人間側の
ゆっくりが「」の鍵カッコ、ドゲス側のゆっくりが『』の鍵カッコになっています。
<注意!!>
原作キャラ登場、しかも性格がメチャクチャかもです。
外ではきめぇ丸とれみりゃによるゲス集団への一方的な虐殺が続いている。
一方、こちらはゲスゆっくりの集団からかなり離れた位置にある茂み。
柵の隅に追い詰められたゲスありす。大きさは成体ありすの倍以上。もう少し大きくなれば、クイーンと呼ばれるであろう。
この群れのゲスありすを統率し、「すっきり」しまくることで奴隷を次々に増やした元凶である。
『ひい゙い゙い゙い゙い゙っ!!』
このありすは怯えていた。目の前にいる一人の女性に。
『おっ、おねえさん!とかいはのありすをころさないでよね!!』
「…………」
女性は答えの変わりに蔑みをこめた瞳でありすを見つめる。
『ありすをたすけてくれたら、ゆっくりさせていってあげるわよ!!』
助かりたい一心で答えない女性を懐柔しようとするありす。
「……それが貴方の最後の台詞でいいのね」
女性は絹のように柔らかで美しい指先をありすの前に掲げる。
『ま、まってえ゙え゙!!お゙ね゙え゙ざん゙!!!!』
「…………」
女性はもう少し言いたいことがあるのなら、と手を下ろす。
『わ、わだじどおなじかおをしたあいてをころして、なにもかんじないのおお!?』
「感じないわ」
『どぼじでえ゙え゙え゙え゙え゙!??ごごろ゙がい゙だぐな゙い゙の゙お゙お゙お゙!?』
「痛くないわ」
『どぼじでえ゙え゙え゙え゙え゙!!!』
「貴方達が好き放題、他のゆっくりを襲って子供を作らせるから。私まで変な目で見られるわ」
『ゆ゙ゔゔゔゔ!!!』
「楽しいお喋りも終わり。お逝きなさい」
「シャンハーイ」「ホウラーイ」
女性の傍らにいる人形が恐ろしいスピードでありすの周囲をぐるぐると回転し出した。
『ゆ゙ぎゅ゙ゔゔゔ!?』
気がつくと、ありすの体は細い、しかし屈強な糸で雁字搦めに締め上げられていた。
「人形遣いの糸。下手に動くとあっという間に細切れになるわ」
食い込む糸の激痛で身動きが取れないありすに、剣を持った人形が音も無く近づいてくる。
『やめてね!!や゙め゙でね゙え゙え゙!!!』
人形は無表情のまま、ありすの片目に剣を突き刺した。
『ぐぎゃ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!』
その痛みにありすが耐えられるはずは無く、飛び上がろうとして……一瞬で細切れになった。
クイーンありすにあと少しまで上り詰めた数少ないありす種にしては、あまりにあっけない幕切れだった。
「ご苦労様。ゆっくり休みなさい」
「シャンハーイ」「ホウラーイ」
女性は数秒前までありすだった、バラバラの残骸には目もくれず、さっさと背を向けて歩き出す。
「ゆっくりまりさでも一匹捕まえてから…帰ろうかしら」
所変わって、こちらはドゲスまりさが逃げ込んだ一つの民家。家の規模は大きい方だ。
『誰かいるんだぜっ!?』
混乱してしまい、口調まで変わったドゲスまりさ。
このドゲスまりさも先ほどのふらん同様、外敵の気配を感じていた。
『こそこそしてないで出てくるんだぜっ!!』
「そうか。ならば出てきてやろう」
まるでその台詞を待っていたかの様に、ドゲスの前に姿を現す一人の女性。
青い衣服を身に纏い、銀髪にブルーのメッシュがかかったロングヘアーを持つ美しい女性だ。
『ゆっ!!お姉さん、今ならまだ許してあげるよ!!さっさと諦めて柵を壊して出て行ってね!!』
ドゲスまりさはここでも自慢のふてぶてしさを披露する。
「まさにドゲス……か。体も大きいが態度も大きいな」
『まりさの言うことが判らないの?馬鹿だね、死ねばいいんだね!』
「この村は、子供達に新鮮で栄養の高い野菜を安く提供してくれた数少ない村の一つだ」
『最後の通告だよ。今なら許してあげるから、さっさと食べ物をよこして死んでね!』
「残念だな。お前が許しても私に許す気が毛頭無いんだ」
一瞬で交渉は決裂した。
『……そう。なら仕方ないね』
ドゲスまりさは口を大きく開け、間髪をいれずドススパークを撃ち放った。
既に臨戦態勢、チャージは完了していたのだ。渾身の、そして最後のドススパークを目の前の女性に撃つ。
(お姉さんは動けない。この勝負、まりさの勝ちだね!)
勝利を確信して疑わないドゲスまりさ。
目が眩むほどの閃光の後、女性が立っていた場所はもくもくと煙を上げていた。
『ゆっへっへ。跡形も無いんだぜ。やっぱりまりさに勝てるやつなんていないんだぜ!』
「世の中、上には上がいるものだ」
『ゆ゙!?』
目を見開くドゲスまりさの眼前、立ち込める煙の向こうから、涼しい顔で女性がこちらを見ていた。
『ど、どうして効かないんだぜ!?まりささまの最強の必殺技だぜ!?』
「これが最強の必殺技…か」
女性は苦笑する。
「お前のオリジナルは、これとは比べ物にならない威力のマスタースパークを笑顔で撃つぞ」
『ゆ゙ゔゔ!?』
弾幕勝負に慣れていた女性にとって、蚊に刺された程でもなかったらしい。
「これは一見、何の変哲も無い角だ。この角は私の頭に生えていたものなんだ」
女性は豊満な胸元から一つの角を取り出した。奥に入っていたようで、少し前屈みになって角を取り出す。
胸元を強調するかのように空けられた衣服が若干ずれたが、女性はそれを直そうともしない。
「新しい角に生え変わった際、何となく取っておいたものだが……それが役に立つとはな」
グサッ
『ゆ゙びぇ゙え゙え゙え゙え゙!!!!』
その角をドゲスの頭部に刺す。
「無駄に命を弄ばないよう、人間の子供達には教えているのだが……お前達は救いようが無い」
『ゆ゙……げ……げぐっ……』
刺さった角を奥深くに潜り込ませる。どうやら中枢餡子にたどり着いたようだ。
「いたぶって殺す趣味は私には無いからな。さようなら、だ」
『……………………』
既にドゲスまりさは答えなかった。
こうして3匹いるドゲスまりさの1匹はあっけなく討ち取られた。
『ゆ……』
2匹目のドゲスまりさが逃げ込んだこちらの民家。
やはり、やはり、気配はするが姿が見えない。
『コソコソ隠れるなんて卑怯者だね!』
返事は無い。
『ゆっへっへ。出てこないならこの家をメチャクチャに壊すよ!それでもいいの?』
言葉巧みに敵を挑発する。これは逆に、姿が見えない恐怖を挑発で打ち消そうとしている行為だった。
「一つ、人の生き血を啜り」
『ゆ゙!?』
「二つ、不埒な悪行三昧」
『ゆ゙ゔ!?』
「三つ、醜い浮世の鬼を……」
そこで止めて、一人の女性がドゲスまりさの前に姿を現した。
外で大活躍しているれみりゃの責任者であり、完全にして瀟洒なるメイド。
「前に大図書館で読んだことがあったわ」
『ゆ!!お姉さんはさっきれみりゃを使って仲間を皆殺しにしようとしたお姉さんだね!!』
「私に与えられた役とは作品が違うけど、今の貴方にぴったりの台詞ね」
『まりさ達のゆっくりプレイスを荒らす奴は許さないよ!!』
「ああ、それと…この家は私のものじゃないから。好きに荒らそうが貴方の勝手よ」
女性とドゲスまりさ、互いに話を聞こうとしない。聞く必要は無い。これから死ぬ相手に会話など要らないから。
『まりさをゆっくりさせないばばあはさっさと死ね!!』
こちらのドゲスも先ほどのドゲス同様、チャージしていたドススパークを全力で撃ち放った。
若干距離はあるが、この女性は食らって死ぬ。それ以外はありえないし、認めない。
女性はどこからとも無くナイフを取り出すと、残像がギリギリ見えるくらいに速く前方の空気を切り裂く。
その風圧でドススパークは女性に直撃することも無く、家屋を破壊することも無く、かき消された。
『……!?』
もはや言葉すら出ない。最大最強のドススパークが当たりもせず、かき消されるとは。
口を開けたまま、ドゲスまりさは目の前で起こった出来事を把握できずにいた。
「この村から取れるお野菜は、紅魔館だけでなく」
女性は目を閉じる。
「近隣の村や町でも評判のお野菜でしたわ」
一瞬、何かが歪んだような感触をドゲスまりさは感じた。
「村人とゆっくりが共同で畑を耕し、精魂込めて作り上げた数多くのお野菜だもの」
女性は静かに目を開く。先ほどまで蒼かった女性の瞳は、真紅に染まっている。
まるで彼女が仕える主を彷彿とさせる様な、無機質で冷たい眼差し。
「お野菜が苦手なお嬢様も、妹様も。この村の物だけは美味しいといって召し上がってくださいました」
ドゲスまりさの視界が非常に悪くなる。何か遮蔽物でもあるかのように。
その正体は数え切れないほどの大量のナイフ。
その切っ先は全て等しくドゲスまりさへと向いていた。
「ここのお野菜が食べられない、と…お嬢様はとても残念がっておられました」
やけに、ゆっくりゆっくりとナイフが自分に向かってくる。
「犯人を抹殺してきなさい。と……お嬢様のご命令です」
このスピードなら、横に逃げれば避けられる。
ニタリと卑屈な笑みを浮かべたドゲスまりさだが、何かを感じて天井を見上げた。
そして、その卑屈な笑みが一瞬で消えた。
「妹様からも、壊しちゃって構わない、と」
上方からも、無数のナイフが自分めがけて静かに向かっていた。後ろも、左右からも。
悲鳴を上げることも許されなかった。
右目に、左目に、眉間に、口に、頬に、脳天に、額に、後頭部に……数百のナイフが流星雨となって降り注ぐ。
数秒でドゲスまりさは物言わぬ巨大なハリネズミと化した。
女性はその巨大なハリネズミに背を向け、縁側から庭に出ると、垣根を飛び越えて……慌てて戻ってきた。
「…土足で上がりこんだのを忘れてたわ」
最後に残ったドゲスまりさ一匹。
そして、それと対峙する一人の少女。
銀髪ショートボブに、片側に結ばれた黒いリボン。エメラルドグリーンの衣服を身に着けている。
数秒前、他のトゲスまりさと一方的な勝負を演じた女性達と同じように、出て来いと言われて出てきた。
その手は腰の刀にかかっている。いつでも振りぬくことが出来る。
少女は、この村に来る前に主から
「今回は配役的に貴方がトリを務めるのよ。失敗は許されないわ」
と言われており、若干緊張気味だ。
「外が静かになった……終わったみたいね」
『ゆっへっへ。お姉さんも無駄に死にたくなかったら、さっさと諦めて出て行くんだね!!』
このドゲスまりさは仲間達が死んだことを知らない。逆に、目の前にいる少女の仲間達が倒されたと思い込んでいる。
そして、例によって例のごとくドススパークのチャージも完了している。
「お前の五月蝿い声は家の中では響く。外でお話しましょう」
そう言うと少女は一足飛びでドゲスまりさの背後に回り、驚いて振り返るドゲスまりさの顔面に蹴りを叩き込む。
『ぎゅぎゃっ!!!』
ドゲスまりさが体を傾けないとその姿を確認できないほど、小柄な少女のどこにこんな力があるのか。
蹴り飛ばされたドゲスまりさは、そのまま縁側まで吹き飛び、ゴロゴロと庭まで転がった。
そして少女も静かに庭に降り、ドゲスと再び対峙する。
「ここなら、多少は五月蝿いと感じないわね」
『ゆっぐ……もう怒ったよ!ゆっくり出来ない奴は今すぐ死ね!!!』
ドゲスまりさは口を大きく開け、渾身のドススパークを撃ち放った。
こんな小さな少女、この一撃を食らえば髪の毛一本残らないはず。そう確信していた。
このドススパークで、今まで数多くの修羅場を潜り抜け、死地を切り開いてきたのだ。
少女は素早く抜いた刀で、大きく円を描くように振るう。
するとそこに不思議な結界が発生した。
そしてそれは、ドゲスまりさの巨大な帽子をかすめ、ドススパークを天高く弾き返した。
「反射下界斬。……そんなに驚く技でもない」
自身で技名をドゲスに教えた少女は、静かにドゲスに歩み寄る。
一歩、また一歩と近づくにつれ、空気がピンと張り詰めてくる。これは死を予感させる空気だ。
自身の最大の必殺技が破られたドゲスまりさの表情が一気に青ざめてゆく。
『ま、待ってお姉さん!!わかったよ!!まりさ達が出て行くよ!!』
「それはいい心がけね。でも、出て行ってどこへ行くの?」
『つ、次のゆっくりプレイスをゆっくり探すよ!!』
「そう。そしてお前はまた、村やゆっくりの群れを襲って奪うのね」
『う、奪わないよ!!奪いま゙ぜん゙!!』
「そう言い切れる理由がどこにあるの?それで今まで生きてきました、って顔に書いてあるわ」
『ゆっぐ……』
実際その通りだ。ドゲスまりさは言葉も出ない。
窮地に立たされたが、ここであることを思いついたドゲスまりさ。
『ゆ……ゆっへっへ。お姉さん、まりさは丸腰だよ?お姉さんは武器を持ってて、ずるくない?』
「……ん。言われてみればそうね」
『そうだよね、そうだよね!』
「でもこれが私の戦い方だから。お前達も暴力で色々なものを奪ってきたのよね」
『ゆ、ゆっぐ……ぅ』
「そろそろ覚悟は出来たかしら?」
『ま、待ってお姉さん!最後に、その剣を良く見せて欲しいんだぜ!!』
「これ?」
『そ、そうだぜ!!こんなかっこいい剣、見たことないんだぜ!』
「確かに、刀を持っていること自体が珍しいかもしれないけど……」
そう言うと、少女は手に持っていた刀を収め、鞘ごとドゲスまりさの前に突き出す。
その瞬間、ドゲスまりさは自分が出せる最大の速さで少女から刀を奪い取ると、柄を咥えて勢いよく振り下ろした。
『ゆっへっへ。世の中頭が良い者が勝つんだぜ』
確かな手ごたえ。ドゲスまりさは再び勝利を確信した。
しかし、ドゲスまりさが斬ったのは少女がここに来る途中に捕まえたゲスゆっくりだった。
『ゆ゙あ゙!?』
驚いたドゲスまりさの口から、咥えていた刀がポロリと落ち、地面に突き刺さる。
「妖怪が鍛えたこの刀に、斬れないものなどあまり無い」
少女はドゲスまりさが取る行動を簡単に予測していた。刀の話をしだしてから、ドゲスが刀しか見ていなかったから。
だからあえて、鞘部分を持ち、柄をドゲスの方に向けて「すぐに刀を抜ける」ように突き出したのだ。
「豚に真珠、猫に小判。ゆっくりに桜観剣……」
再び顔面に蹴りを入れ、ドゲスを吹っ飛ばすと、少女は静かに刀を手に取った。
「そこまで思いつくほど、生への執着心があることだけは褒めてあげる」
『ゆ……ゆげ……や、やめてね!』
「そのお礼に、私も全力でお前を斬ってあげる」
『ま、まって!!たすけて!だずげでぐだざい゙い゙い゙い゙い゙!!』
ドゲスの巨大な体が天高く打ち上げられると、上下左右前後から次々に襲い掛かる斬撃がドゲスの体を斬り裂く。
そして、トドメに脳天からの唐竹割り。
少女は着地すると、先ほど「桜観剣」と呼んだ刀を鞘に収める。
チン…と、小気味良い音が聞こえたと同時に、少女の背後でドゲスまりさが豪快に餡子をぶちまけ、ズダズダに分割された。
こうして、幻想郷トップクラスの実力を持つ少女達の活躍により、村は平穏を取り戻した。
全て終わった、と報告を受けて恐る恐る戻った村人達が見たものは……
巨大なハリネズミにされたドゲスまりさ。
豪快にぶちまけられた餡子と皮の塊しか残っていないドゲスまりさ。
脳天に風穴が開いた、唯一原形をとどめているドゲスまりさ。
体中の餡子を吸い尽くされ、『ゆ゙……ゆ゙……』とうめき声を上げるゲスゆっくり。
引きちぎられ、切り裂かれ、潰され、あらゆる方法で殺されたゲスゆっくりの死屍累々。
その他、用意された数多くの籠や袋の中で、こちらに恨み節をぶつける捕らえられたゲスゆっくり。
このゲスゆっくりはきめぇ丸達が加工所に売るらしい。
しかし、ゲスまりさだけは別の袋に入れられていた。どうやら人形を従える女性が連れて行くらしい。
少女達はそれぞれ、この村から取れる優良な農作物の恩恵を受けていた。
今回はその縁があってドゲスゆっくり退治に一役買ってくれたが、村人達は何度も守ってもらうわけにも行かない。
これからも予想されるであろう、ドゲスの襲撃を想定した対策を早急に施すように促し、
少女達は帰路に着いた。
~蛇足~
「そういえば、幽…」
「だめよ、ムコ殿」
「む、ムコ殿?」
「今回私達は本名を出さない約束よ。読者が想像する楽しみを奪っちゃダメよ」
「す、すみません…」
「それと。リーダーとはいえ、あの程度のゆっくりにスペルカードを使う必要も無かった気がするわ」
「そ、それは…」
「今回は60点。もう少し、頼りになれば良いのだけれど…」
「…精進します」
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御疲れ様でした。こんなに長くなるなんて思わなかった。
スーパー言い訳タイム
- キャラ配分はFC版必殺仕事人です。原作キャラが出すぎてしまった
- ぱちゅりーがいないんだけど→どう見ても贔屓です
読んで下さった方、本当にありがとうございます。
次の機会がありましたら、またよろしくお願いします。
今まで書いたもの
最終更新:2008年11月18日 20:29