- 俺設定大量にあり
- 虐待されないゆっくりが出てきます
ゆっくり通常種の中でもゆっくりみょんの立ち位置は特殊だ。
一説には通常種では最強といわれているが、それほど繁栄していないし、里における地位も低いようである。
捕食種が攻めてきた時に、囮として使われることがある。みょんを捕食種にぶつけて、その間に他のゆっくりは逃げるという寸法だ。
普段は他のゆっくりのために餌を集めて回っているようである。みょんは餌集めが得意なのだ。
どういった草や虫が食べられ、どのようにすればおいしく食べられるか、
持ちのいい食糧はなにか、それらが得られる場所はどこかをみょんは本能的に知っているのだ。
他のゆっくりが名前通りゆっくりしている間も、みょんは忙しく働いている。
みょんがゆっくりの里で地位が低い理由はいくつかあるが、最たるものは単純にゆっくりしていないからだろう。
例のあの鳴き声も、「ゆっくりに相応しくないからちんぽとでも言ってろ」といった理由で、
そう言わされているうちに子にも受け継がれていき、ちんぽとしか鳴かないようになったのかと推測される。
教えれば他の言葉も喋ることが確認されている。生まれたときから普通に喋るみょんもいるようであるが、
そういった個体でも他種の前ではちんぽとしか鳴かないだろう。
また、もうひとつ挙げられる理由としては、ゆっくりゆゆことの特異な関係が挙げられる。
ゆゆこはすさまじい食欲を持つ捕食種としてゆっくりにとって最大の恐怖だが、
みょんとゆかりんだけは食べないことがわかっている。ゆかりんはその強烈な匂いゆえかと思われるが、
みょんを食べない理由に関してはまったくわかっていない。
両者は共生していることもある。
どのような協定が成り立っているのかは不明だが、みょんはゆゆこに付き従い、ゆゆこもみょんを追い払うことはない。
この性質ゆえに、ゆっくりはみょんをゆゆこのスパイではないかと思うことがある。
里の外からやってきた見かけないみょんは、スパイ疑惑をかけられて殺されてしまうという。
とはいえ、普通のみょんがいきなり殺されてしまうことは少ない。使い道があるからだ。
普通のみょんは。
稀にだが、眼の赤いみょんが生まれることがある。
この赤い眼のみょんはゆっくりにとって極めて不吉な忌み子であり、放置しておけば捕食種や、なんらかの災厄を招き寄せるといわれている。
赤い眼のみょんは大抵生まれてすぐに殺されてしまう。
そのゆっくりの里は冬越しの準備を終えていた。
各家に食糧はたっぷり備蓄してあり、飢え死にする心配はなさそうだった。
指導者各のぱちゅりーを筆頭に、みんなでゆっくりも惜しんでがんばってきた結果だ。
「今年の冬はゆっくりできるね!」「春になったらたくさんゆっくりしようね!」
だが、里始まって以来、前代未聞の異変がおきていた。
ある日、どこからともなく不吉とされている赤い眼のみょんが現れたのだ。それも七匹も!
ゆっくりたちは赤い眼のみょんの一団を遠巻きにして見ている。
みょんが少しでも近づいてこようものなら、限界まで頬を膨らませて威嚇する。
「ちーんぽ!」「ちんぽちーんぽ!」「ぺにっ!」「ちんぽっぽ!」
みょんたちはしきりにちんぽちんぽ叫んでいる。
なんといってるかはゆっくりたちにもわからない。この里にはみょんはいないし、いても通訳には使えない。
「なんなの、このみょんたち……」
「たまにしかうまれないあかいめのみょんがななひきもでてくるなんて……」
「せっかくゆっくりできるとおもったのに、なにかこわいことがおきるの!?」
一匹だったらすぐさま叩き潰して、“なかったことに”するのだろうが、相手は七匹もいる。手を出しかねた。
ゆっくりたちの間に次第に恐怖が高まっていった。
「ゆゆ! もしかするとだぜ! ゆゆこのむれがちかくにきているのかもだぜ!」
一匹のまりさが思いつきをそのまま口にすると、それはすぐさま里中に伝染した。
「ゆ、ゆゆこのむれぇ!?」
「そうだよ! あかいめのみょんがたくさんいるんだから、ゆゆこもたくさんいるんだよ!」
「ゆー! ゆゆこのむれがきたらみんなたべられてゆっくりできなくなるよぉぉぉぉぉ!!」
“珍しい赤い目のみょんがたくさんいるなら、普通群れることのないゆゆこもたくさんいるに違いない。”
──ゆっくり流の考え方ではもっともな結論に思えた。
一匹のゆゆこでも大きな被害が出るが、それが群れているとなると全滅もありうる。
仮にゆゆこも七匹いるとするなら生き残る望みはない。
「ちーんぽ!」「ちーーーんぽ!」「マラー!」
みょんはぴょんぴょん跳ねながら、ますます激しく連呼している。
そのゆっくりしていない様はますます不吉だ。
もしかすると、この里はいただいた、おまえたちは滅びるのだと宣告しているのかもしれない。
「そうだ、ぱちゅりーになんとかしてもらおうよ!」
「ぱちゅりー! わたしたちどぼずればいいのぉぉぉぉ!?」
「ぱちゅりーたすけてぇ!」
「ぱちゅりー! きみのいけんをきこうッ!」
ゆっくりたちは知恵袋のぱちゅりーに打開策を求めた。
このぱちゅりーのおかげでなんどか窮地を抜け出したことがあるのだ。
「むぎゅう……みんなゆっくりきいてね。いますぐこのさとをすててにげるのよ!」
ゆっくりたちの間にざわめきがおきた。
「このゆっくりプレイスをすてちゃうの!?」
「どどどどうやってふゆごしするのぉ!?」
「たべものはどうするの!?」
ぱちゅりーは先を続ける。
「たべものはもてるだけもっていって、あとはのこしていくしかないわ。
ゆゆこのあしどめになるかもしれないし。
とにかくゆっくりしないでいそいでしゅっぱつするのよ! もしゆゆこたちがさとをほういするつもりなら、
ゆっくりしてるとまにあわないわ!」
ゆゆこの包囲網と聞いて、ゆっくりたちの恐怖は頂点に達した。
四方八方からあの大柄なゆゆこがずしんずしんと迫ってくる様が目に浮かんだ。
ゆっくりたちは我先にと食糧貯蔵庫に駆けていき、頬張れるだけの餌を頬張った。
この騒ぎで少なからぬゆっくりが踏まれたり突き飛ばされたりして怪我を負い、
中には死んでしまったものもいたが、省みられることはなかった。
親ゆっくりだけでなく赤ゆっくりも食糧運びをやらされた。
「みゃみゃー! おみょいよー!」
「ゆっきゅちしちゃいよー!」
「どうちておうちをすちぇるにょー?」
「だまってゆっくりはこんでね! たべものをのみこんだらおいてくからね!
たからものもぜんぶおいてくのよ!」
一方、あまりに駄々を捏ねた赤ゆっくりが間引かれる光景が各所で見られた。
「ゆぎゅうぅぅ! みゃみゃ……にゃんで……」
「ごめんね! ちびちゃんごめんね! てんごくでゆっくりしていってね!」
一匹のために遅れるわけにはいかなかった。里のゆっくりたちは準備が出来次第、待ったなしで出発するのだ。
ゆゆこに食われるよりはましだろうと、親ゆっくりたちは心を鬼にして、連れて行けない分の赤ゆっくりを一思いに潰した。
「しゅっぱつできないゆっくりや、あしのおそいゆっくりはざんねんだけどしんでもらうからね!
あしでまといをつれていくよゆうはないからね!」
ぱちゅりーの言葉によって、病気や怪我のゆっくりたちが殺され始めた。
「やめてぇぇぇぇ!! れいむはあるけるよぉぉぉ!! ころさないでぇぇぇ!!」
「ちびちゃんあるいて! あるくのよ! あるかないところされちゃうでしょぉぉぉぉぉ!!!」
「やべ! やべぇ! やべでっで! どぼじでばりざまで、ゆべぇ!」
身体能力に劣るとみなされた個体も殺されていった。まったく関係ない普通のゆっくりも巻き込まれたようだが背に腹は変えられない。
ゆっくりたちはぱちゅりーを信じていた。ぱちゅりーは今までも里を助けてくれたし、今この状況にあっても比較的冷静に見えた。
……実際にはぱちゅりーは里の誰よりも恐怖していた。
ぱちゅりーは知恵はあるが体が弱い。
ゆゆこに襲撃されたとなれば逃げ切れずに真っ先に食われてしまうだろう。ぱちゅりーが生き残るには一刻も早く距離を離すしかないのだ。
ゆっくりからは冷静そうに見えたが、実のところ正常な判断が下せる精神状態とは言いがたかった。
“足手まとい”とみなされたゆっくりたちがあらかた殺されると、ゆっくりたちは強行軍を開始した。
みょんはそのゆっくりたちの様を呆然と眺めていた。
みょんに手を出すものはいなかった。赤い眼のみょんに触ると不吉が伝染するような気がしたし、そんな暇もない。
ただ恨みがましく睨み付けるだけだ。
「むぎゅ、みょんたちがきたのとははんたいのほうがくへいくのよ! みんなゆっくりしゅっぱつしてね!」
ぱちゅりーは数匹のゆっくりの背負う輿のようなものの上から号令をかけた。
ぱちゅりーによって方角は定められたが、目的地は決まっていない。
あてなどどこにもない。食料もわずかしかない。
暖かくて安全なおうちも、宝物も全部捨ててしまった。一連の騒ぎのせいで仲間や子供も少なくない数が死んでしまった。
たとえ逃げられたとして、どこに里を作ればいいのか? 今から食糧を集めて冬に間に合うのだろうか?
冬が間近に迫った森に、流浪のゆっくりたちの悲鳴と嗚咽が響き渡った。
赤い眼のみょんでも中には生き残るものがいる。
親が殺すのを躊躇ったためだろう。密かに育てられたのか、どこかに捨てられたのか。
そういったみょんたちは他のゆっくりたちとは交わらずに、一匹でひっそりと暮らす。
この七匹のみょんたちはそういった生き残りたちが集まったものだった。
たしかに滅多にない偶然であった。
みょんたちは真に理解しあえる仲間を得て、とてもゆっくり暮らしていた。
赤い眼として生まれたみょんにとって、これほどの幸運はそうないだろう。
だが、それでもみょんたちは寂しかった。
もっとたくさんの仲間が欲しかった。
いろんなゆっくりたちといっぱいゆっくりしたかった。
食糧を集めて「これめっちゃうめぇ!」と言ってもらいたかった。
あるとき、みょんたちは意を決した。ゆっくりの里に行こう、と。
里に行って仲間に入れてもらおう。
追い払われるかもしれない。殺されるかもしれない。
それでも仲間がほしかった。たとえ奴隷のようにこき使われようとも、囮にされようとも、
みょんは仲間と一緒にいたかったのだ。
ゆっくりたちは去ってしまった。
みょんたちは絶望した。なんであんなに慌てて去っていったのかはわからないが、とても嫌われているということは間違いない。
殺す価値すらないのというのか?
だがもしかすると、後でゆっくりたちが帰ってきてくれるかもしれない。
みょんたちはこの里を守ることにした。きれいな状態に保っておけば帰ってきたとき見直してくれるかもしれない。
食糧はたっぷりあったが、できるだけ手をつけないことにした。
食べたならば、食べた分だけ補充するようにした。
結局、冬になってもゆっくりたちは帰ってこなかったので、みょんたちはそこで冬を越すことにした。
春になったら、また別の里に行って仲間にしてもらおう。さもなければ潔く殺されよう。
七匹の赤い眼のみょんたちは互いにそう誓い合った。
最終更新:2008年12月09日 18:41