現代ネタです。
文系が想像した理工系大学が舞台なので、あんまりつっこまないでね!!
リアル弾幕ごっこ
”自機狙い偶数弾”についてご存知だろうか。
シューティングゲームの用語で、
「自機座標に対して左右対称に偶数撃たれる」弾を指すことばだ。
たとえば自機狙い2WAY弾なら、自機座標の右斜めと左斜めに一発ずつ撃たれることになる。
つまり、自機狙いとは呼ぶものの、自機座標そのものを狙うわけではない。
弾幕が偶数弾だけで構成されている場合、自機を動かさないことによって弾は左右へとすり抜けていくことになる。
「ということだから、お前ら動くなよ」
別の学部の友人から借りてきた装置をセットし、水の無いプールに放り込んだ
ゆっくり達に声をかける。
装置は『センサー』と『スプリンクラー』で構成され……もうお分かりだろう。
「どうしてうごいちゃいけないの?ぴょんぴょんしなくちゃゆっくりできないよ?」
「このゆっくりぷれいすはひろくてきにいったぜ!まりささまのおうちにするんだぜ!」
「ゆっきゅりしていってにぇ!!ゆっきゅりしていってにぇ!!」
「やれやれ……」
話を理解しない奴、そもそも聞いてもいないやつ。俺はプールの底を一瞥するとスイッチを入れた。
スプリンクラーが強烈な放水を開始する。
「ゆぎぃぃぃぃぃぃぃ!!!???」
「なっなんだぜ!!??なにがおこったんだぜ!!!??」
「ゆぴぃぃぃ!!ゆぴぃぃぃ!!!!」
鉄砲水のような放水は、プールの中心部に身を寄せ合ったゆっくり達の真横をかすめる。
轟音が耳を劈き、ゆっくり達をおびえさせる。
「おにいざん!!!ゆっぐりたすけてね!!!」
「そうだぜ!!かわいいまりさたちがどうなってもいいのかだぜ!!??!」
「ゆっきゅりできないよぉぉぉぉぉ!!!!」
「お前ら、自分のしたことを忘れたのか……」
俺はため息を付いた。
さかのぼること二日。
俺は研究室に鞄を置いたまま学食へ行き、帰ってくると、研究室が荒らされていた。
「なんじゃこりゃ……」
その時、ガサッという物音を聞いて俺は硬直した。
「!!」
部屋を荒らした賊が潜んでいるのかと思い、反射的に扉を閉めそうになった俺の耳に声が聞こえてくる。
「むそーふーいん!!」
「ますたーすぱーく!!」
「?……まさか……」
俺は扉を押し開き、部屋へと踏み込んだ。
散乱した部屋の中に、俺のレポートや教科書を引き裂いてあそぶゆっくりの一団がいた。
ゆっくりはこちらを向くと、口々に勝手なことを言う。
「ゆゆ?れいむのおうちになにかよう?」
「まりさのおうちにくるときには、てみやげをもってくるのがれいぎだぜ!」
「ゆゆー!」
とりあえずゆっくり共を捕らえ、部屋を整理する。
<被害総額>
教科書……………3冊 \7000
レポート…………ほとんど全部(ただしPCは無事だったので問題なし)
ペットのお茶……1本(机や床が大変なことに)\150
泣きたいような気分だった。
「ここからだしてね!れいむのだんまくごっこをじゃましないでね!!」
「まりささまをおこらせるとあとがこわいんだぜ!!」
「ゆっきゅり!ゆっきゅり!」
諭してみてもまったく悪びれる様子もないゆっくり達。だんだんむかついてきたぞ…。
「そうだ」
俺はそのとき、ある友人のことを思い出した。
その友人はセンサー機能と多目的スプリンクラーのモニターを探していたのだ。
「おいお前ら、甘い顔してれば付け上がりやがって。
この俺がお前らに本当の弾幕ごっこのやり方を教えてやる……」
というわけで今に至る。
「どうだ?弾幕ごっこ楽しいか?」
俺は聞いてみる。
「だのしくないいいいい!!!!おうぢかえるぅぅぅぅう!!!」
「ま、ゆっくりかすっていってね」
俺はプールサイドに寝そべった。
「おみずさんこないでね!!ゆっくりあっちいってね!!」
ゆっくり達は水の直撃を受けてはいないが、降りかかるしぶきを避けようと限られたスペースの中を移動する。
しかし、ゆっくりに仕込んだセンサーによって、スプリンクラーはゆっくりの周囲”だけ”を確実に狙い撃つ。
どんなに逃げても無駄だ。
「ゆ!ゆぅぅぅぅ!!!!」
「おちびぢゃああああんんんん!!!」
一匹の子ゆっくりが足(?)を滑らせるがスプリンクラーはその場所を避ける。
「ゆ?ゆっきゅりたすかったよ?」
「おちびぢゃん!よがっだねぇぇぇ!!!!」
しかし、状況は変わらない。相変わらずゆっくりは周囲を脅かされている。
「……だけどやっぱりゆっきゅりできないよぉぉぉぉ!!!おみずいやだよぉぉぉぉ!!!」
プールの栓は抜いてあり、流れ去った水はタンクを経由して再びスプリンクラーに戻る。
装置のバッテリーも充分なことを確認した俺は、ゆっくり達に言った。
「俺はご飯食べてくるから、お前らはゆっくりしていってね!」
「でいぶもおながずいだ!!ごばんちょうだいぃぃぃ!!」
「ゆっぐりでぎない!!だじて!まりざをだじで!!」
「ゆびゅうぅぅ!!ゆぶぅぅぅぅ!!」
飯を食って帰って来ると、ゆっくり達は動かないで一箇所に固まっていた。
「ゆああーんん!!ゆっぐりできないよぉぉぉぉ!!!」
「がまんしておちびちゃん!!」
「つべだいぜ!!いやなんだぜ!!!
だけどしにだぐないんだぜぇぇぇ!!!」
「うーん……」
あまりにも可哀相に思えてきたので、俺は聞いてみた。
「おい、お前達反省したか?」
「じまじた!!れいぶがわるかったでず!!」
「れいびゅもあやまるよぉぉぉ!!!」
「まりざもあやまっでやるんだぜ!!!ごめんなざいでじたぁぁぁ!!!」
まりさの発言が若干気にかかるものの、俺は装置を止めてやる。
「ゆゆ?おみずさんとまってくれたよ!!」
俺が止めたんだっつーの。
「たしゅかったよぉぉぉ……」
「ゆ!まったくしょうのないおにいさんだぜ!
かわいいまりさをいじめるなんて、おにいさんはどうかしてたんだぜ!
とくべつにゆるしてやるから、ゆっくりあやまるといいんだぜ?」
「………」
あっという間に態度を翻し、偉そうにふくれたり飛び跳ねたりするゆっくり。
「なにやってるの?れいむをはやくおそとにだすのもわからないの?ばかなの?しぬの?」
「ばかにゃの?しにゅにょ?」
「おにいさん!まりさはおなかすいたんだぜ!
こうきゅうすいーつでゆるしてやるんだぜ!!」
駄目だ。やっぱむかつく。
第一、俺の被った被害が、現金出費だけで7000円オーバーだぞ。こんな機械のモニター1時間程度で済んだら、
こいつら超高給取りじゃねえか。パネェ!俺のやるせなさマジパネェっすよ!!
「しかし、頼まれてたセンサーやスプリンクラーの動作確認もしたし、もうすることもないよなぁ……」
俺は装置を回収すると、出せ出せとうるさいゆっくり達を放置してプールを出た。
ゆっくり達は自力でプールを出ることができないが、どうなろうと俺の知ったことではない。
帰って、提出期限の近いレポートから再プリントアウトしなければならないのだ。
大学を出ると、もとから良くなかった天気がとうとう雨となった。
「おっ、雨だ。
そういや、こんな弾幕のゲームもあったっけなあ……」
どっかにエスプレイド置いてあるゲーセンないかなあ。そんなことを思いながら、俺は家へと帰った。
* * * *
ゆっくり達はプールから出られなかったが、別に気にしていなかった。
「ここをあたらしいゆっくりぷれいすにしようね!」
「とってもひろくて、まりささまにふさわしいんだぜ!」
「ゆっきゅりーー!!」
広々とした空間でゆっくりしだすゆっくり達。
その時、雨が降ってきた。
「ゆゆ!?またおみずさんだよぉ!!??
おみずはもういやだよぉぉぉぉ!!!」
さっきの事がトラウマになっているのか泣き出すれいむ。一方、まりさはといえば得意顔だ。
「れいむはばかだぜ!さっきにみたいにうごかずにいればもんだいなしなのぜ!」
「まりさおかあしゃんあたまいい!
せっかくのあたらしいゆっきゅりぷれいすでゆっきゅりするよ!!
ゆ~♪ゆ~♪ゆ~♪」
その場を動かずにゆっくりするゆっくり達だが、もちろん雨は降り注ぐ。
「おみずやだ!おみずごわいいいい!!!」
「おかしいぜ!?どうじてあたるんだぜぇぇぇぇ!!!???」
「おみじゅさん!!ゆっきゅりさせてよぉぉぉ!!!!」
雨は次第に強くなる。
「ゆっくりよけるよ!!ゆっゆっゆっゆっゆ!!」
「しかたないからまりささまのかれいなかいひをみせてやるんだぜ!ゆっ!」
「ゆゆー!!」
必死で上を見ながら避けても、雨は無数に降ってきてゆっくりの体を駄目にしていく。
「ゆふっ…ゆふぅっ…!こんなのむりだよぉぉぉぉ!!!!」
「だずけてぇぇぇぇ!!!ぼねがいぃぃぃ!!!まりざだけでもぉぉぉぉ!!!!」
「もっと……ゆっきゅり……したかったよぉぉぉ……」
雨音がゆっくり達の叫びを飲み込んだ。
おしまい。
書いた人:”ゆ虐の友”従業員
最終更新:2008年11月11日 20:19