- 後編に“ちーちー”の描写が薄っすらと含まれてるよ!!
「んほおおおおおおあおおあおあおあお!!!すっきりするううぅぅぅうっぅうぅぅぅぅ!!!!」
「れいむううううっぅぅぅぅぅう!!!すっぎりじでえええええぇえぇえぇぇ!!!」
飛び散る、汁、汁、汁。
木の根元に掘られた巣穴の奥。誰も入り込まない2人の愛の巣。
ゆっくりれいむとゆっくりまりさは、生まれてはじめての“すっきり”をした。
「「んほほほほほあおあおおあおあおあおあおあおあ!!!すっきりいぃぃぃぃぃーーーーーーーーーー!!!!」」
血走る目、大きく開かれた口。そこからばら撒かれる唾液と、その他のいろいろな粘液。
子供なら泣いて逃げ出してしまうだろう、バケモノのような風貌で2匹は同時に達した。
外は暗黒。れみりゃすら出歩かない真夜中。
2匹は、存分に余韻に浸っていた。
「んひゅうううぅぅぅ……すっきりしたよぉ…」
「まりさもぉ……すっきりぃー……」
―――2匹がそれぞれの親元から離れ、共に新たなゆっくりプレイスを探す旅に出たのは、半年前ことだ。
それまで親の庇護の元、何不自由なくゆっくりしてきた2匹にとって、その旅は苦労の連続だった。
『ゆーん……おなかすいたよぉ……』
『がんばってね!!もうすぐおはなさんをたくさんたべられるからね!!』
度重なる野宿。3食満足な食事がとれる保証はなかった。
『ゆゆ!!あめさん!!ゆっくりやんでね!!』
『ゆっくりしすぎだよ!!まりさたちがゆっくりできないよ!!』
雨が3日間連続して降ったときは、このまま雨が二度と止まないのではないかと不安になった。
容赦ない雨に打たれ、溶けて死んでいったゆっくりを見て、2匹は恐ろしさに震えが止まらなかった。
『うー!!たーべちゃーうぞー♪』
『うわあああああああぁぁぁあぁぁぁ!!!れみりゃだああああぁぁああぁぁぁ!!!!』
『だべないでえぇぇえぇぇえっぇぇ!!!まりざはおいじぐないよおおおおおおぉぉぉ!!!』
寝床を見つけられないまま夜になってしまい、れみりゃと遭遇したときは死を覚悟した。
それでも運よく、れみりゃの入れない小さな洞穴を見つける事が出来、2匹揃って生き延びる事が出来た。
何度も何度も、命の危機を乗り越え……やっと見つけたゆっくりプレイス。
そこはゆっくりがみんな仲良くゆっくりしている最高の楽園。
れいむとまりさは、これ以上のゆっくりプレイスはないと確信し、定住を決意した。
『まりさ!!ここならずっとゆっくりできるよ!!』
『そうだね!!これからもいっしょにゆっくりしようね!!』
半年の旅を経て、2匹の愛は更に深まっていた。
共に危険を乗り越えてきた2匹。その愛を断ち切ることは、誰にも出来ない。
『れいむはまりさのあかちゃんがほしいよ!!とてもゆっくりしたあかちゃんがほしいよ!!』
『まりさもだよ!!れいむのゆっくりとしたあかちゃん!!ふたりでゆっくりつくろうね!!』
そして、今。
2匹は母ゆっくりから教わっていた方法で、記念すべき最初のすっきりをしたのだ。
「ゆー!!とてもゆっくりしたあかちゃんだよ!!」
「そうだね!!かわいいあかちゃんだね!!うまれたらみんなでゆっくりしようね!!」
れいむの頭の上に生えた、3本の蔓。
合計20個の実が、そこには実っていた。
2匹はなんとなく、こうなるだろうと思っていた。きっとれいむが子を実らせるだろう、と。
なんとなく、である。その方がゆっくり出来る気がした、それだけのことだ。
「ゆっくりうまれてきてね!!ゆっくりでいいからね!!」
「うまれてきたらいっしょにたくさんゆっくりしようね!!」
蔓に実った20匹のゆっくりに、微笑みながら話しかける2匹。
まだ目は開いておらず、口も閉じたまま。帽子もリボンも無いので、両親のどちらと同じ形で生まれるかもわからない。
でも、すでに耳は機能しているようで、両親の言葉を聞いてぴくりと身を震わす赤ん坊もいた。
「ゆぅぅぅぅ!!!ゆっくりきこえたんだね!!れいむはうれしいよおおおおおお!!!」
「これならうまれてからもゆっくりできるよおおおおお!!!」
2匹は嬉しさのあまり、大粒の涙を流した。
半年間の旅の苦労。至ることのできた最高のゆっくりプレイス。そして、これから生まれるであろうかわいい子供。
れいむとまりさが思い描く未来は、とても明るかった。ずっとずっとゆっくりできる。根拠はないけど、確信していた。
「「ゆっくりしていってね!!」」
そんな、夜。2匹が輝かしい未来に思いを馳せている、その瞬間。
それほど遠くない場所で、悲劇は起こっていた。
「いや……どぼぢで…ごんなごどにいいぃぃ………」
暗い巣穴。全身ボロボロの状態で、目に涙を浮かべながら外を見つめるのは、ゆっくりまりさだ。
その視線の先には、背を向けて満足げに去っていくゆっくりありす。
「ひどいよ……ぜんぜんゆっぐじでぎないよおおおおおお………」
まりさの頭上には3本の蔓が生えていた。原因は、ありすによるレイプだ。
昼間に草原で出会ったありすに一目惚れし、自分のおうちに連れてきてしまった結果がこれである。
まりさは、今になってかつての母親の教えを思い出した。
『ありすとふたりきりになったら、ゆっくりできなくなるよ!!』
間違っても、ありすをおうちに連れ込んで2人きりになってはいけなかったのだ。
しかし、それを思い出したところで、今更遅い。まりさはありすとの子を実らせてしまった事実は、取り消せない。
まりさの頭上には、合計20匹の赤ちゃんゆっくりが実っていた。
「ゆぐうううぅぅぅぅ!!!どうすればいいのおおおおおおおお!!??こんなこどもいやだよおおおおおおお!!!」
レイプ魔ありすの子供なんて、生みたくないし育てたくもない。
だからといって殺すわけにもいかなかった。もし子供を殺している現場が他のゆっくりに見つかれば、集団リンチものである。
この群れに処刑という概念はないが、ゆっくりを殺してはいけないという最低限の倫理観は存在していた。
「……このままじゃゆっぐじでぎなぐなるよおおおおおおお!!!」
自分は、まだまだゆっくりしたい。望んでもいない子供の世話なんてまっぴらだ。
成体になったとはいえ、まだまだ遊び盛りのまりさにとって、子育て……それもレイプされて生まれた子供を育てるという行為は、苦痛でしかなかった。
可能ならば、子供は生みたくない。生まれたとしても、絶対に育てたくない。
そんなまりさの思いとは裏腹に、蔓に実った子供は順調に形を成していく。
うっすら閉じた目。きゅっと結んだ口。髪飾りはまだないので、親のどちらに似て生まれるかはわからない。
それでも、確実にゆっくりとしての形は形成していた。おそらく、数時間後……日の出直後には生まれてしまうだろう。
「ゆぅ……ゆっくりしたいよぉ……こんなあかちゃんいやだよおぉ………どうすればいいのぉ!?」
その時だった。そう遠くない、離れた巣から2匹のゆっくりの声がかすかに聞こえたのは。
「ゆっくりうまれてきてね!!ゆっくりでいいからね!!」
「うまれてきたらいっしょにたくさんゆっくりしようね!!」
赤ん坊が実ったことを祝福する、ゆっくりれいむとゆっくりまりさの声だ。
2匹の明るい声色から、まりさは理解した。これから向こうで生まれる赤ん坊達は、みんな望まれて出来た、祝福されるべき赤ん坊なのだ。
まりさは、うらやましかった。存分に愛し合う2匹が。その結果生まれる、愛されることを約束された赤ん坊が。
それにくらべて、自分はどうだ。一目惚れしたありすに裏切られ、20匹もの赤ん坊を孕まされて独りぼっち。
もし、このまま赤ん坊が生まれれば、自分だけでその世話をしなければならない。
「ゆっぐ……ずるいよぉ………どうしてまりさだけ…ゆっくりさせてくれないのぉ……?」
まりさは、羨ましさを通り越して、2匹が憎くなった。
自分がこんな目にあっているのに、どうしてあいつらは幸せなんだ。ずるい。ずるい。こんなの不公平だ。
心の中で毒づくまりさ。自分の不幸を嘆き、そしてその不幸に対して何も出来ない、無力なまりさ。
その時、まりさは“ある事”を思いついた。
「ゆっ?………ゆゆゆゆゆゆゆゆっ!!」
まりさの表情が、一気に晴れた。自分の身に降りかかった不幸を払いのける、最良の方法を思いついたのだ。
自分で子供を殺す必要はなく、それでいて自分で子供を育てる必要もない……そんな最高の方法。
簡単なことだ。子供を育てるのが“自分”である必要はない。
「ゆふふ!!いいことおもいついたよ!!これでゆっくりできるよ!!」
まりさは、暗闇の向こうの……例の2匹の巣がある方向へ、視線を向けた。
早朝。
眠ることなく赤ん坊の誕生を今か今かと待っていた、れいむとまりさ。
かつて母ゆっくりに教わった事が本当なら、そろそろ生まれてもいい頃だ。
「ゆーん……あかちゃんたち、とてもゆっくりしてるね!!」
「そうだね!!でもまりさはそろそろうまれてきてほしいよ!!」
ゆっくり生まれてきて欲しいと望んではいるが、早く生まれた赤ちゃん達とゆっくりしたい。その気持ちも本物だ。
でも、無理やり蔓から切り離したら、赤ちゃん達がゆっくりできなくなる。
まりさはもどかしさに身悶えながら、誕生のときを待ち続けた。
そして。
「……ゆゆっ!?なんだかへんなかんじがするよ!!」
「れいむ!!あかちゃんがゆっくりうごいてるよ!!もうすぐゆっくりうまれるんだよ!!」
違和感を感じたれいむ。まりさはれいむの頭上を見上げた。
かすかに目を開き、もごもごと口を動かしている赤ちゃんゆっくり。出産のときが近いのだ。
その違和感の正体を知ったれいむは、その場にじっと留まって視線を上に向ける。
「ゆゆゆ!!うまれるよ!!ゆっくりうまれるよおおおおおお!!」
「がんばってね!!あかちゃんはゆっくりがんばってね!!」
ゆらゆらと、自分の力で実を揺らす赤ちゃんゆっくり。
母ゆっくりが手伝う必要はない。じっと待っていれば、そのうち自力で蔓から切り離れる。
赤ちゃんゆっくりは目をぎゅっと閉じ、力を振り絞って身体を揺らしている。
ぶち…ぶちぶち…
赤ちゃんゆっくりの頭と蔓とのつなぎ目が、少しずつ千切れていく。そして…
ぶちっ!!
ぽとん!!
最初の赤ちゃんゆっくりが、ぼよんと軽やかに弾みながら生れ落ちた。
「ゆっ…ゆゆ……ゆっくちしちぇいってね!!」
「ゆっくりしていってね!!れいむがおかーさんだよ!!」
「まりさもおかーさんだよ!!いっしょにゆっくりしようね!!」
これ以上ない幸福感だった。自分を生んだお母さんも、こんな思いだったのだろうか。
そんなことを考えながら、2匹の母親は最大級の歓迎でもって赤ちゃんゆっくりの誕生を祝福した。
「ゆっくちうまれりゅよー!!」「ゆっくちぃ~!!」
次々に生まれてくる、赤ちゃんゆっくりたち。
そのどれもがとてもゆっくりした、かけがえの無い子供たちだ。
10分ほどで、蔓に実っていた赤ちゃんゆっくり20匹全員が、無事に生まれ落ちた。
れいむ種が10匹、まりさ種が10匹、ちょうど半分ずつ。最適なバランスだった。
「ゆ~!!いっぱいうまれたね!!みんなとてもゆっくりしてるよぉ!!」
「そうだね!!これからはみんなでゆっくりするよ!!」
「「ゆっくりしていってね!!!!」」
「「「「「ゆっきゅちしていってにぇ!!」」」」」
「ずっとみんなでゆっくりしようね!!」
「おかーさんたちがゆっくりさせてあげるからね!!」
「「「「「ゆっくちそだててね!!!」」」」」
明るい声。明るい笑顔。誰もが幸せを感じ、それが永遠に続くと信じて疑わない。
たくさんの子供に囲まれて、れいむとまりさは幸せの絶頂に達していた。
そんな明るい笑い声が絶えない、木の根元の横穴。
すぐ近くの草陰に隠れているのは、頭上に3本の蔓を生やしたゆっくりまりさだ。
「ゆゆゆ!!まりさもゆっくりうまれそうだよ!!」
奇しくも、その蔓に実っているのは巣の中の赤ちゃんゆっくりと同じ、20匹。
だがまりさにとっては、赤ん坊の数などどうでもいいことだった。
とにかく、一刻も早く頭上の赤ちゃんを何とかしたい、それだけしか考えていない。
「ゆーん!!もうすこしでゆっくりできるよ!!!」
まりさは、“その時”が来るのをゆっくりと待ち続けた。
朝。
赤ちゃんが生まれてから1時間半後。
赤ちゃんゆっくりたちは、れいむの頭から切り離した蔓を食べた後、仲良く眠りについた。
あれほど賑やかだったおうちの中も、赤ん坊が眠ってしまうと元通りの静けさを取り戻す。
「ゆー…ゆっくりねむってるね!!」
「れいむ!!いまのうちにたべものをとりにいこうよ!!」
「ゆゆ!!それはめいあんだね!!」
れいむとまりさは、赤ちゃん達のために食べ物を取りに行くことにした。
親が2匹とも健在ならば、片方は赤ちゃんを見守るために残るべきなのだが、2匹はそうしなかった。
この2匹の巣は、れみりゃにも発情ありすにも見つからない完璧なカムフラージュが施されている。
雨の日に雨宿りにやってくるゆっくりすらいないぐらいだ。
食べ物を取りに行っている間も誰も来ないだろうし、赤ちゃんが目覚める前に帰ってくる自信もあった。
だから、2匹は眠っている赤ちゃんを置いて、食べ物を取りに行くことにしたのだ。
「ゆっくりしないでとってこようね!!」
「そうだね!!あかちゃんがおきるまえにゆっくりかえってこようね!!」
若干食い違っているような会話を交えながら、れいむとまりさは巣の外へと飛び出していく。
協力して食べ物をたくさん集めて、子供たちを喜ばせてあげよう。
そう心に決めて、草原の彼方へと跳ねていった。
「ゆへへ!!やっとでてきたよ!!」
まりさは、その時を待っていた。
巣の中の幸せそうな2匹が、赤ん坊を置き去りにしておうちから離れる、その時を。
2匹が巣穴から飛び出してくるのをその目で確認し、完全に姿が見えなくなるのを待ってから、まりさはその巣穴へと飛び込んだ。
「ゆー……たくさんゆっくりしてるよ」
一箇所に固まって眠っている赤ちゃんゆっくりを見て、まりさは独り言をこぼした。
目の前に並ぶのは、これからゆっくりさせてもらうことが確定しているであろう、幸せな赤ちゃん達。
そんな赤ちゃん達の穏やかな寝顔を見て、まりさは可愛く思ったが同時に憎くも感じた。
可愛い赤ん坊の寝顔。幸せそうな夫婦の笑顔。そして、それを取り巻く愛情。すべてが憎かった。
「……どうしておまえたちだけゆっくりできるの?まりさだってゆっくりしたいんだよ!?」
その憎しみは、本来ならレイプ魔ありすにぶつけるべきものだ。
だが、その相手は昨夜に逃亡して行方知れず。怒りが湧き起こっても、それをぶつける相手はもういないのだ。
「ゆぐぐ!!さっさとうまれてね!!ゆっくりしないでうまれてね!!」
まりさは、自分がここへ来た目的を思い出し、頭上の蔓をゆっさゆっさと揺らし始めた。
ここには長居すべきではない。れいむとまりさの夫婦が帰ってこない間に、そして赤ん坊達が眠っている間に、出産を終えなければならない。
頭上の赤ちゃん達のことを考えれば、蔓を揺らして無理やり赤ちゃんを産み落とすのはよくないことだ。
しかし、望まない赤ちゃんと一刻も早く縁を切りたいまりさにとって、赤ん坊の生まれた後のことなどどうでもよかった。
「うぐぐぐっぐ!!!さっさとしてね!!はやくうまれないとおこるよ!!」
母親の怒声に覚醒した頭上の赤ちゃん達が、慌てて身を揺すり始める。
やっと生まれる気になったのか、悪魔の子供め。
まりさは半分呆れ顔で、蔓を揺らし続けた。
「ゆっくち!!ゆっくちゆらしゃないでね!!まりしゃはゆっきゅちうまれりゅよ!!」
「ありしゅもゆっきゅちうまれちゃいよ!!ゆらしゃないでね!!」
無理やり蔓を揺らされるのは、赤ん坊にとっては気分のいいものではない。
場合によっては乗り物酔いと同じような状態になり、中身を吐き出してしまうこともあるのだ。
「うるさいよ!!さっさとうまれないとゆるさないよ!!ゆっくりしないでうまれてね!!」
赤ん坊に対する言葉とは思えないぐらい、まりさはその声に怒気を込めている。
母の頭上で眠っているとき、誕生を祝福されることを夢見ていた赤ちゃん達にとって、その言葉は心にどう響くだろうか。
「ゆきゅぅ……わかっちゃよ!!ゆっくちしないでうまれるにぇ!!」
「ゆん!!おきゃーさんもてちゅだってね!!」
「いわれなくてもわかってるよ!!ゆっくりしないでうまれてね!!さっさとうまれてね!!」
さっきから怒ってばかりの母親を見て、赤ちゃん達は悲しげな表情を浮かべながら身体を揺らし続ける。
まりさの揺れと、赤ちゃん達の揺れ。その2つの揺れで、赤ちゃん達と蔓との繋ぎ目が千切れていく。
そして……ぶちん!ぶちぶちぶちん!!ぶちぶちん!!
「ゆっきゅちうまりぇたよ!!」「ゆっくし!!」「ゆっくりぃ~!!」
ほぼ同時に、20匹の赤ちゃんが生まれ落ちた。まりさ種が10匹、ありす種が10匹だ。
目の前にいる大きなゆっくりまりさを母親と認識し、揃ってまりさの方を向く。
そして小さな目をうるうると輝かせながら、赤ちゃん達は生まれてはじめて“挨拶”をした。
「「「「「ゆっきゅちしちぇいってね!!」」」」」
「うるさいよ!!ゆっくりだまってね!!」
赤ちゃん達は唖然としてしまった。元気な挨拶が返ってくると思っていたのに、母の口から飛び出した言葉は全然違うものだった。
その意味は正確には理解できなかったが、なんとなく……怒られたのだという事だけはわかった。
「ゆ……どおちておこるの?」
「まりしゃたちわりゅいことしちゃの?」
「ゆっくちおこりゃないでね!!ありしゅたちはおかーしゃんのかわいいこどもだよ!!」
「ゆっくりしゃべらないでね!!ゆっくりできなくするよ!!」
「「「ゆん……」」」
それっきり、赤ちゃんゆっくりたちは黙り込んでしまった。
赤ちゃん達は、自分が望まれないで生まれたということを知らない。
母まりさがこんなにも自分達につらくあたる理由が、まったくわからないのだ。
「おかーしゃん……まりしゃおなかすいたよ…」
「ありしゅも!!ありしゅもおなかすいた!!」
「まりさも!!」「ありすも!!」「おなかしゅいたー!!」
生まれたての赤ちゃんは、基本的に空腹である。
普通なら母ゆっくりに、蔓を噛み砕いたものを食べさせてもらうのだが、まりさはそれをしなかった。
「ゆぐぐぐぐぐ!!!そんなにおなかがすいたなら、そこらへんのものをたべればいいよ!!」
と、言い切ったところで……まりさの視界にあるものが入った。
それは、れいむとまりさの夫婦が生んだ、赤ちゃんれいむと赤ちゃんまりさである。
まりさはゆっくり考えた。
最初はこのまま赤ん坊達を置き去りにして、帰ってきたれいむとまりさに育てさせる予定だった。
でも、これだけ赤ちゃんが増えればさすがに気づかれてしまうだろう。そうしたら計画は水泡に帰してしまう。
だから、赤ちゃんの数を最初と同じ程度まで減らす必要がある。
そのためにはどうすればいい?
ゆっくり殺しは、見つかればリンチものだ。こんなクソガキのために痛い目に遭いたくない。
どうすれば……どうすれば、子供の数を減らせる?
自分で殺さず、子供を減らす方法……
「ゆっ!!ゆゆゆゆゆ!!!!」
その時、まりさの餡子脳に電撃が走った。
思いついたのだ。子供の数を減らす最良の方法を。自分の手を汚さず、子供を減らす方法だ。
簡単なことだ。子供を殺すのが“自分”である必要はない。
「みんな!!ゆっくりきいてね!!そこにころがってる“まんじゅう”をみてね!!」
「ゆっ?まんじゅう?」「ゆっくちできりゅの?」「おなかしゅいたよ!!」
“饅頭”という言葉を知らない赤ちゃん達は、それがゆっくりできるものなのか、腹を満たせるものなのか、そうでないのかわからない。
だが、その言葉が示しているのが目の前で眠っている赤ちゃんゆっくりだと分かると、赤ちゃん達は困ったように口々に呟いた。
「おかーしゃん!!それはまんじゅうじゃないよ!!れいみゅだよ!!」
「そうだお!!このまりしゃはまんじゅうじゃないお!!」
目の前のこれは、れいむとまりさである。だから饅頭ではない。そんな思考である。
それでもまりさは怒らず、大きな声でゆっくりと言い聞かせた。
「ゆ!!おまえたちにはそうみえるんだね!!でもこいつらはね、れいむとまりさによくにた“まんじゅう”なんだよ!!」
「「「ゆゆゆ!?そうにゃの!?」」」
饅頭がどんなものなのかは分からないが、目の前のれいむとまりさが、れいむとまりさに良く似た別のものだということは理解した。
そして、肝心の饅頭とはいったいどんなものなのか。赤ちゃん達は、母まりさの説明を待った。
「ゆっくりきいてね!!まんじゅうはとてもゆっくりできる“たべもの”だよ!!」
「ゆゆっ!!たべものなの!!ゆっくちたべたいよ!!」
「ゆっくりたべてね!!めをさましたらあばれるかもしれないけど、まけちゃだめだよ!!」
お膳立てはそれで十分だった。
生まれたての赤ちゃん達は、空腹にとても弱い。
目の前の“ゆっくりに似たもの”が食べ物だと教えられれば、もう迷うことはない。
赤ちゃんゆっくりは、眠っている赤ちゃん達に飛び掛って大きく口を開いた。
生まれてはじめての“食事”である。
「ゆっくち!!ゆっくちたべりゅよ!!」
「ありしゅもたべりゅよ!!おなかすいたもん!!」
「いびゃっ!?なに!?だれなにょ!?」
「やめでね!!まりしゃはたべものじゃないよ!!」
まりさが生んだ赤ちゃん達に食いつかれ、目を覚ますれいむとまりさたち。
だが、反撃することはできなかった。一度でも身体の一部分を食いちぎられれば、パワーで相手を押しのけることはできない。
体格が殆ど変わらない赤ちゃんゆっくりにとって、先攻を取ることは普通のゆっくり以上に重要なのだ。
「やめっで…たべぼのじゃ……ない…」
「うそつかないでね!!おかーさんがいってたよ!!おまえたちはたべものなんだよ!!」
「たべものはまりしゃたちにゆっくちたべられてね!!」
「いだいいだいいだいいだい!!もっど!!もっどゆっぎじじだいのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」
「おがーじゃんだじゅげでええええぇぇええぇぇ!!!!」
「もっどぉおおおお…ゆっぐじいいいぃぃ……しだが……った…」
あっという間だった。
突然起こされた赤ちゃんれいむと赤ちゃんまりさは、まともに反撃することもかなわず……一匹残らず食い殺された。
空腹だった赤ちゃん達によって欠片残さず飲み込まれ、周囲には小さなリボンと帽子だけが残されている。
生まれてから一時間も経たずして、赤ちゃんれいむと赤ちゃんまりさはこの世を去った。
「ゆー!!おなかいっぱい!!」「ゆっきゅりできゆよ!!」
これだけ赤ちゃんを減らせば、れいむとまりさの夫婦にも気づかれないだろう。
赤ちゃん達が満腹感に浸っている隙に、まりさはこっそりと巣穴から抜け出した。
「ゆへへ!!これでゆっくりできるよ!!ひとりでゆっくりできるよ!!」
身軽になったまりさは、ゆっくりするために草原へと跳びはねていった。
母親に捨てられてしまったことを、巣の中の赤ちゃん達はまだ知らない……
作:避妊ありすの人
最終更新:2008年12月20日 02:22