ゆっくりれみりゃ系いじめ60 ブログの女王

『ブログの女王』

ゆっくりが、現代日本にいる設定です。

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「なぁ、お前"ゆっくり"好きだったよな?」
「え、まぁ、好きだけど……」

秋も本格化し、文化祭シーズンを迎えた大学の片隅。
特に準備も無く暇な僕は、ゼミ室で適当に時間をつぶしていた。

近くの本屋で適当に買ったマンガ(地球を砕くハンマーを巡って騎士達が戦う内容だった)を一読した頃、
ゼミ室に悪友がやって来て、ぶしつけに行った会話がそれだ。

「へへへ、すげぇーおもしれぇーブログ見つけたんだ♪」

友人はそう言うと、ゼミの備品のPCを立ち上げ、ブラウザソフトを開く。

「今時、ゆっくりを扱ってるブログなんて珍しくもないだろ?」
「ふーん、これを見てもそんな冷めたセリフを言えるかな!?」

そう言って、友人は液晶モニタを僕に向ける。

「……あっ」

モニタに映っている内容に、僕は思わず声をあげる。
そんな僕の反応を楽しげに観察する友人。

「ほら、もっとよく見てみろよ」

友人に言われ、僕はPCの前へ移動する。
PCモニタには、でかでかと、ゆっくりの顔のどアップの写真が載っていた。
満面の笑みを浮かべる下ぶくれ顔……それは俗に"ゆっくりれみりゃ"と呼ばれる種の顔だった。

「これは……」

お菓子とディフォルメされた恐竜の画像が、ベタベタと貼り付けられた、子供の落書き帳のような装丁。
大きな丸文字ゴシック体で、誤字脱字まじりの平仮名のみで書かれた、日記らしき文章。

確かに、それはブログと言われればそうも見える。
そのサイトには、『れみりゃの☆おぜうさまぶろぐ』というタイトルが銘打たれていた。

「よく見ておどろけ! ここは、ゆっくりを扱うブログじゃない……"ゆっくりが書いてる"ブログなんだよ!」


   *   *   *


なながつはちにち


きょうはー、おにーさんとゆーえんちにいったどぉー♪

にんげんがたくさんいたけどぉ☆
みんなぷりてぃなれみりゃに、めろめろー☆きゅんきゅん☆だったどぉー♪

それからー、おにぃーさんとそふとくりーむたべたどぉ☆
とぉーっても、あまあま☆でりしゃすだったどぉー♪

れみりゃはおつよいからぁ☆ぜっきょーけぇーもらくしょーだったどぉ♪
おばけやしきだってへいきへっちゃらなんだどぉー♪

きょうは、ちょっぴりおつかれだどぉー
ふぁんのみんなぁー☆ばいばいだどぉー♪


≪ブログ掲載画像≫
  • 風船をもらって嬉しそうなれみりゃ
  • ソフトクリームにかぶりついて、口のまわりをベタベタにしているれみりゃ
  • おばけやしきの前で泣きじゃくって、座り込んでいるれみりゃ


   *   *   *


はちがつじゅうーごにち


きょうはー、おにーさんといっしょに、うみにきてるどぉ♪

れみりゃは、おやさしくてえれがんとなおぜうさまだからー☆
おでかけしてても、ちゃーんとふぁんのみんなのことかんがえてるどぉ♪
ありがたく、ぶろぐをよむがいいどぉー♪

うーとね、うーとねぇ☆れみりゃは、やさしぃーからぁ☆
ぷらいべぇーとびぃーちに、にんげんどもをいれてやっていっしょにおよいだどぉ♪

れみりゃの、ないす☆ばでぇーに、みんなくぎづけだったどぉ♪
うっふーん☆おとこはみんなけだものだどぉー♪

それじゃ、ふぁんのみんなぁー☆
れみりゃは、おにーさんとおふろにはいってくるどぉ♪

れみりゃのおはだか☆そうぞうしてぇ、はなじだしちゃだめだめーなんだどぉ♪
うーうー☆えっちぃーなふぁんとは、ばいばいだどぉー♪


≪ブログ掲載画像≫
  • 麦わら帽子をかぶって、海を見て興奮するれみりゃ
  • ドロワーズ1枚で海へ入り、波にびっくりするれみりゃ
  • カニに下ぶくれた頬を挟まれて、号泣するれみりゃ


   *   *   *


きゅうがつにじゅーににち


きょうはー、おにーさんのおたんじょうびだっだんだどぉ♪
おっきなけーきと☆ぷっでぃーんで、あまあまいっぱいしあわせだどぉー☆

おにーさん、おめでとーだどぉ☆
れみりゃ、これからもおにーさんとゆっくりするどぉ☆

うーうーうぁうぁ♪

……うー?
ふぁんのみんなの、しっとのほのおが、あつあつ☆だどぉー!

やけどしないうちに、たいさんするどぉー♪
ふぁんのみんな☆ばいばいだどぉー♪


≪ブログ掲載画像≫
  • ケーキを口いっぱいに、ほおばるれみりゃ
  • クラッカーにビックリして、ぎゃーと目を見開いているれみりゃ
  • ろうそくの火をフーフーしているれみりゃ


   *   *   *


じゅうがつにじゅーきゅうにち


うー☆
れみりゃ、きょうおもいきってこくはくしちゃったどぉ♪

だいしゅきな、おにーさんにー、
おむこさんにしてあげるー☆っていってあげたどぉ♪

きゃーきゃー☆はじゅかしぃーどぉ♪
おとめのてーそー☆のぴんちだどぉー♪

うーうー☆
そしたら、おにーさんったらぁー☆
れみりゃに、とぉーってもえれがんとなおべべきせてくれたんだどぉ♪

うっうー☆れみりゃこれだいじだいじにするどぉー♪

ふぁんのみんなぁー☆
れみりゃはふつうのおぜうさまにもどるけどぉ☆
これからもよろしくしてあげるから、あんしんするどぉー♪

それじゃ、ばいばいだどぉー♪


≪ブログ掲載画像≫
  • 子供用のオモチャのウェディングドレスを着たれみりゃ
  • カメラに向かって、ちゅー☆と口づけをしようとしてるれみりゃ
  • 小さな恐竜のぬいぐるみを、赤ん坊のように抱っこするれみりゃ


   *   *   *


「……なっ、面白いだろ?」

ブログを読み進める僕に対して、友人はニヤついてそう言った。
僕は何も答えず、ブログの最新の記事に目を通す。

そこには、恐竜のぬいぐるみを着こんだようなれみりゃの写真が映っていた。
どうやら、れみりゃはこの日"れみりゃザウルス"に進化したらしい。

れみりゃ種にとって、"れみりゃザウルス"は憧れの姿だという。
このれみりゃも、例外ではないらしく、つたない文面からも喜びと興奮が伝わってくる。

日記の至るところに、
「ぎゃおー♪ぎゃおー♪」「うっうーうぁうぁー♪」
などと、れみりゃ種特有の感情表現が散見していた。

そして、このれみりゃは、この自慢の"ザウルス"姿と、
大好きだという"おにーさん"とで築く「ゆっくり☆かぞくせいかつ」とやらを夢想していた。

僕はそこまで読んで、溜息をつく。

「……この最新の日記、興奮してるのもあるんだろうけど、ことさら文章も誤字脱字もひどいな」
「ああ、でもしょーがねぇーんじゃね。だって、その写真見てみろよ」

友人は、モニタに映るれみりゃの画像を指差した。
れみりゃが「ぎゃおー♪」と両手を上げて大の字でポーズを取っている写真だ。

「この、ぬいぐるみみたいな手、これじゃキーボードなんて打てないだろ」
「……あー、そうだな」

僕は、頷いてもう一度ため息をついた。

「ふふふっ、言っておくがまだ終わりじゃないんだぜ?」
「え?」
「実は、本命のサイトはこっちなんだ♪」

友人は、PCを操作し、とあるサイトのトップページを開く。
すると、ポップアップが開き、パスワードを入力するよう求めてきた。

「荒れないように会員制のサイトにしたらしい。あと、未成年者をはじくって意味もある」
「…………」

パスが認証され、開かれたサイト。
そこは、確かに未成年者には……いや大多数の人間にはおすすめ出来ない内容が記載されていた。

無言の僕を見て、友人は解説役を買って出る。

ゆっくりの虐待サイトってやつさ。ま、この手のも最近じゃ増えてきたけどな。……おもしろいのは、この先」

カチカチという無機質なクリック音がゼミ室に響く。
すると、そこには幸せそうに笑う、れみりゃの画像が表示された。

「これ、さっきのブログのれみりゃだぜ」
「……ブログのメイキング?」
「そう、ご名答だ! このサイトの管理人が、どうやられみりゃの言う"おにーさん"らしい」

そこには、ゆっくりれみりゃに如何にブログを書かせているかのメイキングや、
様々な苦労話や裏事情が書かれていた。

人差し指でしかキーボードを押せないれみりゃに、「ひらがな」を入力させるまでの教育の苦労。
れみりゃが得意気に日記で披露していたイベントの数々で、実際はさんざんれみりゃに手を焼かされたこと。
ブログの題材を作るために、れみりゃをだまして誕生パーティをしたり、結婚式の真似事をしたりした、膨大な費用や時間。

そして、れみりゃには、れみりゃのファンがブログ読んでいると勘違いさせているが、
実際には、変態的性向の持ち主や、ゆっくりの虐待マニア達の御用達サイトであること。

さらに、残虐だったり成人向けだったりするコラ画像が、他ならぬ"おにーさん"自身の手でバラまかれていること。

また、れみりゃがザウルス化してしまったことで、キーボードが打てずブログの続行が困難なこと等。
それら事実が、そのサイトには淡々と綴られていた。

「…………」

しばらく、僕も友人も何も言わなかった。
しかし、だからといって気まずい沈黙を続ける理由も無い。

「いやー、ゆっくりの道ってのも奥がふかいねぇー」
「ああ、いろいろ大変なんだろうなー」

僕と友人は、話題をそらして他愛もないことを話しはじめる。
やがて、小腹も減ったし何か食べに行こうということになった。

「なんにするよ?」
「とりあえず饅頭と肉まん以外な」

僕と友人は、どちらからともなく苦笑する。
念のためブラウザの履歴を消してから、僕らはゼミ室を後にするのだった。


   *   *   *


気付けば、空はすっかり暗くなっていた。
時計を見ると、もう9時近い。

友人と別れた僕は、自転車にまたがって自分のアパートにまで戻っていた。
1階の一番奥の部屋、そこが僕の部屋だ。

僕はカギを開けようと、財布を取り出す。
財布はジャラジャラと小銭で膨らんでいた。

入っている紙は飲み屋の割引券と、スーパーのレシートくらいだ。

「やっぱ、ここらが潮時かなぁー」

僕は、寂しげな財布をしまい、ドアを開けて自分の部屋に入る。

金も無いし、今日も100均のパスタだなーと考えていた僕を出迎えたのは、
ずんぐりむっくりとした四肢と、下ぶくれの笑顔を輝かせた恐竜状の不思議生物……すなわち"れみりゃザウルスだった"

「うっふぅ~ん☆おにーさんおかえりなさいだどぉー♪」

れみりゃは、僕を確認するとどったどった寄ってきて、僕の足に抱きついた。

「ただいま、れみりゃ。良い子にしてたか?」
「あったりまえだどぉー☆きょうもれみりゃは、いいこいいこーでゆっくりしてたどぉー♪」

にぱぁー☆と僕を見上げるれみりゃに対し、僕は笑顔を作って応対する。

「ほらほら、はなれてくれよ。これじゃ歩けないだろ?」
「う~~~♪ れみりゃうっかりさんだどぉ~♪」

僕は、キッチンを通り抜け、奥の部屋に鞄を置く。
そこには1台のパソコンと、様々な撮影機材や衣装が散らばっていた。

「やれやれ、今日は少し肝を冷やした……」

ふぅーと、肩で息を吐く僕。

そう、あのれみりゃのブログを作っていた人物。
それは、他ならぬ「僕」自身であった。

「裏の趣味がバレちゃ、さすがに健全なキャンパスライフに支障をきたすだろうし……やっぱり区切りはつけるべきか」

僕は、考えをまとめて、一人つぶやく。
一方、れみりゃは退屈にしびれを切らして、ぬぅーと僕の前に割り込むように歩いてきた。

「ねぇーねぇーおにーさんみてみてぇー♪ れみりゃのあきのしんさく☆のうさつ☆だうんすぅー♪」

そう言って、大きな尻と尻尾を左右に揺らし出す、れみりゃ。
僕は、デジカメを手に持って、それを静止する。

「まてまて! まずは今日の1枚からだ」
「うー! ゆっくりわかったどぉー♪」

れみりゃは、ブログ用の写真を撮るのだと考え、どんなポーズをとろうかと思案する。
そして、考えた末に、もっとも自信のある決めポーズを実行した。

「ぎゃおー☆たーべちゃうぞぉー♪」

バァーン!
体を大きく広げ、最大限に下ぶくれスマイルを膨らませる、れみりゃ。
僕は、満足気にうなづいてから、デジカメのシャッターを押す。

「うん、いい感じだ……」
「うっうー♪ れみりゃにもみせてぇー♪」

デジカメの写真をのぞきこむ、れみりゃ。
僕は、PCを立ち上げ、デジカメのデータをハードディスクに移す。

「うー☆」

れみりゃは、いつものようにブログを書こうと、僕の膝の上に座ろうとした。
が、僕はれみりゃの体を抱えて、自分の横に座らせる。

「う?」

キョトンとする、れみりゃ。

「みぶんちがいなふぁんたちが、こいこがれてまってるどぉー♪ れみりゃ、ぶろぐこうしんしなくていいどぉ~?」
「……ああ、しばらくゆっくりお休みしていてくれ」
「うーわかったどぉ☆れみりゃゆっくりするどぉー♪」

意味がわかっているのかどうかは曖昧だったが、
僕は、れみりゃに構わず、PCでの作業を続ける。

僕が開いたのは、れみりゃのブログでも、ゆっくりを虐待する裏サイトでもない、
極めて一般的でメジャーなオークションサイトだった。

僕は、手際よく手続きを進め、いま撮影したばかりの写真をアップする。

「よし、これで出品完了と」

画面には、"ペット用ゆっくり売ります"の文章の下、れみりゃの写真が貼り付けられていた。
希少種たる"れみりゃザウルス"なら、低く見積もっても10万円は下らないのが、今のネットオークションの相場だ。

落札の〆切は3日後に設定した。

「さて、夕飯にするか」
「う~☆でぃなーだどぉー♪」

僕は、夕飯の準備を始めるべく、立ち上がる。
れみりゃとの最後の3日間、せいぜい構ってやることにしよう。

「れみりゃ、今日は夕食にプリン食べてもいいぞ」
「うぁーーい☆やったどぉー♪」

喜びはしゃぐ、れみりゃ。
その姿を見ていると、売り払ってしまうのが少し惜しくなる。

だが、地方から東京に出てきた貧乏学生が、ゆっくりを飼うのはやはり難しい。

上京して半年後、無理してバイトで金を貯めて「ゆっくりショップ」で"べびりゃ"を買った。
それから早2年、気付けば東京で何も為さぬまま、そろそろ進路も決めなければならない時期になっていた。

(うん、やっぱりこのままじゃダメだよな!)

僕は、いつかまたれみりゃを飼うためにも、しっかり大学を卒業して、ちゃんと就職することを決意するのだった。

(この決意が出来ただけでも、元はとれた……はずだ……)

僕は、苦笑してパスタを茹で始める。
背後からは、無邪気なれみりゃの声が聞こえてきた。

「ぎゃお~♪ れみりゃは、せかいいちしあわせなゆっくりだどぉー♪」





おしまい。




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10kb以下の短い話を書く!
それが目標だったはずなのに、やはり10kbを越えてしまいましたorz
変化球気味かもしれませんが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

by ティガれみりゃの人



※以下「ティガれみりゃ5」について

ありがたいことに、
何人かの方から「ティガ5はどうした!」といった旨の声をいただきました。

結論から言いますと、「ティガ5」は書きます。
というか、当初のプロット通りに既にほぼ書き終わっています。

……ただ、ひとつの区切りとしては、個人的に満足なクオリティになっておらず、
ひとまず細々推敲しつつ寝かせている状態です。

とはいえ、いつまでも待って天啓がまいおりるとも限りません。
ですので、オリキャラ姉妹の季節が終わって、太ましい方の出番になる頃には、
ある程度見切りをつけてでもアップするつもりです。

もちろん、それより前に納得いく形になれば、その時点でアップします。

申し訳ございませんが、ご了承いただければと存じます。
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最終更新:2022年01月31日 02:09
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