※かなり俺設定があります
※虐待分はかなり少ないです
※人が死んだり、襲われたりしますのでご注意
※人様のネタをリスペクトさせて使わせてもらっています。
万能お兄さん3(fuku2844)の続編です。
ドスを山へ返した後、きめぇ丸Aは万能お兄さんから頼まれたことをやり遂げるために、ドスの群れへと飛んでいる。
手には警戒されないための、念のため用意しておいた手土産(賞味期限切れの食べ物や、傷んだ野菜等)を持たせておいた。
「ドス!?どうしたの!?」
群れの副リーダーである、クイーンありすが満身創痍のドスへと駆け寄った。あちこち怪我をしている上、片目がない。
他の仲間達も、ドスを心配して寄り添ってきた。
「ゆぅぅ、ごめんね…。皆死んじゃった…」
「「「「「「う゛ぞぉ゛お゛ぉ゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」」」」」」
「ばり゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁああああああ!!!!!!!」
「でい゛ぶう゛う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅううううううううううう!!!!!!!!」
無理もない、群れの総数200匹中半分の100匹が返らぬ饅頭となったのだ、その中には愛していたものも居ただろう。
ゆっくり達は、ゆんゆんと泣き始めた。
「でも、安心してね!私は人間に負けたけど、彼らは許してくれたよ!!」
「「「ゆっ!?ほんとう?」」」
「うん!だって、わたしはつかまったけど、彼らに謝ったらちゃんと許してくれて、山に帰っていいって言われたもん!!」
「ゆーっ!!すごいすごい!!」
「さすがはドスなんだぜ!!」
「そして、彼らが野菜もくれたんだよ!!」
「ゆーっ!!すごいよ!!さすがドスだね!!」
「わたしたちのリーダーは、やっぱりドスがふさわしいんだぜ!!」
先ほどまで、愛するものを、家族を亡くしたという事実に嘆いていたのと同じ連中とは思えないほどの切り替えの速さ。
さすが餡子脳、ここまでいくと感心する。
「でもドス、これからどうするの?まだ食料が足りないよ?」
「ゆぅぅぅ…まだまだ足りないね…」
群れが半分に減り、万能お兄さんからもらった食料を足しても、
冬篭りする量にはまだ達していなかった。村を襲う前までは半分に達していて、
群れがギリギリ越せる量だったが、最近考えなしに繁殖したために、足りなくなってしまったのだ。
それほどまでに数が多い。
これからどうするか?活動できる日も、残りわずかしかない。
そこに、上空から頃合を見ていたきめぇ丸が降りてきた。
「まいどー、いつも通りのきめぇ丸です」
「ゆっ!きめぇ丸!!こんにちは、ゆっくりしていってね!!」
ドスが好意的な挨拶をする。まだ、きめぇ丸のことは覚えていてくれたようだ。彼女はそのことに安堵し、
「とりあえず、前言った通りのお土産ですよ。どうぞ受け取ってください」
「ゆっ!!ありがとう!!…ゆぅ、まだ足りない」
きめぇ丸からもらった手土産を見て、ため息をついた。ほんの少ししか足しにならない。まだまだ冬篭りできる量には達しない。
「ドス、食料を見てどうしたのですか?冬篭りする量が足りないのですか?」
「ゆぅ、そうなの。仲間が半分に減ってもまだまだ足りないの。このままだと、群れの皆がゆっくりできなくなっちゃう…」
お兄さんの目論見どおりだ。まだまだ足りていない、このままだと群れが全滅コースへと直進するのは目に見えている。
そこに助け舟を出すように、きめぇ丸は話し始めた。
「そうですか…。ひとつ、救う方法があります」
「ゆゅっ!!本当!!??」
「はい…、でも…」
「ゆっ!!おしえてね!!どんなことでもいいからおしえてね!!」
「しかし、これは非常に危険な行為ですよ?」
「どんなに危険なことでもかまわないよ!!ゆっくりしないではやくおしえてね!!」
「本当ですか?場合によっては、群れが全滅するかもしれないんですよ?」
「ゆぐっ!…」
そう聞かされて、ドスは足踏みした。群れを全滅させたくない、それは群れのリーダーとして当然の責務だ。
だが、彼女の危険な話は、もしかしたら群れの皆を救うかもしれない。どのみち、このままだと食料が足りなくて、
群れがほぼ全滅するのは目に見えている。藁をも掴むとはこのことだ、ドスは意を決して答えた。
「ゆっ!!このままだと食料が足りなくて、冬篭り中に群れが全滅するのはわかっているもん!!すこしでも皆を助けたいなら、
わたしはなんだってする!!」
「どずぅうぅ、ゆっゆっゆっ」
「がっごいいよ、どずうぅぅ」
ドスの覚悟を決めた台詞に、ゆっくりたちが感動し、むせび泣いている。なんとも涙を誘うような光景だ。
その台詞を待っていた、といわんばかりにきめぇ丸はほくそ笑む。
「わかりました、では話します。ゆっくり驚かないで、聞いてくださいね」
「ゆっくり聞くよ!!」
「では、話します。今居るこの山を北に進んで山を越え、その先の山をさらに越えたところに、寒村があります。四方を山に囲まれた寒村です」
「ゆっ?寒村?」
「ようは、人が少なくなった、寂れた村のことです。私が言った、皆を救う方法はこの村を乗っ取る事なんです」
「「「「ゆぅぅっ!!??」」」」
一同驚いた。無理もない、先ほどドスが村を襲ったものの、群れの半分を失うほどの痛手を被ったのだ。
皆が困ったような表情を見て、きめぇ丸は。
「でも、この村は10人足らず。しかも老人とおじさんくらいしか住んでいません。大丈夫です、皆さんなら、そしてドスなら
この村を乗っ取ることができるでしょう」
そういって励ました後、きめぇ丸は村の写真を見せた。万能お兄さんの指示で、定期的に偵察をしていたものだ。
写真を見るうちに、ゆっくりたちの表情が晴れていく。
「ゆっ!このくらいしかにんげんがいないならよゆうだね!!」
「まりさたちのほうがかずがおおいから、こいつらなんかいちころなんだぜ!!」
「じじいとばばあとおじんしかいないなら、とかいはのわたしでもたおせるわ!!」
ゆっくりたちが元気を取り戻していく、やる気まんまんといった所だ。
だが、ドスはあまり浮かんだ顔をしていない。
「ゆぅ…」
ドスは悩んでいた。きめぇ丸の情報通りのこの村なら、群れ全体を冬でもゆっくりさせることができる。
だが、問題は先ほど交わしたお兄さんとの約束だ。
-もし君達がまた村を襲ったりしたら…。その時は、僕は君達を殺すからね?2度目はないと思ってね?-
あの約束が、頭の中を駆け巡る。自分を見逃してくれた、優しいお兄さん。
彼の約束は破りたくない…、でも群れの皆を死なせたくはない…。
「ドス、なにを悩んでいるのですか?」
きめぇ丸が尋ねた。
「ゆっ、どうしようかなとおもって…」
「何をどうするんですか?群れの皆と仲良く死ぬことですか?あなたは約束を守るのと、群れを守るのと、どっちを選ぶんですか?
あなたはその程度の覚悟で、わたしに群れを救う方法を聞いたのですか?」
矢継ぎ早に攻めるきめぇ丸。
そうだ、何を迷っているんだ。群れを守るのが大切だ、皆私を慕ってくれているんだ。だから私はそれに答えなければ…。
でも…。
「どうやら、まだ悩んでいるようですね。でも、その村を乗っ取って住めばいいことでしょう?こっちに戻ってこなければいいだけでしょう?
それに、あの村と今から襲う村では遠く離れていますし、なによりこの村は閉鎖的なんです。村が滅んだことを知るものなどいませんよ」
きめぇ丸のこの言葉が、ドスの憂いを払った。そうだ、きめぇ丸の言うとおりにすれば、あのお兄さんに怒られることはない。
大丈夫だ、うまくいく、なぜならわたしはドスなんだから。
「みんなをゆっくりさせるために、この寒村を襲うよ!!みんな、いまから移動しよう!!」
ドスの号令の下、直ちに移動準備が始まった。倉庫の食料も全て持ち、目指すは北の寒村。
「ドス、ついに決心したのですね、私はとてもうれしいです」
ときめぇ丸が謝辞を送る。うれしいのはもちろん、主人の意向にそった行動を取ったからだ、これで私が褒められるのは間違いない。
「ドス、あなたにこれを送りましょう。これから歴史に名を残すかもしれないので」
きめぇ丸はそういうと、眼帯を渡した。片目がつぶれたドスまりさが幾分かかっこよくみえ、仲間も喜んだ。
「ゆっ!!きめぇ丸ありがとう!!あなたは私達の大切な仲間だよ!!」
きめぇ丸に礼を言うと、ドスは群れを率いて準備を始めた。
自分達がゆっくりするために、皆で冬を越すために、長い長い道のりを突き進む。
ゆっくり達の、山を二つも越える大移動が始まった。
お兄さん達が住んでいる村は町からあまり離れていない。
町は村から7kmほどの距離しかないので、気軽に(といっても自転車で30分以上だが)町へいけるために、一昔前では村の過疎化が進んでいた。
だが「ゆっくり」なる生物が登場してからというもの、村に人が帰ってきた。
大部分はゆっくりを虐待することを目的としたり、加工所へ持っていって生計を立てたりする人が占めている。
それでも、村は村。人口が少ないのにはかわりがない。
だが、人々は幸せだった。
きめぇ丸Aがドスの群れを操っていた頃、きめぇ丸Bは「調べたいことがある」と万能お兄さんに頼まれて、加工所へとやってきた。
加工所の若い社員が
「お!きめぇ丸がきたぞ!!捕まえろ!!」
と直ちに捕獲しようとしたが、胸にあるバッチを見てあわててやめた。
「まいどー、清く正しいきめぇ丸です」
「あっ、万能お兄さんのきめぇ丸ですか。こんにちは」
きめぇ丸のみならず、お兄さんの家のゆっくりには「万」の字がはいったバッチがついている。
理由は飼いゆっくりであることを示すためだ。こうでもしないと、飼いゆっくりといえど虐待される恐れがある。
飼っているゆっくりはこうして飼われていることを示せば、どこの人里に行っても安全である。
すると、きめぇ丸を捕まえようとした社員に拳骨が降ってきた。
「バッカモン!!勇み足で捕まえようとするんじゃない!!それにきめぇ丸はゆっくりだが人間に友好的なんだ!!
間違っても捕まえるようなことはするなと何度もいっとろうが!!」
と、叱られた。その様子をみたきめぇ丸が
「おお、いたいいたい」
「す、すいません、おやっさん!ゆっくりを見ると、昔の虐待お兄さんとしての血が騒いでしまって…。し、静まれ俺の右腕っ!!」
「おお、ゆかいゆかい」
と笑うきめぇ丸。気を取り直して、おやっさんと呼ばれた人が
「すいませんね、うちの若いのが捕まえようとして、申し訳ないです。」
「誰でも間違いはあるというもの、気にしておりません。それよりも、私はご主人様の伝言と質問できたのです」
「ほう、伝言と質問ですか。またもやゆっくりですか?」
「ええ、その通りです。今度ゆっくりを大量に捕獲するから手伝ってほしいとのことです」
「いつもお世話になっている万能お兄さんの頼みとあらば、断る理由はありませんな。わかりました。」
「承諾していただき、誠に有難うございます。ご主人様に代わり、礼を申し上げます。」
「いえいえ、おきになさらず。ところでそれはいつですかな?」
「主人は今から約3,4ヶ月後の春に、村をドスを含んだ大規模な群れが襲うといっております」
「なんと、ドスですか!!最近みかけておりませんでしたので、楽しみですね」
「ええ、ですがドスはドス。最悪の場合人死にがでるかもしれません。主人はそれを一番危惧しておられます。」
「ええ、私達もドスのせいで骨折したり、大怪我を負ったものも少なからず居ますからね、よくわかります。」
そこできめぇ丸は質問した。
「ところで、主人がドスの餡子の味と価値について聞きたいことがあるといっていたんですが、教えてもらえないでしょうか?」
「もちろんですよ!ドスは我々にとっても宝と呼べる存在です。普通のゆっくりは成長すると餡子がパサパサしておいしくありません。
これはドスにも当てはまる…。と思いきや、最近では違うようなんです。ドスは年季が入っているおかげで、餡子が凄く熟成されていて
成体ゆっくりとは一味違う味になっているんです。その味は甘すぎず、しっとりとして、ややお酒が入ったような…。よく説明できませんが、
一流菓子店で作られているような餡子の味と同じか、それ以上の味がするんですよ。簡単に言えば、熟成ワインと同じですね。
年季が入ったワインと、そうでないワインでは、味も値段も違います。つまりはそういうことです。」
「なるほど、いいことづくめですね」
「といいたいところなのですが、世の中そんなに甘くないんですよ。餡子なだけに」
「プッ」
親父ギャグなのだろうか、思わずきめぇ丸は吹いてしまった。おやっさんは受けてくれたことがうれしく、上機嫌になって話し始めた。
「ただ、今言ったのは一部のドスにしか当てはまらないんですよ。ドスといえば、群れを守る存在です。
群れを守るといっても、人とかかわらないようにしている良いドスと、人に高圧的に接したり、他の群れを襲ったりするような
ゲスなドスとでは、前者のほうが味がいいんですよ。これには理由があるんです。」
「理由、ですか?」
「ええ、ゲスなほうはそれはそれでコクはあるんです。が、ゲスというのはほとんどのゆっくりに当てはまるんですよね。
まぁ、ゆっくり自体傲慢な存在ですから、広い意味では全てのゆっくりはゲスと言えましょう。家に侵入してくるゆっくり
と同じくらいポピュラーだと思ってくれれば助かります」
「なるほど、では前者の良いドスについては?」
「まず言える事ですが、ゆっくりの生態上、野生のゆっくりが求めるゆっくりぷれいすはどんどん求めていくと、必然的に
人里に近くなるんですよ。開けた場所であること、近くに川があること、森には豊かな食材があること、狩りに適した動物がいること。
危険な生物がいないこと。つまるところ、人間が住むところとゆっくりが住むところは同じといえますね。
で、ドスも群れをゆっくりさせるという義務感があります。極稀に、群れを率いらず単独でゆっくりできるほど悟りを開いた狼ドスも
いますがね。群れを率いるドスも、ゆっくりぷれいすを探すと必然的に人里に近づき、それにより問題が発生するのはわかりますね?」
「ええ、人里に近づいたゆっくりは、畑を襲い、それにより人間と対立し、滅びる。ですね」
我が意を得たりといった感じで、おやっさんがうなずく。
「そうなんですよ、やつらはやはり餡子脳だからでしょうか?何度も同じことを繰り返すんですよね。中には不可侵条約を結んだりも
しますが、はっきりいって群れより弱い村ぐらいにしか通用しないでしょうな。話を戻しますが、良いドスのほうが味がいいというのは
ここから始まるんですよ。彼女は群れをゆっくりさせるためにがんばります。ですが、よほど統率が取れていない限り問題を起こします。
勝手に村に降りて、畑を襲い、人の不信感を買い、どうするか悩む。実はこの過程のドスの苦悩は虐待されているのとほぼ同じらしいんですよ。
どうすべきか悩むところで、精神的に来るからでしょうか?これにより餡子の熟成が始まるそうなんですよ。
あとは彼女を上手く捕まえたら、良質な餡子が手に入るでしょう。」
「なるほど、ではそれ以上に味をよくすることはできるんでしょうか?」
おやっさんは考えた。そして重々しく口を開いた
「ないことはないんですが…、非常に難しいと思いますよ?」
「お願いします、教えてください。」
「わかりました。これより美味しくするには、ゆっくり→虐待→ゆっくり→虐待を繰り返せばいいのです。
村の近くでゆっくりし、村と揉め事起こすところで1ループは完了し、それだけでも味はよくなります。しかし、人間の限界としては
2ループが限界と思います。さすがに3ループまでいけば、歴史を残すほどの味となるかもしれませんが、不可能ですね」
「なぜ不可能なんですか?」
「それはひとえに、ドスであることと、村の人たちの我慢の限界が関係しているからです。ドスはゆっくりたち以上の知能があるので、
3ループまで持っていこうとするときには、バカじゃないので被害が増える前に村のそばから離れていくと思いますし、襲われている
村も何回も襲われるのを我慢できるほど強くはないでしょう。村の存亡にかかわりますからね。ですからせいぜい2ループまで持っていけば
物凄い味になると思いますよ。もっとも大抵は1ループで終わるので、2ループまで持っていったことのあるドスはみたことありませんがね
2ループまでもっていったら大した物ですよ。こちらとしても破格、いや、それ以上の値段で買い取らせてもらいますよ」
「では大体いくらくらいで買い取ってくれるのでしょうか?主人はその相場を知りたがっていますので」
「わかりました、少々お待ちください。えーと、ドスであること、熟成餡子、市場での需要供給ラインはと…」
と、ポケットから電卓を取り出し、計算を始めた。
「これくらいですね。」
とおやっさんが電卓の数字を見せた。普通のゆっくりを売り飛ばすなんて比べ物にならないくらいの大金。
普通に働いている人でも、今すぐにゆっくり狩を始めたくなるような額が、電卓に表示されていた。
普通のドスを売り飛ばす値段の、約3倍、いや5倍はあった。
小さな村くらいなら運営できるほどの大金が、その電卓に表示されていた。
それをみたきめぇ丸が
「わかりました、どうもありがとうございます。これでなんとかなりそうです」
と答えた。これで、ご主人様の目標金額に達する。主人の喜ぶ顔が目に浮かび、きめぇ丸は喜んだ。思わず頭を高速シェイクする。
「そうですか、ありがとうございます。万能お兄さんに、よしなにと伝えてください」
「はい、わかりました。こちらこそ親切にさせていただき、誠に有難うございます」
聞きたかったことも聞けたし、書き留めておくこともしたので、きめぇ丸は家へと帰っていった。
きめぇ丸Bが加工所から家に帰ってきたと同時に、Aも帰ってきた。Bが話しかける
「お帰りなさい、姉さん。どうやらそちらの首尾は上手く言ったようですね」
姉であるAは頭を振りながら答える。
「何もかもが上手くいきますよ、ご主人様の目論見どおりです。なんとも愚かな生き物ですね、ゆっくりは。そちらはどうですか?」
Bも頭を振りながら
「ご主人様の聞きたいことは、すべて聞くことができました。あとは報告するだけです」
「私もです、とりあえず家に入りましょう」
「そうしましょう」
家にたどり着き、窓から2階の万能お兄さんの部屋へと入る。彼は机でうたた寝をしていた。
きめぇ丸Bは寝ている彼を優しく起こし、書いてあるメモを見せ、きめぇ丸Aは下の台所へいき、コップ一杯の水を持ってきた。
「ありがとう」
彼は礼を言って、水を飲みつつメモを読む。その途中、きめぇ丸Aが報告する。
「ご主人様の思惑通りに事が進んでいます。あの群れには私がいろいろと助言したので、村にたどり着くのも時間の問題でしょう」
「そうかい、どうもありがとう。じゃあ、村の観察と3人のマークもお願いね」
「その件について報告もあります…、どうやらあの村の村長は死んだようです」
メモを読むのをやめ、お兄さんはAを見る。
「…本当かい?」
「はい、ドスを村へと移動させた後偵察に言ったんですが、前回偵察した1ヶ月の間に亡くなったようです」
そういって、村にある墓所の写真を見せた。確かに村長の名前が書かれてある。
「そうか…、死んだのか…」
「驚かないのですね」
「いや、驚いているさ。ただ時間がかなり経ってしまったからね、その分感動も薄れてしまったのかもしれない…ただ」
と、メモを読み終え、水を一杯飲んで一息ついて答えた。
「死ぬのなら、僕が手を下したかったよ…」
そういって、天井を仰いだ。心底残念そうだ。
「ただ、ここまで来たらもう止まらないねぇ。後は計画通りに事を進めるだけだ、それだけだ…たったそれだけ…なんだ」
と、彼は呟いた。手は震えている。その震えは、滅多にないチャンスに喜ぶ感動なのか、村と友人を利用して、失敗したことを恐れる恐怖から
来るものなのかはわからない。
彼は震えを押さえるようにして、コップに残っていた水を飲み干した。
「あの村から出て行って、この村についてからもう10年も経ったのかぁ…早いもんだなぁ」
彼は箪笥の上の、2つの写真へと目を移した。過去の思い出がよみがえる…。
最終更新:2008年11月10日 09:26