。
しかしそれらは効果を上げる事は無かった。
サッカーボールの変わりにしたり超低温で全てを止めて動く物質を無くしたりゆっくりゆゆこを嗾けたり…
男は数えられないほどそれらをやった。
北斗柔破斬もしたし、タンクローリーとロードローラーを同時に落としたり、何回もデストローイやテーレッテーにもした。
もう数えればキリが無い。しかし依然とゆっくりはあの表情のまま。
確かに男はゆっくりを泣かせるために存在していた。

男は歳を取り、老人と言っていい歳になった。
あんな無茶な事をし続けたからか、体の調子は良くなかった。
あいつのせいだ…あいつがいなければこんな苦しい事には…
そう考えている男の隣には確かにあの憎たらしい顔をしたゆっくりがいた。
ヤケになった男はそのゆっくりを鷲掴みにし、口へと放り込んだ。
噛み切れないかと思っていたがそんなことはなかった。
男はガブムシャアムベチャグチャガブやったねといった勢いで飲み込んだ。
「こ…これは…この味は…ううっ!」
意識が遠のいてる間に男は意識を展開させた。
そういえばあのゆっくり、一言も喋らなかったな…ゆっくりなのに
よくよく考えてみれば何も食べさせてないのに…なんで今まで生きてたんだろう?
男の意識は薄れていった。

男の死因は窒息死だった。
饅頭が喉に詰まって死んでしまったのだろうと判断されたが、男の喉にはそれらしいものは全く入っていなかった。
それは一時期某新聞の一面を飾ったが、
どうして男が死んだのかなど、ほとんどの人々にはどうでもいいことだった。

Fin

by GIOGIO

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最終更新:2008年09月14日 09:23
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