緑髪が好き過ぎて電波受信しました。
先にも後にも言います。ごべんなざい。
緑髪萌え、東方キャラ、虐待成分少なめ、どれかでも嫌だと思ったらバックしてね!!!
虐待自体は
『死ねば死に損。生くれば生き得』という文辺りから…かコレ?
ここの所、死した魂が増えすぎている。長いこと彼岸にいるが、大量の魂が休み無く流れくる様ははじめてだ。
残業もこの半年は毎日。休日も殆ど出勤。しかし、仕方が無い。楽園担当はあたいとあの方なんだし。
「ふう…本日もお疲れ様でした。」お疲れ気味の閻魔様。ちょっと背が低めの裁判長。
「お疲れ様です。…あの、四季様、差し出がましいかもしれませんが、明日はお休みになられた方が。ここ一ヶ月ずっと働き詰めで…。顔色も良くないですし、竹林の医者に診てもらった方がいいと思います。」
対し、彼女の部下。長身で赤い髪の三途の川の船頭。見た目からも威勢のよさが伝わってくる。
「小町、二人きりの時は…。」ゴホン、と咳払い。
「え、あ、スミマセン、映姫様。」急いで言い直す。
「…ええ、そうですね。あれだけの魂を裁判するのは流石に疲れました。他の閻魔に明日は替わってもらうことにします。連絡を取りますのでそこで待っててくださいね。」おもむろに尺を耳にあて、
「あ、もしもし。夜分遅くに失礼します。楽園担当の四季映姫です。実はですね、…え?…はい、解りました。はい。いえ、恐縮です。…はい。…いいえ、勿体無いお言葉です。はい、謹んで頂戴します。はい、それでは失礼します。」ふうっ、と一息つく映姫様。
…え!?あの尺って上司と連絡とれたんだ!あたい、長いこと映姫様と仕事しているけどはじめて見たよ。
「小町、どうかしたのですか?」不思議そうに。
「いいえ何でもないです。映姫様、それでどうだったんですか?」見なかったことにしよう。
「はい、『上半期魂裁き量』が少しばかり多かったという事でお休みを頂けました。」ちょっとだけホッっとした表情で。
「そうですよね~。いやー、よかったよかった!じゃあ、あたいに気にせずバッチリ休んできてください!」そんな制度あったんだ。それと、少しばかり?あたい、河を何往復したっけなぁ?ココだけの話、常時距離短めに設定してたはずなんだけど。
「小町?一緒にいてくれないのですか?」あたいの言葉を聞くや、一転して、ちょっと涙の含み、ちょっとだけ首を傾げて上目遣い。
「…ぐぅっ、…で、でも、あたいはお休み貰えた訳じゃ…。」…えーき様、その表情はっ…!!
「いいえ、貴女もですよ。『貴女の部下にも休みを与えます。』そう仰られました。」我の事のように嬉しそうに語る。
「えっ!本当ですか!いやー、実を言うと、私もクタクタだったんですよね。」あっはっはと大笑い。
「…では、もう一度聞きます。…お休みの間、一緒にいてくれませんか?」服の裾を持ち、なおも上目遣いでお願いされる。
勿論、あたいじゃ耐えられないよ。こんな破壊力の攻撃は。
「ご一緒させて頂きます。貴重な一日ですから有意義に使わないと。」うん、あっさり承諾したね、あたい。一人でのんびり寝たかったけどまあいいか。貴重な休み一日だけど映姫様とすごそう。それはそれで楽しそうだし。
「いえ、今までのお休み返上した分と今回の特別休暇を合わせて、頂いたお休みは1ヶ月なのですが…。」ん?
「あ、小町、大丈夫ですよ。私たちが休みの間は他の閻魔が補ってくれるそうですから。貴女が真面目になってくれて私も嬉しいです。」え?いや違、
「本当に有難う御座います。実は休暇の最中は官舎が使えないので小町を頼るしかなかったのです。」いやだから、
「ちょっとだけ待っていてください。官舎の私物をまとめて来ますから。」えーき様?ちょっとー?
あれ?もしかして、あたい、図られたのか?官舎で過ごせないって本当なのかなぁ?えーき様は閻魔だから嘘つかないと思うけど。嬉しいけれど、なんかなぁ。なんだろ、釈然としない。
しばらくして、小さい手荷物を持った映姫様が戻ってきて、
「お待たせしました、小町。では行きましょう!」えーき様?顔色良くなってませんか?
「…わぁ、ここが小町のお家…。」そんなに珍しい家でもないと思いますよ。
「ええと、二人で生活するのには狭いので少し距離を伸ばしてみました。お布団はそこの襖にある来客用のを使ってください。それから…」一ヶ月となると不足するものが出てくるはず。あー、あした買い足しもしなきゃ。
「二人で生活…あ、小町のお部屋。」ちょっとー?えーき様?聞いてますかー?勝手に人の家のふすま開けるのは良くないと思います。
「ごほん、…はい、解りました。」
「…遅めですが夕飯の支度しますね。ちょうど映姫様の好きなのありますから。」
映姫様は質素を好む。質素と言っても一汁一菜と例えが出来るほど粗食であるというわけではないが。
おにぎりは味付けに塩を振っただけの物を好むし、神の身分であるのにも関わらず、お酒に弱いので嗜好品はお茶くらい。味気ない物が好きなのだ。
だが、その味気ない物の魅力を知り尽くしているので、それらを損なうものにはそれはもう、もの酷く嫌悪する。
一度、おにぎりの具で口論したことがあるから間違いない。
「小町、貴女は、お米本来の甘みを理解しているのですか?…そう、貴女はお米本来の味を蔑ろにし過ぎる…。わ、私と…同じ食生活をするのが、貴女にできる善行よ。」
「ぅ…解りましたよ映姫様、でも、おにぎりの具はツナが最高ですよ…。」
というやり取りがあったため、映姫様の好きな物は大体わかるようになってしまった。
その日の夕ご飯は、焼き鮭ときゅうりの漬物とお浸し、薬味を乗せたお豆腐、そしてほかほかのご飯。
「いただきます。」食前には映姫様は必ず忘れずに言う。前までは、一人で暮らしている時間が長かったせいかいつの間にか言わなくなっていた。それが理由で映姫様に凄く怒られたこともあったのでその日からは家で一人の時でも食べる前には「いただきます。」を忘れないようになった。
美味しそうに食べてくれるので、あたいも嬉しくなる。お茶碗に米粒一つ残さず食べ、「ご馳走様でした。」映姫様が言う。
「いえ、お粗末様でした。あたいはかたづけるんで、映姫様はお風呂沸かしてあるので先どうぞ。」
映姫様は何度も片づけを手伝いたいと言ったが、「今日はあたいに任せてください。」と笑って言ったら了承してくれた。
片付け後、映姫様が風呂から上がったのであたいも風呂に入る。久々の休みを前にして湯に浸かると、骨からも疲れが染み出している感じがして、すねの中あたりがむずかゆくなった気がした。風呂をあがり寝室に行くと、水色のパジャマを着た映姫様がお布団を二つ並べて敷いて正座していた。
「小町、今日はもう寝ましょう。」ポンポンと隣の布団を叩く。数時間前のクタクタ顔の貴女は何処ですか?
「あー…、いや、せっかく広くしたんですし、布団は離しても平気ですよ。あたい寝相悪いですし。」一応、気を使ったんですけどね。
「構いません。明かりを消したいので早く布団に入ってください。」聞く耳持ってくれませんか。そうですか。
「小町、お疲れ様。…おやすみなさい。」布団を目元までかぶってコッチ見ないでください。やばいですから。主に理性が。
「はい、映姫様、おやすみなさい。」あー、でも、本当に疲れた。オヤスミナサイです。
お互い共に長い重労働をしていたわけで、今までの疲れが出たのかぐっすり眠れた。
翌日、寝坊したら映姫様に怒られた。
「早起きは三文の徳という言葉はですね…。」いつもの説法が始まる。
しかしまぁ、なんでこの方は朝から元気なんだろ。どうもあたいは朝に弱くて困る。
「朝ごはんは私が作っておきました。顔を洗ってきてください。」半覚醒の鼻でも解る、いい匂い。
映姫様の手料理が食べられるのは嬉しいけれど、食べてる最中に何度も「美味しいですか?」「味付け濃くありませんでしたか?」とモジモジしながら聞いてくるのはやめてください。反則ですよ。
朝ごはんも済ませたので、当初の予定通り竹林の八意永琳のところへ。距離を操ればすぐに到着。
永遠亭に到着すると、見知った月兎と幸運の兎がビックリした表情で此方を見ていた。
映姫様の軽い説法のあと、事情を説明すると奥に通され、八意永琳が笑顔で診察してくれた。
少女診察中…。
「四季さん、貴女はきちんと休みを取っていますか?……コホン…そう、貴女は働きすぎる。長期休暇を取る事が貴女にできる療養よ。…ふふ、なんてね♪」八意永琳が誰かの物まねをしながら診断結果を伝えてくれる。
「台詞取らないでください。怒りますよ。」尺を取り出すえーき様。
「四季様、尺はしまって下さい。…それなら、既に長期休暇もらったから大丈夫だわ。」えーき様の前に割り込み、答える。
「あらそう。手が早い患者だと楽で助かるわ。お代は結構よ。…もし今後、体調不良を感じたら直ぐにいらして。」年ふそうお…相応の悪戯っぽい笑顔。
「ああ、そうさせてもらうよ。それじゃ、映…四季様、行きましょうか。」セリフ取られてちょっと不機嫌そうなえーき様に。
帰りの道中、何とか不機嫌が解除された映姫様が、
「せっかくですから花の時に私の裁きを受けた皆さんの様子を見て回りましょう。」
との事であちこち回ることになった。買い足しは明日だなこりゃ…。
紅魔館→湖→冥界→神社→山→太陽の畑→我が家が、もっとも最短だね。…距離を操れるが、長距離は疲れるから操る範囲は短くしたい。…あたいはこういう時だけは計算速いわ。…まあ、何はともあれ早く済ませてのんびりしたいなぁ。
紅魔館の門が見える位の距離につくなり目当ての人物がいた。門番を叱っているようだった。…うわぁ、門番の帽子になんか生えてる。
「ああ、理解しているようですね。そう、叱る事の本質は『優しさ』なのです。」
なにやらウンウンと頷き満足された様なので次に行くことにした。
優しい人ってナイフ刺すの?
湖では目当ての存在が二人いた。未だ幼稚なものは人も妖怪も良く遊ぶ。目当ての存在以外にも4匹の妖精妖怪が居た。種類も性質も違う妖怪が仲良く群れているのは珍しい。
「まあ、この程度の『混沌』ならば良しとしましょう。…妖精の方は、『迷惑』をかけ過ぎているようですが、もう一匹の妖精がある程度自制させているみたいですね、このまま良い方向に向かうといいのですが。」
もうこの場はいいらしい。じゃあ次行きますか。
とまあ、このように遠くから観察し、教えを守れて無い様だったら出て行って改めさせるつもりだったようで。続く半霊も食いしん坊の主の世話で剣を振るう事すら出来ない様子で、騒霊達も、
「レイラのお洋服見つかったよ~。」「絶対に忘れるもんですか!あの子の分までずっと騒ぎ続けてやるもん。」「…閻魔様のお陰ね。…私達は曖昧にしてはいけないの。…私達は、あの子を忘れてはいけないの。」
…形見探ししてた。「うん、よいよい。」感謝の言葉まで聞けて映姫様も満足してるっぽい。
幻想卿でもっとも有名な場所では、紅白と黒白が仲良くお茶をしていた。
「おお、霊夢、閻魔と超サボリ魔がきたぞ。」黒白。五月蝿いねあんた。
「珍しいわね。まあ、お茶くらいなら出すわよ。」紅白。
少し話をし、休憩させてもらうことに。
ちゃぶ台の上には湯飲みが二つ。…あ、お茶菓子は羊羹だ。あたいとえーき様の共通の好物。そういえば忙しくなる前以来食べてなかったなぁ。
「はい、美味しかったらお賽銭入れていってね。。」あたいから賽銭たかろうとする巫女。いい根性してるよ。
しかし久しぶりのお茶の時間。えーき様もホクホク顔だ。そりゃ久しぶりの羊羹だもん。
「「いただきまーす♪」」二人の声がはもる。
一口食べてみてビックリ。…え!?全然美味しくない?羊羹だよねこれ?思わず映姫様の方を見る。
…うあ、物凄く怒ってらっしゃる。四季様、落ち着いて!!
「霊夢、これは、何ですか?」
「え?羊羹よ?お茶には羊羹か煎餅よ。」お茶ジャンキーが豪語する。
「…後半は非常に同意しますが、非常に残念です。内心ではお茶友と思っていた貴女も変わってしまったのね…。」聞いたことないけれど残念な事だけは良く解りました。
「ちょっと!何か問題でも有るの!?」
「コレが羊羹とでも少しでも思ってるのですか?」
「や、安物なのは認めるけど!れっきとした羊羹じゃない!」
「食べ物を粗末には出来ませんので頂きますが、コレは羊羹ではありません。まがい物です。白黒ハッキリつけました。」
黒白はニヤニヤしながら見ている。根はいい奴なんだろうけど、本当にコイツは他人のドタコタが好きなんだねぇ。さっきのお礼もかねて小突いてやりたいよ。
「とにかく、コレは何という名前の羊羹モドキでしょうか?」
「…コレよ『銘菓ゆっくり羊羹』よ。」
「……解りました。…今度、会う時の貴女は前のお茶友に戻っている事を期待しています。行きますよ、小町。」
去っていく二人を見送りつつ、
「く、…なんか非常に腹が立つわね。…でも、久しく普通の羊羹食べてないわねぇ。」
賽銭を貰えず仕舞いだった巫女がポツリと言った。
心の友人を失ったかの様なえーき様。酷く萎えてしまったので、帰り道でもある太陽の丘を訪ねて今日はもう家に帰ることになった。
正直言うと丘には行きたくない。あそこに居るのは酷く強烈な妖怪だから。
途中、何かの結界があったようだが距離を縮めて移動していたし、無害だったので気にせず屋敷前まで飛んだ。
「こら、…そんなにしては、ダメでしょう?」
屋敷の中から声が聞こえて来た。うん、この声は覚えている。ボトルネックって言ったあの声。
「でも、幽香の蜜…美味しいよ?」
どっかで聞いた声。まだ幼い感じがする…って何の会話だよ!…あ、えーき様がプルプル震えていらっしゃる。
「いけません!白昼堂々何をしているのですか!!」凄い勢いで声の方へ走るえーき様。
仕方ないので少し離れて追いかけるか。
「あら、盗み聞きをして人の屋敷に勝手に進入するのが閻魔様流の作法なのかしら?」
声のしたほうから凄い魔力を感じた。…ああぁぁぁ、あたいもうしらない!
「小町、早く着なさい!」高らかに呼ばれるあたいの名前。…もう、どうにでもなれ。
「幽香、ティータイムは優雅に、だよ。」もう一人の声。
「ふふ…、そうだったわね。」緩む緊張。空気も館の壁もホッとしたに違いない。
声のした場所に着くとえーき様が懐から尺を取り出す動作で固まっていた。なんでもない、ただお茶を飲んでいる二人が居ただけだった。
「ま、気分がいいから無作法は大目に見るわ。…貴女達も呼ばれていきなさいな。」既に椅子に座り紅茶を口に運ぶ。その動作の後、ハニーティーを飲んでいた緑髪の少女が立ち上がり、椅子を2脚引き、どうぞ、と手で示した。
「私が満足できるレベルのお茶を淹れれるようになって偉いわ。…この二人には緑茶を出してあげて。」
固まったえーき様を引きずって椅子に座らせ、あたいも隣の席に座る。
…しかし、前にあった時とえらく印象変わったなこの妖怪。
「らしくないわね、閻魔様。いったい何があって?」少女がキッチンに向かうと花の主が語りかけてきた。
「いや、実は、さっき巫女の所で羊羹を出されて」答えるのはあたい。えーき様は自分自身がさっき考えた愚かな事を改めているんだろう。動かない。
「ふむ、それで?」続けなさい。そう続く気がして。
「四季様もあたしも言ったんだ。非常に美味くないって。なんていうか、紛い物と言うか…。」
「…へぇ、閻魔様の能力は冴えたままね。…さっきの有様は見なかったことにするわ。」
キッチンから緑髪の少女がティーセットを持って歩いてくる。
「ご苦労様、リグル。…あら、言われなくても緑茶に合うお茶請けを用意するなんてね。」
「うん、緑茶には羊羹か煎餅って前に霊夢が言ってたから。」緑茶ジャンキーのお茶布教は凄いな。
どうぞと、目の前に出されたのはいい感じで湯気の立っている緑茶と、みずみずしい羊羹。あ、茶柱。
えーき様の前にも出される。…と、止まった時間が動き出したようで。
「…失礼しました。自身の愚かさを改めるのに時間がかかってしまいました。」
キラキラと光る目は明らかに羊羹しか見ていない。
「「いただきまーす♪」」またはもった。
…!!そう!コレだよ!!上品な甘み、なのに解るほんの僅かな塩気。お茶での熱を受けた舌の熱をほのかに冷やすコレ。ココ来て良かった、客人がそう思える一品だよ。
ね、えーきさ…泣いてる!
「…風見幽香。」
「なにかしら?」
「…ありがとう。」
「いえ。どういたしまして。」
「…こんど、白い桜の下でお茶会しましょう。…久しぶりです。これほどの一品は。」落涙の羊羹。
「あら、白桜なんて久しく見ていなかったわ。楽しみね。」
「幻想卿から本物の羊羹が死んだのかと思い、いつ裁いたか考えていたところです。まだ生きてましたか。」ふふ、と笑う映姫様。
「いえ、ほぼ死んでいるわね。小豆製品は特に。」
曰く、二人で歩いていたら、たまたま出くわした人間の農夫と菓子職人に豊穣の神(秋姉妹)と間違えられ相談を受けたと。
人間の里の小豆を使う菓子はコストの極めて安い代替品に取って代わられ廃れたと。
気分が良かったのでその人間には恐怖を与えなかったと。
『死ねば死に損。生くれば生き得』されどアレ等に関してだけ言えば、我等は二度損。
我が家に戻った後、二人で話し合った。
「小町。魂が増えた理由がこれほどしょうもない事だったと思うと腹が立ちませんか?」
「ええ、映姫様。あたし達の共通の楽しみを迫害し、あまつさえ己のみ『ゆっくり』し、私たちを『ゆっくりさせてくれない』存在とは。」
「嘆かわしいです。」
「しかも、徳の無い連中ですから運賃も限りなく0に近いですし。アレの魂が溢れても我々は商売上がったりですよ。」
「変な物が流行りますね。はぁ…。」確かに、いま思い返せば、裁き量と比例して増えるはずの運賃も雀の涙ほどしかなかった。
ともかく、映姫様の提案で休みの内でも特に暇な日は、聞き込み調査、永遠亭で奴等のレポートを見せてもらったり、実際に観察などをしてヤツ等を詳しく調べることにした。
食料を見つければ
「ゆっ!これはまりさがみつけたんだよ!!」
「ちがうよ!これはれーむのだよ!!」
「まりさの!!さっさとあっちいってね!!」体当たり。
「ゆっぐり!!!そっちこそあっちいってね!!!」
数分経っても言い争う。この行為自体がもはや『ゆっくり』では無い。
「しね、ゆっくりしね!!」飛来する1匹。
「あ゛あ゛あ゛あぁぁぁ!!!れーむをたべてね!!!!」
「まままま、まりさのほうがおいしいよ!!!」
お互い食われる。
分け合えば悲劇を回避できたかもしれないのに。
家族連れの固体。
親が持ちこんだエサにかぶりつく子。
子供達よ。あいさつは?おかえりなさいといただきますは?
親も、ただいまは?めしあがれは?
「うまかった!またもってきてね!」
ごちそうさまは?
この種にとって、家族ってなんなのかしら。
腹が空けば食い、眠ければ眠る。…他人の迷惑など省みない。考えたことも無い。
家族という枠は形骸化し、わが子を忘れる。…霊になっても家族を大切にする存在も居るのに。
親が子を殺し、子が親を殺す。殺し、食う。…恐ろしいほどに混沌とした。
ゆっくりするという本来の意味を違え、惰性を貪る。…偽りの優しさで誤魔化した惰性。
友を裏切る事に躊躇なく、生にしがみつく。
少数の良識ある同種を迫害し殺す。殺しあざ笑う。
強者に媚びへつらい、弱者には厳しい。
人の様に考え改める事もなくいつまでも「ゆっくり」する事にのみ執着する。
徳も何もあったものではない。
積もるのは軽蔑。
…確かに花の主や天才薬士から聞いた通りかもしれない。彼女等はアレ等をモルモット以下のように扱う。初めは「なんと罪深きことか」と思ったが、今となってはそれも無理はないのかもしれないと思える。そうでもしないと価値がない。
全ての魂には生まれた意味がある。意味があるから生前の行いを裁く。生まれた意味の無い魂になんの価値があるといえよう?
裁く意味はありきや?輪廻転生させる意味はありきや?
もう、どんな弁護がなされても裁判長の心証は変わらないであろう。
答えなど、言うまでもなかった。
復帰開けの初日、大量の魂を一度に裁判すると仰った四季様。異例の事なので臨時で裁判員が4人か選出された。四季様の直属の部下であるあたいが居てもいいのか疑問だが、まあいいや。傍聴席で見る法廷とはまた違う、などと、どうでもいい事を考えていた。
「静粛に。判決を言い渡す。汝等は八熱、八寒地獄めぐりの刑に処す。以上。」
あたいに言わせればまあ当然かなと。事前に奴等の生前の行いを見ている裁判員も当然といった感じ。…だが、傍聴席はどよめく。これほどの重い判決を言い渡された法廷に立ち会ったことなど一度もないのであろう。
「「「ゆゆ!あついのもさむいのもやだよ!ゆっくりできないよ!!」」」ゆっくり脳でも語感から熱いのか寒いのかは理解できたらしい。もっとも、どういうレベルで熱く、寒いのかは理解できまい。これに関していえば、生者が理解しうれる訳がないのだが。
「では、地獄、タルタロス、ジャハンナムから好きなのを選びなさい。それらに続く扉はあちら。」3つの扉。
「どれがいちばんゆっくりできるの?」死しても基準はそこか。
「これにて閉廷します。魂は速やかに自分の行きたい場所へ行きなさい。」答えない。次の法廷があるから。
閉廷し、取り残される魂たち。自分達はなぜかここから出ることが出来ない。進めそうなのは3つの扉だけ。
ここに居てもゆっくり出来そうにもないので脱出するしかない。満場一致だった。
徐々に各々の好きな扉に消えていくゆっくりソウル。取り残された二匹。
「ゆ!れーむはどれにする!?」隣のゆっくりに意見を伺う。
「これにする!まりさもいっしょにきてゆっくりしよう!!」『じごく』と書かれた扉の方に進む。
「ゆゆゆ、そうだね!!これだけもじがまるいもんね!!」
仲良く並んでその扉をくぐった。
…意識が回復すると、そこは何も無いただ広いだけの空間だった。
ゆっくりれいむは初めて見る地平線に驚いたが、そんなことよりも
「まりさー?どこー!!」一緒にきた仲間が近くに居ないかきになった。
「ゆ!れーむ!!ここだよ!!」なんだ、すぐそばに居たじゃないか。
呼ばれたほうに行こうとすると、まりさのうしろには恐ろしい形相をした人型の存在が。手にはとげとげのついた棒を持っている。
「まま、まりさ、そのおじさんもゆっくりできるひとなの!?」本能で解る、コレはゆっくりできないオーラを放っている。
「ゆー??」言われて初めて後ろの存在に気づき振り返る。
刹那、獄卒は手に持った金棒を振り下ろす。
「ゆべっっ!!!!」中身を四散させ絶命するゆまりさ。
「ドおじでごんなごどずるのぉぉぉぉ!!!」叫ぶれいむ。
だが、あの恐ろしいのが今度は自分を狙って来たら…、そう思うと少しずつ距離を離していた。
「ゆゆゆ・・・ゆっくりー!!!」あれ?潰れたはずのまりさが元に戻った。
復活してまもなく獄卒はゆまりさの皮を剥ぎ出した。
「ぎゅぅぅぅ!!!いだいよぉぉぉ!!!れいむぅぅぅ!!!」
「まりさ!!がんばって!!ゆっくりできるまでたえて!!」怖くて近寄れない。遠くから声をかけることで精一杯だった。
「ぎゅうううう!!!れーむのせいだ!!!こんなところをえらんだれーむのせいだ!!!れーむなんてだいきら…ぶぎゃ!!!」
言い終わることもなく再び潰された。
「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!!まりざにぎらばれだぁぁぁ!!!」泣きながら後ずさる。
すぐに再生するゆまりさ。
「れいむなんでだいっぎらいだぁ!!!ほがのどごろならぎっどごんなごどなかった!!!ごごじゃないどごにす…ゆぐぅ!!」
殺されながら恨み言をいうゆまりさにゆれいむは恐ろしさを感じざる終えなかった。恨み言を言われ死んで、再生して恨み言を言われ…。
今すぐこの場から逃げ出そう。嫌なのからはすぐ逃げるゆっくり達の本質。そう思い後ずさりながら離れようとした。が、
ドン!
何かにぶつかった。
「ゆー??」振り返った所で何かがめり込んだ。
獄卒にとってはいつもの事。対象が人間でないのは珍しいが、自分達は500年間この責め苦を与えればよいだけ。
淡々と仕事をこなす。
だが、この等活地獄に落ちたゆっくりは運が良かったのかもしれない。
運の悪いゆっくりの何匹かは寒獄の七、鉢特摩地獄に落ちた。
血液すら凍る寒獄中の監獄。
「あばばば!!!ざむずぎで…」最後まで言葉を発することもなく力尽きた。極寒で皮膚が裂け、流出した体液が餡の花を咲かせた。
未来永劫、終わりが見えぬ責め苦のフルコース。
生物として、畜生にすら劣る業と、四季映姫の好きな物を蔑ろにした罰から考えたら必然だったのかもしれない。
おしまい。
「四…映姫様、三つ示した意味がなかったのでは?」
「気分です。」
「そうですか。どれも一緒なのになぁ。」
「そんな事より小町、…裁判官の服、似合ってますよ。」
「へへぇ、そうですか?」
「小町さえよろしければ、私の秘書にでも…」
「いえぇ、あたいは彼岸の船頭でいいんです。性に合ってますし、これからも映姫様の部下でいたいですし。」
「そ、そうですか。それでは明日からは三途の船頭をよろしく頼みますよ。」
「はい!まかせといてください!」
~あとがき~
まずは一言。
ごべんなざい。
地獄での責め苦は皆さんにバトンタッチさせてください。紅蓮の花ではなく、餡蓮の花が咲かせたかっただけです。
結局、花です。なんか書いちゃったので投下させてもらいました。
『ゆっくり以外の部分で糖分を』っていうテーマで書いて、ゆっくりのアイデンティティを虐待しているつもりなのでこうなりました。過去作も。
そんなことより、緑髪が可愛すぎるんですよ。不思議です。
Y・Y
最終更新:2011年07月28日 12:40