はじめに
- 設定は現代、ゆっくり饅頭が普通に人間社会にいるという設定です。
- ゆっくりの視点から描いたらこうなりました。
何番煎じか判りませんが……
~ゆっくり現代を生きるよ!~
<自滅編>
都会に来てはみたものの、ゆっくりできる場所を見つけられずにいたゆっくり一家。
親まりさ、親れいむ、子れいむ、子まりさ、赤れいむ、赤まりさの6匹だ。
色々と歩き回り、見つけたゆっくりプレイスは、巨大な「スィー」の下。
そのまま、その日は疲れて眠ってしまった。
翌日の朝、眠っていた一家は、巨大な「スィー」から発せられた音で目を覚ます。
いくら怒っても、その「スィー」は問答無用で音を出し続ける。このままではゆっくりできない。
親まりさの目の前で、突如動き出したタイヤが容赦なく赤れいむを潰した。
赤れいむから少し離れた位置にいた赤まりさもまた、タイヤに潰された。
目の前で子を殺された怒りに打ち震え、「スィー」のボディに体当たりをする親れいむ。
しかし当たり所が悪く、リボンが出っ張りに引っ掛かってしまった。
そのままに引き摺られてゆく親れいむ。巨大な「スィー」はどんどん加速してゆく。
引き摺られているうちに底面が地面との摩擦で溶け、そこから餡子が漏れ出してゆく。
叫び声を上げるだけ上げ、親れいむは息絶えた。
残された親まりさと子れいむ、子まりさは、呆然と立ち尽くしていた。
悲しみに浸る間も無く、親まりさは子供達のためのご飯をとりに行かねばならない。
まだ子供達は狩りをするには早い。このゆっくりプレイスで留守番させることにした。
親まりさは跳ね回りながら、食べ物を捜す。
このあたりには、食べられそうなものが袋に入って置かれている場所が多い。
しかしその殆どがネットや金網の向こうにあり、侵入することが出来ない。
しかも、その袋は朝に人間達が巨大な「スィー」の後ろ部分に入れて、持って行ってしまう。
自分達が見つけたご馳走を横取りする、身勝手な人間だ。
憤った別の親ゆっくりが人間に抗議すると、人間は無言のまま巨大な「スィー」にゆっくりを放り込む。
その様子を見ていた親まりさは、諦めて別のご馳走を探しに向かうしかなかった。
程なくして小さな「おうち」にたどり着いた親まりさ。
中を見れば、同じ服を着た人間達が動き回っている。その一角に、ご馳走がたんまりと置かれている。
しかし、この「おうち」に入ることが出来ない。入り口のドアがものすごく重い。ゆっくりの力では開くことが出来ない。
来る途中に合流した仲間と共に頑張っても動かなかった。
そうこうしているうちに「邪魔だ」と人間に蹴り飛ばされた仲間。
まりさが慌てて後を追うと、人間はいとも容易くドアを押し、「おうち」の中に入ってゆく。
仲間はそのまま道路まで転がり、走ってきた巨大な「スィー」に踏み潰された。
結局、諦めるしかなかった。
しばらく探し回ると、さっきよりも巨大な「おうち」にたどり着いた。
ここのドアは、人間が前に立つと勝手に開いてくれる、とてもゆっくりしたドアだった。
しかし、人間と同じようにドアの前に立っても、ドアは開いてくれなかった。
中に入ることが出来た別のゆっくりが、体中傷だらけにされ、外に蹴り出される様子を見たまりさは、入ることを諦めた。
やがて日は高く上り、昼過ぎになる。
朝から何も食べていない。狩りをするにも、腹が減っては戦は出来ぬ。
自分の食欲とも戦いつつ、まりさはご馳走を求め彷徨った。
ようやく見つけたご馳走ポイント。
そこはたくさんの花が鉢に植えられて置かれている。
お花は一本一本は腹の足しにはならないが、大量に食べればとてもゆっくりできる。
まりさは喜び勇んでその花へ向かった。
食べられそうなものを選び、一つ一つ鉢から引き抜き、丁寧に地面に並べる。
子供達が幸せそうに花を頬張る姿を想像すれば、自分の空腹など大した苦痛ではない。
10本ほど花を引き抜くと、まりさは一息つき、花を咥えて帰ろうとした。
その直後、頭頂部に凄まじい衝撃が走る。あまりの激痛に、思わず口から餡子を吐き出してしまう。
怒りを込めた目で後ろを振り返ると、『STAFF』と書かれたエプロンを身に着けた女が立っていた。
その目はカッと見開かれ、顔は真っ赤だ。よく見ると青筋も浮かんでいる。
いきなり何をするの。謝って。
殴られた痛みを訴えたまりさは、女が手に持っていた鉢でさらに殴られた。
言われ無き暴力に涙が零れる。女は怒り狂っていた。
まりさは自分が見つけた花を子供達のために持ち帰ろうとしただけなのに、何故殴られるのか理解できなかった。
結局、花を諦めて逃げるしかなかった。花は人間に奪い取られた。
逃げてもなお、女は追いかけてきた。
ようやく女を振り切った頃には、帽子は殴られてボロボロに、体中に擦り傷が出来、餡子が漏れ出していた。
折角見つけた子供達のための食べ物も、人間に強奪された。悔しくてたまらなかった。
しかし子供達は腹を空かして待っている。何としてでもご馳走を取らなければならない。
道中に見つけた大量のお野菜、果物が並んでいた場所も、人間が全て占拠していた。
こちらが近づこうものなら武器を手にとって威嚇してくる。本気で殺すつもりなのはよくわかった。
どこへ行こうとも、全て人間が横取りしていたのだ。
そして夕方。もう日は沈みかけている。
何も取れずに、ヨロヨロと帰り道へと向かうまりさ。今日は諦めよう。
そう思った矢先、ふと通りかかった公園のベンチの下に、何かが落ちているのを見つけた。
それは、人間が昼食時にうっかり落としてしまったパンだった。
ようやく見つけたご馳走。大きさもじゅうぶんだ。この大きさなら子供達と一緒に、自分も食べられる。
パンを咥え、今までの痛みも疲れも忘れ、子供達の笑顔を思い浮かべながら家路へと急ぐまりさ。
自分達のゆっくりプレイスに戻ってきたまりさ。
そこに、今朝、最愛の妻と赤ちゃんを轢き潰した巨大な「スィー」が戻ってきていた。
そして、留守番をさせていた子まりさ、子れいむの変わり果てた姿。
戻ってきた「スィー」に轢き殺されたのだ。
ぺしゃんこになった皮、放射状に飛び散った餡子、そして帽子とリボンの残骸。
咥えていたパンを落とし、まりさは意識を手放した。
どうして、都会に来てしまったんだろう。
畑がいっぱいあった所の方が、ゆっくり出来た。
仲間の言葉を鵜呑みにした事を強く後悔した。しかし、時間は戻ってはくれなかった。
まりさが意識を取り戻すことは無かった。
<制裁編>
所変わって、こちらは田んぼや畑が広がる、農村。
日が没して間もない。まだ空の向こうはうっすらと明るかった。
木のうろを掘って作った簡素な巣の中で、ありすは眠っていた。その表情は暗い。
伴侶であるまりさと愛しい子供達が人間に捕まり、殺されたからだ。
時刻は昼過ぎに遡る。
愛情をかけて育てた子供達はすくすくと育ち、立派に成長した。
そこで、一家総出で狩りに出かけることにした。子供達に食料を取ることを覚えさせるためだ。
いつも食料を求めて駆け回る森の中に捕食種の姿を確認した一家は、急遽予定を変更、別の場所に移動することにした。
そして、こんな時のために見つけておいた「ご馳走が食べられるゆっくりプレイス」へと向かった。
ここに定期的に野菜が生えてくることを、まりさもありすもよく知っていた。
子供達が成長するのを待って、一家でご馳走を口にしつつ、子供達にも野菜が生えてくることを教えるつもりだった。
所々に不細工な形をした人間の模型が置いてあったが、気にも留めず野菜を全員で掘り出す。
葉の部分を咥え、掘り出すと…青々とした野菜が姿を現した。思わず涎を垂らす子供達。
その後も全員で一つずつ、15個ほどの野菜を掘り出した。数が多いので、手分けして運ぶことにした。
力仕事はすぐに腹が減る。狩を殆どしないありすも、久々に体を動かしたので腹が減っていた。
子供達は我慢できずに野菜にむしゃぶりついている。その幸せな笑顔を見るだけで、疲れも癒される。
一家で3個の野菜を平らげると、残った12個の野菜を一人一つずつ運ぶことにした。
野菜は待っていれば生えてくる。我慢して待ったご褒美に、いっぱい食べられる。
子供達も目を輝かせ、次の野菜が生えてくるのをゆっくり待つと言ってくれた。
半分ほど運び終え、残りの野菜を運ぼうとした時に、突如後ろから怒声を浴びせられた一家。
この五月蝿い声は人間だ。一体何の用だ。
やれやれと振り返ったありすの目の前で、まりさが男に鍬で殴りつけられた。
ふざけるな、いきなり何の真似だ。当然のごとく憤る一家。
男は顔を真っ赤にし、こめかみに青筋を立てている。鍬を持つ手はわなわなと震えている。
野菜を運ぶのを邪魔されたありす達も怒りに打ち震える。
ここは俺の畑だ、その野菜は俺が精魂込めて育てた野菜だ。
冗談も程ほどにして欲しい。ありすは苦笑する。
この野菜は自分達が何日も何日も前から、一日千秋の思いで生えてくるのを待ち…やっと手に入れることが出来た野菜。
人間が勝手に横取りし、このゆっくりプレイスまで奪うなど盗っ人猛々しい。
ありす、まりさ。そして子供達は、出来る限りの言葉で男に言い聞かせる。
その時、男の目つきが変わった。
鍬を振り上げ、出て行けと体当たりを仕掛けたまりさに無慈悲な一撃。まりさは脳天から食らい、真っ二つになった。
目の前で行われた行為に、はじめは目を疑ったありすと子供達。
怒りを爆発させたありすと子供達は、男にまりさを返せと詰め寄る。
男は足元にいた子供を掴み上げると、勢いよく握り潰す。そして、そのまま別の子供を掴み上げ、再び握り潰す。
なぜ、こんな事をするの。
ありす達の主張は一切受け入れられず、ありすを残して子供達は全て殺された。逃げる余裕すらなかった。
一番小さかった子まりさは、三つ編みと体の半分を掴まれ、引きちぎられるという残酷な殺され方だ。
そして、残ったありすは男の渾身の蹴りを食らい、大きく吹き飛ばされた。
幸い、柔らかい土の上に落ちたために衝撃が和らぎ、激痛ながらも致命傷には至らなかった。
男はそのまま自分の家だと思われる場所まで戻る。
このままでは、殺される。逃げなければ、殺される。
ありすの判断は正しかった。痺れる体に鞭を打ち、茂みに身を隠すと、さっきの男が巨大な刃物を持ってこちらを探している。
そのまま男から静かに離れ、ありすは巣へと戻った。
そして今に戻る。
折角見つけたゆっくりプレイスは理不尽に奪われ、まりさも子供達も皆殺しにされた。
怒りと悲しみに打ち震え、つい先刻まで生きていたはずの家族と共に持ってきた野菜を見つめ、疲れ果てたありすは眠りについた。
…なにか、体が軽い。空を飛んでいるみたい。目を覚まし、ありすは上を見る。
自分をしっかりと抱え上げる…いや抑え付けている男。さっきの男だ。
蹴られた際、破れたありすの体から漏れ出たカスタードを頼りに、男が巣に襲撃してきたのだ。
家族を殺し、自分達のゆっくりプレイスも、野菜も全て奪いつくしたこの男が憎かった。
しかし、ありすに抵抗する術は無かった。
男はありすを家に連行すると、乱暴に床に叩きつた。そのまま馬乗りになり、髪の毛を引きちぎって丸禿にした。
そして鉄の棒の先が回転する不思議な道具をありすの頬に突きつけ、そのまま引き金を引く。
その直後、頬を抉り取られる激痛がありすを襲った。男は、ありすが泣き叫ぶ様を見て笑っている。
そして反対の頬も同じように抉り取ると、頑丈なロープを取り出し、頬を通し、鴨居に引っ掛ける。
吊るされたありすは何も出来ず、激痛に顔を歪めながら男を睨み付けた。
反省していないようだな、と男は言う。
反省だと。何を言っているのだ。反省するのは家族を殺し、何もかも奪ったお前だ。
そう言い返すと、男は木の棒でありすの顔面を殴りつけた。頬の痛みも引かぬまま、今度は顔面への激痛。
打たれたありすはロープの反動で前後へと揺れる。吐き気がするほどの気持ち悪さを味わう。
一発で、口からはカスタードが漏れ出している。
そこで死ぬまで反省していろ、と男は言う。
反省する気は無い。いや、反省する必要そのものが無い。むしろ男が反省し、今すぐ死ぬべきだ。
目は口ほどにものを言うらしく、そう思っても口に出さなかったありすを男はもう一度棒で殴りつける。
そうか、よくわかった。
人間はそうやって自分達が間違っていることを認めず、暴力で解決する生き物なのだ。
何と醜くゆっくりできない存在であろうか。
こんな生物がこの世に存在すること自体、間違っている。
ありすは迷わなかった。そう言い放った。
男は笑顔だったが、やせ我慢なのはありすにも良くわかった。
だから、ありすは矢継ぎ早に言葉を浴びせた。自分達を殺して、何もかも奪って、結局独り占めするのが人間。
死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。
死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。
死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。
男はたんまりと盛った土をありすの口にねじこむと、そのまま口を縫いつけた。
言い返せなくなったが、ありすはそれでも屈しなかった。男は結局、暴力でしか返せないのだから。
そのまま水も食料も与えられず、何十回と棒で殴られ続けたありすは、4日後に最愛の家族の元へと旅立った。
<ペット編>
再び舞台は都会へと移り、ここはとある一軒家。屋根つきの駐車場も作られている。
ここに青年(以下、お兄さん)が一人で住んでいた。
この年齢で家を持つほどなのだから、相当金回りの良い仕事をしているのだろう。
駐車場に止められていた車の下に、
ボロボロになった何かの皮のようなものと、
放射状に飛び散った黒いドロドロしたもの、
そして黒い帽子に赤いリボンのような残骸が転がっている。
車の前では、パンを放り出して意識を失って……いや、死んでいる一匹のゆっくり饅頭がいた。
この家に、一匹のゆっくりまりさがいた。お兄さんに飼われているペットゆっくりだ。
このまりさは少し前まで野良だったのだが、どこに行ってもゆっくり出来ない現状に危機感を覚えいていた。
そこで殺される覚悟で人間に近づき、ペットとして飼われることを望んだ、ある意味頭の良いゆっくりだった。
お兄さんにお願いしたのが正しかった。まりさは殺されず、ペットになることができた。
飼いゆっくりとなってからは、とてもゆっくりした毎日を過ごしている。
お兄さんは朝から仕事に出かけるし、その間は家で寝てても遊んでてもいい。
ご飯の場所も教えてもらっているので困らない。
野良ゆっくりの侵入を防ぐ対策が施された家なので、外敵に怯える必要も無い。
お兄さんが帰ってきたら出迎え、後はお兄さんが寝るまでの間、機嫌を取っていればよいのだ。
常に死の危険が伴う食料集めもしなくて良いし、最悪の場合一日で人間に奪われるゆっくりプレイスを探す必要も無い。
しかも一日駆け回ってありつけた食事とは違い、毎日腹一杯の豪華な食事がもらえ、デザートまで貰える日もある。
お兄さんと公園で遊んでストレス発散に付き合うと、自分も良い運動になる。
毎日お風呂にも入れてもらえ、この前は帽子を飼いゆっくり用のものに新調してもらった。
まさに至れり尽くせりの毎日だ。
今日はお兄さんが休みの日。お兄さんの車に乗せてもらい、海の見える丘に連れてきてもらった。
小高い丘から見る海は、どこまでも澄み渡っていて綺麗だ。水平線の向こうに、船がちらほらと見える。
あっちに見える大陸が……、逆にあっちの大陸が……と、お兄さんの説明も楽しい。
望遠鏡でその大陸を見せてもらえた。まりさにはよく判らなかったが、同じ日本の大陸、ということらしい。
そして少し散歩し、海岸までやってきた。貝殻拾い、砂遊び。お兄さんと楽しくゆっくりした時間を過ごした。
帰り道はお兄さんのお気に入りの曲がカーステレオから流れてくる。
お兄さんには申し訳ないけど、まりさにはこの曲は子守唄になった。でも、お兄さんは怒らなかった。
そして今、まりさはお兄さんと晩御飯を食べている。
美味しい。毎日食べているが、お兄さんの手料理は本当に美味しい。
まりさはお兄さんが大好きだったし、お兄さんもまりさを可愛がってくれる。とても幸せだ。
突如その幸せな食事がぶち壊される。
原因は、透明な箱に入れられた2匹のゆっくり。それぞれ、れいむとありすだ。
両者共に、その頭からはツタが生えている。ツタは透明な箱に空けられた穴から伸び、合計10匹の子を宿している。
れいむもありすも、箱にさえぎられ、子供が生まれても触れることが出来ない。
さらに万が一のことを考えて、底部を焼かれリボンとカチューシャを奪われた状態だ。身動き一つ出来ないでいる。
もう数え切れないほど何日も何日も、何週間も何週間も前から、この箱に入れられたまま。
人間に尻尾を振る裏切り者はゆっくり死ね。
ゆっくりとしてのプライドはお前には無いのか。
さっさとこの箱から出して男と一緒に今すぐ死ね。
2匹からそんな罵声を浴びせられても、まりさは平然としていた。
むしろ2匹の前にご馳走を持って行き、2匹が舌を出せばご飯が届くくらいの位置で、ご馳走を見せ付けるように食べる。
むーしゃ、むーしゃ。幸せ~。
その様子を見たれいむとありすは涙と涎を垂れ流しながら、よりいっそう語気を強めてまりさを罵る。
まりさにとっては、それが最高のスパイスだった。
れいむ、ありすの2匹はこの家に侵入しようとしたところをお兄さんに捕らえられた。
お兄さんが説得しても、一切反省しなかった。そのため「お仕置き」を受けている状態だ。
2匹は今もまだ反省している様子はない。
赤ちゃんを返せだの、今すぐ死ねだのと罵ってくる。
お前達はそれしか言えないのか。
まりさは思わず苦笑した。
2匹は寿命が来るまで子を宿し続ける。子を作る、いわゆる「すっきり」の役目はまりさに与えられている。
生まれた子供のうち、まりさ種だけは丁寧に育てられる。
赤ゆっくりから子ゆっくりになった時期に、里親かペットショップに出されるのだ。ちょっとした小遣い稼ぎにもなる。
れいむ種、ありす種はそのままお兄さんとまりさのデザートとして胃袋に収められる。
れいむ、ありすは毎回毎回その様子を見せ付けられながらも、狂気に逃げることが出来ないように餡子をいじられていた。
精力剤が入ったオレンジジュース。それを点滴として、脳天に挿入された管から直接体内に送られることで、死ぬことも出来ない。
れいむ、ありすはオレンジジュース以外の食事を一切与えられていない。
ただ箱に入れられたまま、お兄さんとまりさの幸せな生活ぶりを見ては恨み節をぶつけている。
お兄さんが「テレビ」と呼ぶ、不思議な箱から人間の声が聞こえてきた。
- 次は、この不思議な生き物について……
- この生物の体液である餡子にタイヤがスリップし、死亡事故が多発していることから……
- また、農家の被害も数億円規模にのぼり……野菜の卸売価格の急騰の原因とも……
- 今後、ペットとして飼われていない、いわゆる野良のゆっくり饅頭は保健所が管理し……
- 政府は、この野良ゆっくり饅頭対策に○億円の投資を……
まりさも一歩間違えれば、こうなっていた運命だ。
しかし、賢いまりさは自分の身の振り方と、話しかけた相手が最高だった、と自負している。
人間は強い。自分が束になっても勝てない相手だ。力でも、知能でも。
だったらそんな「プライド」なんかかなぐり捨てて、不本意でも人間に尻尾を振った方が何倍も利口だ。
尻尾を振ってみた結果がこれだよ。
そのことに気づかないれいむとありすが哀れに思えた。
まりさは再びれいむ、ありすの前に来る。
2匹は出来る限りの恨み、怒り、憎しみ……殺気を込めた目でまりさを睨み付けて来る。
どうして裏切ったの。
まりさはニタリと笑みを浮かべて、答えの代わりとした。
そして、かつて自分の妻だった2匹の前で、口の周りについた食べかすを舐め取るのだった。
**********************************
終わりです。読んでくださった方々、ありがとうございます。
しかし現代だと、野良ゆっくりはどこへ行ってもゆっくり出来そうに無い……
死ね死ねと打ってて、死ね死ね団を思い出した。
またぱちゅりーがいない。ぱちゅりーだけは、ぱちゅりーだけは許してあげて。
次の機会がありましたら、また読んで頂ければ幸いです。
最終更新:2008年11月11日 20:18