「やっぱ桜は綺麗だぜ。」
春爛漫の幻想郷、今年も恒例の花見in白玉楼が開催されていた。
広大な庭園は、まるで幻想郷の全てが集約されたかの如く、人妖で埋め尽くされていた。
「「「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせー!」」」
「「「ゆっ♪ゆっ♪」」」
大量の
ゆっくりまでもが溢れかえっていた。
「なんで花見にゆっくりが必要なんだぜ?」
今回の案内状には『各自ゆっくりをお持ちより下さい。沢山連れてきてね。』と記載がある。
皆不思議に思いつつもゆっくりを捕まえてきた。
「お陰でご馳走が減ってしょうがないんだぜ?だぜ?」
「よく分からないけどイベントで使うんでしょ。」
花より団子主義者、不埒に腹を立てた者、潰す事に喜びを見出す者により既に相当のゆっくりが消えていたが、それは依然として大量に蠢いている。
花見の席では無礼講…春の陽気に誘われたか、人妖もそれなりに寛大な気持ちで花見を楽しんでいた。
桜林の中にはステージがあり、趣向を凝らした出し物が行われていた。
ひとり人形劇には観客全てが涙した。(劇にでなく演者の境遇的に。)
雀のソロライブには発狂する人間が続出した。(患者はこの後スタッフ(永琳)が優しく治しました。)
『天国へ行く為の人生訓』という講演にはブーイングが続出し、数百人が奈落に飲み込まれた。(被害者はこの後スタッフ(小町)が休日出勤して回収しました。)
数多くの修羅があったが、全体としては人妖もゆっくりもそれなりに楽しんでいた。
そして夕暮れ時、メインイベント、プリズムリバー楽団のライブが始まろうとしていた。
どこか投げやりな声で進行役の紹介が為されると、会場は期待に静まりかえった。
この為に来た者も多かったのだ。幻想郷で最も人気のある楽団だった。というか唯一の楽団だった。
ライトアップされたステージの上にはゆっくりがひしめいている。それをゲシゲシ踏みつぶしながら三姉妹が登場した。
沸き起こる大歓声。三姉妹の挨拶「ゆっくりしていってね!」に人妖ゆっくりの「「「ゆっくりしていってね!」」」の声が響き渡る。
今回のボーカル役である長女が歌い出した。
私は冥府のテロリスト
昨日は母さん呪殺だぜ
明日は父さん憑いてやる
呪え呪え呪え呪え親など呪え
ジュサツせよジュサツせよ
思い出を呪いに染めてやれー
歌いながら三人はステージ上のゆっくりを掴み、握り潰し、叩き付けている。
「そういう事か。」
状況を瞬時に理解した人妖達はその場のゆっくりを踏み潰す。
阿鼻叫喚にまみれた会場の中、観客の興奮は増していった。
私には母さん父さんいねぇ
それは私が呪殺したから
私には友達恋人いねぇ
それは私が呪殺したから
ジュサツせよ
ジュサツせよ
一曲歌い終わる頃には楽団と観衆は一体となってゆっくりを虐殺していた。
虐待お兄さんの集団が、一人あたり平均1000yk/hの殺害速度で手際よくゆっくりを殺害する。
それでも総量の十分の一にも満たない。さらに曲が終わる度に上空にスキマが現れ、新たな贄が降ってきた。
私は生まれつきの悪霊
生まれた瞬間主(あるじ)を殺った
ついでに殺られた魔女が叫ぶ
ギャー なぜ生まれてきやがった
ギャー なぜ生まれてきやがった
駆けつけ殺られた神父叫ぶ
ギャー なぜ生まれてきやがった
歌いながらバイオリンで、トランペットで、キーボードでゆっくりを潰しまくる。
観客はさらにヒートアップしゆっくりを掴み、目玉をほじくり出し、舌を切り、ステージに投げつけた。
熱狂したひとりの観客の、本当の地獄を見せてやる!の叫びと共におよそ10000匹のゆっくりと200人の人間が奈落に飲み込まれた。(人間はこの後スタッフ(小町)が残業して回収しました。)
完全に日が暮れてもライブは続いていた。
壇上のボーカルがしゃがみ込んでゆっくりに指を突き刺し、餡子をこねくり回す。
「ウツダウツダウツダウツダウツダウツダウツダウツダウツダウツダ」
「でたー!ルナサさんの一秒間に10回鬱発言だ!」
感極まった観衆により、大量のゆっくりが空高く放り投げられた。火の鳥が舞い瞬時に焼き払う。
「お高くとまってんじゃねぇ!このメスタワーめがぁ!」
「うおお!ルナサさん!西行妖を呪い始めたぞ~!ゆっくり、庭師に続き今度は…西行妖!ラ、ライトアップした~!うおおおー!西行妖が咲いてゆく~!」
西行妖が花開く程、興行主の透明度が増すが、ゆっくりを喰らうと元に戻っていった。
あの娘を呪う!!!
呪う呪う呪う
あの娘を呪う
呪う呪う
呪う呪う
呪う呪う
呪う呪う呪う
会ったその場で呪う呪う
手っ取り早いぜ呪う呪う
呪う呪う呪う
あの娘を呪う
呪う呪う呪う
あの娘を呪う
呪う呪う
呪う呪う
即行(そっこー)呪う呪う
呪う呪う…
観客の中から天に向かってボエ~と極太レーザーが放たれた。ぐるぐる回るそれはサーチライトのように夜空を照らす。
ここぞとばかりレーザーにゆっくりを投げ込む観衆。
長い時間を掛けて全てのゆっくりが殺害され、ライブは終演を迎えた。
「久々に楽しめたぜ。」
「やはりルナサさんが西行妖呪って白玉楼が出来たってのは本当だったのか…。」
興奮冷めやらぬまま花見客達は帰って行った。
後に残されたのは大量の餡子。それが地面も見えぬ程会場を埋め尽くしていた。
時折、そこかしこから「ゆっ!」と痙攣した声がしたが、やがてそれも聞こえなくなった。
消えかかった篝火に映し出されるステージには膝を抱えて座り込む二人の陰。
ライブの反動で重度の鬱状態になったルナサと掃除係の妖夢が「死にたい。死にたい。」といつまでも呟いていた。
最終更新:2008年09月14日 11:01