その他 こんな俺に誰がしたってお前だこの野郎

「やあ僕は虐待お兄さん今日は森まで来てゆっくりを虐待しにきてるよおやおや第一ゆっくり発見あれはゆっくりれいむの一家み
たいだねうーん幸せそうにしてるなぁなんて素敵な一家なんだろう親れいむが一匹いて後は子どもだけどお父さんはお仕事かな
よーしもうちょっと観察してからじっくりと味わいつつ虐待をひゃあ我慢できねぇ!虐待だぁ!!」


そんなことをぶつぶつ言いながら虐待お兄さんとしてのマインドセットしつつ
僕はいつものようにストレス解消にゆっくりをいじめ始めた。
この独り言は虐待お兄さんとしてのロールをはっきりさせる意味で毎回必ずのように行っている

こんなことに手を染め始めたのは何故、いつからだったか
というと気付いたらいつの間にか、なんとなく、生理的に、気分でというわけでもなく
非常にはっきりしている。

父の会社が倒産して破産した上に、当の父が母と僕を残して失踪してからだ。

何かのアクシデントにより突然会社が立ち行かなくなったかというとそうでもなく
父は商才のある方ではなかったらしくて元々経営はガタガタだったらしい。
路頭に迷い父への怒りを僕と母に語る元社員の方々がしごく丁寧にそのことを教えてくれた。

そんなこんなで僕は瞬く間にグレた。
本当に瞬く間に荒れて路地裏でそれっぽい仲間とかとつるみながら喧嘩に明け暮れたりした。

で、当然のごとく警察のお世話になった。
その頃には僕も多少は熱も退いて冷静になっていた。

定年間近の警察官の親父さんに涙ながらに熱く語られるまでも無く
このままではどうにもならないということは流石にわかった。

かといってこのやり場の無い苛立ちが簡単に消えてしまうかというとそうでもなかった。
それから一応更正したものの、何かと苛立っては物や人に当たってしまい僕の社会復帰は滞った。

そんな時に出逢ったのがゆっくり虐待だった。
当初下働きをさせてもらっていた会社の定年間近の上司がそれを薦めて来た時は耳を疑ったが
実際に始めてみると見事にハマった。
熱中することが出来たせいなのか、僕の周りに当たる癖も段々ナリを潜めてその矛先はゆっくりへと向かった。
最初の頃は初心者向けの小さな集まりに参加していたが今ではもう土日に個人でレジャーとして楽しんでいる。

「ひゃっはー!やわらかくて潰し甲斐があるぜえええ!!」
「や゛べでねええええええええええええええええええ!!」
踏み潰されて体が著しく変形したれいむが涙ながらに叫んだ。
僕にとってはもはや興奮どころか慣れすぎて落ち着いてほっとする光景だ。

「おがあざあああああああん!!!」
「まっててね!いまおとうさんをよんでくるからね!!」
「おとうさんがくればこんなやつすぐやっつけてくれるからね!!」
「おとうさんはれみりゃよりずっとつよいんだからきっとたすけてくれるよ!!」
子ゆっくり達の言葉を聞いて僕はほくそえんだ。
わざわざ父ゆっくりを探してきてくれるとはありがたい。
これで探す手間が省けた。

「はっはっは!ゆっくり待っててやるからとっとと連れてきな!!」
そう言うと子ゆっくり達は僕を一睨みして蜘蛛の子を散らすように走っていった。
僕はれいむの上に腰かけて腕組みをしながら待つことにした。
「ゆ゛ぐう゛う゛れいむのだーりんがきたらおばえなんがかんたんにやっづげでぐれるんだからぁ…!!」
「そいつは楽しみ、俺がそいつを返り討ちにしたらお前がどんな顔をするのかがな」
俺、というのは僕が虐待お兄さんをロールする時に使う一人称だ。
僕はれいむの言葉を聴きながらニヤニヤとそのゆっくりを待った。

数分後、森の奥からガサゴソと何かの足音を聞いて僕はそちらを凝視した。
初めは例のゆっくりが来たのかと思ったがそれにしては何か違和感があった。

「やめないか君!」
その場所から明らかな人間の声を聞いて僕は舌打ちした。
飼いゆっくりらしき様子は一切ないことは一応確認してあったので別に咎められて何か憚る様なことなど無いが
面倒であることにはかわりない。

「てめえに何の権限があって俺の趣…」

一応最初は凄味を利かせておこうかと立ち上がって
僕は森の奥から出てきた髭モジャの男を見てぽかんと口を開けた。
その男はボロボロになった布切れを身にまとい、頭には真っ赤なリボンをつけていた。

「だーりん!!」
さっきまで僕の尻の下に居たれいむが叫んだ。
男の足元にはさっきの子ゆっくり達が居て不敵に笑っていた。


「君はそんなことをして恥ずかしくないのか!?」
男はこちらに手のひらをかざしながら叫んだ。
つばが飛んできて思わず身を捩って眉を顰めた。
とりあえずあんたの格好よりはなんぼか恥ずかしくは無いと自負しているということは言うべきか言うまいか。


「……あんた何やってるんですか?」
とりあえずそれだけ聞くのがやっとだった。
「ゆー!おとうさんがんばってね!」
「だーりんすてきだよ!」
下のほうからゆっくり達の歓声があがるがそれどころではなかった。
「とにかくそんな人として恥ずべき行為はやめなさい!
君のお父さんとお母さんがこんな姿を知ったらどう思うか…!」
そう言って男は僕の肩を掴んでまっすぐにこちらを見た。
ツンと鼻を刺激する臭いに思わず顔をそむけようとして、気付いてしまう。
それまでは、前髪が長すぎて顔が隠れていてよくわからなかったがこの距離なら間違いは無い。


「…父…さん…?」


「…え゛?」
「ゆゆ?」

頭をハンマーで思い切り殴られたような気分がした。


「あ、あ、あああんたはこんなところで何をやってるんだ!?」
「いや、これはその…」
今度は僕が詰め寄る番だった。
父のボロボロで土やら何やらで汚れきった襟首を掴んで呆れとも怒りともなんともつかない表情で捲くし立てる。
「あんたが失踪して母さんや僕がどれだけ苦労したと…!」
僕は完全に取り乱して口調も虐待お兄さんから素に戻っていた。
「と、父さんだって辛かったんだ!!」
狼狽しながらも父はしどろもどろに言い訳を口にした。
「それはあんたの責任だろ!?あんたの経営が…」
「い、いやその連帯保証人にさえならなければだな
父さんは騙されたんだ!!」
目を泳がせながら叫ぶ父に向かって僕はさらに首を締め上げながら叫び返した。
「それ以前に会社の経営めちゃくちゃだったってことは路頭に迷った元社員の人たちが懇切丁寧に教えてくれたよ!
資料と確かなソースと涙と罵詈雑言付きでな!!」
そして襟を掴んだままガクガクと首を揺する。
「いや、それはそのだな
色々と事情が…」
父は往生際悪く言い訳しようとした。
「もういいよそれは!それよりこんなところで何をしてるか聞いてるんだよ!!」
僕は情けなくて泣きそうになりながらまた叫んだ。


「その…あのだな、あれから父さんも路頭に迷って…それで…」
父は恐る恐るといった風情で、言った。
「この子と再婚を」
「さいこんあいてだよ!」
「「「そしてじまんのむすめだよ!」」」
さっきから放置されて蚊帳の外だったので話題に入れたことが嬉しかったのか
背を丸めて申し訳なさそうな父とは対照的に
れいむが胸、というか顎を張ってというかしゃくりあげて無駄に自慢げに言った。
子ゆっくり達もそれに続いた。

「はは、ははははは…」
僕はあきれ果てて、乾いた笑いがこぼれた。
そして力なく父の体の上をずるずると手を滑らせながら膝をついた。

「まあそう言うわけで父さんも木の実とったりしながらゆっくりとして強く生きてるから
お前もこんなくだらないことしてないで清く正しく行きなさいと父さんは言いた」
「じゃかあしいわ!!」
皆まで言わせずに僕は未だに顎をしゃくりあげていたれいむを右手で掴むと父の顔面にたたき付けた。
「ゆぶべげえええええええ!?」
ぼよん、と痛くなさそうな音をあげて跳ね返ると地面に落ちて痛々しい悲鳴をあげた。
「ぐ、ぐう…実の父に向かってお前なんてことを!」
「そういうことは自分の有様見てからほざけ!」
仰け反って顔を抑えながらうろたえる父に向かって睨みつける。

「なんなんだよなんなんだよなんなんだよ!?
大体なんだその似合っているとか似合ってないとかそういう次元じゃないリボンは!?」
僕は思い切り腕の筋を伸ばしつつ父の鼻先を指差した。
「社会から爪弾きにされてしまった父さんでもこれつけたらゆっくりとしてゆっくり達に受け入れてくれるかなと思って…」
「こんなおっさんどんな社会だろうと爪弾くわボケえええええええええええええええええええええ!!!!」
両手で頭を抱えて仰け反りながらもう情けなさに涙をボロボロこぼしつつ叫んだ。

「もういい!!」

そう言って僕は近くに居た子ゆっくりを掴み上げた。
「い、いだいいいいいいいい!?ゆっぐりでぎないがらはなぢでええええええ!!!」
怒りに震える指がギリギリとゆっくりを締め上げて指がめり込んでいく。
「れ、れ゛い゛む゛のがわ゛いいあがぢゃんがえぢでえええええええええ!!!」
僕の足元に涙と鼻汁とよだれを撒き散らしている必死の形相のれいむが体当たりをしてくる。
普段ならこんな表情を楽しむ余裕もあっただろうが今はそれどころではない。
「こいつらを全員潰して!あんたを引き摺ってでも連れ出して母さんや元社員の人たちに土下座させてやる!!」
涙を拭い僕は父に向かって宣言した。
「や、やめろ息子よ!その子達は…」
向かい合う父は何かを言おうとして、躊躇して言いよどむ。
そして一瞬目を伏せた後、意を決して父は言った。
「その子達はお前の兄弟だぞ!!!!」

僕は手の力を緩めてぽかんとして、父に尋ねた。
「…え、兄弟…義理?…連れ子?」
「いや、っていうかいわゆる腹違いの」
父はあっさりした調子で僕の問いに答えた。

足元のれいむが棒立ちする僕のズボンで顔を拭くと
まだ涙のたまって少し赤く充血した目で顎をしゃくりあげた無駄に自信満々のあの表情で言った。
「れいむとだーりんのあいのけっしょう!!」
手の中の子ゆっくりも顎をしゃくりあげて言う。
「おにいちゃん!いっしょにゆっくりしようね!」
「「ゆっくりしようね!!」」

「……」
僕はれいむの顔と、子ゆっくり達の顔を順に眺めていき
最後に父の顔を見据えた。
「……わかってくれたか息子よ」
父は何か感慨深そうに頷く。

僕の中で何かが音を立てて崩れ去った。
そして僕は渾身の力を込めて手を握り締めた。
ブヂュリと音を立てて手の中の子ゆっくりは弾けた。

「れ゛、れ゛い゛む゛と゛だーりんのあ゛い゛の゛げっじょうがあああああああああ!!??」
足元に居たため娘の体から弾けた餡子を思い切りその身に受けたれいむが
充血した目を見開いて小刻みに体を震わせながら絶叫した。
「き、貴様ぁああ!息子とは言えど許せ?!ぐべぇ!?」

『俺』は手に持っていた餡子を男の顔面に投げつけて目潰し代わりに使い
そのまま鼻面を殴りぬけた。
さっき子ゆっくりを潰した時みたいにぐちゃりと音がして鼻血と餡子が混ざった何かが地面にボタリボタリと落ちた。
「お前の言うとおり、お前はゆっくりだ」
俺は尻餅をついて鼻を押さえるその男の方にゆっくりと歩み寄って行った。
「ゆぶべぇ!?!?」
そのついでに、子ゆっくりを踏み潰した。
「も゛う゛や゛べでよおおおおおお!!
れ゛い゛む゛のあがぢゃんとお゛に゛いざんはどっぢもだーりんのあがぢゃんでぎょうだいなんでぢょおおおおおお!
なのにどぼぢでごんなごどずるのおおおおおおおおおおおおおおお!?」
れいむは怯えて男の足元にすがり付いている最後に残った子ゆっくりを守ろうと俺の前に立ちふさがった。
餡子まみれの必死の形相で泣きながらそう訴える。
「俺の親父は死んだ!会社が潰れて責任を感じてどこかに失踪して自殺した!!」
誰に対して言ったのか、俺は天を仰いでそう叫んだ。
そして目の前に立ちふさがる邪魔なれいむの口につま先をねじ込んでそのまま踏み潰して舌を踏みにじる。
「ゆべぎゃごあがあば!?」
歯が砕け下唇は千切れた。
グチャグチャになった舌で訳のわからない悲鳴を上げながられいむは白目を剥いて気絶した。
そして男を指差してこう言い放つ。
「確かにお前はゆっくりだ、俺の大嫌いなゆっくりだ」
男は口をあけてぽかんとしながらこちらを見つめていた。
「そして俺が…」
拳を握りしめ、目の前のゆっくりである男を見据える。

「俺が虐待お兄さんだあああああああああああああ!!!」

拳を振り上げて俺は飛び掛った。







「今日のゆっくり虐待も楽しかったなぁ…」
俺は少しボロボロになりながら森から出て空を見上げた。
「ほんと、今日のゆっくりは殴り甲斐があって…
ゆっくり虐待はやめられない…なぁ…」
何故か頬を涙が伝った。
腕でそれを拭う。
帰ったら、父の墓を作ることを提案しようと思った。
もうすぐ父の失踪から三年は経つ。
きっと帰ってくることは無い。
っていうか帰ってきても家の敷居をまたがせない。
母だってもう諦めていたしいい時期だろう。
そんなことを考えながら俺は家路についた。

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最終更新:2008年10月05日 16:33
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