「うー! うー!」
男の背中がどんどんと小さくなっていく。
反比例するように、
ゆっくりれみりゃの泣き声はどんどん大きくなる。
「うー! もどってごないどたべじゃうぞ!」
その場で手足をジタバタさせて泣き叫ぶれみりゃ。
「うぎゃーーーー!!!! ざぐやーーー!! ざぐやーーー!!!」
しかし、山の中ので幾ら騒いでも紅魔館に届くことは無く、ただ虚しく時間が過ぎていくだけであった。
「うーー!! う~♪ れみりゃう~♪ さぐやーーれみりゃがよんでるよーー♪」
泣き叫んでも咲夜がこないと分かると、今度は一転笑顔になって咲夜を呼び出す。
「う~♪ うーーたべちゃうぞーー!! たーべちゃうぞー!!」
それでも来ないので、いい加減諦めたのかもう一本の傘で周りの地面を叩き始めた。
「うーーー♪ うーーー♪ う~♪」
それも
ゆっくりぶでぃん脳では長く続かない、あっという間に地面を楽しく叩いているれみりゃがそこにいた。
「う~~♪ う?」
漸く、自分がおじさんにここに連れてこられた事を思い出したれみりゃ。
慌てて周りを見回す、既に日が落ちかけている山に段々と暗黒が訪れようとしていた。
「うーーー♪」
早く帰ろう、そう思って山の中に足を踏み入れる。
しかし鬱蒼と生い茂る木々に自分の目指す先が見つけられない。
「うーーー!!! ざぐやーーー!!!!」
「ゆ?
ゆっくりーーーー!!!」
「うわーーー!!! ざぐやーーー!!! ざぐやーーー!!!」
その声に、慌ててもと来た道を駆け下りる、まもなくその豚足の様な短い足を縺れさせてすっ転ぶ。
そのまま転がって先ほどの場所へ。
「うーーー!!! うーーー!!!」
急いで男が準備した自分の家の中に入る。
日傘を地面深くまで埋めたので、丁度テントのような形状になっている。
必死に一部をまくって中に入り込む。
ゆっくりの頭でも、先ほどの事は記憶に残っているようで、必死に声を殺しながら泣き喚く。
「ぅーーー!! ぅーーー!!!」
しかし、何かが跳ねる音は確実にこちら側柄に近づいてくる。
「くんくん! こっちから
ゆっくりのにおいがする!!!」
バサ!!!
「うーー!!! ? う~?」
入ってきたのは数匹の
ゆっくりアリス、なんだ今日もお昼に食べた
ゆっくりじゃないか。
「う~♪ たーべちゃうぞ~♪」
そう思って一匹に狙いを定め襲い掛かる。
しかし。
「れ!れ!れみりゃ~~~!!!!!」
「う~♪ !!!!! うわーーー!! うわーーー!!!」
突然の抵抗、あっという間に
ゆっくりアリスに押し倒されるれみりゃ。
そして当然のように交尾に入る
ゆっくりアリス。
「れみりゃでもいいよ!!! れみりゃもだ~いすき!! まりさや、れいむやぱちぇりーやありすのつぎにだーいすきだよーーーーー!!!!」
「「「「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛!!!」」」」」
「うがぁっ!! う゛あ゛ああああああああぁ!!!」
体を振るわせたアリスが大群で自分に擦り寄ってくる。
恐怖に顔を歪ませ、なみだ目でなすがままにされるされるれみりゃ。
通常この種のれみりゃは発情しない。
大抵が一つの地区を荒らし終わった後のアリスの集団に襲われるのだ。
今その恐怖を、このれみりゃも体感している。
「れみりゃも!! ありずどのごどもがんばっでうんでねーー!!!!!」
「「「「う~♪ すっきり~~~~♪」」」」
それだけ言い残してアリス達はその傘の中を出て行った。
残されたれみりゃは、既に失神していた。
翌日。
太陽がもうそろそろ真上に昇りそうな時間。
れみりゃは漸く目を覚ました。
「う~♪ しゃくや~だっごじで~♪」
勢いよく両手を伸ばす、いつもは自分が起きる前に部屋の中に居る咲夜に抱っこしてもらう。
そして着替え終わった後においしいプリンを食べるのだ。
「う~♪ ざぐや~おぞいぞぉ~♪ おぞいどた~べちゃうz……!!!」
目を開けたらそこには自分のお気に入りの日傘。
床は硬い地面。
勿論咲夜の姿は無い。
「う~ざぐやーーー!!! どぉごーーー!!! ぷっでぃ~んもどごー!!!?」
昨夜の様に急いで傘から出る、そして辺りを見回す。
勿論自分の知らない場所だ、当然のように泣き出すれみりゃ。
「うーーーー!! ごごどぉごーー!!!」
ただ、昨日アリスたちにされたことは思い出したようだ。
慌てて辺りを見回すが、どうやらアリス達の姿は無い。
一息ついて巣に戻る。
「う!!」
巣の中には小さいが自分と同じ姿をした姿。
所謂
ゆっくりれみりゃの赤ちゃんである。
れみりゃの三分の一ほどの大きさであろう、その体格にあった婆くさい服と帽子を被って、れみりゃよりも若干高い声で話している。
「う~? !! あがじゃん!! れみりゃのあがじゃん!!!」
「う~♪ みゃみゃ~♪」
四匹の子供がれみりゃに駆け寄ってくる。
「う~♪ れみりゃはおがーざんだどぉ~♪」
「「「「う~♪ みゃみゃ~おなかへった~おがしたべりゅ~♪」」」」
その言葉を聞いたれみりゃは、もう一本の傘を持ってお得意の笑顔で宣言する。
「う~~れみりゃおうちにがえどぅ~♪ じぶんのおやぎじにがえどぅ~♪」
「「「「かえりゅ~♪ おやしきにかえりゅ~♪」」」」
ぱんぱんと服に付いた埃を落とし、ニコニコと川に沿って進んでいく。
川沿いに歩けば山を下りられると思っている訳ではない。
自分のお屋敷にある水溜りと同じだからただ歩いているだけだある。
「おうちがえったりゃ♪ おがあさんはぷっでぃんたべどぅ~♪」
「「「「う~♪ ぷっでぃんってなぁに??」」」」
「ぷっでぃ~んはぷっでぃ~んなの!!! ぷるぷるしででおいじ~の♪」
「「「「れみりゃもぷっでぃ~んたべりゅ~♪」」」」
それからは一家でぷっでぃんの歌を歌いながら進んでいく。
「う~~♪ うっう~うあうあ♪」
のんびりとご機嫌に歩いていくれみりゃ。
それはそうだろう、自分の頭の仲では紅魔館の誇り高いお嬢様なのだから。
その後ろには四人の子供たち、母親の日傘が羨ましいのかそこら辺に落ちている大きな木の枝を持って母親の真似をして懸命にバランスと取っている。
「う~!! まじだーー!!!」
暫く歩いて大きな街に到着したれみりゃ一行。
優雅にここを通って帰ろうと、日傘をギュッと握り締めいざ街の中へ。
ここは、周りの村から色々な品物が集まる。
当然、毎日のように市が出来ている、それ程大きな街なのだ。
「う~♪ う~♪」
そんな中を、日傘をさして歩くれみりゃ。
しきりにあっちを向いてニコニコ、こっちを向いてニコニコとまるで自分がセレブの様に振舞っている。
真似して子供たちもニコニコ。
もちろん笑顔と一緒にう~、も忘れない。
真似して子供たちもう~♪
そう、あの笑顔と、う~が合わさってこそれみりゃの真骨頂なのだから。
「うっ! うっ~♪」
近くの屋台で何かを発見したようで、目を大きく見開き満面の笑みを浮かべるれみりゃ。
目線の先にはクッキー。
そう、れみりゃの大好物の一つ、クッキーが山盛り売られていたのだ。
「うっう~♪ あうあう♪」
ご機嫌にその屋台に向かう、もちろんお金は持っていない。
飛び上がって一つまみ、がさごそクッキーを落としながら真剣に選ぶ。
本人は何かを見定めているつもりなのだろう。
子供達も、他のお菓子に手を入れてがさごそ選ぶ。
真似ではない、母親も見よう見まねでやっているのだ。
「う~~♪ むしゃ……」
漸く一枚のクッキーを取り出して口に運ぶ、しかし途端に泣き出してしまった。
「う~ぽい!! ぺっぺっ!!!」
挙句、口に入っていたクッキーを店主に吐き出し、屋台に並んでいるほかのお菓子を根こそぎぶちまける。
「れみりゃはぷっでぃ~~んがたべたいのーーー!!! ぷっでぃーーん!!!」
「れみりゃもいりゃな~い。ぷっでぃんちょ~だい」
「ぷっでぃ~んたべたい~♪」
店主の罵声も気にせず以前のように屋台の上で駄々をこね始めるれみりゃ一家。
「ぷっでぃーん!!! ぷっでぃーん!!! ぷっでぃーん!!! ぷっでぃーん!!!!」
「「「「ぷっでぃ~ん♪ ぷっでぃ~ん♪」」」」
「……」
店主が有無を言わさずれみりゃ達を捕らえる。
両手でしっかりと押さえ込み徐々に力を入れていく。
意外と、お菓子作りというものは屈強な男がやっているもので、この屋台の店主もそれに漏れず屈強な男だった。
また、
ゆっくりを使ったお菓子も数多く作っていることもあり、その扱いも手馴れていた。
「いだいーー!! ざぐやーー!! どごーー!!! わるいひどがいるどぅー!! !!!!」
「みゃみゃ~いだいよ~」
「う~しゃくやにいいつけてやりゅ~!!!」
徐々に力を込めて握っていく。
腕がボキボキいっているが、気にせず更に力を込める。
子供達は失神してしまったので、近くの籠に閉じ込める。
「うあーー!!! れみりゃのごどもだじがーー!!! れみりゃのぎゅーとでぷりでーなごどもだじがー!!! ……がっはっ!! ひゅーー」
上手く声が出せなくなったところで一旦手を離す。
「うわーーー!!!! うわーーーーー!!!! いだいーーーーー、れみりゃしんじゃうどぉーーー!!!!」
れみりゃは随分と体内に傷を負ったようで、しばらくは地面にのた打ち回りながら絶叫をあげ続けていた。
だがそれも暫くの間、傷が回復すればまた以前の調子に戻る。
「う~~♪ ざぐやにいいつげてやどぅ~~~♪ さぐy!!!」
飛び上がってそんな事を言っていた矢先、突然後ろから羽を引きちぎられ地面に落とされる。
「う!! うー!!!! ぎゃおーーー!! いじわるずるとたーべちゃうぞー!!!」
何時もは自分が何をしても何も言わなかった人間、当然自分のほうが強いと思っていた。
だから、今も強気にでる。
「…………」
「!!! がぁおーーーたーべちゃうぞーー!!!」
次第に大勢に囲まれても強気に出る。
「…………」
「う~~~!!! がぁーーーお!!! t!!! ぶぎゃ!!!」
頭を踏みくけられ地面にキスする。
地面もそんなものはいやなのでれみりゃの顔に大量の擦り傷を作る。
「うっぎゃーーー!!! いだいよーーー!!! ざぐやーーー!!! わるいひどが!!!」
さっきの蹴りを合図に村人がれみりゃをいたぶり始める。
その殆どは、かつて自分の店で迷惑をかけられた人々だった。
「う!! うあ!!!! あーーーーー!!!」
殆ど声を上げるまもなくズタズタにされていくれみりゃ。
右腕はつぶれ中身をばら撒き、左腕はあらぬ方向へ曲がっている。
両足は太い串が刺さっており動こうにも動けない。
「う……が……。!!!! さぐや!! ざぐやーーーーーーー!!!!!!!」
れみりゃの視線の先、微かに見えるその先には、確かに紅魔館の十六夜咲夜の姿があった。
人々もそれに気が付き、一斉にれみりゃの周りから遠のく。
咲夜もれみりゃに気が付いたそうで、れみりゃのもとへ近づいてくる。
「う~~~♪ ざぐやにいいつげでやどぅ~~~♪」
まだ再生途中の右腕で人々を指差しながら、この日一番のとびっきりの笑顔で人々に宣言する。
帰ったら何をしようか、昨日は帰らなかったからふかふかのお布団で寝たい。
美味しいものも食べたい。
そうだ、ぷっでぃんをたべよう、かえったら直ぐ咲夜に持ってきてもらおう。
「う~~~ざぐやーーー!! あいづらがいじめるどぉ~♪ それから、れみりゃぷっでぃんたべたい!!!」
既に目前まで迫っていた咲夜に話しかける。
抱きつこうかとも思ったけれど、両足に刺さった串が邪魔で立つことが出来ない。
「う~~♪ ざぐやーーーごれどっでぇ~♪」
足の串を指差しながらお願いする。
何も言わず串を引き抜ききちんとれみりゃを立たせる。
そして両足の甲に、思いっきりナイフを突き刺す。
「!!!!」
そのままナイフの柄を踏みつけ、地面深くまで突き刺す咲夜。
それが終わると一言だけ呟いて返っていった。
「あなたみたいな醜い食べ物、紅魔館にはいないわ」
「ざぐやーーー!!! ぷっでぃんぷっでぃんたべだいの!!!」
訳が分からず追いかけようとするが、先ほどより頑丈なナイフが邪魔をして動くことは出来ない。
あっという間に再び人々に囲まれるれみりゃ。
正面には先ほどの店主。
手にしているのは石製の大きな麺棒。
「……」
咲夜が居なくなって変わりに他の人間に囲まれる。
「……うっ、う~♪ れみりゃぷっでぃんだべたい~♪」
先ほどやられた事を覚えているのか、一転今度はご機を取ろうとニコニコ愛想を振りまいてきた。
懸命に店主を見上げでニコニコと笑う。
その体勢からか、口元にはたくさんの涎が滴り落ちている。
「…………」
「う~♪ れみりゃねぷっでぃんたべだいの♪ ぷっでぃん♪」
「…………クス」
「♪ れみ☆りゃ☆う~☆♪ にぱー♪」
風を切る音と共に、勢いよく麺棒が振り下ろされる。
「んびゃお!!!」
額に直撃したそれは、勢いよくれみりゃを後ろに倒していく。
「うぎゃあぁーーー!!!」
支えきれなくなった足が、挿されたところからちぎれ落ちる。
顔は赤く腫れ足首から先は無くなっているれみりゃ。
羽はまだ再生中なので、これでは逃げることは叶わない。
「うあーーー!!! れみりゃがぁおーーーー!!! がぁおーーー!!! おまえらなんかざぐやにたべられちゃえ!!! ばぁ~がぁ!!!」
ジリッ、ジリッと歩み寄ってくる人間達。
「ばぁーか!! ざぐやーー!!! ざぐやーー!!! はやぐぎでーーー!!!」
その言葉を最後にれみりゃの意識は暫く途切れる。