※前回の話「つよいよわいつよいよわい」の設定を引き継いでいます。
※前作を読まないとわからないような設定は特にありません。
※飼い
ゆっくり認定バッヂ設定アリ。
※既出ネタかも……
独善的シーソーゲーム
田吾作さんの家にゆっくり──れいむ種とまりさ種。つがいのようだ──が入り込んでいたらしい。
つがいのゆっくりを田吾作さんから譲ってもらい、その礼としてゆっくりとり線香を渡したら、喜んでくれた。田吾作さんの畑はゆっくりに狙われやすいらしい。
私は普段住んでいる長屋──外の世界でいう「アパート」なるもので、世間からは虐待お兄さんと呼ばれる人種が多く住まう──の一室に戻り、前々から考えていたことを試すことにした。
夫婦ゆっくりをおなじみの透明な箱(防音)から取り出すと、二匹は勢いよく騒ぎ出した。
「ゆゆっ! ここはどこなの!?」
「ここはまりさたちのゆっくりぷれいすじゃないよ! はやくおうちかえしてね!」
「おにーさん! あれ、おねーさん? どっちでもいいから、れいむたちをへんなおへやにつれてきたおわびにたべものをもってきてね!」
「たくさんもってきてね! ださなかったらしょうちしないよ!」
何事か雑音が聞こえる気がするが、毎度のことなので気にしない。
私はなるたけ優しそうな微笑みを作り、二匹に話しかけた。
「食べ物なら好きなだけあげよう。ただし、れいむ、まりさ、君らのどちらかだけにだ」
不思議そうな顔をする二匹の前に、河童にキュウリ十二本で作ってもらったある装置を置いた。
外見としては、ゆっくり専用のシーソーといったところか。シーソーの両端にはゆっくりを固定するベルトが取り付けられ、真ん中には秒針だけしかない時計が両端からそれぞれ見えるようになっている。
二匹に見えるように、このシーソーの片方の端を地面につける。するとそのシーソーから見える秒針だけの時計の針が動き出した。地面から離すと、針は真上に戻る。もう片方も同じように動くことを確認させる。
次にれいむのほうをシーソーの片側に固定する。
「やめて! なにするの!」
「れいむにてをださないでね!」
デコピンをかまして黙らせ、今からすることをよく見させる。
れいむを乗せたシーソーは当然沈む。するとれいむ側の秒針時計が動き出す。針が一周したところで、れいむを固定していたベルトが外れた。
今度はれいむ、まりさの二匹ともをそれぞれの両端に固定した。二匹の大きさはほとんど同じで、シーソーも水平になる。
だが、どちらかが力を込めれば、容易くシーソーは傾くようになっている。
「やめてね! ゆっくりやめてね!」
「ゆーっ! もうゆるさないよ!」
わめく二匹を無視して、シーソーのすぐ横にお菓子の山を積み上げた。甘い香りが二匹の鼻腔(……鼻の穴はないが、ゆっくりは嗅覚を持っているらしい)をくすぐる。
「ゆゆっ! それおいしそうだよ! ゆっくりちょうだいね!」
「いいにおいだね! それまりさたちにくれたらゆるしてあげないこともないよ!」
「おにーさん! あれ、おねーさん? どっちでもいいからはやくこれはずしてね!」
「むししないでね! まりさおこるよ!」
元々この部屋に置いてある時計を菓子の隣に置き、二匹に見えるようにした。
「この長い針が一周したとき、れいむもまりさもこのお菓子を食べられていなかったら、君らはこのお菓子を絶対に食べることはできない」
二匹は文句を言うが、私には雑音にしか聞こえない。
飼っているありす(ゴールド認定)を呼ぶと、彼女はのそのそと巣から出てきた。巣といっても、部屋の片隅にそこそこ大きい箱を置いて、毛布を敷いただけだが。
シーソーに縛り付けられた二匹は、ありすを見るな否や騒ぎ出した。
「ありすだぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ゆっ! ゆっくりできないれいぱーのありすはどこかいってね! こっちこないでね!」
どうもこの二匹、レイパーありすにひどい目にあわされたことがあるらしい。多分、親がレイパーに殺されたとかそのあたりだろう。
ありすはというと、無表情でため息を吐いた。
私のありすには性欲なんてものはない。幼少時、性欲が発現する前に去勢させたからだ。おかげでぺにぺになんてものに余分な餡子をまわす必要が無くなり、その分知能が高くなっている個体なのだ。
ありすの髪をなでながら、ありすにだけ聞こえるように言った。
「ありす、そこの菓子を一個だけ食べていいよ」
「いいの?」
「いいよ。そこの二匹に見せ付けるようにね」
「わかったわ」
ありすはのそのそと菓子の山に近づく。二匹はありすが自分たちのほうに近づいていると思い込み騒ぐが、ありすはそんな二匹を無視して、
「あら! こんなところにとかいはなおかしがあるわ! ひとつたべてみようかしら!」
「ゆゆっ!? やめてね! それはれいむたちのたべものだよ!」
「ゆっくりしてないありすがたべていいものじゃないよ!」
「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪ あまあまー♪」
「ゆぎぃぃぃぃぃぃぃぃ! むじじないでね! むじじないでねぇぇ!」
「むーしゃむーしゃしあわせーするなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
……私のありすは、どうやら少しSの気があるらしい。わめく二匹を見て満足したのか、すっきりー♪顔で巣の中に戻っていった。
泣き喚きながらありすを呪う言葉を吐く二匹に、私は語りかけてあげた。
「ほら、はやくしないと全部あのありすが食べちゃうよ?」
以降の二匹のやりとりは、会話だけ記述しよう。
「ゆっ! あのたべものさんはありすにたべさせちゃだめだよ!」
「ゆゆっ! ゆっくりしずむよ! ゆゆっ? はりさんがうごいたよ!」
「ゆぅ? れいむもやってみるよ! ゆゆっ! はりさんうごくよ!」
「ゆぅっ! はりさんもどっちゃった!」
「わかったよまりさ! あのはりさんがくるりってまわるとこれはずれるんだよ!」
「ゆゆっ! さすがれいむだね! それじゃあ、ゆっくりしずむよ!」
「ゆゆっ! まりさずるいよ! れいむもあまあまほしいよ!」
「まりさだってあまあまほしいよ!」
「…………」
「…………」
「まりさ! れいむに──」
「ゆっくりしずむよ! あまあまはまりさがむーしゃむーしゃするよ! れいむはあきらめてね!」
「どぼじでぞんなごどいうのおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
「ゆゆっ!? れいむやめてね! はりさんがもどっちゃうよ!」
「まりさがあきらめてね! あれはれいむのものだよ!」
「どぼじでぞんなごどいうのおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
「ふざけないでね! まりさとおなじこといっただけだよ! かわいいれいむにあまあまをたべさせてくれないまりさはゆっくりういてね!」
「ゆーおそらをとんでるみたい……ちがうでしょおおおおぉぉぉぉぉぉ!?」
「まりさやめてね! はりさんがもどっちゃうよ!」
「ぶさいくなれいむにあまあまはあげられないよ! あれはまりさのものだよ!」
「ぶさいくっていったなああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「ぶさいくっていったよおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「しね! かわいいれいむにあまあまあげないげすなまりさはしねっ!」
「まりさがいないとなにもできないれいむがなまいきいわないでね! いつもかりをしてたのはだれだとおもってたの!?」
ぎっこんばったん。
ぎっこんばったん。
結局この二匹はお菓子を何も得られないまま、元いた森に帰してあげた。
あの夫婦、これから末永く仲良くあってほしいものである。
ちなみにこのとき使ったお菓子は、群れにいる赤ゆっくりたちに食べさせてあげた。
※野生の赤ゆっくりに人間のお菓子などを与えると味を覚えてしまい、野生の餌を受け付けなくなります! 野生の赤ゆっくりに甘いお菓子を食べさせないでください!
あとがきかもしれない
ども、急に湧いたネタで書き上げてみました。
最近じゃシーソーって減ってるらしいですね。嘆かわしい、子供は痛みと怪我を知ってこそ強くなれるというのに。
ところで田吾作って誰なんだ。
以上、EGSでした。
過去に投稿した話
最終更新:2008年11月14日 04:27