長生きなドス
「ここのあたりにあるむれにすごくながいきなどすのむれがあるんだよ!!!」
「すごくながいきなんだからきっと
ゆっくりさせてくれるね!!!」
見るからにゆっくりできそうに無い、岩のごつごつした山。
ここにとても長生きなドスの噂を聞きつけた森のゆっくりがやってきた。
れいむ種とまりさ種である。
この2匹、近いうちにつがいとなろうとしていたが、どうせならとてもゆっくりできるところでつがいになろうと考えていたようである。
その結果、風の噂で聞いた長生きなドスの所に行こうと決めたのだった。
「ゆゆ、あそこにぱちゅりーがいるよ!!!」
「きっとむれのぱちゅりーだよ、あいさつしようよ!!!」
これからきっとたっぷりとゆっくりできるんだ、等と考えている2匹。
早速ぱちゅりーに声を掛ける事にした。
「「ゆっくりしていってね!!!」」
「むきゅ!?」
驚いた顔をしたぱちゅりー。
きっとびっくりさせてしまったのだろう―などと思った考えをしていた矢先。
「あなたたち、かわってるわね、ながくいきたくないの?」
ひどくぶっきらぼうな答えが返ってきた。
勿論この2匹には理解できない。
「ゆ?れいむたちはながいきしてるどすのところにきたんだよ!!!」
「ながいきならきっとまりさたちをきっとゆっくりさせてくれるにちがいないよ!!!」
もの凄く暢気な返答だ。
一方ぱちゅりーは深い溜息を吐いている。
「まぁ、いいわ。どすならここをまっすぐいったところにいるわ、ながいきできるようがんばることね」
「だいじょうぶ、れいむたちはここでながくゆっくりとすごすんだよ!!!」
「これかられいむとまりさはすえながくくらすんだぜ!!!」
そう言いながらピョンピョンと元気よく跳ねてドスの所へ向かう2匹。
それを一瞥したぱちゅりーは思い出したようにその場を後にした。
「ゆっ!あなたがここのむれのどすなの?」
れいむが考えていたよりもそこまで大きくないドスがそこには居た。
次々と色々なゆっくりがドスの元に来ては指示を受けて外に出て行った、間違いないだろう。
げんきよくどすのところにきて、げんきよくもどっていくなんて、みんなはどすにすかれてるんだろうな。
この2匹はドスの周りを見てそう考えていた。
「確かに私はここのドスだよ。君達は?」
他のゆっくりとは比べ物にならない位はっきりと、しかし周りがうるさくない声でドスは語りかける。
「まりさたちはもりからきたんだよ!どすがながいきなどす?」
「確かに私は長く生きてきたが・・・」
「ならここでまちがいないね!どす!れいむたちをここのむれにくわえてね!!!」
「構わないが…本当にいいのかい?」
念を押すようにもう一度ドスは聞き返す。
「「もちろんだよ!!!ながいきなどすのむれにはいるよ!!!」」
「そこまで言うなら仕方が無い・・・君達をこの群に迎えよう」
2匹は大いに喜んだ。
「「これからいっしょにゆっくりしようね!!!」」
喜びと親愛を込めた言葉を2匹は口にした。
その瞬間、あれほど賑やかだったドスの洞窟がしん、と静まり返る。
「・・・ゆっく・・・り・・・・・・す・・・・・・・・・る?」
不意に何処からか聞こえた誰かのゆっくりの声。
「そうだよ!!!ながいきしたどすだからみんなをゆっくりさせるんだよ!!!」
「れいむたちはこれからここでゆっくりとながくくらすんだよ!!!」
またもや元気に話す2匹。
しかし返ってくる言葉は無い。
変わりに周りからの視線が2匹に集中する。
2匹はこの視線も自分達が注目を浴びていると信じて疑わない。
ここでドスが口を開く。
「ゆっくりする?馬鹿なの?死ぬの?」
2匹は唖然とした。
「な、なにいってるの?どすはむれをゆっくりさせるんだよ」
「そ、そうだよ?どすがいればまりさたちはゆっくりできるんだよね?」
静かに首(体?)を横に振るドス。
「ここでは殆どゆっくりしない代わりに長く生きることが出来る場所だよ」
「うそだ!!!どすはふつうそんなこといわないよ!!!」
「そうだよ!れいむのいうとおり、ながいきなどすはみんなをゆっくりさせるんだ!!!」
それでもドスは静かにそれを否定する。
「いいか、れいむにまりさ。私達は沢山ゆっくりしてすぐ死ぬか殆どゆっくりしない代わりに長生きするしかないんだ」
「そんなのうそっぱちだよ!!!」
「そうだよ!どすはうそつきだね!!!」
それでも2匹はめげない。
自分達がゆっくりしたい事をこれでもかと言う位どすにぶつけた。
「私は沢山のゆっくりを見てきたよ。でもゆっくりした結果は皆ゆっくり出来なかったよ」
全てを2匹から聞いた上でどすは口を開く。
周囲のゆっくりはもう2匹には目もくれず行動していた。
「二人に私が見たゆっくりしてしまったゆっくりの行き着く先を教えてあげる事にするね。
野原にいたれいむの家族ははゆっくりしていた所為で大きな犬さん達にに食べられちゃったんだよ。
またあるときはお家にいたちぇんはゆっくりしていた所為でお外にご飯が無くなっちゃったんだよ。
それだけじゃないよ。あるありすは夜にゆっくりしていた所為でれみりゃやふらんに食べられたよ。
ゆっくり川で遊んでいたまりさの家族はゆっくりしていた所為で滝つぼの中に落ちちゃったんだよ。
人間のゆっくりぷれいすに入ったれいむの家族はゆっくりしていた所為で皆殺されちゃったんだよ。
とても綺麗なお花畑で遊んで花を沢山食べてゆっくりした群はそこのお姉さんに燃やされたんだよ。
まだまだあるよ。人間さんのお野菜を勝手に食べてゆっくりした群はその家の人に潰されたんだよ。
ゆっくりすっきりしたつがいは子供を育てきれなくなって・・・」
「もうやべでぇぇぇぇぇ!!!」
「ぎぎだぐないぃぃぃぃぃぃ!!!」
ドスの口から語られる数々のゆっくり出来ない事についに値を上げる2匹。
そう、このドスは多くのゆっくり出来ない事に遭遇してきた。
それでも自分がそれでも助かったのは自分自身がゆっくりしなかったからだと言う事に気付いたのだ。
「ゆっくりせずに狩りをすれば沢山ご飯が集まるよ。
ゆっくりせずに早く寝て早く起きれば沢山狩りする時間が増えてご飯がもっと集まるよ。
ゆっくりせずにかるくすっきりすれば子供を沢山増やしてご飯がなくなることも無いよ。
ゆっくりせずに注意すればありすやれみりゃやふらんにだって襲われたりしないんだよ。
ゆっくりせずに・・・」
一通りゆっくりした業を語ったドスは逆にゆっくりしないで得られる益を語り始める。
「ゆがぁぁぁぁぁ!!!もういい!れいむおうちかえる!!!」
「ゆっくりできないどすとはいっしょにいられないよ!!!」
このままではゆっくりできなくなる、そう考えた2匹はあっさりと群からの決別宣言をする。
「・・・それは残念だ。長生きしたくなったらまた来なさい」
「「べつにどすのちからなんてかりなくてもまりさ(れいむ)はたくさんゆっくりしてたくさんながいきするよ!!!」」
2匹の哀れなゆっくりが洞窟から出て行くのを一瞥したドスは、滞っていた指示を群のゆっくりにてきぱきとするのであった。
「あんなにゆっくりできないなんて、ここのどすやみんなはばかなんだね!!!」
「こんなばしょからはとっととでていこうね!!!ふたりだけのすいーとほーむをさがそうね!!!」
そうして2匹はこの群を後にした。
その後、近くの森で丁度いい穴を見つけ、今まで我慢していた分すっきりした。
こうして2匹は沢山の家族に囲まれて幸せの時を過ごした。
冬。
完全に外には食べ物がなくなり、長生きできる村ではそれぞれの家に沢山食料が蓄えられていた。
「むきゅ、ことしもゆっくりふゆがこせるわね、ありす」
「ゆっくりしないでがんばってはたらいたかいがあったわね、ぱちぇ」
最初にあの2匹と出会ったぱちゅりーはつがいのありすと2匹の子供と共に穏やかな冬を過ごしていた。
「そういえば、あのれいむとまりさはふゆをちゃんとこえられるのかしら」
「どすのことばがちゃんととどいていればぶじでしょうけれどね」
今までゆっくりせずに頑張った結果をゆっくりと満喫するのであった。
一方。
「まりさ・・・もうたべものがないよ・・・」
あの2匹のつがいは沢山のお腹を空かせた赤ゆっくり達を目の前に困り果てていた。
「おそとはさむいしたべものもないよ・・・」
「でもあかちゃんはみんなおなかをすかせてるよ・・・」
万事休す。
こうなるとこの一家に待っているのは無慈悲な死だけである。
「「「「「「「「「「おかーしゃーん、おなかちゅいたよ!!!」」」」」」」」」」
「「ゆっくり・・・していったけっかが・・・これだよ・・・・・・」」
頑張ったものにはそれ相応の結果が。
ゆっくりしていったものにはそれ相応の末路がある。
それは、ゆっくりの名を冠したものに対しても平等に与えられるのだ。
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あとがき
長くゆっくりせずに充実したゆっくりを過ごすか、それとも目先のゆっくりを取って死ぬか、
どちらにしてもゆっくり達は名前に反してゆっくりできないと思います。
でもドスは嘘は言ってません。
全くゆっくりできないとは一言も言ってませんから。
今まで書いたもの
博麗神社にて。
炎のゆっくり
ゆっくりを育てたら。
ありす育ての名まりさ
最終更新:2008年11月08日 12:36